表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 槍の勇者のやり直し
450/1280

飛竜

「情報操作? あー……確か未来の話だと世界を支配しようと戦争をしかけてきたんだっけ? じゃあタクトが勝ったとか言って、祝いに来てくれとか偽情報で集めて一網打尽にした……とかかな?」

「詳しくは知りませんぞ」

「仮に当たりだったとしても、もうその手は無理だね……残党に逃げられてしまったし……となると逃げた残党を一人一人潰して回るか復讐を諦めさせるしかないか」


 面倒になりましたな。

 そうなると未来のお義父さんが取った公開処刑はなんだかんだで必要だったという事なのでしょう。

 これだけ残党が溢れている今、痛い程にわかりました。


「結局は、戦争に勝ってから身の潔白を証明する事しかないんだね。タクトの方が悪だったと世界に知らしめないと……」

「お義父さんの命令があればこの元康、どんな国でも滅ぼして見せますぞ」

「うん。わかってるけど、あまり干渉しすぎない範囲でね……とはいえ、シルトヴェルトとシルドフリーデンの戦争で勇者は参戦しなきゃいけないか」


 深く考え込みながらお義父さんは俺に顔を向けましたぞ。


「……元康くん」

「なんですかな?」

「この先、もしもループする様な事が起こった時、同じ轍を踏まないように今の状況を絶対に覚えておいてほしいんだ……」

「わかりましたぞ」

「そして出来ればの話だけど戦争にならない様に、未来の知識が役に立つ様に……そうだね。未来の俺みたいに戦争を出来る限り回避してほしい」


 お義父さんが強い意志を込めて俺に頭を下げましたぞ。

 了解しましたぞ。

 この元康、お義父さんの頼みの為、もしもループする事があったら戦争にならない様に努力しますぞ。


 ですが、未来のお義父さんはどのようにして戦争を回避したのか想像できません。

 まあ……出来る限り考えていく事にしましょう。


「お義父さんの言葉、この元康、記憶に焼きつけましたぞ」

「お願いしたよ」


 と、話をしながら俺達は残党を潰す旅を続けたのですぞ。



 タクトの正体を演説している最中に湧いた豚を仕留めてから俺達はシルトヴェルトの城に帰還しましたぞ。


「今、戻ったよ。シルドフリーデン軍の情勢はどうなってる?」


 お義父さんが城に戻ってシュサク種の代表に声を掛けますぞ。

 その言葉にシュサク種の代表は答えます。


「現在、シルドフリーデン軍が南から進軍中。飛行機による爆撃と射撃によって、非常に不服ですが我が国は押され気味です」

「確かこの世界じゃ銃器とかはLvに依存するんだっけ? じゃあ飛行機を運転しているのは高Lvなんじゃないかな?」

「おそらくは……」

「元康くんから聞いた未来の情報だと、どうやって飛行機を封殺したのか良くわからないんだよ。メルロマルクのあの王が知略で抑えたらしいんだけどね」

「英知の賢王が出たらあの飛行機も封じる事は容易い訳か……く、その英知の賢王が敵なのです」

「そう……だね。真似出来る事じゃないか。ところでツメの七星武器と鞭の七星武器の所在はわかった?」


 タクトを仕留めたあの時、ブリューナクの閃光に流されてタクトが所持していた七星武器が解き放たれたとの話なのですぞ。

 外から飛行船を見ていた者達の言葉によれば俺のブリューナクの光の中から空へ光の玉が飛んでいったとの話ですな。

 光自体に見覚えはありますぞ。

 空からみどりに向かって飛んで来たのですからな。

 誰かに宿ったのか、それとも何処かに落ちたのかわかりませんな。


「所在は判明いたしました。我が国の聖域に鎮座していたとの事です」

「聖域?」

「我が城の近くにある深い森です。そこにツメの七星武器は安置されていました」

「そう……なら何処かで証明してくれる国……とかに二つ七星武器がある事、独占するつもりが無い事を宣言しないとね」

「既に行っております。ですが……どうやらタクトが所持していた七星武器は三つだったようです」

「三つ!? という事は既にツメの勇者以外の勇者が一人犠牲になった事になるよね」

「はい」


 手の早い事ですな。

 どうやらタクトはこの段階で既に一人、七星武器に召喚された勇者を殺しているご様子。

 シルトヴェルトの話によると四聖の方が先に召喚されたのでしょうから、召喚されてそこまで日が経っていない内に犠牲になったのですな。


「フォーブレイが現在、我が国に調査団を派遣する予定ではありますが……」

「その調査団が信用できるか怪しいんだね」

「はい……何分、フォーブレイはタクトの所属していた国、公平を謳っていてもタクトの息の掛った残党の存在を無視できません」

「八方塞がりになりかかってる……か。あちらに理解力のある人がいるのを期待するしかないね」

「はい。フォーブレイの方でもタクトの息の掛った者が活動しているとの話で、あちらも混乱しています」

「どちらにしても今を乗り越えなきゃやっていられない。国の無実を証明するために頑張ろう!」

「は! 盾の勇者様の願いを叶えられそうも無く、真に申し訳ありません」

「今は気にしなくて良いよ……乗りかかった船だからね」

「盾の勇者様の慈悲に感謝を」


 お義父さんが複雑な心境で敬礼するシュサク種の代表に答えていますぞ。

 ここに来る時、お義父さんはポツリと呟いておられました。


「……俺がこの国に来た所為で起こった争いかもしれない。タクト自体が悪いんだけど、もっと……上手く立ち回らないと、被害が増える一方だ」


 俺はこの言葉をしかと記憶しましたぞ。

 確かにタクト自体が悪ではありますが、安易に殺すとこのような事態になるのですな。

 もしもループするとしたら、殺す状況を考えないといけませんぞ。


「とりあえずやらなきゃいけないのはシルドフリーデンの飛行機への対処か……」


 お義父さんが深く考えるように作戦司令部で、地図とにらめっこを始めましたぞ。


「飛竜や空を飛べる獣人で飛行機を相手をするのは国の人達がやったけど難しい……ならする事は一つだね」


 お義父さんが俺の方を見ましたぞ。



 戦場を前にしてお義父さんが作戦を言いました。

 これまでの道のりはユキちゃん達を筆頭にフィロリアル様の部隊が運んでくださいましたぞ。

 ですが、俺は咄嗟にお義父さんの作戦を聞いて言い放ってしまいました。


「絶対嫌ですぞ!」


 お義父さんの作戦に俺は背筋が凍りつき、全身からジンマシンが出てきましたぞ。


「我慢して元康くん。これ以外の有効な作戦が無いんだから!」

「それでも嫌なんですぞ!」


 俺はユキちゃんの背中の羽を触って、イヤな現実から逃避しましたぞ。


「ああ、元康様……もっと撫でてほしいですわ」

「あははーコウも混ぜてー撫でてー」

「私、ユキがみんなを集めて儀式魔法で飛行機を叩き落として見せますわ!」


 ユキちゃんが一歩前に出て進言しますぞ。


「それも考えたんだけどね。飛行機の高度が高くて速度もあるから儀式魔法を当て辛いんだってさ。だから確実な手段は元康くんに頑張ってもらった方が良いんだ」

「ですが――」

「ゴメンね、ユキちゃんもわかってほしいんだ。被害を少しでも減らすなら……元康くんにやってもらうしかない」


 うう……お義父さんが駄々をこねるユキちゃんを必死に説得しております。

 とても尊敬し、命令には絶対に従おうと思う俺ですが、今回、お義父さんが命じた事は拒みたくなる案件なのですぞ。

 そのような真似をしたらこの元康、数日はジンマシンが引きませんぞ。

 しかも跡が残ってしまうかもしれません。


「わかり……ましたぞ。お義父さんの命令は絶対……なのですぞ」

「元康様! 無茶をなさってはいけません」

「これも延いてはお義父さんの為、この元康、何があろうとも作戦を成功させますぞ」

「うん……俺も心苦しいけどお願いするよ……本当なら俺がやらなきゃいけないのに、守る事しか出来ない俺を恨んでくれて良い」


 お義父さんの苦渋の決断が伝わってきますぞ。

 わかっております。

 この元康を頼ってくれるお義父さんの心遣いを。

 例え苦痛に苛まれようとも、この元康、困難な任務を達成しますぞ。


「じゃあ出撃」

「はいですぞ!」


 俺達は敬礼して、お義父さんと共に出撃準備に入ります。

 キーンという音とバラバラという音が上空から聞こえてきますな。

 空を見ると飛行機が旋回し、戦場や近くの町に爆撃をしております。

 まずはあの飛行機を叩き落とさねばなりませんぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ