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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
盾の勇者の成り上がり
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異世界交流

「さて、俺もやる事やらないとな」


 波での戦闘時間は、短ければ短いほど良いのだ。

 今はタクトの所為で短くなってしまった波の残り時間を如何に解消するのかという事を優先すべきだろう。

 まったく……実質何回分の波まで来てしまったのか皆目見当もつかない。

 その日から一週間、俺たちは、それぞれのメンバーでLv上げと波を鎮める作業に勤しんだ。


 全員分の強化方法を実践したお陰で、全体的に狩り場のLvが上がってしまったが一応は戦える状態になっている。

 まあ、問題は……民間人なんだけどさ。

 城から出た所で遭遇するバルーンでさえLv40相当だし……行商も困難になってしまっている。

 一般人じゃ痛いじゃ済まない。冒険者でさえ苦戦する強さになってしまっているのだ。


 幸いなのは倒した時の経験値も膨大になっているのだけど。

 そう言う訳で龍刻の砂時計には長蛇の列が連日出来てしまう事態になっていた。

 夜、城の方での報告を受け、俺も感慨深くなった。


「バルーンか……懐かしいな」

「イワタニ殿……あの時は申し訳ありませぬ」

「水に流すつもりはないが、今は気にするな。しかしバルーンでさえLv40か……厄介だな。あそこはバルーンが多い」

「は?」


 クズが首を傾げている。

 なんだその俺がおかしいみたいな態度は。

 あそこには多いじゃないか。

 随分昔な気もするが、あそこで二週間も居たんだ。

 知らないはずがない。


「城下町の平原に生息するバルーンは現在でも少数と報告が来ておりますが?」

「何言ってんだ? 俺があそこを根城に野宿していた頃は朝起きると全身噛みつかれているくらいいたぞ」

「おかしいですねー……」


 クズは首を傾げている。

 何かおかしい事でも俺は言ったか?

 確かに最初の町の方では遭遇率が高いと思ったが、ネットゲームのような世界だと思って納得していた。


「どうしたのー?」


 フィーロがクズとの話に入り込んでくる。


「いやな、城を出た草原にバルーンはそんなにいないって話をしていてな」

「うん。あんまりいないよ?」


 ……はい?

 フィーロまでクズの話に同意するとはどういう事だ?


「そう言えば、ごしゅじんさまと居るとよく魔物と会うね」

「……そうなのか?」


 ラフタリアに目を向ける。

 なんだかんだでラフタリアは山籠りをしているし、その辺りは詳しいはず。


「はい。ナオフミ様とご一緒の時はよく遭遇しますね。考えてみれば街道で魔物と遭遇するのは珍しいと思います」


 なんだろうか。

 非常にいやーな気がしてくる。


「でもフィーロは村の連中のLv上げをしていたじゃないか」

「いっぱい居る所に行くからね。でもごしゅじんさまと一緒だともっと会えると思うよ?」


 まあ、山奥とかに走って行く訳だから、自然と魔物の生活圏内に入る訳でー……行商時にも魔物に遭遇するのは俺の運が悪かったのか?

 いや、買取商とかに脅しが効いたんだが。


「試してみてはどうでしょう?」

「試したくないがー……」


 そんなもんは巡り合わせの運と言う奴で実際は偶然だ。

 と、思いこむことにした。


 世界全体のLv上げ活動をさせないと普通に生活するのさえ困難になるだろう。

 魔物が街道に出没しないのは人がそれだけ厄介な存在であるからに他ならない。

 だが、今ではその街道ですら、魔物が出没する状況になりつつある。

 と言う事らしい。


 ゼルトブルの波を抑え、別の国の波を乗り越えた翌日。

 一応、特に問題なく波を抑えることが出来ている。

 俺も拍子抜けだ。

 確かに魔物は目に見えて強くなっているが、勇者勢が総出で挑めば驚くほどアッサリと終わらせられる。


 特に語る程の無い……初めて波に挑んだ時よりもアッサリだ。

 まるで作業。

 神を僭称する存在の介入によって何かあるのではないかと警戒する所だが、何もなかったのだ。


 グラスも一度、あっちに行って、報告に戻ってきたのが昨日。

 あちらの世界の勇者は碌に戦っておらず、状況は芳しくない。


 俺達の方で素早く対処しているお陰か、波の被害は……一応少ないが、それでも相当な打撃を受けているらしい。

 協力しているグラスの世界の眷属器もかなり厳しい戦いを強いられているそうだ。

 近々滅ぶかもしれないと嘆いている。


 フォーブレイとの戦争が完全に終わった事、フォーブレイが既に敗北したことが世界中に轟き。

 メルロマルクが、結果的に一番の大国として世界に認知されることとなった。

 そして波の正体とメルロマルク近隣に大きな大陸が出現した事も知られている。

 波によってどれだけ世界融合したかの調査も終わった。


 メルロマルクの半分程度の国土が融合してしまったそうだ。

 一応、グラスの世界の人種も……事態を受け入れている。

 文字や言語の違いで、まだ混乱しているが、勇者が間に立つことで、理解を深めようとしている段階だ。

 その為、今日は融合してしまったグラスの世界の代表者に謁見する事になっている。


「なあグラス」

「なんでしょうか?」

「お前の世界の人種ってどんなのなんだ?」

「どんなとは?」

「いや……俺みたいな人間とか居るのかとか、この世界の連中と何か違う奴がいるのかと思ってな」


 ぶっちゃけ、グラスってこの世界の連中とも何か違う種族なんじゃないかと思う。

 実際、時々体が透けている時があるから人間ではないだろう。

 仮に名前を付けるなら半霊、だろうか。

 某国の昔話では人間と幽霊が結婚して子供を産んだ、みたいな話もあるし、それに近いかもしれない。


「そう言えば、話をしていませんでしたね。はい。私達の世界にも人間は居ます。そして私はスピリット……魂人と呼ばれる種族です」

「スピリット?」

「ええ、人間とは異なる、ステータス魔法で強くなります」

「一応は聞いておくか、教えてくれ」

「まず、わかりやすく言えば……人間に存在する体力、魔力、魂力が一緒です。Lvもありませんね」


 魂力?

 これはよくわからないが、SPやEPと言う概念かもしれない。


「Lvが無い? それってどうやって強くなるんだ?」

「魂人はエネルギーと言う項目で強さを測るのです。それが体力であり魔力であり魂力でありLvです」

「……じゃあ魔法とか使うとそれだけスタミナというか体力も減る……と言う事か?」

「そうなります。同時に攻撃力や防御力も関わってくるのです。少なければそれだけ弱まります」


 なるほど。

 だから初めて戦った時、勇者共を倒して消耗していたから弱い俺達は戦えたのか。

 じゃなきゃ錬達を簡単に倒したグラスに勝てるはずもないよな。


「魔物を倒してLvが上がるのか?」

「魔物を倒した場合、その魔物が内包していた大地の力……人間で言う経験値をエネルギーとして手に入れます。まあ、消耗が激しいと赤字ですけど」

「なんとも厄介な種族みたいだな」

「それほどでもありませんよ。自動で毎分、回復していきますので」

「じゃあ、時間と共に人間で言う所のLvもあがるのか?」

「限界量増加の能力を取得すればですね。それに魔物を倒した時に手に入れた分は自動で回復する限界量よりも多くは入ります」

「ふむ、回復魔法とかを掛けるとどうなるんだ?」


 エネルギーが回復するなら、その分盾として役立ちそうな種族だ。

 世界中から回復魔法の使い手を集めてきてグラスと同じ種族の人間を超強化、みたいな。


「人間の魔法では回復しません。同族のエネルギー供給なら別ですが」

「そうか……じゃあ」


 まあ、そううまい話な訳無いよな。

 俺は盾から魂癒水を取り出してグラスに投げ渡す。


「その水はこの世界じゃSPを回復する手段なんだが、お前が飲むとどうなるんだ?」

「どうでしょうか? 試してみましょう」


 と、グラスは俺が渡した魂癒水を飲み始める。


「……エネルギーがかなり増えました。かなり便利な飲み物です」

「そうか」


 魂癒水は量産が難しいが、グラスの強化には良さそうだな。

 後で勇者全員に作らせておくか。


「ではお礼にこちらの世界にはこう言う鉱石があるので受け取ってください」


 今度はグラスが赤い結晶を俺に渡す。


「なんだこれ?」

「大地の結晶と呼ばれる私達の世界では魔力を回復させる道具です。強く握りしめてみてください」


 言われるまま、俺は強く握ってみた。


 龍脈解放! EXP3000獲得!


 と、魔物を倒した時の経験値獲得表示みたいのに映し出された。

 3000……結構馬鹿に出来ない量が手に入ったぞ。


「経験値がかなり手に入った」

「どうやら世界が異なると、効果が異なる道具が存在するようですね。正直な所ですが、先ほどの飲み物はかなり優秀に感じます」

「こんな結晶を握るだけでこんだけ経験値が入るのなら、交換しても良いかもしれないぞ」


 ……異文化交流じゃないが、異世界交流でそれぞれが望む物を交換すると言うのは、波を乗り越えるのに必要かもしれない。

 この世界ではSP回復アイテムが、グラスの世界ではエネルギー獲得アイテムになり。

 グラスの世界では魔力回復アイテムがこの世界では経験値獲得アイテムになる。

 武器屋の親父に解析してもらうのが先だが、この結晶には可能性が眠っている気がする。


「スピリットに関してはわかった。人間とスピリットしかいないのか?」

「いえ、他に晶人、ジュエルと呼ばれる宝石が核の人種がいます」

「どんな種族な訳?」


 昔似た様な種族が登場するゲームをやった事がある。

 希少な宝石で人々に狙われている、みたいな設定だったな。

 グラスの話を聞いた感じ、市民権を得ている様に聞こえるが、どうなんだろう。


「言うなれば……力を持つ宝石が意志を持って人になった種族でしょうか。人と呼ぶのは難しいと迫害を過去に受けましたね」

「へー……スピリットもか?」

「はい……過去、人間はスピリットをこの世に留まる幽霊であると、迫害した時代があります」

「違うのか?」


 なんて言うか同一の物に感じる。

 魂とか宝石とか、こう精神的な印象を受ける連中だな。


「スピリットと人間の魂は違います。確かに近い性質を持ちますけれど、人間の魂とは根本的に違います」

「そうか」

「話は戻りますが、ジュエルの主食は鉱石で、食べた鉱石によって、能力が変動する特徴を備えています。ステータス魔法は人間と同じですけどね」

「なるほど……ん? これってどう増えるんだ? 生態がわからないんだが……」

「自然発生するものも居ますが、人間と同じく繁殖もしますよ?」


 石が増えるねー……全然想像できない。


「今回の会談にも来る予定なので、確認してください」

「わかった。スピリットにジュエルね」

「後は、こちらの世界にも存在する種族である亜人が僅かにと言う所ですね」

「ふむ」


 ちなみにグラスの言う亜人ってどんなのかと思ったらエルフとかドワーフだった。

 俺が知る亜人って獣耳っぽいの多いから、人間の亜種みたいなのは珍しいと思う。

 昔の俺だったら興奮していたんだろうか?

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