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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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妹豚

「女ばっかりだな」

「どの方も美女ばかりですね……」

「わかってはいたけど、重犯罪者一派ってもしかして……」


 お義父さん達を出迎えた兵士が敬礼して応じます。


「ハ! 現在、勇者を騙った偽勇者タクトの一派をLvリセットの刑に処している最中です!」


 経緯に関しては俺達も多少は耳にしておりました。

 俺がタクトの取り巻きが暴れると言う話をした所、豚王がタクトの取り巻きをLvリセットさせると命じていたのですぞ。


 逃げられて、残党などになられると面倒なので、豚王が色々と陰謀を張り巡らせたとか。

 情報封鎖もしていて、タクトの取り巻き、タクトの関係者と思わしき者は順次、タクトの名を偽った手紙を各署に送りつけて呼びだしているそうですな。

 とりあえずここにいるのは昨夜、タクトの屋敷にいた連中だそうですぞ。


「しかし……随分といるんだな」

「可愛い女の子と見れば節操無く声を掛けて引き入れていたんじゃない?」

「正真正銘のハーレムですか……よく揃って罠に掛りましたね。Lv差で強引に暴れるかと思いましたが」


 と、樹が呟くと兵士が敬礼して説明しますぞ。


「ハ! Lvの高い者は薬が切れて目が覚める前にLvリセットを施しました。そちらが終わったので、現在はLvが100を超えていない者に施している状況です」

「それなら兵士でもどうにか出来るとかそう言う事?」

「暴れた場合、タクトの命は無く、更に家族にも被害が掛るとの説明をしております。そして現在、タクトがどうなっているかが、あちらで映し出されているので、抵抗も無くすんなりと刑は順次行われている状況です」


 と、兵士は龍刻の砂時計の近くに設置された道具で後宮で苦しみもがくタクトが映し出されている映像を指差しました。

 どうやら豚が抵抗すると、それだけでタクトが苦しむようになっている様ですぞ。

 逃げたら死ぬと何度も兵士が言っておりますな。


「これの主犯が僕達ですか……僕達、どうしようもないですね……」

「で、ですが、もしも勇者様達がいらっしゃらなければ、我々は偽者の勇者に国を牛耳られる所でした。一見酷い様に見えるかもしれませんが、奴等のした事はとても重く、少なくともフォーブレイや四聖教会の認識では許されません」


 ここはこの世界独自の感性ですな。

 勇者が神の様に扱われている世界だからこそ、偽者に対する扱いは重いのでしょう。

 三勇教などは嫌がらせに偽者のフリを頻繁にしていますがな。 


「話はわかったけど……完全に人質だね」

「だが、暴れられたら厄介なのも頷けるな」


 ここに来るまでかなり警備が厳重でしたから、奪還等も不可能の様ですぞ。

 まだ秘密裏の処刑であるので、この豚共の救いの手はきっと来ないでしょうな。

 来たら俺達に招集が掛るだけですぞ。

 ああ、そう言う点で俺達がここにいるのは意味があるのでしょうな。


「許可無き者が後宮に近付いただけでもタクトの命は無いと思え!」


 で、映像に映るタクトがもがき苦しみながら何度か死にかけていて、その度に豚が悲鳴を上げています。

 どうやら陰謀に気付いた奴がタクトの奪還に来て、失敗した様ですぞ。

 奴隷紋は絶対ですから、解除させる事も実質不可能な奴隷紋を施されたタクトを救うのは難しいでしょうな。


 豚王の命令なく近寄っただけでも死ぬとか当然の結果ですぞ。

 きっと豚王の命を狙っても同じなのでしょうな。

 で、順次豚が連行されてはLvリセットされ担架で搬送用の檻にぶちこまれております。


「ブ! ブブブブブ!」


 そんな中、黄土色っぽい豚が俺達、サクラちゃんとお義父さんを見て、縛られているのにも関わらず強引に鎖を引きちぎり、近寄って怒鳴り散らしながら殴りかかってきました。

 なんですかな? 死にたいのですかな?


 お義父さんが豚の拳を受け止めて逆手をとります。

 見事な動きでしたぞ。

 ただ、お義父さんは確か関節技すら攻撃の判定に入るので、そのギリギリのライン、地面に押さえつけて捕縛で豚を抑えつけますな。


「えー? サクラ何もしてないよー?」


 サクラちゃんは豚の言葉に首を傾げておりますぞ。

 こやつは一体何者なのでしょうか?


「私のお兄ちゃんに何をしたのよ! アンタ達が犯人なのはわかってるんだから! って……」

「ああ、コイツがタクトの妹か」

「そのようですね」


 ああ、コヤツなのですな。

 今、連行されていると言う事は、やはり犯罪に加担していたのでしょう。

 コイツにはサクラちゃんが怪我をする原因となったのですから俺が直々にぶち殺してやっても良いのですが、お義父さんが手を下すまでも無いと言っていたので我慢しますぞ。

 死んだ方がマシな未来が来るのですからな。

 最初の世界のお義父さんだったら楽に死なせないと言う感じですぞ。


「尚文さん、なんでこの方の台詞を復唱しているんですか?」

「元康くんはわからないだろうし」

「なるほどな」


 お義父さんの真心に感謝ですな。

 考えてみればお義父さんはシルトヴェルトに行った時も自然とやってくれました。

 元康、お義父さんの優しさに感極まる思いですぞ。


「なおふみの優しさにガエリオンメロメロなの!」

「面倒な事してるのね」

「えっと……わ、私がする?」


 ライバル、助手、モグラが各々反応しております。


「気にしなくて良いから」


 お義父さんが振り向いて答えております。

 ですが、問題はそこでは無いのですぞ。

 タクトの妹豚が再度暴れています。

 暴れれば暴れた分だけタクトがもがき苦しむ声が木霊するのがわからないのですかな?


「ブブブブ! ブヒーブヒー!」

「お兄ちゃんは強くて優しくてとても偉い七星勇者で発明家で正義の味方なんだから、罰せられるはずはないの! アンタ達が何かズルをしたに決まってるわって……」


 何を言っているのですかな?

 奴ほど傲慢で、欲望の塊のような奴は、いないと思いますぞ。

 お義父さんが優しく話し合いしようと何度も交渉しましたが、結局は叶わなかったのですからな。

 これで僅かでも話を聞いて共同戦線でも構築出来るのなら多少は考えてもやりますが、上手くいかないのが事実としてありますぞ。


 そもそも、最初の世界では世界征服を宣言して暴れ回りました。

 挙句、波を軽視していましたな。

 あの後は……勝ったのは覚えていますが実は記憶が若干おぼろげなのですぞ。


 シルトヴェルトに行った時はどうやら取り巻きの七星勇者に化けさせた狐が殺された報復で攻撃しようとしてきたようでしたな。

 まず前提として、七星勇者殺しを隠していた癖に何様のつもりですかな?


 次に四霊が復活して世界が大変、協力して四霊に挑もうと言うドサクサに強引に襲ってきたのですぞ。

 ここで多少なりとも話し合いに応じ、四霊退治に協力すれば寿命が多少は伸びたものを、まったく聞き入れませんからな。


 共通して馬鹿の一つ覚えの様に一斉射撃をしてくるのですぞ。

 武器を剥奪しようものなら返せの連呼、自分の正体を暴かれようものなら力技で俺達に襲いかかろうとする。

 全く救いの無い連中ですな。


「とりあえず君の質問に答えると、君のお兄さんは君が思っている程、強くて優しくて偉くて立派で正義の味方でも何でもないよ。俺達がしたのは君のお兄さんより偉い人の前で君のお兄さんの悪行を暴露しただけさ」


 お義父さんは、肩を軽く上げて呆れ気味に答えますぞ。


「ブヒ! ブヒブブブ!」

「ウソじゃないさ。証拠があるのがわからない? 君のお兄さんは自分の利益の為なら無関係な人を容易く殺せる人だ。挙句世界を守るために存在する、選ばれた勇者を殺した殺人鬼だよ」

「ブブ! ブブブブブ! ブブブ!」

「私がお兄ちゃんを助けてお前等をぶち殺す? 無理だよ、君のお兄さんが言っていたじゃないか。戦いとは質と量、そして戦略なんでしょ? 君も賛同していたじゃないか」


 まったくもってその通りですな。


「質は強さを含めて四聖勇者の俺達の方が上で、量は国を敵に回した君達には無く、戦略と言う点じゃ君のお兄さんの悪事を暴露した結果、こうして君達が罰せられるようにした俺達が勝っただけだよ。むしろ戦略でも何でも無く、君のお兄さんの悪事なんだよ。恨むならお兄さんを恨みなさい」


 そう告げるお義父さんには、呆れの表情が出ています。

 確かに、タクトと戦闘になり、捕らえる事に一枚噛みましたが、それ以降はタクト自らが行なった事ばかりが原因ですな。


「何も知らずにいた被害者だと答えるならまだ国が助けてくれるかもよ? ほら、そっちの人達みたいに」


 お義父さんが顔を向けた方向には、何やら豚共が喚いており、タクトの映像に向かって手に持っているゴミを投げつけてますな。

 まあ、その程度で許される物では無いですがな。


 その豚共を豚同士で殴り合っています。

 豚共の中でも争っていて、気色悪いですぞ。


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