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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
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証拠

 メルロマルクの城にポータルで戻って俺はユキちゃん達の卵を孵化器にセットして……魔物紋の登録を行いますぞ。


「コウの卵にも……」


 で、コウの登録を終えた後にサクラちゃんの卵を見ますぞ。

 ……うーん。

 サクラちゃんはお義父さんに一番懐いていたフィロリアル様ですぞ。

 元々、お義父さんの護衛を任せていたのもありますな。

 とても仲睦まじくお義父さんといる姿が脳裏に焼き付けた記憶にあります。


 この元康は知っています。

 お義父さんはみんなにLv上げをしてもらった所為で、少し遠慮がちになってしまわれていたのです。

 ここで共に成長し、お義父さんを守ってくださるサクラちゃんがいたら、もう少し遠慮をせずにいてくださるかもしれませんな。


 うん。少しユキちゃん達とは遅れてしまいますが、サクラちゃんはお義父さん専用のフィロリアル様として契約せずに残しておきましょう。

 少し面倒ですが、お義父さんもサクラちゃんと共に育てば、良いかもしれません。

 という事でサクラちゃんはお義父さんに登録してもらいましょう。


「「ブブー!」」


 ん? 何やら不快な鳴き声に振りかえると豚がこちらを指差して鳴きながら近づいてきましたぞ。

 先ほどの幸せな気持ちが台無しですな。

 近寄るな汚らわしい。


 そう思いながら辺りを見渡すと大分日が傾いているのに気が付きましたぞ。

 そろそろ宿をとって休んだ方が良さそうですな。

 豚共を完全に無視して俺は卵を隠し持って、初日に泊った宿に向かったのですぞ。


 後は恒例の夜の酒場で待っていると赤豚がやってきたので、適当に相槌をした後に罵倒してやりましたぞ。


「ブブー! ブブブブブブヒ!」


 ブーブーうるさいですな。

 今ここで消してやろうか?


 そうは思うのですが、ここで赤豚を消したとしたら俺の知らない未来になる事は容易く想像できますな。

 クズの事です、赤豚が行方知れずになって探しているお義父さんに、仲間に逃げられるなどなんと愚かな勇者だとか馬鹿にする事は請け合いですな。


 下手をすれば娘を何処へやったとか因縁をつけて、あらぬ罪を被せる可能性は大いにあります。

 俺は前回のお義父さんの言った事を守りますぞ。

 ここで赤豚を消すのは特別に我慢してあげましょう。


「ブヒブヒ!」

「しつこいですぞ。いつまで鳴き喚いていても、俺はお前に騙されたりしませんぞ。この泥棒豚!」


 お前が生きる事が出来るのはお義父さんの慈悲だと言う事を知れ! ですぞ。

 俺の罵倒にブヒブヒと喚き、激怒しながら赤豚は逃げるように去って行きましたぞ。

 その足で樹の元へ行くのですな。


 まったく……どうにかしてこの赤豚を未来に干渉せずに消す方法はありませんかな?

 歯がゆい物ですな。

 お義父さんの言葉で、赤豚は消す事が難しい奴なのですぞ。

 戦争を回避出来れば消す事は可能ですな。赤豚が大きく騒ぎに関わったのはあの辺りでしょう。

 その後は、お義父さんとの話では錬と樹に取り入った挙句、燻製と三勇教の残党と共に革命運動をしたはず。


 となると……教皇戦後ですな。

 問題は錬と樹の信用をどうやって得るかが当面の課題ですな。

 俺もあの時の戦いの後を思い出すと今でも苦い思い出となります。

 霊亀に勝てると思って突撃し、豚共に逃げられて何時までも追い掛けていたのですからな。


 自分の事しか考えられない豚を追い掛けても時間の無駄ですぞ。

 心をすり減らして俺は……フィーロたんに励ましてもらったのですぞ。

 あの後、俺は幸福な気持ち……真の愛に目覚めたのですな。


 そういう意味で赤豚は大いに役に立ったので慈悲を兼ねて苦しまずに処刑してやりましょう。

 赤豚を早期に消して問題の無い土台を見つける方法を模索しなくてはなりません。

 未来の知識を役に立てるよう……お義父さんの言葉を実践するために俺は、知らずにいた事を学習せねばならないのですぞ。


 もしも次のループに至った場合、俺がすべきことは召喚されてからの数日間でお義父さんや錬、樹が何処に居るかを知る事です。

 どうやら俺達に紹介された仲間たちはそれとなくお義父さんと他の勇者が仲良く出来ない様に冤罪を被せるまで距離を取らせる役目を持っていた様ですからな。

 ループしてから最初の周回でお義父さんに近づこうとしたら尽く妨害されましたが、クールを気取ってお義父さんに近づかずにいたら何事も無く付いてくるだけでしたぞ。


 宿の方は勝手に部屋を用意して泊った様ですがな。

 勇者同士の連携を取らせないように妨害しているのは事実。

 お義父さんが得意の、相手が嫌がる事をするのが争いに勝つ手段ですぞ。

 勇者同士が仲良くする未来を得るために、今回は知識を蓄えます。


 もちろん、この周回を無駄にするつもりはありませんぞ。

 フィーロたんを見つけて、ごしゅじんさまになる夢はまだ諦めた訳では無いですからな。

 大きく動かずに金銭を手に入れる方法など幾らでもありますぞ。

 まあ、これを実行に移すのはもう少し後の話ですな。


 幸いにしてこの元康、魔物商が持っているフィロリアル様の卵は購入したので大体、匂いと感触で誰が産まれるかなんとなくはわかるのですぞ。

 まあ、前回の周回で品種こそ違えどクー達の卵が無かったので時期によるのでしょうがな。


 となれば足繁く通って見知らぬフィロリアル様の卵を見つけていくしかありませんな。

 そもそも前回の周回では既にクロちゃんの卵もありませんでしたし、タイミングが重要なのは事実。


「さて……では寝ますかな」


 宿に戻った俺はユキちゃん達の卵を抱きしめながら就寝しましたぞ。



 翌朝。

 やはり赤豚を罵倒したので呼び出しがありませんでしたな。

 なので、前々回の時よりも早く城に行きましたぞ。

 城の方へ行くと兵士共が焦った表情で出迎えましたぞ。


「こんな早朝に何の用でしょうか?」

「意味も無く城に来てはいけないのですかな?」

「少々、たてこんでおりますので日が昇り切ってからの来場をお願い致します」


 という所で後ろから馬車で錬達が不快そうにやってきましたぞ。


「お? 元康じゃないか。お前も呼ばれたのか?」

「……そうですぞ」


 ここは錬の会話に乗った方が強引な手段をせずに入れますな。

 俺が道を遮る兵士の方を見ると、俺を無視して錬を城に入れるなど出来そうにないのを悟った兵士が青い顔をしておりますぞ。


「どうしたんだ?」

「……どうぞ。お通りください剣の勇者様」

「元康は? 俺と同じ様に呼ばれたんだろ?」

「そうですな? 私は入れてくれないのですかな?」

「……」


 困惑した様子で兵士が顔を見合わせておりますな。

 そんな態度では錬に不信がられますぞ?


「どうしたんだ? それとも元康は呼ばず俺だけを呼ぶのに何か理由があるのか?」

「いえ……わかりました。お通りください、槍の勇者様」

「では通りますぞ」


 これは収穫ですな。

 錬達が来る時間に合わせて行けば強行突破せずに済みますぞ。


「元康、お前の仲間は?」

「宿で寝てますぞ。良く寝ていたので起こしては悪いと思って、俺一人で来たのですぞ」

「そうか……」

「錬は何処で泊っていたのですかな?」

「俺か? 俺は城下町から二つ先の村で休んでいたら呼びだされた」

「ほう……具体的に何処の村ですかな?」


 メルロマルクの地図を頭に思い浮かべますぞ。

 城下町から二つ先の村と言うとある程度絞られますな。

 この中で一日で行ける範囲となると二つか三つに限られますな。


「それは――」


 どうやら錬は城下町から南東方面に移動していた様ですな。

 そう言えば前……最初の世界で話し合って狩り場が競合しない様にしたのを思い出しましたぞ。

 なるほど、これは覚えておいた方が良いですな。


 さて、樹は赤豚に取りこまれてしまっているので聞き出すのはもう少し先になりそうですな。

 城内を進み、玉座の間へ行くと赤豚と樹、そしてクズが待っていましたぞ。


「旅立てと言った翌日の早朝に呼び出しなんて……いきなりなんなんだ?」


 錬の隣に俺が立っているのを理解するなり、クズと樹は不快そうな顔をしていますな。

 ですが、事情を説明する事を優先した様ですぞ。

 赤豚が目から汚物を流しながらブヒブヒ鳴いて錬に話をしております。


 これは……思い出してきましたぞ。

 確か最初の世界で、俺は樹の立っていた場所に居たのです。

 お義父さんに強姦されそうになって、俺が泊っている宿に赤豚がやってきて鳴き付いてきたのですな。


 その後、城に通報しようと赤豚が提案して城へ行くとクズが深刻に事態を捉える演技をして、樹と錬を呼びました。

 後は赤豚が『盾の勇者に強姦されそうになりました。私、怖くって……』とか『どうかあの強姦魔から私を助けてください』とか喚くのですぞ。

 その演技が凄く上手くて、錬も樹も許せないなと納得したのでしたな。


 赤豚は錬に過剰なほど接近して汚物を流しながら何やらブヒブヒ騒いでおります。

 そして赤豚は俺を指差して鳴きますぞ。


「元康、この子に豚と罵ったって言うのは本当か?」

「豚は豚ですな。他者を陥れ、悪事を隠す、これを豚と言わず何を豚と言うのですかな?」

「悪事を隠す?」

「ブヒ、ブヒ」


 錬が眉を寄せると赤豚は俺と錬の間に入って、俺を突き飛ばそうとしましたぞ。

 ですが、俺の強さを理解していないのか、ビクともしませんな。

 おい、ちゃんと人間の言葉を話すのですぞ。


 どうせ何か嘘を言っているのでしょう。

 聞いていたら耳が腐りそうですな。

 それとなく錬の隣に立ち続けます。

 樹がずっと俺を睨んでいますな。


「何か言いたい事があるのですかな?」

「昨日から思っていたのですが、女性を豚と罵るとは何なんですか! 彼女は人間なんですよ」

「ははは、ご冗談を」

「何がおかしいんですか!」


 相変わらず樹は道化ですなぁ。

 盗品のくさりかたびらを着用して正義面とは滑稽にも程がありますぞ。


「そう思うのなら、そのくさりかたびらが何処で販売されたか調べた方が良いですな」

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