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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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懐疑的

「とりあえず、メルロマルクに関して、俺達が出来る事は大分解決したと見てよさそうだな」

「ですね。状況次第でまた来訪する事はありそうですが、依頼は達成した事になるでしょうね」


 と、言ってから樹は眉を寄せながら深々と考え込みました。


「……本当に、これで解決ですよね?」

「んー……俺達に出来る範囲って意味だとね」


 樹は中途半端に事件を解決すると言うのを俺から聞いておりましたからな。

 心当たりと言うか不安が拭えないのでしょう。


「不幸中の幸いと申しますか、三勇教の教えに懐疑的な者達が生き残りました。メルロマルクは新しく生まれ変わる時が来ました。これからは良い方向に国が向かうよう、努力して行くつもりです」


 女王は杖でコンと地面を軽く突きますぞ。

 七星武器である杖が目立ちますな。


「オルトクレイが託した分まで、私は国の象徴として君臨しなくてはなりません。勇者様方、また協力を仰ぐ時が来るかもしれませんが、その時は助力の程をお願いできませんか?」


 もはや国としての体裁を保つのも怪しい状況ですな。

 それでも新たに選定された杖の勇者として女王が存在する限りは、どうにかなるだろうとお義父さん達は昨日話していましたぞ。


「もちろん。まあ……俺達の所為でもあるんだしね」

「まあな。こんな状況の国を無視はできないだろ」

「差別などが無くなってより良い国になるのでしたら協力は惜しみませんよ」

「どっちにしても、女王様に杖の正しい強化方法を学んでもらい、波に挑まないといけないし」

「ええ……勇者様方からの話を実践し、少しでも早く世界を救えるように努力致します」


 と言う所である程度話がまとまった様ですな。

 武器を使えないクズより、使える女王ですぞ。


「さて……これからの方針ですが、とりあえずはフォーブレイに戻って報告ですね?」

「他国の波に挑む事も忘れてはいけないだろ。他の七星勇者との謁見もある」

「イミアちゃんの親戚がどこに連れて行かれたのかも調べないとね」


 お義父さんはモグラの手を握ってから女王を見ますぞ。


「ええ、国がこのような状況でありますが、早急に追跡調査を行います。消息が掴め次第に報告を致します」

「は、はい」


 モグラが緊張気味に荒れた城下町に目を向けますぞ。

 その目には諦めに似た色が映し出されているように感じるのは俺だけではありませんな。


「イミアちゃん、諦めちゃダメだよ」


 お義父さんがモグラを抱きあげて答えます。


「は、はい……」


 仮に奴隷狩りによって連れ去られた場合、城下町の裏路地とかに多く点在する奴隷市場で取引されていたのではないですかな?

 つまり生存は絶望的だと俺は推測しますぞ。

 お義父さんが何処で仕入れたのかはわかりませんがな。

 どちらにしてもモグラと同族の死骸がどれだけ見つかるかに掛っていますかな?


「直接会った事はありませんが、奴隷商人にツテがあります。その奴隷商人は国の情勢に気付き、撤退したそうなので声を掛けてみましょう」

「お願いします」

「尚文さんは本当に面倒見が良いですよね。イミアさんががんばりたいと思う心境は、今の様子を見るだけでわかりますよ」

「そうだな」


 そんなモグラよりも最近さみしがって来ているサクラちゃんを――


「メルちゃんも元気出してー」

「そうですわよ。暗い顔をしては下々の者が不安になりますわ」

「がんばろー」

「大丈夫よサクラちゃん、ユキちゃん、コウ。母上の国はいろんな人達が力を貸してもらって復興しようとしているんだもん。寂しくなんかないし、元をただせば父上と姉上の責任。より一層がんばらなきゃ」


 婚約者と毎日一緒に居てあんまり寂しそうではないですな?

 ユキちゃん達もこんな暗い場所で復興作業などさせられませんから婚約者のフォローをサクラちゃんと共にしていたのですな。


 ですがサクラちゃん、婚約者はフィーロたんの物でもあるのですぞ。

 なので婚約者とあまり仲良くし過ぎるとフィーロたんが改めて友情を築く隙が無くなりますぞ。

 今度お義父さんに注意しておきましょう。


「なのーイミアちゃんがなおふみに抱えられて羨ましいなの!」

「……」


 ライバルと助手は相変わらず元気ですな。

 後は……エクレアですかな?

 なんとなく居心地が悪そうですぞ。


「女王、私は……」

「気持ちはわかっていますよ。ですがセーアエットの名の下に勇者様方に尽くすのもまた国の為なのです」


 女王がエクレアに俺達の仲間としての活動を命じたのでしたかな?

 何を悩んでいるのでしょう。


「エクレールさんも国の為に復興作業に携わりたいんだよね? あんまり俺達の事は気にしなくても――」

「これはメルロマルクのケジメであり、メルロマルクの為でもあるのです。勇者様方、どうかセーアエット嬢を戦いの供として傍においてください」


 あまり立場が良くない情勢にあるメルロマルクにとって、勇者の仲間として迎えられているエクレアは重要な役職になってしまったと言う事なのでしょうな。


「もちろん、セーアエット領の復権は約束しましょう。領地の復興もセーアエット嬢、貴方の父上を良く理解していた者に任せるつもりです。存分に勇者様方の力となる様に努力するのですよ」


 その辺りは既に錬と樹も理解しているのか頷いておりますな。

 悪い話では無いのですからな。

 お義父さんはエクレアの意志を尊重したい様ですぞ。


「ハッ!」


 改めてエクレアは敬礼して女王の命令に従う様ですな。


「本当に良いの?」

「イワタニ殿、決意が揺らぎそうになる様な事は言わないでくれ。それに、私は本来戦いと作法しか習っていないのだ。領地の経営は……私よりも適任者がいると思う」


 何処となく寂しげにエクレアは言っておりますな。

 最初の世界ではエクレアの領地が、お義父さんの領地だったのでしたな。

 そういう意味ではお義父さんに任せるのが一番では無いのですかな?


 とはいえ、お義父さんも村の管理はしておりましたが、領地経営は他の者に任せていたと聞きましたぞ。

 難しい塩梅ですな。

 きっとお義父さんはその辺りを俺から聞いて、自身がやると言わないのでしょう。


「イワタニ様、どうか我が国のみならず、世界の為に活動してください。七星勇者の内、本来選定されていたはずの三つが無い今、我が国と周辺国だけを守れる状況では無いのです」


 七星勇者が本来やらねばならない仕事が四聖である俺達に振りかかるのですぞ。

 今は復興作業の手伝いにだけ力を割く状況では無いと女王は俺達に告げているのでしょう。


「そう、か……わかったよ。じゃあ女王様。杖の勇者としてがんばってください」

「はい……」


 女王はとても遠い目をして空を見上げておりますな。

 きっと女王の目にはクズの顔が空に映っているのではないですかな?

 俺も負けじと空を見てフィーロたんを思い出しますぞ。

 ああ……フィーロたん、貴方は何処に居るのですかな?


「なんか元康まで遠い目をし始めたぞ」

「大方、何か妄想でもしているんですよ。下手に動かれるよりマシですから放っておきましょう」

「変な考えをしてい無きゃ良いがな」

「とりあえずはフォーブレイに戻って、俺達は休ませてもらおうよ。連日疲れてきたし……他の国の波も近づいていると思うんだ」


 そんな訳で俺達はフォーブレイに戻って波に備える事になったのですぞ。


  

 フォーブレイに戻った俺達は豚王が起きるまで休憩をしました。

 今は豚王が起きたので、謁見をしている最中ですぞ。


「ブフフフフ……よくぞ戻った。四聖の勇者達よ」


 相変わらず豚王はタクトの豚共と遊んでいて、機嫌が良さそうですな。

 やはりアニマルビデオの撮影をしたのでしょうか?


「えー……此度の活躍、フォーブレイの代表として称賛の言葉を贈ろう」


 そしてまたもカンニングペーパーですかな?

 配下の大臣っぽいのがカンニングペーパーを見せております。

 尚、大臣は新しい奴になってました。


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