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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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水泡に帰す

「まず君が鞭の勇者なのに四つも武器を所持している事は……譲歩しよう。他の七星勇者は既に処分済みみたいだしね」

「返せ泥棒! 俺の武器を奪った盗人!」

「いや、先に奪おうとして来たのはそっちでしょ? それに四つも七星の武器を持っている時点で最低でも三人も殺しているじゃないか。俺が泥棒なら君は強盗殺人犯だよ!」

「うるさい! 俺は選ばれた存在なんだ!」


 残念ですな。

 選ばれた存在はお義父さんですぞ。

 フィーロたんの親にして、伝説の盾の勇者。

 お義父さん以上に世界に愛されし存在はいませんぞ。


「君が転生者だという話も聞いている。自分に特別意識を持っているのは理解できるけど、今はそんな無駄な事を言い合っている余裕は無いんだ」

「な、何故それを!? さてはお前もアイツ等と同じだな!」


 アイツ等?

 こやつは何を言っているのですかな?

 お義父さんも不思議そうに俺を見ました。

 残念ながらわからない、と俺は首を横に振りました。


「何の事? アイツ等って誰?」

「とぼけやがって! 皆、コイツを蜂の巣にするんだ!」


 タクトが腕を振り上げると、豚共が銃器を俺達に向けますぞ。


「流星盾Ⅹ! 話を聞いて!」


 弾丸の雨が俺達に向かって飛んできますが、お義父さんの流星盾によって全て弾かれますぞ。


「なに!? だがこの程度!」


 タクトが配下の豚共に視線を向けますぞ。

 同時に、豚共から銃器を受け取って撃とうとしていますな。


「タクトの武器を返せ! それはタクトが持つ事で意味を持つ物。汝らの様な矮小な勇者共が持つことこそが愚かな事なのだ!」

「そうじゃ! 人の物を取ったら泥棒じゃぞ!」

「フィロリアルなんて連れて気持ち悪い! 絶対に許さない! この泥棒!」

「泥棒泥棒って……君達はそれしか言えないのか! 大体タクトが他の勇者の武器を持っていると知っている時点で君達にそんな事を言う資格は無いよ!」


 タクトの豚共の一番強い連中の攻撃ならお義父さんの防御を突破出来ると思っているのですかな?

 それは不可能ですぞ。

 貴様等の豆鉄砲などお義父さんに刺さりもしません。


 そして最後の奴、生かしてはおけませんな。

 コウやユキちゃんが傷付いたらどうしてくれるのですかな?

 お前程度の命をどれだけ積もうと取り戻せない心の傷になってしまいますぞ。


「返せこの野郎! よくも俺から武器を奪ったな! それは俺の力だ!」

「だーかーら! 君の力じゃないでしょ。そもそも世界がこんな時に争って何の意味があるんだ!」

「うるさい! 俺が正しいんだこの泥棒野郎! 俺が最強なんだよ!」

「ちょ! 君がそれを言うの!? 他の勇者の武器を奪って、それを隠して独占して俺が正しい? 君は正気か!?」


 タクトの豚共が各々、お義父さんの流星盾に攻撃しますぞ。

 しかし銃器から発射された弾は流星盾の結界に阻まれてパラパラと落ちていきます。


「馬鹿な! Lv200以上の俺の仲間達の鉛玉と攻撃を耐えきる……だと! その力、絶対に奪って見せる!」

「奪って見せるじゃないでしょ! とにかく、協力して霊亀と鳳凰に挑まないと、世界中の人達が大変な事に」

「それは最強の俺が全て解決してやるって言ってんだろ! だから返せ! 武器も寄越せ! この世界は俺のモノなんだからよ! 全ての元凶、四聖勇者!」

「そうじゃ! 世界はタクトの物なのじゃ!」

「何なんだこの強盗殺人集団は!?」


 ガツンガツンとタクトも一緒にお義父さんに向かって切りつけようとしていますぞ。

 こやつ等程、愚か、という言葉が似合う者もいないでしょうな。

 知性という概念から正反対の所に居そうな程、愚かですぞ。


「みんな! この防御壁を突破すれば奴の武器が奪える。そうすれば俺達の勝利だ!」

「「「ブー!」」」


 さすがのお義父さんも半眼でイラついたように眉を寄せています。

 防御壁を突破出来ると良いですな。

 しかし、突破した所でお義父さんの武器を奪うのは不可能ですぞ。


「世界は俺のモノって……本当に元康くんの言う通りの人物だったよ。ダメだこりゃ……」

「話になりませんな」

「兄ちゃん、霊亀とかよりコイツ等の方がやべぇんじゃねーか? 世界征服とか本気で考えてそうだぞ」

「子供のままでかくなった様な連中だねぇ……周りに注意する奴はいなかったのかねぇ」

「注意したらきっと殺されたのですわ。愚かな統治者とはそういうモノだとメルティ様が言っていましたわ」


 ユキちゃん及び、キールとパンダ獣人の分析に同意しますぞ。

 大体そんな感じですな。

 きっと注意した者は皆殺しにしてきたのでしょう。

 キールの言葉通り、下手な霊亀よりも厄介な存在ですぞ。


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!」


 などと叫びながらタクトがお義父さんの流星盾を必死に攻撃しています。

 ビクともしていませんな。


「何がうぉおおだよ……。で、どうする? 既に攻撃を受けている訳だけど」

「では、ここは俺が」


 俺はタクトの前で腕を水平にし、左足を曲げて、右足だけで飛びますぞ。

 フィロリアル様になって、跳ねている様なイメージのポーズですな。

 そして大きな声で言いました。


「タクト、今どんな気持ちですかな? 相手の武器を奪おうとして自分が奪われるのは、どんな気持ちですかな?」

「ちょ――」


 お義父さんが俺の言葉に絶句してますぞ。


「あー! なんか楽しそう。コウも混ぜてー」

「良いですぞ。一緒にやりますぞ」


 コウも俺の隣で、顔を真っ赤にさせたタクトに向けて言いますぞ。


「ねえどんな気持ちー? コウ知りたーい! 教えてー!」

「ぶ! やば……堪えられない! わははははは!」


 お義父さんが吹いて、腹を抱えておりますな。

 俺はお義父さんの笑顔の為に続けますぞ。


「ふ・ざ・け・や・が・ってぇええええええええええええええええええええええええええええ!」


 頭から煙を出したタクトの怒声が辺りに響き渡りましたぞ。

 頃合いですな。


「さーて、良い顔を見ましたな。ではお前等はあの世へ行くのですぞ」

「え? 元康くんそれって――」


 ふざけながらも詠唱を終え、俺は魔法を使いますぞ。

 今度は下手に逃げられない様に一発で皆殺しにしてやりますぞ。


「リベレイション・フレイムフロアⅩ!」


 本気の本気、お義父さんの結界以外で生き残れるものが存在しない辺りを炎の空間で閉じ込める魔法ですぞ。

 本来は火の魔法の威力を上げる魔法ですが、高密度に展開させると、さながらオーブン焼きの様な攻撃が可能な魔法に早変わり。


 範囲はこの部屋。

 指定した場所の全てを焼き焦がす一撃となりますぞ。

 出来る限り、飛行船をリサイクル出来るように処置しつつ、今度こそ豚共を逃がさない様にしました。


「な、ぎゃあああああああ――」


 一瞬にして部屋が炎に包まれ、タクトは目の前で蒸発しました。

 後顧の憂いが晴れましたな。

 後は女王とシルトヴェルトの代表が上手く動けばシルドフリーデンの代表も仕留めたので、戦争は回避できるでしょう。

 悪い状況の中、ここだけは上手くいきましたな。


「あー……やりすぎかとは思うけど、高Lvで銃器をぶっ放してきた相手だし正当防衛は通じると思う」


 お義父さんが諦めたかのように燃え盛る空間を見つめておりますぞ。


「というか……俺や元康くんを倒せば武器が手に入るボスか何かと勘違いしてたんじゃないかな? ほら、アクションゲームであるでしょ? って、元康くんはわからないか」

「ゲームの内容はわかりませんが、お義父さんの言っている意味はわかりますぞ。まったくその通りですな」

「こんな時でさえ相手の武器を奪うとか、何を考えてるんだろう。挙句奪う前提で話をするわ、逆に奪われたら泥棒呼ばわりするわ……元康くんの話の通り碌な人じゃなかったね」

「手段も馬鹿の一つ覚えですぞ。呼びだして一斉射撃と一緒に必殺スキルですな」


 だから先に手段を封じたのですがな。

 そうしたら一斉射撃の後に奪おうとしていたようですが。


「それは……元康くんみたいにループしてる訳じゃないんだからしょうがないんじゃない? 状況が違ったら手段を変えてくると思うけど」


 お義父さんが深く溜息をしました。

 そうですかなー? 今まで全部同じパターンですぞ。

 きっと次があっても同じ攻撃をしてくると思いますぞ。

 ならば、次があったらこちらから仕掛けるのも悪くないですな。


「交渉次第じゃ、協力してもらえると思ったんだけどなぁ……」

「無理ですな。タクトは自分以外の強い奴を認めないと思いますぞ。強い奴をどうにかして倒すことしか頭にないのでしょう」

「あの反応から否定は出来ない……ん?」


 お義父さんが燃え盛る室内で目を凝らしますぞ。

 俺も見つめますぞ。

 するとそこに一つの影が揺らめいて近づいてきますぞ。


「ああ……馬鹿な……我等の夢が……タクトが……一瞬で水泡に帰し……た」


 それはタクトの飼っていたドラゴンだと思いますぞ。


「竜帝なの!」


 ライバルがお義父さんの後ろで威嚇の体勢に入りますぞ。

 助手はライバルに寄り添って脅えていますぞ。

 そうですな。この高密度の炎の中で生きていること自体奇跡ですな。


「まだ生きていたのですかな? さっさとあの世へ行け、ですぞ!」


 お前を仕留める事で限界突破の儀式が出来るようになるのですから、さっさと死ぬのですぞ。

 俺が槍に力を込めて狙いを定めようとしたその時。

 タクトのドラゴンの造詣が徐々に膨れ上がって行くのを俺達は見ましたぞ。


「に、兄ちゃん! すげー威圧感があるぞ」

「そうだねぇ。今までに無いほどの圧迫感がアイツから出てくる。早く仕留めるんだよ!」


 キールとパンダ獣人が焦った様に呟きます。


「もう……知った事か! 我等とタクトの夢を潰した汝等に――汝等を殺すことさえ……出来れば手段など問おうものか!」

「ブリューナクⅩ!」


 俺はタクトのドラゴンに向けてトドメのブリューナクを放ちました。

 ですが、仕留める直前、タクトのドラゴンが見る見る膨らんで行き、俺とお義父さんの耳にバキンという聞き覚えのある音が聞こえました。


 視界に――10という文字の刻まれた青い砂時計が出現しましたぞ。

※感想欄の指摘に対しての返答です。

元康はタクト配下の中に見える人物が混じっています。

外見が人から外れている者ですね。

具体的には竜帝、グリフィン、九尾、獣人ですね。

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