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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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ブラフ

「そうでしたか? 私共は適正な価格で提供する事をモットーにしていますです。ハイ」

「どうだか……」


 これは、お義父さんの手腕ですな。

 他の店で安い所を知っている。

 それに比べてこの店は高いなとブラフを張っているのですな。

 ここは亜人が多いんだな、という言葉も人間が売っている所を見てきた、と暗に伝える結果になっております。

 さすがお義父さんですな。


「しかし、勇者様が奴隷に興味を持っているとは驚きです。ハイ」

「盾の勇者である俺がこの国で仲間なんて手に入る訳無いだろ? 利用できる物は何でも利用するつもりだ」


 唾を飲み込んでからお義父さんは気丈に答えましたぞ。


「使い潰すつもりで利用せねば強くなどなれない」


 そう答えた時、魔物商の顔がキラキラと輝き始めましたぞ。

 これはエフェクトとかでは無く、興奮しているという感じですかな?


「場合によっては、俺の仲間である槍の勇者に協力してもらうんだが……誰か消してほしい奴がいるなら言え。安く消してやる。その代わり売る奴隷を安くしろ」

「わかりましたぞ。この元康、お義父さんの命あらば商売敵の暗殺などしてみせますぞ」

「フフフフ……最初見た時は、あまり良い客に見えませんでしたが、人は見掛けに寄らないようです。ハイ。考えを改めますです。ハイ」


 ご機嫌になった魔物商……俺にはこんな態度を見せた事はありませんぞ。

 いつも困惑した様子だった覚えがあるのですが、どうでしたかな。

 さすがはお義父さん、交渉事となると素晴らしい頭角を現しますな。


「して? どのような奴隷をお求めで? 予算額があれば相談に乗りますです。ハイ」


 そっと、俺の耳元にお義父さんが囁きます。


「どうする? 良くわからないけど相手のお勧めで奴隷を購入した方が良い? それとも指名でもする?」


 ふむ……そうですな。

 売り子をするという意味では、愛嬌が良い奴隷が良いですな。

 変に愛嬌の悪い奴隷を買っても意味などありませんぞ。

 これは未来の知識を使った方が良いでしょう。

 お義父さんの村で行商を担当していた奴隷を購入すると変な賭けに出なくて良さそうですな。


 となると誰ですかな?

 フィロリアル様達が行っていた行商で成績が良かった奴隷を思い出しましょう。

 基本的にはお義父さんの指導の元、一定の業績を出してはいたはずですが、その中でも有能だった者……。

 確か……キールとかいう豚に変身する子犬が業績の良い奴隷だったと思いますぞ。


「では――」


 俺はお義父さんに内緒話で答えますぞ。

 確かキールはお姉さんと同じく、お義父さんが開拓する事になる領地の村で暮らしていた亜人だったはず。

 波の影響で奴隷に身を落としたとかなんとか。

 この辺りはフィロリアル様や他の奴隷達からの話で聞いていますぞ。


「ここにキールという奴隷がいないか? 波で滅んだ村出身のはずだが」


 お義父さんの言葉に魔物商がリストを取り出して閲覧を開始しましたな。

 それからしばらくして……。


「生憎とありませんです。ハイ」


 おや? お義父さんは基本的にこの魔物商の斡旋で奴隷を仕入れたと聞いていましたが違うのですかな?

 これはフィーロたんと同じく時期が合わないという事ですかな?


「何なら同業者内で探して取り寄せをしましょうか? ハイ」


 お義父さんは腕を組んで考えますぞ。


「どうせ料金を割り増しして偽者を提供するつもりだな? そうはいかない」

「なんと! 私共は信用を売りにしているのです。ハイ。メルロマルクに波が到来してから新たに奴隷になった者で探せば見つけ出せると思いますです。ハイ。もちろん、買い取り額に応じて値段は上がりますが、どうしますかな?」

「じゃあ銀貨……」


 金袋の金銭を確認してからお義父さんは答えます。


「50枚までだ。これ以上はびた一文出すつもりは無い。別にソイツじゃ無くても良いからな……まあ、会計時に上乗せしようとしたら……わかってるな?」

「何処までも値切ろうとする勇者様の手腕にゾクゾクしてきましたです。ハイ」


 パチパチと金の計算をする魔物商にお義父さんは鋭い眼光で見つめております。

 金の事が関わるとやはりお義父さんは素晴らしい才能を持っているのですな。

 もしもループする事があったのなら、この才能を遺憾なく発揮させる方向に持って行きましょう。


「では明日になったら再度、私共の所へ来訪ください。取り寄せにどれくらいの時間が掛るか分かると思いますです。ハイ」

「わかった。じゃあな」


 俺の肩をポンと叩いてお義父さんはテントを後にしましたぞ。

 それからしばらくして裏路地の隅の方で口に手を当てておりました。


「空腹なのに吐き気が止まらない……亜人とはいえ人間を売買する場所か……創作物で見た事あるけど、本物はあんなにも陰惨とした雰囲気があるんだね」

「大丈夫ですかな?」

「うん。大丈夫だけど……う……しばらく食欲が無くなりそう」


 ユキちゃん達も魔物商のテントの中の雰囲気に脅えていましたからなぁ。

 あんまり良い場所では無いのは事実ですな。


「上手く行けば明日には、そのキールって子に会えるかもね」

「ですな」

「次は……どうしようか?」

「あまり体調が良くないのでしたら休みますかな?」

「大丈夫、この程度でうろたえてちゃこの先、生きてなんて行けないと思うんだ」


 なんと素晴らしい心構え。

 お義父さんの心の強さが垣間見えた気がしますぞ。


「さて、これから出来る限り強くなっているのは隠さないといけないよね。となると、Lv上げとか出来るのかな? かなり難しいと思うんだけど」

「そこは問題ないですぞ」


 俺はお義父さんと内緒話で話し続けますぞ。

 何処で俺達の話を盗み聞きされているかわかりませんからな。


「まずはお義父さんのLvを上げる方法はユキちゃん達に上げてもらうのが一番だと思いますぞ」

「そうなんだろうけど……」

「大丈夫ですぞ。追手や監視を撒く事はポータル、転移スキルを使えば造作もありませんぞ」

「そうだね。逃げる事自体は簡単だと思う。俺は知らないけど、シルトヴェルトに行った際には追っ手から逃げていた訳だしね。だけど今回の場合、問題は突然姿を消して強力な仲間を引き連れる事じゃないかな? ある程度監視を泳がすのも重要だよ。間違った判断をさせるんだ」


 お義父さんも考えているご様子。

 確かに、そこまで俺は頭が回りませんでしたな。

 お義父さんが暗殺されない様に強さを得る事ばかり考えていましたぞ。

 ですが、急激に強くなればそれだけお義父さんへの迫害と強引な妨害行為が出てくるでしょうな。

 なるほど、最初の世界に比べて以前の世界で刺客が多かったのは俺達が強かったからですか。


「こういうのはどうかな? 元康くんは俺を助けたってだけで何食わぬ顔で――」


 お義父さんが案を提示してくださいました。

 なるほど、その方法ならば確かに監視の目を誤魔化せますな。


「で、俺は城下町で金策になりそうな……薬屋で調合に使う薬草とかを盗み見てから草原の方へ行ってみるよ。あそこの魔物は弱いから俺でも大丈夫だと思う」

「わかりましたぞ。では行動開始ですな」

「うん……ユキちゃん達もがんばってね」

「「ピイ!」」


 ユキちゃんとコウが俺の肩で元気に鳴きました。


「今までありがとう元康くん! これからは俺一人でも大丈夫だから先に行って国を救ってね!」


 ワザとらしくお義父さんは大きな声で喋り、背中を押しますぞ。

 俺も合わせてお義父さんに手を振ります。


「ではさようならですぞー! また縁があったら会うのですぞ!」


 そう、俺とお義父さんが一緒に居るから疑われるのです。

 ですから合流の時まで俺とお義父さんは別行動をした方が最終的に被害を抑えられるとの話になったのですぞ。

 もちろん相応の危険はありますが、もしもループしたらそれを伝えてとお義父さんは言ってくださいました。


 さあ、吉と出るか凶と出るか、不安ではありますがお義父さんを一人残して俺達は別行動をしたのですぞ。

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