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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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ファイアアイ

 争う豚共を見て、妹豚が叫びますぞ。


「ブブブ! ブブブブブ! ブブブ、ブブブ? ブブブ」

「そんな事絶対にしないわ! 私のお兄ちゃんが私を助けてくれるんだもの! ……あー……もうダメだね。出来れば聞きたくなかったよ」


 お義父さんは妹豚を兵士に受け渡しました。

 まだ豚は騒いでおりますが、騒いだ事でタクトがもがき、全身から血を噴出させたのを見て硬直して、震えておりましたな。

 妹豚が周りの豚共に何やらブーブーと弾劾されていますぞ。


「さっきあの豚は何を言ったのですかな?」


 お義父さんがその様子を呆れとも哀れとも見える目で見ておりました。

 その背中に俺が声を掛けると樹が答えてくれましたぞ。


「弱い七星勇者を殺したからって何? どうせお兄ちゃん以外の勇者なんてクズばかりなんだから良いじゃないの! と言っていたんですよ」

「強ければ何でも許される……と思っているんだろう。俺も注意しないといけないな」

「そうですね……元康さんの話で出てくる僕や僕の仲間達の暴走を考えると、他人事とは思えません」


 確かに他人事ではありませんな。

 俺達も自分勝手にやって行ったら同じ轍を踏みますぞ。

 ですが俺達はそうならない様に努力します。


 特に最初の世界のお義父さんが歩んだ道を思い出すと、十分に違いがありますぞ。

 強ければ何をしても良いとお義父さんは言いましたかな?

 村の奴隷達にそんな事を教えたりはしていませんでしたぞ。

 お義父さんが教えていたのは強さによって誰かを守る事でしたからな。

 フィロリアル様達を含めて村の者達はみんな、そう感じていたのですぞ。


 強ければ許される……カルミラ島で樹や樹の仲間達が暴走した時の事と規模の違いこそあれど符合しますな。

 錬に関しては、今までの周回で、それを素で行っていた空気がある様な気がします。

 確かエクレアが錬に強さの意味を教えたのでしたかな?


 詳しくはあんまり思い出せませんでしたが、強さの意味は弱者を守るためにあるのです。

 タクトの豚共の余罪を聞く限り己の野望を叶える為にあるのではないのですぞ。

 守ることしか出来ないお義父さんだからこそ、伝えられる事があるのではないですかな?


「出来れば人間同士で殺し合いなんてしたくない。だけど、こうしなきゃ守れないなら、俺達は手を汚さないといけないんだね」


 お義父さんは遠い目をして呟きました。



 そんな豚共が騒ぐ中でユキちゃんを始めとした者達のクラスアップが行われたのですぞ。

 ユキちゃん達フィロリアル様は頭の毛の力で特別なクラスアップを完了させました。


「ガエリオンも完了なのー!」


 そのすぐ後にライバルが自前の力でクラスアップしましたな。

 助手も同様ですぞ。


「イミアちゃんはどうしようか? サクラちゃん達のクラスアップにする? それともガエリオンちゃんの方?」

「え、えっと……」


 モグラはキョロキョロとサクラちゃんとライバルを交互に見ておりますな。

 難しい選択なのではないですかな?

 見た感じモグラは優柔不断ですぞ。

 俺なら迷わずサクラちゃんを選びますがな。


「や、槍の勇者様のお話で出てくる。わ、私はどっちを選んだんです、か?」


 モグラが俺の方を見て聞いてきましたぞ。

 決断をする為の指針にしたいのですな。


「知りませんな。元々戦闘は好まなかった様ですから聞いてませんぞ」

「クラスアップすらしてなかったのかもね」

「尚文も難しい選択をさせるよな」

「自分で選んでもらった方が良いと思うからね」

「そもそもどう違いがあるんですか?」


 当然違いはありますぞ。

 フィロリアル様のクラスアップは普通のクラスアップと違い、全ステータスを上昇させるのです。

 ドラゴンの方? そんなの知りませんな。


「俺も目算でしかわからないけど、能力上昇は若干サクラちゃん達の方が上かな。ガエリオンちゃんの方は能力よりも技能が増えるっぽい?」

「えっとねー。サクラ達の方にするとー動きやすくなるってー」

「それはフィトリアさんからのアドバイス?」

「うん。ガエリオンに取られる位ならって積極的に教えてくれるよー」


 お義父さんはサクラちゃんと大きなフィロリアル様の話をしているのですな。

 そこにライバルがしゃしゃり出てきました。

 邪魔をするな、ですぞ。

 今、お義父さんは大事な話をしているのですぞ。


「ガエリオンもアドバイスなら負けないなの! ガエリオンのクラスアップを受けたら魔法資質が多めに開花するなの!」

「纏めるとフィロリアルが物理寄り、ドラゴンが魔法寄りか」

「資質的な観点で言うならフィロリアル側は動体視力とかも上がりそうですね」

「うん、そんな感じー。イミアちゃんでも戦いやすくなるって言ってる」

「時代は魔法なの! 合唱魔法でなおふみ達を援護しようなの!」


 サクラちゃん達とライバルが睨み合いを始めました。

 どーれ、俺も参加しましょう。

 俺が腰を上げると、錬と樹に止められました。

 なんか最近、お義父さんだけではなく、この二人に理解されてきた気がしますぞ。


「うー……」

「喧嘩しないの」

「ここで俺が昨日の夜、寝る前の構想で作り出した創作魔法が飛びだしますぞ! ツヴァイト・ファイアアイ!」


 カッと目から熱線をライバルに向けて放ってやりました。


「な、なの! いきなり何するなの!」


 ライバルはアッと驚いて視線を外しました。

 チッ! 外しましたな。

 あまり長く詠唱していると気付かれるので、ツヴァイトで抑えたのが裏目に出ました。


「今、目から熱線を出しましたよ!」

「寝る前の構想って実質どの程度の時間で作ったかは知らんが……遊ぶな、元康!」

「と言うか危ないでしょ! 睨み合いで勝つ為に魔法を唱えるなんて!」


 お義父さん達に怒られてしまいました。


「ガエリオンに何するの!」


 助手がぷんぷんと怒ってますぞ。

 知りませんな。

 ドラゴンなど、俺の敵ですぞ。

 ちょっと前日、サクラちゃんを守ったからって調子に乗るな、ですぞ。


「さすがですわ、元康様! 視線でガエリオンに勝ったのですわ。これは私も覚えるためにがんばった方が良さそうですわ」

「覚えなくて良いからね? こんなしょうもない攻撃魔法」


 ライバルがユキちゃんを睨みましたぞ。

 またも睨み合いですな!

 今度こそ外しませんぞ!


「ガエリオンも負けないなの! 魔力を込めた眼光なの!」


 ぶわっとライバルが俺が視線を発射する前に、ピカっと目から閃光を放ちました!


「め、目が! 目がー!」


 狙いながら魔法を唱えていたので直に当たって、目が眩みました。

 くっ……野蛮なドラゴンですぞ!


「何やってんだか……」

「あの元康さんを一杯食わせましたよ。ガエリオンさんも中々やりますね」

「先制攻撃をしたのは元康だ。自業自得だな」

「即座に反撃したガエリオンちゃんも凄いとは思うけど……努力の方向性が間違っている様な……才能の無駄遣いと言う言葉がしっくりくるね」


 お義父さんが苦笑いをしておりますな。

 もっと労わって欲しいですぞ。


「確か元康くんが使えるリベレイションクラスを覚えるには、龍脈法を習得する必要があるんだっけ?」

「そう言えばそうですな。それにはドラゴンの加護という、おぞましい物を請ける必要があるのですぞ」


 俺も最初は不快感がありました。

 ライバルも嫌そうに俺に魔法を掛けていたのを覚えております。

 お義父さんの恩威が無いと習得出来なかったのが龍脈法ですぞ。


「じゃあ俺達もガエリオンちゃんから加護をもらわないとダメなんだね。その後は魔法の勉強をもっとしなきゃね」

「玉で覚えても良さそうですが、楽したら覚えられませんし……ここまで逞しい方々を出し抜いて強くなるには必要な事……になりますね」

「武器の強化もそうだが、楽して強くなろうなんて考えたら、そこで悲鳴を上げてる連中みたいになるからな。特に尚文は援護魔法が得意らしいから、それを勇者の力で更に強化させた魔法に俺は興味がある」


 錬の言葉で思い出しましたが、Lvリセットの作業はまだ続いています。

 豚共を出来る限り無視しながら俺達は話を続けているのですぞ。


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