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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
盾の勇者の成り上がり
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よそ見

 ラフタリアとキツネっぽい女が睨みあっている。

 見た感じだとキツネ女は幼い様に見える。

 けど、喋り方から何まで年寄りくさいな。

 ロリババアって奴か。


「ラクーンのブスめ。わらわを相手に勝てると思っておるのか」

「良くわかりませんが、見た感じフォクス種とツイーイル種のハーフさんが何の因果で私を?」

「身の程を知らぬ愚かなラクーンめが、わらわに変化で勝った事があるからと調子に乗るな!」

「……確かそれって昔話で聞いた事がありますけど」


 そう言えば、亜人の昔話でそう言う話を調べた事があったなぁ。

 ラフタリアの種族ってどんな伝説があるんだろうかって話。


 興味を持ったから調べた所、ラクーン種の魔法でフォクス種の……大妖怪とか言うのが化かされて封印されたとか言う伝承があるらしい。

 その事を恨んでいるのか?


 ラフタリアが相手をしているキツネ女の尻尾が増えて行く。

 え? 九尾のキツネとかそんなポジション?


「あの時の雪辱……断じて許さん!」

「言いがかりですけど、ナオフミ様と敵対し、あのような身勝手な者と共に居る者なら容赦しません!」


 キツネ女が細身の剣を取り出して構える。

 ボンっと音がしてラフタリアとキツネ女……トゥリナだったかがそれぞれ、分身、更には様々な種類、属性の魔法に見せかけた幻覚魔法を駆使して斬り合いを始める。

 化かし合いと言うのが正しいだろうか。


 ラフタリアが貫かれたと思った瞬間、トゥリナがラフタリアに突かれている。

 もちろん、化かし合いなので、実際には起こっていない出来事なんだろうがな。

 この戦いに割って入るのは難しいと思う。


 高いLv差を強力な支援魔法で埋めたが、機能している様だな。

 これなら意識を他の奴に向けても大丈夫だろう。


「ラフー」


 さて、実は……ラフちゃんがどさくさにまぎれている事を、あの狐女は気付いているかな?



 次はフォウルだ。


「今すぐ降参して邪魔をしないなら見逃してやる。アオタツ種の女」

「仮にもアオタツ種最強の族長に向かってなんて物言いだ。ハクコ……いや、匂いからして混血か? 愚かな」

「知らないな。俺のルーツなど興味ない」


 フォウルが獣人化して拳を前に向ける。

 四聖と七星にどこまで差があるのか、が不安だがフォウルの瞳を見る限り大丈夫そうにも思える。


「お前にアオタツ種の恐ろしさを見せてやろう」


 と、フォウルと相対するアオタツ種、ネリシェンのシルエットが徐々に膨らんでいく。


「……」


 やがてネリシェンは大きな、東洋の龍に変身した。


「長い歴史の中で、この姿に変身できる者こそが族長の証! 雑種のハクコがここまで来れるか?」

「くだらないな。仮にその姿に成れるとしてもお前如きには使わない」


 ぶんぶんと拳を振り、挑発しながらフォウルは答える。


「さあ、ハクコであり小手の勇者! 長年の因縁に終止符を付けてくれる! アオタツ種こそ、最強の亜人種であると!」


 ネリシェンが水の魔法を詠唱すると同時にフォウルにぶつける。

 それをフォウルは軽く往なして瞬時に近付き、アオタツ種の顔面に蹴りを加える。


「今、何かしたか?」

「舐めるなぁああああああああああ!」


 雷鳴が轟いてフォウルに向けて降り注がせる。

 風と水を使いこなす種族……と言う事か。


「エアスト・ラッシュⅤ!」

「うぐぅ!」


 フォウルの拳がネリシェンの腹部にめり込んだ。


「あ、が……ぐ……」


 フォウルはタダのハクコ種ではなく、小手の勇者だ。

 アオタツ種の族長とやらが今のフォウルの相手になるかは怪しいものだな。



 雷鳴轟く空を背景にサディナとシャテだったかが睨み逢う。

 フォウルと戦っているネリシェンが放った魔法でその辺りは水中の様になっている。

 シャテも既に戦闘形態に移行していてサメ獣人の姿をしていた。


「死ね!」


 直進してくるシャテが出す突きを前にサディナは……。


「お姉さんはね。大事な時にいっつもその場所に居られないのよね。だけど、今回は違って安心しているわ」


 俺の掛けた援護魔法の影響もあって全て紙一重で避けている。


「大事な人を守れないってとても悲しい事よね。ナオフミちゃんの気持ちはお姉さんは痛いほどわかるわ……」


 サディナはシャテが放った尻尾の一撃を敢えて顔面に受けて仰け反る。


「守れなかった憤りと、その憎むべき相手を見つけた時の気持ちも」

「その余裕! いつまで持つか!」


 ペッと、血を吐き捨ててサディナはシャテを睨む。


「アトラちゃんの仇、お姉さんだって許さないわよ。だから今すぐ退きなさい。そうしたら……少しの間、生きながらえるわ」


 ガシッとシャテの持つ銛を片手でつかんで言い放つ。


「たかがノイド種とクシャ種の分際で私の前に立ちはだかった事を後悔する前に」


 ゾワッとサメ肌なのに鳥肌を立ててシャテが下がる。


「どうする?」

「な……なめるなぁああああああああああ!」


 いきり立って銛を大きく振りかぶって、魔法と共に放ってきた。


「メイルシュトリームスピア!」


 渦を作りながらシャテの放った技はサディナに向かって飛んでいく。


「そうそう、何か勘違いしているようだけど」


 バチバチとサディナは得意の雷の魔法を唱えて銛に降り注がせる。

 そのスパークする銛を見てシャテは唖然としていた。


「な……ルカ種が……雷!?」

「お姉さん、ルカ種なんて種族じゃないわよ。近隣種なのでしょうけど……あんな弱い連中と一緒にされたら困るわ」


 サディナの放った雷撃銛だったかがシャテの放った技をアッサリと消し飛ばす。


「お姉さん怒っているのよね。貴方は、お姉さんの……八つ当たりの相手としてどれだけ持つかしら? 本気で行くわよ」


 バキバキと……サディナはもう一段階変身する。

 色々とツッコミを入れたいが、お前は完治していなかったのかと後で指摘しよう。


「ナオフミちゃんから授かった力がどれだけの物か、やってみましょうね」


 トドみたいな、茶色の化け物に変身したサディナにな。



 後は上空での戦いか。


 こちらには錬がいる。

 ガエリオンだけでは危なかったが、万が一にも敗北はありえない。

 それだけの力量差が今の俺達……勇者にはあるのだ。


「お前等に竜帝の恐ろしさを叩きこんでくれる!」


 ちょうど、レールディアとか言う巨竜が、親ガエリオンが唱えるよりも遥かに強力そうな炎のブレスを吐き出す。


「メガプロミネンス・ノヴァ!」


 そこにガエリオンに乗った錬が剣を高く掲げて魔法を唱えた。


「リベレイション・マジックエンチャントⅩ!」


 必殺の魔法に見える強力な炎のブレスは、錬の剣に吸い取られて行く。

 確かマジックエンチャントは受けた魔法を吸収して剣に付与できるんだったか。

 ドラゴンのブレスも対象に入っているみたいだな。


「はいくいっくー」

「ハイクイック!」


 その周りを高速で駆ける二つの影、フィーロとグリフィンだ。

 若干フィーロの方が締まりの無い声音だ。


「飛ぶフィロリアル……過去に先祖達が滅ぼしたはず、生き残っていたの!?」


 そ、そうだったのか!?

 グリフィンが空飛ぶフィロリアルを滅ぼしたとか……。

 ここに来てまさかの新事実。

 いい加減にしてほしいもんだ。


「違うよー」


 間抜けな問答をしつつフィーロとグリフィンは絡み合う様に各々攻撃を繰り返す。


「「ドライファ・トルネイド!」」

「すぱいらるすとらいく!」

「スクリューストライク!」


 そんなフィーロ達を余所にガエリオンが大きく息を吸って、ブレスを放つ。


「キュアアアアアアア!」


 その色は白。

 確か親ガエリオンが言っていたな。

 特殊なブレスの練習をしていると。

 何だったか? 妨害を目的とした難しいブレスがもう直ぐ完成するとか言っていた。

 おそらく、それなのだろう。


「ぐ……なんだ!?」


 レールディアが喉を詰まらせたように咽る。


「次はこっちの番だ!」


 錬が宣言し、剣を向ける。

 その刀身は赤く輝いている。


「フレイムエッジ、流星剣Ⅹ!」


 深紅の斬撃が巨大な竜帝に向けて放たれる。


 うん、全員俺が手を加えるまでもなく大丈夫そうじゃないか。

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