三分の一
「なんか元康くんのそのスキルを見るとさ、ヒート――って言いたくなるよね」
「またオタク知識ですか……まあ、似た様な能力者に覚えがありますよ? 炎の拳を扱う異能力者がいましたから」
俺が赤豚を仕留めると、空から陽光が差しこみ始めましたぞ。
そして赤豚に集約していた魂が拘束から解き放たれて飛んで行きました。
まあ、生き残りが居れば良いの範囲ですが、若干これで犠牲者が減るのではないですかな?
「では杖の力で土地の浄化を随時して行きます。勇者様方……フォーブレイから援軍を連れて頂き、ご協力をお願いします」
女王は即座に復興作業に取り掛かかろうとしているようですな。
凄い変わり身ですぞ。
「姉上……死んでも哀れな人ですね」
「マルティ王女……貴方は何処まで愚かで身勝手な方だったのでしょうか……まさしく王の器とは真逆の人だ」
エクレアが完全に呆れて放心していますぞ。
あの赤豚は生きていても、死んでいても害しかありませんな!
もしも次があったら、魂すら消し飛ばしてやりますぞ。
「まー……なんて言うか、こんな所でいきなり現れてラスボス面されたから驚いたけどさ……」
「ホント何が目的で生きてた人なんですかね」
「まったくだ。人を罠に嵌めて苦しむ様を見て喜んでいるクズかと思えば、力に固着する。努力は嫌いなように見えたのにな」
達成感よりも脱力感の方が強いですな。
今までの中でも一際、悶々とした感情が湧きたつ戦いでしたな。
俺はスッキリしておりますが、お義父さん達は不安そうですぞ。
まあ、犠牲者はかなり多そうですな。
「ああいうタイプの女、竜帝の記憶の中でもかなり多く出てくるなの! あの鞭の仲間にも結構似たのがいるっぽいなの」
「タクトは女なら何でも良いんじゃない? まあ自業自得で豚王にやられてるうちは大丈夫だろうけど……同じように悪霊化したら危なくない? 自害とかされたりしてさ、大奥とかの話であるじゃないか」
「その件は問題ないでしょう。ソウルイーターという魔物とは異なりますが、ソウルバキューマーと言う魔物がフォーブレイの城で飼育されています」
「なんでそんな魔物が使役されているのかは聞かない方がよさそうだな」
「呪術とかじゃないですか? 犬神の術とかに対して効果ありそうじゃないですか」
「AVを縁談相手の家族に送り届けそうな王だしね……恨みとか多そう」
などと言いながら俺達は復興作業の手伝いとしてフォーブレイに戻ったのですぞ。
さて、俺達はその後、何をしたかと言うと、フォーブレイからメルロマルクに向けて宗教関係は元より兵士や騎士、果てには医療関係者を送り届けたのですぞ。
まずメルロマルクの被害状況ですが、城下町に居た国民の中での生存者は五人に一人。その生存者も衰弱が激しくて完治には時間が掛るそうですがな。
それ以外は魔力は元より魂までも吸い取られて変死していたそうですぞ、死体に関してはアンデッド化した者も多かったそうで、魔都と化したメルロマルクの事後処理は、まあそれなりに追われるとのことですぞ。
城下町が汚染されたのは俺達が来る前日だったそうですな。
メルロマルク城内に居た兵士に関してはほぼ壊滅状態だとか。
城内に居た三勇教徒も赤豚や新教皇の所為で、殆ど干からびて死んでいたそうですぞ。
で、儀式の範囲が実際はどの辺りまで拡大したのかと言うと、メルロマルクの城を中心にしてメルロマルクの国土の三分の一まで広がっていたとか何とか。
物凄い早さですな。
まさに己の宗教の名と同じ数だけ広がって被害を出した訳ですな。
まあ、その範囲を広げていた三勇教徒達は亡霊赤豚を仕留めると同時に力尽きたそうですな。
そんな訳で、もはや災害救助の状態になると同時に、三勇教が起こした問題は国中に広まったそうですぞ。
もちろん、俺達が来る前に城下町が何かおかしいといち早く察して逃げた者達は事無きを得たとか。
あとは……メルロマルク内でも女王の派閥だった者の話ですな。
半数以上は城に投獄されてしまって死んでいたそうですが、そうでない者はメルロマルク内でも辺境に左遷されていたので助かったとかですな。
兵士とかも同様に、三勇教に関して疑問を持って居た者、罰するには名目が足らない者は左遷されていたのですぞ。
そして……大切な家族を失った者達が三勇教と言う宗教に疑問を持ち、同時に勇者達に依って野望を砕かれた結果、どうなったかと言うと……。
女王が真実を告げたお陰で三勇教は世界単位で邪教と認定され、その教徒を名乗る事はタブーとなる程になったのですぞ。
現在、メルロマルクの城下町は俺達が招集した四聖教の者達によって浄化作業が行われております。
被害者数は膨大な数になったとの話ですな。
女王が、昼食の時間に俺達を招いて状況を説明しました。
「凄い被害状況だな」
「目も当てられませんね」
「そうだね……これは、あまりにも酷い……」
「今回の騒動を含め、三勇教によってメルロマルクの国民の三分の一が犠牲になったとの試算も出ております」
「もう完全に世界に仇成す邪教だな」
錬が半ば呆れるように呟きましたぞ。
まったくもってその通りですな。
「復興には時間が掛り、他国が攻め込む好機かと思われますが……」
女王は自らが所持する杖を見つめておりますな。
今や女王が杖の勇者ですぞ。
世間に流布する公式の事件報告の話をします。
クズは女王と同じく、影武者を城に配置して他国を放浪中、三勇教の暴走に異を唱え駆けつけ、戦ったのだが後一歩と言う所で及ばずに、ちょうど駆けつけた四聖勇者と女王の前で力尽きて、女王に後を託して亡くなったと言う事になった様ですな。
英知の賢王と言う名は重いそうで、こうでもしないと外交に問題が出るとか何とか。
杖の眷属器に選ばれただけでは侵攻を抑えられないと女王が懸念した所為ですぞ。
「ま、女王様が杖の勇者として君臨しているなら問題……ないんじゃない?」
「安易に戦争でもしようものなら返り討ちに遭うだろうし、勇者達が既に裁きを与えたとフォーブレイが流布してるんだろ?」
お義父さんが答え、錬がフォーブレイの方針を説明しましたぞ。
そうでしたな。
「暗い話ばかりですが、三勇教という問題ある宗教が消えたのですから御の字だと思う事にしませんか?」
「そうなんだけどねー……もっと良い解決方法があったんじゃないかって思っちゃうよ」
お義父さんがそれとなく俺に視線を向けますぞ。
ですから俺はウィンクで返しました。
すると少し呆れ顔になりましたな。
まあ今回はあまりに予想外の出来事でした。
これまでこの様な事件はなかったのですからな。
ですが……。
「お義父さん、大体俺が原因ですぞ!」
「……敢えて皆が避けていた言葉を本人が言った!?」
「はぁ……元康さんも神では無いので追求するつもりはありませんでしたが……何が悪かったのか理解しているんですか?」
「俺達の信用を得る所までは良かったんだ。その先が悪かった自覚を持っているのか!」
「まあまあ……まさかここまで悪化するなんて予想出来るものじゃないでしょ」
おお、お義父さんが俺を庇ってくれてますぞ。
この元康、感激で涙があふれてきますな。
「反省は……してるんですかね?」
「どうだかな。尚文が言った事なら何をしても敬礼しそうで怖いぞ」
樹と錬が揃って腕を組んで俺を怪訝な目で見ておりますな。
失礼ですぞ。俺だって反省はしますぞ。
もちろん、必要だと思えばやる時はやりますがな。
「そう、ですね。キタムラ様は同じ時間を何度も繰り返していると言うのでしたら、オルトクレイを殺す決断は避けてください……」
女王の祈りに似た言葉を俺は聞きましたぞ。
そうですな。
こんな騒動になるのでしたらクズは半殺しで我慢してやりましょう。
「わかりました! では赤豚は魂まで殺し、クズは助けてやります」
「そっちは譲れないんだね」
「まあ幽霊になって国を乗っ取ろうとする人ですし……」
「だが、確かにこれまでの経緯を見る限り、そうした方が良さそうだな」
今度は闇雲に殺すのでは無いですぞ。
もっと考えて、始末します。




