七星勇者探し
「新しい所持者もまだ現れていないしな……」
「俺達の仲間が選ばれるようにしたかったけど、Lv上げをしてないし、ネットワークの構築に時間を掛け過ぎたね」
「なるほど……つまりそのどれかで問題が起こったという事ですね」
おお! さすがお義父さんですぞ。
そう言えば七星武器にはまだ新しい所持者が見つかっておりませんでしたな。
何でも七星武器を安置させた場所で、連日召喚の儀式を行っているそうですが、うんともスンとも言わず、この世界の者で新たな所持者を選定させるため、挑戦させるか決議をしている最中だそうですぞ。
小手の七星武器はまだ選定者が出ていない状況ですな。
実質、活動出来ているのはメルロマルクの女王だけだと思いますぞ。
「ブフフフ……概ね間違っていない。現在、所持者がいる事になっている斧と投擲具の勇者と連絡が取れておらんのじゃ」
お義父さん達の顔色が若干悪いですな。
「この二つの武器の持ち主ってどんな人なんでしょう?」
「二人とも異世界人と聞く。ブフフフフ」
「となると召喚された直後の俺達みたいな精神状態か?」
初心を思い出しますぞ。
異世界に召喚されたヤッフー!
俺のバラ色人生の幕開けだぜー!
ですな!
「その状態で、本物か偽物かわからないのでフォーブレイに来い! とか言われたら……」
「真偽はともかく、国の強引な命令に対して従おうと思うか否か……か。俺だったら知った事かと他国に逃げるな」
「使命を放棄して、好き勝手に行動をするかもしれませんね」
「完全に天狗になっていますな」
過去の自分がそこにいますな。
ですが……状況次第ですがタクトが七星武器の殆どを揃える様な状況になるのですぞ?
となると、探せば見つかるのではないですかな?
「何処かでコンタクトを取れれば良いんだけど……」
「ブフフフ、その為に投擲具と斧の七星勇者の顔を知る者達が来ておる」
と、豚王に呼び出されたようですな。
一人は小柄な小太りの中年男性ですな。
なんとなくですが身なりがよさげですぞ。
もう一人は大柄でやはり肥満体の商人臭い衣装を着た奴ですぞ。
「勇者達にはそれぞれの七星勇者を捕えてほしいそうじゃ」
「「宜しくお願いします」」
「つまりこの人達を同行させて、七星勇者を顔で見つけろと?」
「ブフフ、そうなる。無理なら似顔絵を張って指名手配をするまで」
「勇者を指名手配ですか? 暴動になりませんか?」
そこで商人臭い奴が手を上げますぞ。
「四聖勇者が消息不明の七星勇者を探しているのならば問題はありません。指名手配も情報収集をするのでして、殺せと言う物ではありませんから、指名手配というよりは探し人の広告です」
「まあ……四聖の方が偉いと言うか上位存在みたいですし、使命を放棄する様な人に武器を持たせる意味は無いですよね。説得に応じてくだされば良いんですけど」
「今度は七星勇者探しか……良くもまあ次々と問題が起こるな」
「元康くんの話を聞くと他人事じゃないと思うよ」
まったくもってその通りですな。
最初の世界の俺達は本当に身勝手に行動していましたからな。
同様の現象が召喚された七星勇者に無いとは言い難いですな。
「タクトを早めに抑えたから、元康くんの知る未来の知識と違いが出てくるはずだよね。ある意味では、ここからが本当の始まりなのかもしれない」
「出来れば生きている状態で会いたいですね。元康さんの話だとタクトに殺されてしまう人達なんですから」
「そうですな。最初の世界ではフォーブレイが抱えていた七星は全てタクトによって殺されていましたからな」
話を整理しますぞ。
えっと、最初の世界で杖と小手はタクトの手には無かったのですぞ。
鞭、ツメ、槌、斧、投擲具がタクトによって奪われていました。
割と素早くタクトと遭遇したシルトヴェルトでの周回の段階で、タクトは既に三つ所持していましたな。
という事は鞭、ツメ、槌は俺達が召喚されるよりも前にタクトの手に渡っていたと思いますぞ。
で、現在行方知れずの斧と投擲具……前回はタクトが投擲具も所有していました。
おそらく何処かで遭遇して奪ったのでしょう。
ですが、今の段階で勇者の行方が知れませんからな。
「七星勇者とはいつ頃から連絡が取れないのですかな?」
「それぞれ召喚と共に旅立ちました。そして波が起きた時に指示をしようと思ったのですが……招集があったためにコンタクトを取ろうとした時点で出会えていません」
「召喚されて割とすぐに連絡不備ですか……」
「招集自体聞いていない感じなんじゃない? 冒険者ギルドとかいろんな所に通達をさせている段階かな?」
「はい。ただ、各地で目撃証言があるので、見つけること自体は簡単だと思われます」
「じゃあ、まずは元康の話から察するに、見つけやすそうな投擲具の勇者を探すか」
今までの周回から察するに投擲具の方はタクトに見つかって奪われてしまっているようでしたからな。
それだけ発見が簡単という事ですぞ。
「では……私達の国は――」
既にポータルが取れていますぞ。
「あ、四聖の勇者様方」
商人っぽい方が手を上げます。
「斧の勇者様の目撃証言は他国に集中しておりまして……我が国には既におりません……」
「ブフフフ、その辺りの報告はフォーブレイも調べておる。まずは投擲具の勇者を探すのだ」
「わかったよ。そっちは波が終わった後に捜索しよう。では出発します」
「ではワシは失礼する」
また豚王は足早に玉座の間を後にしますぞ。
随分と楽しげですな。
まだタクトの豚共と遊んでいるのですかな?
まあ、沢山いますからな。
タクトの長い夜はどれだけ続くのか見物ですぞ。
「目の前で寝取られプレイか……俺だったら心が死にそう。せめてもの救いは取られた女性は、相手が王様だから結果的にだけど王族の仲間入りって所かな?」
「あんまりアイツの事を気にするな。奴等の自業自得だ」
「ええ……世の中にはああいう闇も存在するのでしょう。大奥とか、そんな感じだったのではないですか?」
「どうかなー……と言うか総勢何人のハーレムになったのか……」
「まったく羨ましくないな」
そうですな。
お義父さん達の言葉に同意ですぞ。
あんな豚共を囲って何がしたいのかさっぱりわかりませんな。
「薄々思っていたのだが、勇者殿達はフォーブレイ王の後宮がどういう物なのかを勘違いしているのでは――」
と今まで黙っていたエクレアは言い掛けて再度、黙りこみました。
やはりエクレアは知っている様ですな。
「なんかあるの?」
「いや……勇者殿達は知らない方が良い」
「そう言われると気になるな。何があるんだ?」
「い、いや……」
エクレアは説明に困っておりますな。
「なんかとてつもない事なんじゃ?」
樹の問いにエクレアは諦める様に言いますぞ。
「フォーブレイ王への嫁入りが貴族出身の罪人女性の罰だという事だけを知っていればいい」
俺はあの養豚場の事などお義父さんが知る必要は無いと思いますぞ。
まあ、どんな事が起こっているのかを知ってもこれからの方針はきっと変わりませんがな。
タクトには良い処分方法だと思いますぞ。
「どういう罰な訳?」
「あの外見ですからね。罰には良いのかもしれませんよ」
「ああ、そう言う方向? 何か無理がある様な気がするけど」
「知りたくも無いし見たくも無いな」
「まあね。なんて言うか、世継ぎとか産むのが大変とか、城の敷地内にある王家由来の家とか見るとあの王様の子供達ってことなんじゃない?」
「なるほど、あの中で新しい王様がーって奴ですか」
「兵士とか育て上げたり、外交の材料に差し出すとかありそうだ」
「何だかんだで異世界だもんね。産まれてすぐに死んじゃうとかで、王族って死に易いのかもよ」
「陰謀とか派閥ですね。暗殺されたりする王族出身だと大変ですね」
おや? お義父さん達が色々と勘違いを始めましたな。
既に何人、処分されたか知る必要もないですぞ。
最初の世界でも割と短い期間でとっかえひっかえだった様な気がしますからな。
豚のメンタルは豆腐のように弱いですぞ。
すぐに股を開く癖に、相手が好みで無い事を知ると発狂しますからな。
きっと豚王のおもちゃに一回されただけで自害する者が星の数ほどいるのでしょう。
最初の世界での話ですが、豚王は「ブフフフ……自害するとか……」と赤豚を搬送した時に映像を撮ろうする俺に赤豚の前に遊んでいた豚に対して愚痴ってましたからな。
おそらく犯される前に死ぬ奴も沢山いるのでしょう。
タクトの豚共はどうなのですかな?
ま、タクトの豚共の行く末など知る必要も無いですな。
「じゃあ、投擲具の勇者が目撃された地域にみんなで行って探してみようか」
「わっかりましたぞ! 俺が刺殺してやりますぞ」
「いや、なんでいきなり殺す方向?」
「尚文、元康にちゃんと注意しておけよ」
「わかってるって、別に殺すんじゃなくて使命を忘れない様に説得するの。世界の為にもね」
ああ、そうでしたな。
七星勇者というだけで思わずタクトを連想し、殺す方向で考えていました。
これは注意が必要ですな。
「四聖勇者だけで波に挑むのは骨が折れますからね。七星勇者も早く選定されてもらわないと大変ですよ」
「そうだな。正直、こんなに多いとは思わなかった。期間はまだあるが、日程が被ると悲惨だぞ」
「確かに……ともかく四聖も七星も力を合わせて分担作業で世界を守っていきたいね」
と、お義父さんは呟いてから俺達はぞろぞろと出発をしたのですぞ。




