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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
567/1278

応竜

「え……?」

「―――」


 フレイムフロアⅩは衝撃で吹き飛ばされ、飛行船も砕けて行きます。


「い、一体何が!? くっ……みんな! 急いで避難するんだ!」


 崩落する飛行船内でお義父さんの指示にユキちゃん達がフィロリアル形態になり、みんなを背中に乗せて急いで避難を致します。

 俺よりも皆が避難するのが先ですぞ。

 やがて皆の避難が終わり、お義父さんが俺に手を伸ばしております。


「早く! 元康くんも!」

「わかってますぞ!」


 まるで昇り竜の如く、タクトのドラゴンは空へと飛んで行き……雨雲を作り出してその中に姿を隠しました。

 その時の姿は……俺にはゲームで見たことのある応竜に見えました。



「何が起こったんだ?」


 避難が済み、残されたもう片方の飛行船の近くに着地した俺達は空を見上げますぞ。


「な、なんだ!? タクト様達はどうなったのだ!」


 飛行船の乗組員は俺達に向かって緊迫した様子で問い詰めてきますぞ。

 お義父さんはその連中を冷たい目で見つめます。


「貴方達の陰謀を四聖勇者の二方は見抜き、潰したのですよ」


 そこにやってきたのは乗組員の背中に手を添え、いつでも魔法を放てる準備を済ませた女王ですな。

 他にもシルトヴェルトの代表や、婚約者とサクラちゃんがいますぞ。


「ば、馬鹿な! タクト様が敗れる!? 冗談も大概にし――」


 そこに影が現れ、乗組員の一人を見せしめに短剣で仕留めました。

 なるほど、女王やシルトヴェルトは影を放っていたのですな。

 つまり影は俺達がタクトに攻撃された所を見ていたのでしょう。


「女王、そしてシルトヴェルトの者。鞭の勇者……いえ、勇者を騙るタクトが盾の勇者殿と槍の勇者殿が言っていた通り、攻撃をしてきました」


 どうやらこの影は以前見た豚ではなく、男の様ですぞ。

 影がこれまでの経緯を説明していますな。

 タクトが攻撃してきた事、死んだタクトから四つもの七星武器が飛んでいった事、タクトの配下の瀕死の竜帝が巨大化して飛行船が崩れた事、それ等を包み隠さず全て話しました。


「思った結果にならなかったからと言って尻尾を出すとは愚かな……」

「ヒィ!?」


 乗組員が脅え始めましたな。


「ナオフミー、こっちにいる敵は抑えたよー」

「今後の事を考えて、勇者殺しの現場を見せない様にとかしてたんだろうけど……ってそうじゃなくて」

「一体……何が起こったのですか?」


 ポツポツと空から雨が降り始めました。

 が、その雨に、メルロマルクの城下町にいる全ての人々が驚愕の声を出しました。

 ジュッと……雨が当たった所から煙が立ち込め始めたのです。


「――!」


 雲の隙間から龍を思わせるシルエットが見え隠れしますぞ。

 そして雨が降り注ぎ始めました。


「ギャアアアアアア!」


 雨を浴びたシルトヴェルトの兵士が煙を出しながら転げ回ります。

 降って来た雨の当たった箇所が溶解しており、見るに耐えない状態になっておりますぞ。

 こ、これは……!


「アシッドレイン!?」

「強酸の雨を降らす魔法……だっけ?」

「はい。ですが、こんなにも威力の高いアシッドレインは見たことがありません」

「それも問題だけど、元康くん、君も確認した?」

「ええ、見ましたぞ」


 俺の視界に浮かぶ、三つめの青い砂時計ですな。

 数字とあの姿から間違いなく――応竜ですぞ。


「あれは応竜……最後の四霊ですぞ」

「そんな……四霊の話は元康くんから聞いていたけど、タクトのドラゴンが後先考えずに封印を解いたって言うのか!?」


 確か応竜は封印された地が不明な『竜帝の中に封印された』でしたな。

 錬や樹とは別々のゲーム知識でお義父さんを混乱させたのを覚えていますぞ。


 ですが、俺はタクト諸共ドラゴンの息の根も止めるつもりでしたし、最初の世界でも前回の世界でもこんな結末にはならなかったのですぞ。

 何が違ったのですかな?

 わかりませんぞ。


「前回はタクトを先に仕留めましたが、こんな事にはなりませんでしたぞ?」

「元康くんの話じゃ前回は使わなかった……いや、出来なかったんじゃないかな?」

「なるほど、最近手に入れたモノだったのですな?」

「もしくは……応竜にも正しい封印の解き方とかがあって、その手順を飛ばすのに必要な何かをした」


 それはありえますな。

 霊亀や鳳凰には自然に復活する以外に封印を解く方法があるのですぞ。

 俺や錬、樹がやった様な事ですな。

 それが応竜にもあったと考えるのは不自然ではありません。

 などと考えていると他に……と、お義父さんはポツリと呟きましたぞ。


「もしも……最悪の可能性だとすると、残された封印が勝手に解けちゃうかもしれない」

「どういう事ですかな?」

「四霊自体がリンクしてると他の四霊に力が注がれると仮定した場合、封印に負荷が掛っている事になる。そんな状態ならタクトのドラゴンも最後の一押しを自力で出来たのかも……ってね」


 なんと、ありえない話では無いですぞ。

 これは重要な項目ですな。

 タクトを仕留める場合、先にドラゴンを殺さねば応竜の封印を解いてしまうかもしれないのですな。


「急いで国民の避難を! イワタニ様とキタムラ様は応竜への対処をお願い致します」

「わかった! けど……」


 女王が急いで国に向けて指示を出します。

 婚約者と共に魔法で雨に当たらない様に水の膜を出している様ですな。

 お義父さんは暗雲を見つめて困った様に表情を曇らせますぞ。

 そこでドラゴンの雄叫びが聞こえてきて、複数の頭を生やしたドラゴンが落ちてきました。


「死ね! タクトの仇じゃ!」

「うわ!」


 ドラゴンの全ての頭が俺達に向けてブレスを放ちました。

 見た感じでは高圧縮した激流の如き攻撃ですな。

 お義父さんが流星盾を再展開させて、ドラゴンのブレスを全て受け止めますぞ。


「ぎゃあああああああ!」


 弾かれたブレスを受けたフォーブレイの兵士が、溶けて行きますな。

 どうやら強酸の激流みたいですぞ。

 というか、頭が多いですな。

 ひーふーみー……全部で九つの頭を持っている様ですぞ。

 ヒドラタイプのドラゴンですかな?


「まだ突破出来んというのか! もっと! もっと我に力を寄越すのじゃ!」


 あのドラゴンは誰と話をしているのですかな?

 ですが、さっさと仕留めた方が良さそうですな!

 あの頭が邪魔ですな。サクッと本気で仕留めますぞ。


「お義父さん、援護魔法をお願いしますぞ」

「え!? うん。わかったよ。ツヴァイト・オーラⅩ!」


 ツヴァイトと言えど、強化すればそれなりの性能になりますからな。

 そして範囲こそ広いですが、殺傷力に難のあるこのスキルの威力を底上げするには十分でしょう。


「エイミングランサーⅩ!」


 全ての頭と胴体をロックオンしてぶち抜いてやりますぞ。


「ぐはぁ!? まだじゃ、我はこんな所で敗れてはならん! もっと、奴等に報いを受けさせる力を!」


 おや?

 エイミングランサーでぶち抜いても生きているとはタフですな。

 弾けた水がスライムの様にウゴウゴと動いて本体に戻り、頭が再生しましたぞ。

 しかも頭が増えましたぞ。


「喰らえ!」


 ドラゴンが俺達に向けて……最初の世界でライバルが放っていた変わった光のブレスを一斉に放ってきましたぞ。

 アレは沈黙の効果があるとかお義父さんが教えてくれた覚えがありますな。


「――!?」


 お義父さんが喉に手を当てていますぞ。

 沈黙ですな。俺は槍から沈黙の治療をする薬を取り出して飲みましたぞ。

 しかし、耐性面さえカバーしている俺を状態異常にするとは、余波で中々優秀なのではないですかな?

 お義父さんも薬を服用して即座に対応しますぞ。


 この光のブレスは、どうやら直接浴びなくても効果があるのでしょう。

 近くに居る全ての者達が、声が出ない事を呻きます。

 これは俺の魔法が唸りますぞ。


「アル・リベレイション・アンチサイレンスフレイムⅩ!」


 火属性の範囲沈黙治療魔法ですぞ。念の為に高威力にしましょう。

 これで、周りの者達の治療が完了しましたぞ。

 ま、光のブレス自体も威力は高い様ですが、俺やお義父さんを倒すには流星盾を突破しないと無理ですぞ。

 で、お義父さんの流星盾を貫く事は出来ないようですが、辺りのフォーブレイ兵はてんやわんやで逃げていますぞ。


「エアストシールドⅩ! セカンドシールドⅩ!」


 やらなくても良いのに……お義父さんはドラゴンの攻撃を飛び火しない様に守っております。

 なんと心優しい事でしょう。

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