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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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ダーツ

「親しまれているのは自覚しているんですね」

「まあ、人並みにはね。それに、本当は皆には戦って欲しくないんだ」


 優しさの中に罪悪感が見え隠れする様子でお義父さんが呟きます。


「この世界に来る前は戦いに憧れてたのに、実際に来たらこう思うなんて、俺も我が侭だね」

「いえ、気持ちはわかりますよ。僕も勇者と言われた時は、これから始まる大冒険に心が躍りましたからね」

「そうだな。VRという意味で俺は皆とは違うが、ゲームなどの分野に少しでも触れていたら多少は憧れるものだろう」


 これは俺もわかりますぞ。

 最初の頃は俺も冒険に次ぐ冒険、などと思っていましたからな。

 しかも、そこに豚との恋愛が混じっている辺り、壮絶な黒歴史ですぞ。


「俺も盾ではなく、一人でも武器を持って戦えたら良かったんだけど、誰かに頼るしか無いから、矛盾した感情だとは思うんだけどね」

「適材適所だ。尚文にはいつも助けてもらっている。尚文に出来ない事を俺や樹、元康、皆に任せれば良い」

「ですね。この世界は戦いの時代ですから、誰かが戦わないといけないんですし」

「うん、ありがとう」


 ふむふむ、錬と樹も偶には良い事を言いますな。


「話を戻すけど、サクラちゃんやウィンディアちゃん、ガエリオンちゃんも同じ気持ちで接してるよ」

「なのー……ガエリオンは諦めないなの!」

「はぁ……」


 ライバルの返答に助手は呆れ気味ですな。

 お義父さんをライバルに与える様な真似は、この元康が許しませんぞ!


「前回の周回でお義父さんは自身をロリコンじゃなかったのかと嘆いていましたな」

「ホント今までの周回の俺ってどんな人だったのか激しく謎なんだけど……」

「面倒見の良さ……父性と恋愛感情は別と言う事だな」

「尚文さんと恋愛できる人ってどんな方なんでしょうね」

「なんで俺がそんなにストライクゾーンが狭い認識になってるの?」


 お義父さんが首を傾げていますぞ。

 お姉さんとはずいぶんと仲よさげに見えましたな。

 記憶を紐解くと最初の世界のお義父さんはある程度、寛容に受け入れる約束をしていた様な空気があった気がしますぞ。


「まあ、異世界に来て最初の異性がアレだろ? どこかでブレーキが掛ってるとかじゃないのか?」

「いやいや、勇者ってだけで縁談とか来そうだし、俺も童貞だから一度は……」


 言い掛けてお義父さんはやめましたぞ。

 視線の先にはライバルが目を輝かせていましたからな。

 間違いなく狙っています。

 例え襲われても俺が阻止しますぞ。


「……しばらくは恋愛とかどうでも良いかな」

「お義父さんは清くて良い! のですぞ」

「非童貞の余裕? なんか悔しいんだけど」

「ははは! 童貞はステータスですぞ! 自らの純粋な所を魅せられない事になりますぞ!」

「酷い台詞だ……」

「処女ならわかりますが童貞を羨む様にはなりたくないですね」


 お義父さんが呆れ、錬と樹が嘆いていますな。

 この良さがわからないとは、まだまだ錬と樹も子供ですな。

 そもそも処女だけが特別扱いされるのが気に食いませんな。

 なんなら童貞雪なる新たな言葉を作っても良い位ですぞ。


「尚文、イミアはそう言うんじゃなくて、親戚に会えたとしても尚文……俺達と別れたくないって思ってるんだ」


 錬の言葉にモグラは何度も頷きましたぞ。


「そっか……別れたくない為に強くなりたいんだね。手に職を覚えたらおいて行かれるのが不安で」

「はい……」

「大丈夫だよ。それこそイミアちゃんが選んでくれれば良い。俺達は、イミアちゃんがいつでも好きな時に帰れる場所を用意してあげたいだけなんだ」


 モグラはそこで頬を赤くしてから静かに頷きました。


「裁縫かー……元康くんにお願いすれば出来なくはないし、料理は俺が担当してるしなぁ。鍛冶は錬がやる予定だしね」

「その話、まだ覚えていたのか! もう国にやらせれば良いだろ……」

「イミアちゃんはともかく、錬は最終的に必要になるんじゃない? 便利なスキルとか武器に内包されているみたいだし、鍛冶技能覚えたら国の鍛冶師より上手くなりそうじゃない」


 錬は物凄く面倒そうな顔をしていますな。


「完全に蚊帳の外に僕がされていますけどね」


 樹の事は論外ですな。

 弓でお義父さんが料理する食材でも取って来い、ですぞ。

 まあ俺が槍で先回りしますが。


「樹は武器を銃に変えたら良いんじゃない? 装備もガンマン風にさ」

「弓でも何でもないですが、携帯に便利ですし、連射速度的にも強くなれそうですよね。ですがそれとは別ですよ」

「命中の能力を何かに応用出来たら良いんだけどね」

「ダーツとかのギャンブラーはどうだ? ビリヤードとかも上手そうだぞ」

「どうだって……手に職でも何でもないですよ」

「ま、イミアと一緒に何が出来るか悩んで行ったらいいだろ」


 樹はモグラに視線を合わせてから優しげに対応していますぞ。


「そうですね。これから何が出来るか覚えて行きましょう」

「は、はい。国の人でも作れないくらい凄い、何かを作れるようになりたいです……」


 なんとも微笑ましい様な光景ですな。


「ところで会議……いつ頃になると思う?」

「夕方じゃないですか? なんて言うか、王がこんな好き勝手して国が回っているのが実に不思議ですけどね」

「勝手にメルロマルクに乗り込むのも手かもしれないけど、まずはやらなきゃいけない事も多いしねー……クラスアップの方は許可されているんだっけ?」


 お義父さんが女王に命じられて俺達の補佐を命じられたエクレアに尋ねますぞ。

 エクレアは俺達の専属の騎士と言う扱いになったそうですな。


「今確認した所だとそのようだ。ユキ殿達の能力を上げるために行ってはどうだ?」

「そうだね。じゃあサクラちゃん達のクラスアップを先にしておこう。メルティちゃんの所へ挨拶にも行きたかった所だし」


 こうしてお義父さんは婚約者の所へサクラちゃん達を迎えに行き、戻って参りました。

 特に騒動も無かったようですぞ。

 婚約者も今日の夕方には出発すると言うのを知ってか、出発の準備をすると女王の元へ戻ったとかなんとか。



 ユキちゃん達をお義父さんが迎えに行き、その足で俺達はフォーブレイの龍刻の砂時計へとやってきましたぞ。

 そういえばフォーブレイの龍刻の砂時計は宗教が管理しているのではなく、国の部署……ギルド等の総合施設なのですぞ。

 見た目、神殿みたいな場所ですな。


 場所はフォーブレイの王族が住む区画、中庭の先にある町の一つですぞ。

 説明が難しい場所ですな。

 庶民、貴族と区画分けされたフォーブレイ内の……貴族が住む場所にあると覚えておけば良さそうですぞ。


 クラスアップを含めて犯罪者のLvリセットの刑にも使われる施設ですからな。

 むしろ宗教が管理しているのがおかしいのではないですかな?

 で、その龍刻の砂時計へと続く道をフォーブレイの兵士が封鎖しておりました。


「止まれ! 現在龍刻の砂時計は……っと四聖勇者様方でしたか」

「封鎖中?」

「は! 現在、重犯罪者の一派を連行し、Lvリセットの刑に処している最中なので、一般冒険者が龍刻の砂時計に近付く事を禁じています」

「じゃあ俺達も?」

「いえ! 四聖勇者様方の使用はフォーブレイ王が許可を出しておりますので刑の最中でも割り込む事が可能です」


 犯罪者を裁いている最中のクラスアップですかな?

 少々嫌な感じがしますぞ。

 ましてやユキちゃん達のクラスアップなのですから、それこそ不快感は割増ですぞ!

 俺が若干嫌そうにしているのを察したお義父さんが唸りました。


「かといって、今しないと今日の夕方にはメルロマルクに行くんだし……我慢して行った方が最終的にはサクラちゃん達の為になるよ」

「わかりました! この元康、不愉快でも我慢しますぞ」

「よく察しましたね」

「付き合いも長くなってきたし、元康くんの美学とかを多少はね……」


 樹がお義父さんに感心していますぞ。

 俺とお義父さんは阿吽の呼吸で対応できるのですな。


「じゃあクラスアップをする為に通してもらおうか」

「わかりました。ではお通りください」


 兵士が道を開け、俺達はフォーブレイの龍刻の砂時計のある神殿へと行ったのですぞ。

 するとそこには大量の豚が手錠や足枷を付け、縛られて連行されておりました。

 こやつらが重犯罪者の一派ですかな?


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