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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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差異

 お義父さんと別れてから俺はそれとなく城下町を抜けて、近隣の町の方へ歩いて行きましたぞ。

 ユキちゃん達は元気よく鳴いておりますな。

 ここからしばらくご飯の調達が重要ですな。

 普段なら最初は柔らかめの食事を与え、急激にLvを上げさせてからがっつりご飯を上げるのですぞ。


 胃に穴が開く位食べようとする本能……空腹を訴えるフィロリアル様達はそれで満足致します。

 ですが、今は無理をさせる訳には行きませんな。

 近隣の村で柔らかな食事を調達し、少しずつ与えて飢えを我慢して頂きますぞ。


「「ピイ!」」


 俺は微笑みながらその日はゆっくりと徒歩でとぼとぼと歩いて村の方へ行きましたぞ。

 城下町を出たのが昼過ぎで、ゆっくりと歩いて二つ目の町に到着した頃には日が沈みかけていましたな。

 強引にギルドへ行ったりしなかったので刺客はまだ来ていないようですな。

 これでお義父さんの方に行かれていると困るのですが、お義父さんの言いつけですから何も出来ませんぞ。


 俺は二つ目の町で宿を取り、まだ大きくなっていないユキちゃん達と共に食事を終えてから部屋で休みますぞ。

 重要なのはこの後ですからな。

 そして、数時間ほど仮眠を致します。


「さて」


 夜、ムクリと起きた俺はベッドに俺が寝ているかの様な細工を施しますぞ。

 そしてユキちゃん達を起こさない様に手で優しく抱き上げて、部屋の隅の暗い場所に隠れるように身を潜めてからスキルを唱えました。


「ポータルスピア」


 フッと視界が宿の部屋から……シルトヴェルトの眠らない城下町へと移りました。

 ここまでくれば、警戒もクソもありませんぞ。

 俺は颯爽とユキちゃん達を起こさない様に走り出しました。

 目指すはシルトヴェルトの山奥にいる危険で強力な魔物ですぞ。


 道行く人が、人間の冒険者がシルトヴェルトにいるなんて珍しいと言う目で見ていますが、知りませんな。

 俺はLvに物を言わせた勢いで走って行きましたぞ。

 そして暗い夜道を火の魔法で照らしながら疾走して向かいますぞ。


 やっとそれらしい強力な魔物と遭遇しましたぞ。

 メルロマルクと比べると種類の違う魔物ばかりですぞ。

 まあ、フィーロたんを買おうと魔物商から買い占めたフィロリアル様達を育てるために、この辺りは荒らしたので既に庭みたいな感覚ですがな。


「流星槍! ブリューナク! グングニル! エイミングランサー! ハハハ弱い! 弱過ぎるぞおおおおお!」


 今までの鬱憤を晴らす様に俺は魔物達を夜の間に仕留めて回りましたぞ。

 お? 今度は倒したドラゴンから鎧をドロップしましたな。

 これを着て動きまわったら完全に怪しまれますぞ。


 しかも俺の趣味ではありませんな。

 槍から出すのはお義父さんの言いつけ通り武器屋の親父さんに部屋を貸して貰ってからにしますかな。

 素材はどうしますかな?

 とりあえず細かくしてお義父さんに後で上げるとしましょう。


 これもお義父さんに渡すタイミングが重要ですな。

 一応、この山奥で隠しておきますかな?

 盗まれても問題はありますまい。


「「ピイ!」」

「おや? 起きてしまいましたかな?」

「「ピイ!」」


 寝ていたはずのユキちゃん達が起きだして元気よく鳴いて解体中の魔物の肉をついばみ始めました。

 微笑ましい光景ですぞ。

 しかし、お義父さんの身の安全や戦争にならないように動くと言うのは異常に面倒臭いですな。

 何も考えずに赤豚や教皇とクズを抹殺出来る方法は無いですかな?

 などと思いながら俺は夜が明ける直前まで狩りを続けたのですぞ。



「ふう……時差を計算に入れるのを危うく忘れる所でしたな」


 メルロマルクの宿にポータルで戻った俺は隠れるように部屋に戻りましたぞ。

 まあ時差と言える程、差はありませんが、寝ている俺が偽者だとバレると色々面倒ですからな。


「「ピヨ!」」


 この頃にはユキちゃん達が徐々に頭角を現して第二形態にまで成長しました。

 Lvは28ですな。

 さすがに夜間の間だけで上げきるのは難しかったですな。

 あまり長く戦いすぎると警戒されますから、こうして隠れるようにやって行くしかないのですぞ。


「「ピヨ!」」


 ユキちゃん達が空腹を訴え始めました。


「わかりましたぞ」


 まあ、ユキちゃん達のご飯となる魔物を狩る程度は問題ないですな。

 お義父さんと合流するように俺は城下町へ来た道を戻って行きましたぞ。

 その合間に、魔物を探し、ユキちゃん達のご飯を調達しましたぞ。

 他に若干の素材をお義父さんの手土産に持っていきますな。



「こんにちは元康くん。奇遇だね」


 打ち合わせ通りに、お義父さんとメルロマルクの城下町の薬屋の前で合流しましたぞ。


「「ピヨ!」」

「わぁ……これが昨日のフィロリアル達? 結構大きくなったね」

「まだ成長途中ですぞ」

「そうらしいね。馬車を引くほどまでに大きくなるのはもう少し掛りそうかな?」


 そう言いながらお義父さんは俺の耳元に顔を近づけます。


「どう? 上手く行った?」

「問題ないですぞ。ユキちゃん達のLvが29になりましたぞ」

「はや!」

「ついでにお義父さんに良さそうな鎧が手に入ったのですが、これは少し後ですな」

「そうだね。あ、そうだ。元康くんに言われて薬屋をずっと見てたら、薬草が何か少しわかってきたから昨日はあの後、草原で探してみたよ」


 と、お義父さんは薬草を俺に見せてくださいますぞ。


「「ピイ!」」

「ユキちゃん達も欲しい?」


 お義父さんがユキちゃん達に薬草を分けて食べさせてくださいますぞ。

 ただ、口に合わないのかユキちゃんはペッと吐きだしてしまいましたがな。


「あちゃー……」

「申し訳ないのですぞ」

「いいのいいの、盾に入れたら採取技能ってのが出て品質が向上したみたいだから、面白くって取り過ぎてたしね。近くの川で釣りとかのんびりしてるよ。今日は調合に挑戦してみようかな」

「刺客は来ましたかな?」

「今のところは来てないけど……って所かな。食べ物には十分注意してる」


 そうですな。

 俺がお義父さんを庇ってしまった事で、どう変化するか分かったものではありませんから、注意は必要ですぞ。


「ピイ!」

「ああ、そうだったね。サクラちゃん」


 お義父さんが懐で小さく丸まっていたピンク色のフィロリアル様を見せてくださいましたぞ。


「元康くんと合流する少し前に、卵から孵ったんだ。見てくれない?」

「はいですぞ」

「ピイ!」


 サクラちゃんはお義父さんに紹介されて元気よく俺の方を向きますぞ。

 おや?


「目の色が青いですな」

「え? 目の色が? 大丈夫なの?」


 俺の記憶違いですかな?

 確かサクラちゃんの瞳の色は体色と同じくピンク……それからサクラ色に成るのですぞ。

 ですが、お義父さんが俺に見せて下さったサクラちゃんの目の色は青……別のフィロリアル様でしたかな?


 俺はサクラちゃんの匂いを嗅ぎますぞ。

 何処となくフィーロたんを彷彿とさせる香りをしているサクラちゃんの香り。

 まあ、フィーロたんは白に桜色なので、完全に逆ですがな。


 これは……もしかしたら、フィロリアル様の後天的な影響ですかな?

 どうやら俺が孵化させるのとお義父さんが孵化させるのとではサクラちゃんの目の色に違いが出てしまうようですな。


 どのような理由でこんな変化があるのかはわかりませんが……。

 そういえば……人が育てているフィロリアルの中では体色と違う色合いをしているフィロリアル様がいましたな。

 この辺りは育ての親でも差異が出てしまうのかもしれませんぞ。


 一つ勉強になりましたぞ。

 まあ、どちらにしてもサクラちゃんの体色はフィーロたんの逆なので焦る必要はありませんぞ。

 フィーロたんは魔物商のテントでいつか入荷し、俺やお義父さんが買わないでいると誰かが買って行ってしまうのです。

 定期的に通って集めていけばよいのですぞ。


「問題ないですぞ。ではー……」


 ペッぺとユキちゃんが薬草が不味くて不機嫌になってしまいましたぞ。

 良薬は口に苦し、と言うのですが、生まれたばかりのフィロリアル様にはわからないでしょうな。


「サクラちゃんは俺が預かってLv上げを致しますぞ。その間にコウの面倒を見てほしいですぞ」

「だね。じゃあサクラちゃん、少しの間だけ元康くんの所で強くなってきてね」

「ピイ!」

「ピヨ!」


 了解した! とばかりにコウとサクラちゃんは敬礼するように鳴きましたぞ。


「さて……じゃあ奴隷商の所へ行こうか」


 表情を引き締めて、お義父さんは言いだしました。

 そうでしたな。

 今日は奴隷商から、奴隷の調達がどれだけ掛るかという話を聞くのでしたな。


「そうですな。ですが魔物商のテントはユキちゃん達が嫌がると思うのでテント前でユキちゃん達は待ってもらいますぞ」

「うん。それくらいなら目を放しても大丈夫でしょ。じゃあ行こうか」


 お義父さんと共に路地裏を通って魔物商のテントへと向かいましたぞ。

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