主治医
「問題があったらイグドラシル薬剤で大抵どうにかなりますぞ」
そう、困った時はお義父さんが使う様にしていた薬を使えばどうにでもなりますな。
材料がやや特殊ですが俺も作れなくはないと思いますぞ。
その亜種である薬剤は色々とあります。
若干効果が落ちますがフェニックスライフという薬や、最悪ドラゴンブラッドと言う薬もあります。
どちらも相当優秀な薬で大抵の病はこれで一発で治るのですぞ。
前者は珍しいのですが、後者はドラゴンの素材で作り出せるそうですな。
「よくよく考えると薬を飲むだけで病気が大体治るというのも凄いですよね」
「まあね、俺の居た日本じゃ薬って風邪を治すんじゃなくて症状を緩和させる物だったし……って樹が言ってもな」
「なんでですか」
「治療の異能力がある世界だろ? どんな風邪も治せそうじゃないか」
錬が樹に向かって言うと、樹は若干呆れ気味に答えますぞ。
「た、確かにそう言う異能力はありますけど……それとこれとは別ですよ。錬さんはどうなんですか?」
「過去に有名だった危険なウィルス系の病は病院に行けば治るな。ウィルスの増殖を抑えるとか習った」
「あー……召喚前に似た様な話をネットのニュースで見た様な気がする。錬の世界じゃ実用可能になっているんだね」
俺も聞き覚えがある話ですぞ。
何だかんだで科学の発展が異世界の薬に近づきつつあるのですな。
「どっちにしてもサクラちゃんやガエリオンちゃんを見てもらうのは良いかもね。イグドラシル薬剤だっけ? そういうのじゃ無理な病もあるかもしれないし」
「わかりましたぞ」
「ま、出発前に行くのは良さそうだな」
「僕達は先に出かけて良いんですよね?」
「そうだね。じゃあ錬と樹、夕方にまた会おう」
食事を終えた俺達、錬と樹はそれぞれポータルで停泊させていた飛行船等の場所に戻って行ったのですぞ。
ちなみにエクレアは錬に付いて行ってもらっております。
「じゃあ元康くん。サクラちゃんやガエリオンちゃんの検診をしてもらいに行こうか」
「わかりました、お義父さん。ついでにみんなの診察もするのですな?」
「え? サクラちゃん達も人化時はしたじゃないか、今から行くのは魔物時の姿だよ?」
俺は助手とモグラを見ますぞ。
「あのね元康くん。まさかウィンディアちゃんやイミアちゃんまで魔物枠で考えていない?」
む? 違うのですかな?
助手はまあわからなくもないですが、モグラは必要だと思いますぞ?
「はぁ……元康くんも何だかんだで判断が付いていない訳ね。まあ、ユキちゃん達がいろんな姿になれるからなんだろうけど」
「えっへん、ですわ!」
「何の自慢にもならないからね?」
「なの!」
「張り合わないで良いから」
お義父さんが何やら嘆いておりますぞ。
何を嘆いているのですかな? 俺が原因を取り去って見せますぞ。
などと話をしながら俺達はフォーブレイの有名な錬金術の機関のある学舎へと案内されました。
なんとなく大学を思い出しますな。
そんな雰囲気を持った洋風の建物ですぞ。
案内されるのはその中でも動物園のような雰囲気のある魔物が沢山飼われている区画の様ですぞ。
「いろんな魔物がいるねー」
「うん」
助手が目を輝かせておりますぞ。
そういえば助手は魔物が好きでしたな。
俺もあまり見た事のない魔物が飼育されているようですな。
そう言う意味では珍獣動物園と言えなくもないですぞ。
「少々お待ち下さい」
城から派遣された者がそんな珍獣動物園を抜け、屋敷のような建物の中に案内した後に関係者を呼びに行きましたぞ。
何やらゴポゴポと怪しげな生き物がカプセル内に浮かんでおりますな。
大型の試験管とも言うのですかな?
「動物園的な物かと思ったけど、こういう所が異世界って感じだね」
「なの?」
「んー? 薬っぽい」
「そうだね。そんな感じの匂いがするね」
「昔、豚と一緒に映画で見た事がありますぞ。狂った科学者が神の領域に足を踏み入れた研究をしたとかで凶悪なモンスターが大暴れするのですな」
「全く笑えない内装をしているからね?」
「ゾンビとかのアンデッドも出てくるパターンがありますな」
「だから冗談に聞こえないからね?」
お義父さんが俺にツッコミ続けていますぞ。
まあ例え巨大な蛇や鮫が出てきても怖くはありませんが。
ゾンビ系のアンデットなどこの前体験したばかりですぞ。
まあメルロマルクではゾンビではなく、悪魔でしたがな。
「元康くんの所為で不安になって来たじゃないか。サクラちゃん、ガエリオンちゃん、俺の目から離れた所に行かないようにね?」
お義父さんが注意しますぞ。
それはサクラちゃんだけで良いのではないですかな?
「なの?」
「なんでー?」
「じゃなきゃバラバラにされて改造されたりしちゃうかもしれないからだよ」
「こわーい」
「大丈夫なの。ガエリオンはバラバラにされた程度じゃ死なないなの!」
サクラちゃんは反応が可愛らしいですな。
逆にライバル。
その反応はどうなのですかな?
で、助手は不安そうに……してませんな?
「ウィンディアちゃんは大丈夫? 心配しなくても良いからね」
「うん。あのね、さっきここの魔物達に聞いたんだけど、ここの責任者って人は良い人だから心配しなくて良いみたい」
おや? 魔物の言葉を理解できるからこそ安心できると言う事ですかな?
「そうなの?」
「うん。なんか盾の勇者を慕うガエリオンみたいにとても信頼してる感じだった」
「へー……じゃあ問題ないかもね」
「うん。みんなもっと強くなりたいから一緒にいるとか言ってたよ」
その言葉を聞いてお義父さんはゆっくりと助手を見て冷や汗を流しておりますぞ。
「なんか逆に不安になったよ」
「え?」
助手の方はなんでお義父さんが不安に思ったのか理解しておりませんぞ。
俺の話のパターンに繋がるのですな。
魔物側からしたら強くなれるからここに居ると言う事なのですぞ。
強くなったら暴れるのですかな?
やがてカツカツと音が聞こえて来て、待たされた部屋の扉が開きましたぞ。
「勇者が育てた特別な魔物を診させてくれるんだって?」
「え?」
お義父さんが声の主に振り向いて見つめますぞ。
そこには……。
「ああ、自己紹介が先よね。えっと、盾の勇者と槍の勇者……とその仲間だっけ? 私の名前はラトティル=アンスレイア。親しい人はラトって呼ぶわね」
「コイツは!」
「元康くん知ってる人?」
「主治医ですぞ!」
間違いありません。
お義父さんの領地の村で助手と一緒にフィロリアル様は元より、様々な魔物達を一挙に診察していた魔物の第一人者ですぞ!
フィーロたんの主治医でお義父さんと一緒にいろんな事を研究もしていたそうです。
俺も主治医の腕は信用しておりました。
「一体何の話?」
「ええっと……ラトさんは俺達、四聖勇者の経緯って知ってます?」
「生憎、研究に忙しくて聞いていないのよねー」
主治医は面倒そうにボリボリと頭を掻きましたぞ。
白衣を着たその姿は間違いなく主治医そのものですな。
「で? 変わった魔物っていうのはこの子達で良いのかしら?」
主治医はテキパキとフィロリアル様達を触診し始めましたぞ。
「な、なんですの!?」
「わ、わ、わー! コウ怖い!」
「ふわふわー」
「んー? 感覚からどう見ても魔物の類が変化しているものね。早く本性を現しなさい」
何処をどうやったのかフィロリアル様の羽に手をうずめてから、主治医は何かを弄った様ですぞ。
ボフッとフィロリアル様がフィロリアルの姿に強制的に変えられてしまいました。
それ、どうやるのか教えて欲しいですぞ。




