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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
盾の勇者の成り上がり
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侵食植物

「ラフタリア、フィーロ、気を付けろよ」


 さて、今回の敵は植物と来たものだ。

 普段、薬草とかに良く触れる俺からしても目の前にある植物は異色だ。

 蔓からは様々な果実が実っていて、根には芋が出来る。

 それだけではなく、人体に寄生する能力を持ち、酸や毒を吐くそうだ。

 効果がありそうなのは除草剤か……物理的に倒せば効果があるのか分からないな。

 しばらく進むと蔓が蠢き、俺達に襲い掛かってきた。


「ハァ!」

「やあ!」


 ラフタリアとフィーロが蔓をなぎ払う。

 周り中の蔓が俺たちに向って来る。

 一応……魔法を使うか。


『力の根源たる盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を守れ!』

「ファストガード!」


 ラフタリアとフィーロに防御魔法を掛ける。

 効果は対象の防御力を%でアップさせる。元々防御力の高い俺に使うと効果が高い補助魔法だ。


「ナオフミ様、ありがとうございます」

「ありがとーう」


 二人は俺に礼を言うと各々、襲い掛かる蔓に攻撃を続行した。

 まあ、このまま進んでいくのは良いけれど、どうすればこの植物を除去出来る事やら。

 アレだよな。強力な魔法で焼き飛ばすとか、専用の薬、魔法が無ければ抑えられないとなると今は撤退しかない。

 だけど、とにかくここの敵を殲滅していくのも一応は手だ。

 村のほうに居る魔物に何かしらのヒントが隠されている可能性は高い。

 伝承の類に駆除をどう行ったか明らかにされていないので、具体的な方法は見つかっていない。

 ならば正攻法で攻めて、無理なら何かしら別の手を考えるしか無いだろう。

 蔓の攻撃は、俺の防御力を突破する事は出来ないようで、進みを妨害することは出来ていない。


「とりあえず、調査するために進むぞ!」

「はい!」

「はーい!」


 俺は走り出し、村にある植物の根元であろう中枢部に進む。

 そこには植物型の魔物が溢れかえっていた。

 敵の強さは俺を始め、ラフタリアやフィーロで処理できる程度。

 ただ、ラフタリアとフィーロには防御面で不安が残る。


「えっと……」


 魔物の名前はバイオプラント、プラントリウェ、マンドラゴラ。


 バイオプラントはこの植物の全ての総称で、プラントリウェは蔓で構築された人型の魔物。マンドラゴラはウツボカズラのような非移動型の魔物のようだ。

 フィーロの言っていた毒を吐くのはプラントリウェで頭に位置する大きな花から毒の花粉をばら撒く。

 次にマンドラゴラは蔓から酸性の溶解液を吹きかけ、弱らせた獲物を蔓で本体まで引き寄せて捕食するようだ。

 バイオプラントはこの二種の魔物を生産している大本の魔物だ。時折、膨れ上がった蔓が弾けて中からこの二種の魔物が出てくる。


 試しに除草剤を撒くと会心の一撃でも受けたかのように枯れる。

 盾の攻撃判定に違約しないらしい。

 まあ、感覚で言えば魔物というより凶暴な植物でしかないからか……。

 どういう基準なんだろうか?

 あれか、アンデットモンスターに聖水や回復魔法を掛けるみたいな、本来の用途と違うからだろうか。

 あるいは寄生状態を回復させる薬だから、とも考えられるが……。

 わからん。

 考えを広げてみると病原体はウィルスだから、ウィルスに効果のある治療薬を使えるのに似ているのかもしれない。


「どうしたものかな」


 ガンガンと俺に無意味な攻撃を蔓やプラントリウェは続けている。

 敵の攻撃に意味は無いが、毒の花粉の所為で若干息苦しい。

 酸も厄介だ。どうも防御力低下の効果があるようで、ステータスを見るとかなりの低下が起こっている。

 それでも突破できないのは良いのだけど。蛇の毒牙(中)がまったく効果を発揮しない。

 当たり前か。敵も毒を使うし、植物だ。


「ラフタリア」

「ゲホ……! なんですか?」


 空気が悪いからかラフタリアの奴、若干咽ている。

 完治したとはいえ、ラフタリアは以前呼吸器系を痛めているから弱いのかもしれない。


「一応、お前も除草剤を持っていろ」

「あ、はい!」


 俺は除草剤をラフタリアに投げ渡す。いざという時に使わせるとしよう。

 ……よくよく考えれば蠢く蔓。エロゲとかならヒロインが蹂躙されそうな題材だ。


「ナオフミ様?」


 ラフタリア辺りは捕まって犯されるとかそういうのが起こりそうな魔物だよな。


「なんか失礼なことを考えていますね」


 ピュルルと蔓がラフタリアに絡みつくけど、平然とラフタリアは引きちぎる。

 思いのほか耐久力は無いらしい。


「ナオフミ様? 早く行きますよ!」

「お、おう」


 先に進んでいくと、村の中心に大木があった。

 いや、よく見ると木ではなく、大きな蔓の集合体だ。


「あれが本体……だといいなぁ」


 と、思って集合体に近づくと集合体の幹から巨大な目のような器官が俺達を凝視する。


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 不気味だな。

 だけどあれが本体っぽい。


「ごしゅじんさまーフィーロいくねー!」


 フィーロが駆け出して本体の目玉に跳躍する。しかし途中で巨大な蔓が襲い掛かる。


「えい!」


 ゲシっとフィーロは強靭な足で蔓を蹴り飛ばしてそのまま飛び上がる……しかし悲しいかな、距離が足りない。


「ごしゅじんさまー」

「分かってる! エアストシールド!」


 俺は落下するフィーロの足元にエアストシールドを出し、足場として使わせる。

 盾の上に一度着地したフィーロはもう一度飛び上がって、目玉の目の前に到達した。


「てい!」


 ビチャ! っと音を立てて、目玉がフィーロの蹴りで消し飛ぶ。

 う……かなりグロイ。


「!!!!!!!!!!!!!!」


 蔓がメチャクチャ暴れだして大地が揺らぐ。

 やはり目玉を破壊した程度で倒せはしないか。

 うーむ……どうしたものか。


「倒れないねー」

「そうだな」


 目玉がシュウシュウと音を立てて再生していく。

 その最中……ふと、目玉の中に植物の種のような何かが見えた。


「ラフタリア、フィーロ。あの本体っぽい目玉の中に何かがある。そこに渡した除草剤を流し込んでみてくれ」


 クールタイムは終了している。次のエアストシールドは放てる。ちなみに俺にはプラントリウェとマンドラゴラが総出で攻撃していたりする。上から無限に思えるほど降ってくるんだ。


「分かりました!」

「りょうかーい!」


 ラフタリアはフィーロの背中に乗り、再生中の目玉に向って跳躍する。

 目玉は脅威を悟ったのか、何本もの蔓が二人に向って雨のように降り注いだ。


「シールドプリズン!」


 咄嗟に二人を守る盾の檻を出現させる。

 空中に存在する盾の檻、その中なら攻撃を凌げる。

 効果時間は15秒だ。

 その間に降りかかる蔓は全てプリズンで跳ね返せる。

 ゲ……蔓がプリズンを取り囲む。

 15秒経過し、プリズンが消える。その瞬間に俺はフィーロの足場になるエアストシールドを展開させる。


「てえい!」


 足場に乗ったフィーロに群がる蔓をラフタリアが剣で一閃する。

 見事に蔓は切断され、フィーロの二段目の跳躍は成功。

 徐に二撃目の蹴りを目玉に加える。


「!?????」


 目玉の奴、修復中だった部分に追撃を受けて動きが一瞬止まった。

 その隙を突いて、目玉の中にあった種っぽい部分にラフタリアが除草剤を振り掛ける。


「!!!!?????」


 凄い声とも音とも言い得ない振動が辺りに響き渡り、バイオプラントの動きがピタリと止まる。


「やったか?」


 自分でも死亡フラグな気もするが、別に俺は攻撃を受けても痛くもかゆくもないので問題ない。

 しかし、それだけでバイオプラントは、また動き出した。


「すいません。上手く撒けなかったようです」

「いや、ちゃんと掛かっていた。どうやら薬としての効果が枯らすに至らなかったのだろう」


 となると打つ手が無いなぁ……。

 と、考えた所で閃く。

 俺には薬効果上昇の技能がある。さっきだってその技能で人を助けた訳だし。

 という事は俺が使ったらどうなるんだ?


「じゃあ次は俺が使ってみるとしよう」


 除草剤を片手に群がる敵を無視して歩く。

 最近、気付いたのだけど、俺の防御力は力にも範囲が及んでいるらしく、大量に敵にしがみ付かれても進める。

 ただ、攻撃となるとてんで効果を発揮しないようだ。

 だから大量の魔物を抱えても全く問題なく歩ける。

 で、先ほどのバイオプラントの根元に辿り着いた。


「本当ならフィーロに乗って患部に撒いた方が効果が高いのだろうけど」


 俺は根元に除草剤を何個も撒く。


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????」


 先ほどよりバイオプラントの動きが強まる。まるで断末魔かの様な振動だ。

 そしてバイオプラントは目玉の部分から茶色に染まり、枯れていく。

 スーッと音を立てているかのように、全てが枯れ始めた。

 バキバキと音を立て、バイオプラント本体が崩れ落ち、俺達は急いで避難する。


「おお……」


 見れば他の魔物も全てが茶色に染まっている。実った果実以外の全てが茶色一色になり、辺りで動いているのは俺達だけになった。

 そして……バイオプラントが聳え立っていた場所に光り輝く種が降り注ぐ。

 ……あれ、放置していたらやばそうだなぁ……。


「一応、掃除だな。盾にも吸わせられるかもしれない。集めておくぞ」

「はい」

「ごっはん!」


 種などを集めている俺達を他所に、フィーロは残った果実と芋を頬張っていた。


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