カンニングペーパー
「それに……イミアちゃんを見て悪趣味なんて言う相手には相応しい罰だと思うしね」
「酷いなの!」
「うん……イミアちゃんは顔、悪くないし、可愛い方だと思う」
ライバルと助手がお義父さんの言葉に頷き、モグラは照れているようにもじもじとしていますぞ。
俺はモグラの基準はわかりませんな。
「そうなのか? 俺達はよくわからんが」
「ウィンディアさんは魔物の中で育ちましたからね。美的基準がずれているかもしれませんよ?」
「樹? 君までそういう事を言うのかな?」
「ヒィ! ち、違いますよ。本来の基準はどうなのかを僕達やウィンディアさんが分からないだけですって」
「わからない?」
助手は首を傾げていますぞ。
まったくわかりませんな。
「サクラわかんない」
「コ、コウもー」
「ユキもわかりませんわ」
「俺もわかりませんな」
「あのねー……まあ良いや。とりあえずサクラちゃんを怪我させて、言い訳を繰り返した挙句、イミアちゃんを見て悪趣味なんて言う奴等を思いやる必要は無いってだけだよ。それに、前回の俺が元康くんに提案した通りなら……俺達が直接手を下すまでも無いけど、暴れるだろうから結局は動く事になると思う」
フフフ……とお義父さんはフォーブレイ王が公務を開始するまで笑っていたのですぞ。
かなり怖かったですな。
割とそれからすぐに俺達を出迎えに兵士達がやってきました。
城の中に案内されて謁見の間へと向かいます。
最初の世界ではお義父さんが女王とタクトに関して話をしていたのが印象深いですな。
今は、まだ豚王は存命らしいですぞ。
ま、タクトが現れても返り討ちに出来る強さを俺達は持ち合わせているのでなーんも問題は無いですぞ。
なんて思いながら歩いて行くと、玉座の間に通されました。
「ぶふふふふ……良く来た、四聖勇者諸君。ワシがフォーブレイの王じゃ」
謎のファンファーレを兵士達が奏でた後に豚にしか見えない王が現れ、言いました。
いつ見ても肥え太った大豚ですな。
いや……豚よりも凄いですぞ。
蛙と蛇、そして豚を合わせた様な化け物と例えるのが適切でしょうか。
新手の合成獣と言われても違和感無いですぞ。
一番似ているキャラクターというと、俺が日本に居た頃、映画研究会に所属していた豚が見ていたSF映画に似た様な敵キャラが出て来た記憶があります。
錬と樹は王の姿を見て怪訝な顔をしておりますな。
お義父さんは貼り付けた様な、普通の表情をしております。
俺に向かってお義父さんが耳打ちをしてきました。
「あれって人間? 獣人? 波から出て来た魔物なんじゃないの?」
「わかりませんな? ただ、代々勇者に選定された者は王族を娶るなり、入るなりして血筋に組み込まれるそうですぞ」
「つまり代々の四聖勇者や七星勇者の血筋が凝縮した家系がフォーブレイの王族な訳か」
「アレがですか? まったく勇者らしくないですよ?」
「まて、俺達を参考にして考えてみろ……」
錬達と一緒に内緒話ですな。
最初の世界でお義父さんがお姉さんやフィーロたんとしていたのが羨ましかったので、なんとく楽しい気分になってきました。
「元康は顔が良いから除外かもしれないが、揃いも揃ってゲームオタクだ」
「事実ですが、嫌な言い方ですね……」
「そんな連中が異世界で活躍する夢を叶えないはずもなく、可愛らしい姫様とかをハーレム入りさせるとか?」
「ありえなくないですよ? 僕達の子供とかその末を考えたら実は、ああ言うのになってしまうのかも……」
「遺伝子に刻まれたゲーマーの性か?」
「小説とかで異世界召喚される主人公っていろんな活躍するけど、元康くんの話とかを聞くと善人とは言い難い所があるよね?」
「なるほど、そんな人種の末裔と考えると勇者ってロクデナシに見えますね」
「その勇者は俺達なんだが……」
泥沼ですな。
深く考えても碌な事になりません。
とは思いつつ、確かフォーブレイの血筋の特徴を何処かで聞いたのを思い出しました。
「確か勇者の子孫は非常に面食い、遊び好きであり、ハーレムを作り、他者を出し抜き、勝つことに執着する。引きこもりも多い。とか聞きますな。イケメンや美女も多いそうですぞ」
「美女とイケメンが多いのは現地の相手に依存するのかな?」
「オープンなイメージのデブオタクの血筋が多いんじゃないか?」
「勇者って……」
お義父さんを含めて錬と樹が嘆いていますぞ。
デブオタクに救われる世界は、絵にはなりませんな。
一概にそう言えない部分もあるんでしょうが。
ま、フォーブレイ王が肉欲に溺れた豚であるのは確かでしょうな。
「うん、隔世遺伝と思って片付けよう」
俺達は頷き合ってからそれぞれ自己紹介しますぞ。
まずは錬からですな。
「剣の勇者として召喚された天木錬だ」
ギョロリとフォーブレイの豚王に舐めるように見られて錬が鳥肌を立てております。
相変わらず人間離れしてますな。
「なんだ男か。ならもう少し低い方が好みだ」
「う……」
錬は女顔ですからな。フォーブレイ王の眼鏡に適いそうになったのでしょう。
しかしこの豚王、男もイケル様ですな。
穴ならなんでも良いのではないですかな?
それこそ昔の俺の様に!
自身を守る様に腕を組んで錬は数歩下がりました。
次は俺ですな!
「俺の名前は北村元康ですぞ! 愛の狩人ですぞ!」
「完全に何の勇者か説明するのを忘れている挙句、愛の狩人とか言っちゃってる!?」
「彼は槍の勇者です。少し頭のネジが飛んでいますので、お気になさらずお願いします」
お義父さんがツッコミ、樹が補足しました。
豚王は俺では無くユキちゃん達を凝視して舌舐めずりをしておりますな。
逆にユキちゃん、サクラちゃんも舌舐めずりをしてますぞ。
きっと美味しい魔物か何かと勘違いしているのでしょう。
尚、コウは若干脅えていますな。
美味しそうだけど食べたら怒られると思っているのでしょう。
「ねえナオフミ、なんか脂ぎってて美味しそうだね」
「しーっ……!」
「なの!」
ライバルもサクラちゃんに負けずに涎を垂らしていますな。
何にしても豚王にユキちゃん達を与えはしませんぞ!
「次は僕ですね。弓の勇者として召喚された川澄樹です」
ギロっと豚王は樹を見ますぞ。
なんか反応が俺や錬とは違いますな。
「ふむ……悪くない」
「何がですか!?」
錬よりも遥かに脅えながら樹は応じますぞ。
もはや身の危険を感じる次元だとばかりに錬と樹は手を取り合っております。
「えーっと……盾の勇者として召喚された岩谷尚文と申します。他、俺達の仲間をしてもらっている方達です」
お義父さんに呼ばれたみんなが一礼しますぞ。
「ぶふふふふ……よくぞメルロマルクの陰謀を跳ねのけてやって来た。四聖勇者の諸君。えー……っと、わかっていると思うが、この世界は波によって滅びに向かっておる」
豚王は部下にカンニングペーパーを開かせて朗読しました。
わかっていないのはお前の方なのではないですかな?
これはメルロマルクよりも頼りにならないですぞ。
「状況の方はメルロマルクの方で聞いたと思うが、念の為に確認を取りたい。勇者諸君はどのように事態を認識しておるんじゃ?」
「その……波という現象によって魔物が溢れて人々に襲いかかる。それに対処するのですよね? 実際にこの目で見ましたし、勇者四人戦いました」
「ああ、世界中に龍刻の砂時計があるから、それぞれの波に対応する必要がある」
「終わりの見えそうに無い作業ですが、その合間に自身を鍛えて波に挑むで良いんですよね?」
お義父さんに始まり、錬、樹と波に関する詳細を説明しました。
「……にも関わらずメルロマルクという国は自らの宗教を優先するあまり、盾の勇者を嵌めようとした」
「僕達は陰謀を跳ねのけて、世界一の大国であるフォーブレイへとやってきました。世界の為に勇者の力を使う事を僕達は望んでいます」
「ぶふふふふ……概ね、勇者達の認識に間違いは無いようじゃ。そう、フォーブレイを含めて各国は勇者達に波の対処をしてくれる事を祈っておる。滅びの波を鎮める事を」
一応は事態を理解しているのですな。
しかし、何故カンニングペーパーが?




