自我の侵食
「くっ……あれを抑えるにはどうすればいいんだ!」
これ以上、戦わねばならない四霊が増えるのは厄介ですからな。
ここで抑えられるなら、抑えるべきでしょう。
殺せばまだ間に合うと思いたいですぞ。
「竜帝の不始末はガエリオンが拭うの!」
ライバルがお義父さんの流星盾から顔を出してドラゴンにブレスを放ちますぞ。
ただ、あまり効果的では無いようですがな。
「何故! 何故、こんなにも奴等は強い!」
「勇者の強さは過去の竜帝の力を宿しているお前なら知っているはずなの!」
「認めない! 過去の勇者共など我等よりも弱いはずなのだ! そう、一番強いのはタクトなのじゃ」
「なおふみ、あの竜帝は過去の波で戦った勇者の記憶の欠片を持ってないの!」
ライバルの言葉にお義父さんが察して頷きますぞ。
「そう……みたいだね。今までの経緯を見て、過去の四聖勇者を実際に見た記憶とかは所持していないんだろう。だからタクトに本当の四聖の強さを説明できていなかったんだ」
「なの!」
「ガエリオンちゃん、応竜の弱点とか……知ってる?」
「知らないの!」
役に立ちませんな。
まあ欠片がライバルの持っている分だけですからな。
「もっと! もっと力が必要なのじゃ! 世界を滅ぼす程の力を持って、タクトの居ない世界を消し去って――」
と、ドラゴンが咆哮をした所で、苦しむ様に全ての頭がのたうち回り始めましたぞ。
何があったのですかな?
「奴等を殺すな!? 世界を守る!? 変な考えを起こすでない! 我は、奴等を殺さねばなら――ぐ、ぐああああ!」
「い、一体何が!?」
「応竜に自我を乗っ取られてきてるの!」
「え?」
「幾ら竜帝でも応竜と意思の統合が出来てないなら抗えないの。すぐに応竜があの竜帝を完全に支配しちゃうの!」
「そんな!」
お義父さんが敵に同情の目を向けていますぞ。
タクトのドラゴンですぞ。同情など必要ないですな。
「今すぐにでもその力を分離させるんだ! じゃなきゃ暴走する!」
「我は、我が応竜を支配して――汝らを皆殺しにして――ぐあああああああ――」
と、ドラゴンが断末魔の様な咆哮をした後、目の色が完全に変わりましたぞ。
知性のあった目から、完全な獣の目に。
「――」
「サクッと仕留めますぞ!」
「う、うん。あれは……」
「もう自我はないの。手遅れなの」
俺は全ての頭にエイミングランサーⅩを放った後、ブリューナクⅩで消し飛ばしてやります。
が、応竜と化したドラゴンのバラバラの死体は雨雲に変わって空の雲と混ざり合いました。
「まだまだ俺はやりますぞ! リベレイション・ファイアストームⅩ!」
意識を集中させて、上空の雲を消し飛ばさんと俺は魔法を放ちます。
炎の嵐が雨雲に向けて伸びて行き、風穴を開けながら巻きこんで行きますぞ。
やがて全ての雨雲を散らしました。
上手く魔法が決まった感触がありますな。
現に10という砂時計の数字が点滅してますぞ。
応竜は思ったより弱いのではないのですかな?
いえ、度重なる強化によって簡単に勝てる程、俺が強くなっていたのですな。
そう思っていると散った雨雲が再度形作りました。
「――」
そこで再度、応竜が姿を現しました。
完全に姿が変わりましたな、龍と呼ぶべき姿をしたドラゴンですぞ。
あまりにも高い雄叫びで、俺達には超音波を放っているようにしか聞こえませんな。
「ブリューナクⅩ!」
続けざまに俺は応竜に向かってスキルを放ちます。
「――――!?」
大きな応竜の頭をこれで消し飛ばせば勝利は目前ですぞ。
ですが、頭を消し飛ばすと同時に、応竜の姿が雨雲に変化しますぞ。
しかも吹き飛ばしたはずの残った雲が群がりますぞ。
で、反撃とばかりに大きな竜巻に変化して俺達を吹き飛ばそうとしてきますぞ。
お義父さんの流星盾で強酸の雨を凌ぐ事は出来ますが、なんとも手ごたえの無い不気味な相手ですな。
ですが、竜巻に因って辺りは薙ぎ払われてしまいます。
これが……鳳凰の自爆に該当する攻撃ですかな?
「元康くん、応竜の倒し方を知ってる?」
「実際に戦った事はありません。ゲームでなら攻略法を知っていますが、今までの傾向からゲームとは違うでしょうな」
霊亀も鳳凰も異なりました。
きっと何かしらの条件が無いと倒せないでしょうな。
タクトのドラゴンが変身したヒドラの姿も初めて見ましたな。
アレは神話等にある、やまたのおろちとかですかな? 最初は頭が九つありましたがな。
「早く! 国民は避難を」
女王が門の前に立って、避難誘導をさせております。
俺達は城下町目掛けて強酸の水を雲の隙間から吐きつける応竜目掛けて攻撃を繰り広げております。
酸で城下町中に煙が立ち込めていますな。
足場にしている建物の屋根が黒く焦げて行きますぞ。
所々で建物が溶けて行きます。
今の所、一番効果のあった攻撃はリベレイション・ファイアストームですな。
俺は何度か唱えて応竜の雲を消し飛ばすのですが、それで稼げる時間も僅かですぞ。
お義父さんが救助活動にシフトして行きますぞ。
現在メルロマルクの城を含めた城下町は住民が一目散に逃げる状況となっています。
「あんなのどうやって倒すんだ!? いや、砂時計が点滅していた所を見るに一度倒した事になったのか? くっ……どうなのかわからない!」
「手応えはありましたぞ。すぐに散った雲が再生しましたが」
「霊亀みたいに猶予時間が無いとか?」
「ゲーム上では最強の四霊でしたからな。ありえなくはないですぞ」
「となると応竜を最後に倒せって事なのかな? うわ……霊亀と鳳凰だけでもきついのに!」
厳しい戦いになりそうですな。
お義父さんが一般人を避難させて、更に作戦を立てる時間を作る為、俺が応竜と戦っていた方が良いでしょうな。
「別の魔法を唱えますぞ」
ファイアストームを唱えた際には雨雲を消し飛ばせるので、避難も迅速に対処可能ですぞ。
ならば少々熱いでしょうが、避難するメルロマルクの国民を守る為にも持続する雨雲を飛ばす魔法を使うべきですな。
「リベレイション・プロミネンスⅩ!」
上空に太陽の如き炎を出現させて雨雲が近寄れない様にさせます。
煌々と照らす太陽に雨雲が晴れて行きますぞ。
「考えたね! みんな! 急いで避難を!」
という所で応竜本体が降り注いで来ました。
「――――!」
超音波が喧しいですな。
おや? Lvが低い者達が耳から血を出して倒れますぞ。
咆哮ですらダメージですかな?
大きさは……目算で30メートル以上はありますぞ。
「俺が戦って時間を稼ぎますぞ。お義父さん達は一般人の避難を優先するのですぞ」
「わかったよ! 元康くん、すぐに戻ってくるからね!」
そう言ってお義父さんは一刻も早く避難を終わらせる為に走り出しました。
少しでも被害を減らす為に急いでいるのですな。
「私も戦いますわ!」
「ユキちゃん達は援護を優先するのですぞ」
危険な事をフィロリアル様達にさせる訳にはいきませんからな。
ユキちゃんはコクリと頷いて、後方から援護魔法を唱える布陣を取りますぞ。
「グングニルⅩ! ブリューナクⅩ!」
続けざまに応竜に向けてスキルを放ちます。
おや? やはり槍に手応えがありますな。
今までの、全ての敵に共通していた事ですが、強くなりすぎて手応えが無いのとは大きく異なりますぞ。
ガツンと何度か頭を消し飛ばすのですが、その度に水に姿を変えて即座に再生しますぞ。
しかも少しでも気を抜くと雨雲を発生させますからな。
挙句、強酸の霧や靄まで出してきます。
果てには、霊亀が放つ電撃みたいなブレスを撃ってきました。
ユキちゃん達に当たらない様にするのは大変でしたぞ。
少々ダメージを受けてしまいました。
プロミネンスを避けずに複数の雨雲が集まっては応竜を形作ります。
アレが本体かと思いますぞ。
今、俺は魔法の炎で作った衣を羽織っていますぞ。
強酸の雨はこれで完全に無効化されていますな。
ユキちゃん達の方にも守るべく展開しています。
疑似的なお義父さんの流星盾ですな。
さて、応竜の討伐条件は何でしょうな?
それとも討伐条件を満たしていないのでしょうか?




