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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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裁縫

「行商の下準備は着実に進んでいるよ。後は馬車の調達である程度は軌道に乗るかなー……今の所は盾の技能で薬を作っているけど、自作となると道具も必要になるかも」

「技能で作った物は品質が均一化されますからな。高品質の物を作る場合は自作した方が良いですぞ」


 シルトヴェルトの使者が去った後、俺はお義父さんと行商する事に関して話し合いを続けました。


「まあ、売れるモノなら何でも売れれば良いんだけどー……」

「武具の類も作れなくは無いのですぞ」

「そうなんだ?」

「ただ、レシピを手に入れないといけませんし、制作コストと客の懐具合、欲する品を考えないといけない、と未来のお義父さんは言っていたのを覚えてますぞ」


 錬が作った武器を行商で売り出すとか話をしていたのを覚えております。

 しかし、こう言った品は行商では売れる代物では無いそうですぞ。

 隣町の武器屋に納品して売っていたのを覚えております。


「じゃあ薬以外で何が売れていたの?」

「そうですなー……食料を売っていたと思いますぞ」

「肉とか野菜とかを保存食にして売るとか?」

「未来のお義父さんの領地では食べ物がすぐに実る植物がありましたからな」

「うわぁ……さすが異世界だね。そんな便利な物があったんだ?」

「ブー?」

「そうですぞ。キールはクレープの木というのをとても大事にしていましたな」

「何それ……パンの木みたいなもの? どっちにしても凄いものがあるね」

「ブブブ?」

「クレープはこの世界に無いんだ? えっと、クレープと言うのは俺達の世界にあるお菓子の名前でね――」


 お義父さんがキールにクレープに関して話しておりますぞ。

 実物を見るのが一番早そうですが、材料がありませんからな。


「他にお義父さんは家になる植物を良く使ってましたぞ」

「その便利植物は何処で手に入ったか元康くんは覚えがないの?」

「んー……心当たりがあるような無い様な気がしますな」

「いや……どっち?」


 赤豚に騙されていると知らず、霊亀に負けた事実を受け入れらなかった俺が、世界を放浪していた頃。

 メルロマルク南西の村の方で、槍の勇者が起こした植物の災害をお義父さんが解決させたと耳にしました。

 ゲームではアレで飢饉が解決したとの話でしたが……おそらくは、何か問題があったのでしょう。


 俺の知るゲーム知識はこの世界で殆ど一方の側面しか役に立っておりませんでした。

 武器の強化方法然り、他のイベントも然り……霊亀もそうですな。

 となると、何処で手に入るかわからなくもないですな。


「思い当たる事がないわけではないのですが、推測の域を出ませんな」

「そう……まあ、余裕があったら探しに行けば良いんじゃないかな?」

「ですな。何分、使い方を誤ると危険だと未来のお義父さんは言っていましたぞ」

「ふーん……じゃあ気をつけないとね。そろそろ行こうか」


 俺達は酒場を後にしてユキちゃん達を連れて歩きますぞ。

 今夜辺りにユキちゃんとコウが天使の姿に成りますな。

 となるとまた服を確保する必要がありますぞ。


「元康くんはこの後何をする予定?」

「ユキちゃん達が天使の姿に変身できるようになるので服を調達するために機材を揃えますぞ」


 確か……魔物商が発注してくださったのでしたな。

 だとすれば再度、尋ねに行きますかな?

 このままではユキちゃん達が裸で過ごす事に成りますぞ。


「服作りかー……元康くんは服も作れるなんて凄いね」

「お義父さんの料理の腕前程ではありませんぞ」

「別にそこまで得意って程じゃないけど……」


 相変わらず謙遜が上手ですな。

 そうですぞ。お義父さんは料理人として行商をするという手もありますな。

 まあ、これはおいておいて……確かキールも行商時には衣装を着ていた覚えがありますぞ。


「ついでにキールの服も作っておきますぞ。お義父さん、キールのサイズを後で教えて欲しいです」

「え? まあ……良いけど」


 サイズに関して良くわかりませんか、お義父さんに測ってもらえば問題ありませんな。


「ブブ!?」

「あれ? 話してなかったっけ? キールくんが俺に代わって馬車での行商で物を売るんだよ?」

「ブブブブブブ!」


 キールは何やら嫌だと言うかのように首を振ってますな。


「大丈夫だよ。キールくんは物怖じしないし、俺の代わりに物を売るだけの簡単な仕事だから……困ったら俺に頼ってくれればコツは教えるから安心して」

「ブブブ……」


 渋々と言った様子でキールは頷いておりますな。

 ぐー……っとユキちゃん達がお腹を鳴らしておりますぞ。


「服は元康くんが作るとなると生地を何処かで買わないとね」

「ユキちゃん達の服は特別な素材で作らねばいけないのですぞ」

「そうなの?」

「ユキちゃん達は変身が出来るので、それに合わせた、変身する事によって服も形状を変えるのですぞ」

「不思議な生地があるんだね。どうやって作るのかわかる?」

「はい。元々は獣人化出来る亜人が使う、魔力を糸にする機材が必要なのですぞ。それで出来た糸を生地にする工程を費やしてやっと服に加工できるのですぞ」

「かなりお金が掛りそうだねー……」

「問題は無いですぞ」


 考えてみればシルトヴェルトの方へ行けば簡単に調達できますな。

 あっちが本場ですからな。

 今夜、ユキちゃん達を連れてシルトヴェルトで該当する店に行って糸を紡がせてもらいましょう。


「キールくんも同じ方法で服を作って貰う?」

「ブブブブ!」


 キールが何か嫌がるように顔を横に振ってますぞ。

 まだ成長期ですからな、服のサイズが変更されたら困るのではないですかな?

 おや? そう言えばフィロリアル様達は一度定まった外見から成長は致しませんから、魔力で作られた服が小さくなってきれなくなると言う話は聞きませんぞ。


「キールは徐々に成長しますからな。今は普通の生地で服を作った方がいいと思いますぞ」

「わかったよ。じゃあ、元康くんに任せるね」

「任されましたぞ」


 ユキちゃん達に似合う服は前回も作りましたからな、練習も兼ねてキールの商売用のメイド服程度、容易く作って見せますぞ。

 と、俺達はメルロマルクの洋裁屋に顔を出し、キールのサイズを測ってから生地を購入して城下町から移動を開始しましたぞ。

 俺はユキちゃんの背中に乗り、後をコウが付いてきます。

 お義父さんはキールと共にサクラちゃんの背に乗っていますぞ。


「じゃあ、またね」

「またですぞ」


 数日中にはシルトヴェルトの使者が商業通行手形を発行してくださいますから、それまでの間、俺は馬車等の調達をするべきですな。

 馬車はどのような物を用意すべきですかな。

 二ヶ月以上、行商で時間を稼ぐ必要がありますからな……。


 フィロリアル様達は力持ちですから、頑丈で重たい馬車でも問題はありませんぞ。

 ですが、快適性は重要ですからな。

 お義父さん達も馬車の旅に慣れて頂けるように……普通の馬車で良いですかな。


 盗賊狩りすら出来ないのは面倒だと思いますぞ。

 そう思いながらユキちゃんに乗って素早く移動し、道行く魔物でユキちゃん達の飢えを凌ぎました。



「さてと……」


 早めに宿を取り俺はユキちゃん達のいる宿備え付けの馬小屋でキールの服を作りましたぞ。


「クエ?」


 ユキちゃんとコウが俺が捨てた生地の切れ端を摘まんで二人ともじゃれて遊んでおりますな。

 微笑ましい光景ですぞ。


「そろそろですな」


 俺は遊んでいるユキちゃんとコウを見つめてお願いしますぞ。


「フィロリアル様達、そろそろ天使の姿におなりください」


 ユキちゃんとコウが淡い光を放ちながら天使の姿に変わって行きますぞ。

 その姿は、前回の周回でも見た通りの姿をしております。

 ユキちゃんは銀色にも見える白髪の天使ですな。高貴さが滲み出ておりますぞ。

 コウは黄色い髪で、やんちゃっぽい感じですな。


「元康様ー」

「キタムラー! あそぼー!」

「そうですなー……まずは用意した仮の寝巻きを着て欲しいですぞ」

「わかりましたわ!」

「はーい!」

「変身すると破けてしまうので注意してほしいですぞ」


 まだ夜が更けておりませんし、ユキちゃん達をポータルで連れていくにしても宿の部屋に戻って寝たふりをしてからの方が良いですな。


「では何をして遊びますかな?」

「えっとー……肩車してー」

「良いですぞ」

「あ、コウだけずるいですわ!」

「ユキちゃんもやって上げますぞ」


 こうして俺はユキちゃん達と夜が更けるまで、相手をしたのですぞ。

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