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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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四霊復活

「リベレイション・プロミネンスⅩ!」

「――!?」


 トドメとばかりに俺は応竜の中心に向けて疑似太陽を作り出し、焼き払いました。

 が――砂時計の10の数字に全く変化はありません。

 近くの雨雲へと逃げたかのように応竜が形作られます。


 もしやこの雨雲全てが応竜なのですかな?

 だとしたら限が無いですな。

 そう考えていると、雨雲は竜巻になって辺りを薙ぎ払う攻撃をしてきました。


「元康くん!」

「おや? お義父さん、どうしたのですかな?」

「時間稼ぎをしてくれたお陰で、どうにかメルロマルクの人達の避難は大分終わってきたんだけど、気付いてる?」

「何をですかな?」

「ここにいる応竜は一匹に過ぎない。他にも出現してて国中に飛び散り始めてるらしい!」

「なんですと!?」


 コイツも同時撃破系ですかな?

 となると鳳凰の様なペナルティは増殖かもしれません。

 いい加減にしてほしいですぞ。


「国中に飛び散った雨雲から滝の様な強酸の雨を降らしながら移動してる。で、元康くんがトドメを刺した事に合わせて竜巻になって各地の町を破壊してるんだ」

「つまり散り散りになった雨雲を一ヶ所に集めてから仕留めないといけないのですかな?」

「多分……ね。あの竜巻もペナルティなら……」


 雲を掴む様な話ですぞ。

 メルロマルク中に散った応竜の欠片を一つに……まるで竜帝という生き物をそのままトレースした様な性質を兼ね備えている様ですな。


「ただ、幸運なのは散る事の出来る範囲は一定みたいだよ。逃げ切った人達の証言だとね」

「致命傷を与える事は出来ているのですな」

「うん。だけど一ヶ所に集めてから……散らない様にして仕留めないといけない。さすがは最後の四霊……霊亀や鳳凰の比じゃない程の強さだ」

「しかも他の四霊と繋がっているのですな」

「多分」


 なんとも、これだけの条件に加えて応竜を最後に倒さねばならないとは。

 俺の能力だけでカバー出来る領域を超えているのではないですかな?


「それで何だけどさ、元康くん」

「なんですかな?」


 お義父さんが飛行船の残骸のある方を指差しますぞ。


「あそこにタクトから奪った七星武器がまだ漂っていて、今にも飛びだしそうになっているんだけど……」

「おお!」


 お義父さんから交渉の為に剥奪するだけに留める様に言われて抑えていた奴ですな。


「では一時撤退して武器に命令をしなくてはいけませんな」

「そうだね。避難も一応終わったし、ここは撤退して戦力を整えるべきだよ」

「わかりましたぞ! ユキちゃん、撤退をしますぞ!」

「了解しましたわ!」


 襲い来る応竜にブリューナクを放って俺達は一時撤退をしました。

 応竜も脅威となる俺達を深追いをせず、撤退すると即座に命を狩りに向かったのか移動を開始したのですぞ。


 とはいえ、まだ目視できる範囲におりますな……メルロマルクの草原ですからしょうがありませんぞ。

 残った飛行船は女王の命令で即座に撤退したので無事ではあったのですが、タクトが乗っていた方の飛行船は無残な残骸と化しております。

 その中でタクトが所持していた七星武器が淡い光を持ちながら漂っておりました。


 交渉用に漂わせていたのですが、これは流用……出来れば良いのですがな。

 お義父さんが盾をかざして武器に命じております。

 俺もやりますぞ。


「眷属器よ。この困難な状況に応じ、新たなる主に宿って力と成れ!」

「出来れば仲間に宿って欲しいですぞー」


 と、七星武器に告げると、七星武器は輝き、空高く舞い上がって飛んで行ってしまいましたぞ。

 そして光となって俺達の近くに飛んできました。


「キャ!」

「うわ!」


 振り返ると助手とパンダ獣人の手にそれぞれ鞭とツメが宿っていましたぞ。


「な、なんで私が?」


 助手はオロオロと手に持つ武器をライバルやキールに見せていますぞ。


「ウィンディアちゃんは魔物と相性が良いからじゃねえの?」

「で、でも……」

「お姉ちゃんが勇者になったの!」

「「「姐御! やりやしたね! これで大出世しました」」」


 今まで居たのですが、完全に空気であるパンダ獣人の配下が褒めたたえていますぞ。

 他の二つは所持者候補が見つからなかったのでしょうか?

 どうにかするには少々不安な状況ですぞ。


「とは言ってもねぇ。あんな化け物相手に戦えってのも無理な話じゃないかい?」


 パンダ獣人は装着されたツメを見つめてから応竜の方を見て言いますぞ。


「ちゃんとした強化方法をすれば俺達程じゃないけど強くなれるはずなんだ」

「状況に追いつけてないだけさ……ったく、ただの傭兵がいきなり勇者ってのもどうなんだい」

「可愛いから遠のいちゃったね」

「喧しい!」


 パンダ獣人にお義父さんは怒られていますぞ。

 そして、ユキちゃんの手に投擲具が握られていました。


「おお! ユキちゃんが選ばれたのですな」

「あまり使い方が分かりませんが、やるしかありませんわね」

「ユキちゃんって時々、羽を魔法で投げてたりしたからかな?」

「あら? 投げるのですの? なら要領は理解できますわ」


 そういえば、みどりが斧の勇者に選ばれた事がありましたな。

 フィロリアル様も資質さえあれば出来るのですぞ。

 ユキちゃんは意外と何でも出来る器用な子ですからな。

 なので後方援護である投擲具に抜擢されたのでしょう。

 しかし……槌はー……。


「サ、サクラちゃん?」


 婚約者が驚きの表情でサクラちゃんに声を掛けますぞ。


「んー?」


 サクラちゃんの手に槌が宿っていましたぞ。


「おお! すげー! サクラちゃんも勇者かー俺もなりたかった」

「武器のタイプからしてキールくんだと難しいかもね」

「投擲具は?」

「手先の器用さが必要なんじゃない? なんかユキちゃんかキールくんかどっちにするか眷属器も悩んでいた様に見えたし」

「そっかー……残念!」


 お義父さんの言葉にキールはがっくりと肩を落としましたぞ。


「サクラちゃんって結構、力技で相手に斬りかかる所とかあったから、どうにか使いこなせるのかもね」

「持って叩けばいいの?」

「今はね。余裕があったら練習しよう。まずはみんな、強化方法を学んで……これからの戦いは厳しくなるから」


 不幸中の幸いという奴ですな。

 もしかしたら七星武器の精霊も現状が困難な状況と理解して、一時的にでも使用者を選んだのかもしれませんな。

 どちらにしてもこれで戦力が増えましたぞ。


「ブー……」

「エレナさん、君がホッと胸をなで下ろしているのを俺が見てない訳ないからね。とりあえずメルティちゃんをサクラちゃんの代わりに守ってね」


 怠け豚は相変わらずですな。

 などと思っていると……。


 バキン!


 俺とお義父さんの心臓が跳ね上がりましたぞ。

 ギギギ……とお義父さんが俺の方を向きます。

 他に、七星武器に選ばれた者達が音に首を傾げますぞ。


「ねえ元康くん、確認したくないんだけどさ……さっき話した……封印への過負荷がこれで実証されたんじゃ」

「ですな。まさか、ドミノ倒しのように立て続けに封印が解けるとは思いもしませんでしたぞ」


 視界には……9の砂時計の数字が、出現しておりました。


「今は早く、メルロマルクの女王が指揮して退避させた飛行船の方へ行こう。あそこを作戦本部として流用するらしいから」

「わかりましたぞ。ユキちゃん! フィロリアル様達! 合流しますぞ」

「「「はーい!」」」


 こうして俺達は作戦本部である飛行船の方へと急行したのですぞ。



 作戦本部にはメルロマルクから持ち込まれた様々な器具が搬入されていましたぞ。

 女王は代表として地図に被害状況を書き込んでおりました。


「イワタニ様、キタムラ様、良くおいでなさいました。タクトの件、フォーブレイへと通達は済んでおります。が、フォーブレイの方でも麒麟の封印が解けたとあって、勇者の派遣を命じられた所です」

「国の被害状況は!?」

「メルロマルクの城と城下町は壊滅状態にありますが、死傷者は勇者様のお陰で少なく済んでおります」

「そう……所で、四霊の全てが復活してしまった状況、七星勇者の招集を出来ないの? 例えば、この国の七星とか」


 お義父さんの言葉に女王は深く目を瞑ってから応じますぞ。


「申し訳ありません。杖の七星勇者であるオルトクレイは長き平和な時を過ごした所為で杖に見限られております。派遣はさせますが戦力として数えるのは難しいかもしれません」

「信頼する事で強化方法が開けるけど……無理だろうね」

「タクトと同様に世界の為ならば剥奪して新たな所持者を募る事を推奨致します」


 女王が苦渋の選択をするように答えましたぞ。

 ま、そうならない方が不思議でしたからな。

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