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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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魔物商

「勇者の武器にはウェポンコピーというものがありまして――」


 お義父さんが申し訳なさそうにウェポンコピーに関して親父さんに説明しました。

 まあ泥棒をすると公言する様な物ですからな。

 店を経営している者に話せる内容ではありません。


「はぁ……なるほどな。槍のアンちゃん以外の勇者が最初に顔を出して武器に触れて何か考えているから何かと思ったが、そんな事をしてやがったのか」


 若干不愉快そうに頷いておりますな。

 俺も最初はやりましたぞ。

 豚共と一緒に高笑いしながら店に入ったのを覚えております。


 ゲーム知識でゼルトブルの品揃えを知っていた俺は、親父さんに聞こえる声で豚共にしょぼい店だと吹聴して出て行ったのを覚えております。

 もちろんコピーはちゃっかりとしていましたがな。

 それでかなり余裕が出来たのですぞ。

 ですが良く考えると泥棒ですな。


「良いぜ。アンちゃんも大変だっただろうから気にせず盾に触れて行きな。現物が減らないなら俺の所も損はねえからな」

「ありがとうございます……」

「あ、ちょっと待っていてくれよ」


 親父さんが部屋の奥の方へ行ってしまいましたぞ。

 どうやら武器屋の二階の方で何かを漁っているようです。

 その間にお義父さんは武器屋の盾を全て一旦持ちましたぞ。


「あったあった。待たせたな。この国じゃあ珍しい盾だぜ」


 と、親父さんは部屋の奥から、見た感じだとゼルトブルで売っている隕鉄の盾を持ってきましたぞ。

 こんな所に隕鉄の盾があるのですかな!?

 これは驚きですぞ。


「槍のアンちゃんはどうだい?」

「私は問題ないですぞ。その種類の武器は既に持っております」

「そうかい?」


 灯台下暗しですな……正直に言えば豚を追い掛けていた頃の俺はこの店を、普通の店だと思っていました。

 お義父さんが贔屓にしているのも、辛い時に力を貸していたからだと思っておりましたが、腕も確かなのですな。


 ……お義父さんが親父さんの作った盾を村の倉庫に大事そうに飾っていたのを覚えていますぞ。

 定期的に磨いて、宝物の様にしていました。

 あの時の盾もコピーして使っておりましたが、相当優秀な盾だったようですぞ。

 錬が使っていた剣も最終的にはこの武器屋の親父さんが使っていたものだったとの話。


 腕は確かなのですな。

 反面、俺は何を使っていましたかな?

 お姉さんのお姉さんが海底で見つけたという槍をコピーして使っていたのでしたな。

 それを一時的に借りた結果、ブリューナクに発展するスキルを覚えたのですぞ。

 もし機会があったら俺も作ってもらうとしましょう。


「これもついでにコピーして行け。空から降ってきた珍しい鉱石で作られた盾だ。ゼルトブルの展示商品。隕鉄シリーズの試作品だ」

「隕鉄……元康くん、これって珍しいの?」

「ゼルトブルまで行かないとコピーできないでしょうな。そして習得できるスキルはかなり優秀ですぞ」

「そっか……何から何までありがとうございます」

「気にすんな。もし良かったら俺の店を贔屓にしてくれよな」

「うん。それは絶対に……また来るよ」

「あんま遠慮すんなよアンちゃん。もっと調子に乗った感じなのがアンちゃんだろ?」


 親父さんに言われ、お義父さんはゆっくりと隕鉄の盾を握って、返します。


「そうだね……また来るから楽しみにしてまってろよ! 俺が稼いだ金で親父には良い装備を作ってもらうからな!」


 大人しくしていたお義父さんが目を一度瞑ってから元気よく答えましたぞ。

 そうですな。

 お義父さんは本来、調子の良さそうな方でした。

 前回のループの時、お義父さんは遠慮がちで柔らかい物腰でしたぞ。


 そのお義父さんから本来の態度を引き出した武器屋の親父さんの対人能力は称賛に値します。

 俺もお義父さんに遠慮無く呼び捨てで呼ばれるようになりたいですな。


「その調子だぜアンちゃん。じゃあ行って来い!」

「ああ! またな!」

「ではさようならですぞ」


 こうして俺たちは武器屋を後にしたのですぞ。

 ちなみにユキちゃん達がピイピイと鳴いて、お義父さんの鎧の隙間に入ろうとしたりしていましたな。



「じゃあ次は奴隷を買いに行く? それとも元康くんがユキちゃん達のLv上げに行く?」

「そうですな……」


 隠れてLv上げの方法は無いわけではありませんな。

 ですが、手間を考えると奴隷を見繕うのは悪くありませんぞ。


「では奴隷を買いに行きますぞ」

「う、うん……」


 お義父さんがゴクリと唾を飲むようにして頷いて俺に着いてきますぞ。

 何でしょうかな?

 強いて言うなら、夜の店に勇気を振り絞って友達と入るかのような雰囲気を持っていますぞ。


 しかし、何度も思いますがお義父さんと共にメルロマルクの城下町を歩くと怪訝な視線が集中していますな。

 全てを屠ってやろうか?

 とは思うのですが、それはしてはいけませんな。


 俺達は裏路地を抜けて魔物商のテントに向かいましたぞ。

 テントの前でお義父さんは俺の肩を叩いて尋ねます。


「こ、ここに奴隷が売っているの?」

「そうですな。後は魔物の販売もしていますぞ」

「へ、へー……強くなるだけなら魔物を使役するのも良いよね」

「あまりお勧めは出来ませんな」


 今回の目的は売り子をする奴隷の購入ですぞ。

 魔物を使ってパワーレベリングを行うならフィロリアル様達とやる事に違いがありません。

 これはお義父さん自身が奴隷を購入する事に躊躇いがあるのでしょうな。


「では行きますぞ」

「うん」


 テントの中に入ると、相変わらず魔物商がいましたぞ。

 それにしてもこの人は変な格好をしていますな。

 一人だけサーカスでも経営していそうです。


 ハッ!? フィロリアルサーカス!

 夢が広がりますぞ。

 素敵な夢ですな。

 フィロリアル牧場が完成した暁には皆でやってみましょう。


「これはこれは、新たなお客様ですかな? ハイ」

「フィーロたん」

「ハイ?」

「元康くん、突然何を言ってるの? フィーロたんって俺の未来の養子だよね? どういう事?」


 おや? 咄嗟にフィーロたんと言ってしまいましたぞ。

 今回はフィーロたんの捜索は後回しにすると決めたではありませんかな?


「間違いましたぞ」

「その風貌……持っている武器を察するに槍と盾の勇者様方で間違い無いですかな?」

「……」


 お義父さんが険しい顔で魔物商を睨んでいますぞ。

 ここで認めようものなら何か不利な事になるのではないかという顔をしておられです。


「ご安心を、私共は相手を見極めてから値段の上下をしますのです。ハイ」

「……そう」


 若干警戒が解けつつあるお義父さんは一歩前に踏み出しました。


「おや? 盾の勇者様ですね。ハイ。その醸し出す雰囲気から察するに、私共の店に縁が無いように見えるのですが?」

「……悪いけど、俺も舐められたままじゃいられない」


 そう小さく呟いたお義父さんは深呼吸をしてから声を出しますぞ。

 お義父さんは商売事が得意ですからな。

 俺は安心して見ている事が出来ますぞ。


「人を見る? そういう事を言えるのは完全に舐めているからだ」

「いえいえ、人にはそれ相応の懐の温かさがあるのです。ハイ。私共は、欲する者へ提供する事が生業なのです。ハイ」

「つまり金持ち貴族用と貧乏貴族用に分けているという意味で良いんだな?」

「概ね間違いはありませんです。ハイ」

「まあ……良いか。じゃあ金持ち用の商品を見せて欲しい。交渉は後だ。もちろん、相場を誤魔化せると思わないで欲しい」


 お義父さんの言葉に魔物商はニヤリと笑いましたぞ。


「ではこちらです。ハイ」


 お義父さんはテントの奥で奴隷達の一覧を目で追いましたな。


「ここは亜人が多いんだな」

「メルロマルクは人間至上主義な国故、人間を取引する事は難しいです。ハイ」

「そうだな。もう少し深い所に行かないといないもんな」


 強く手首を握りしめて、震えるのを抑えている様に見えますぞ。

 この国に人間の奴隷がいるのですか、初耳ですな。

 さすがお義父さん、博識でいらっしゃる。

 ん? そもそもお義父さんが何故そんな事をご存知で?


「で? この奴隷の値段はいくらだ?」


 徐に檻に入っている奴隷を指差してお義父さんは尋ねましたぞ。


「こちらの奴隷は――」


 魔物商と話を続けていますぞ。

 やがて貧乏人用の奴隷の方も見て行きましたぞ。


「大体わかった」


 それから、お義父さんは深く考え込むようにしてから呟く。


「相場よりもずいぶん高めなんだな」


 おや? お義父さんは他の奴隷が売っている所を見ていないはずですぞ?

 これはどういう事ですかな?

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