ご褒美
フィーロには一応、俺のマントを羽織らせて武器屋に顔を出した。
「お、アンちゃん」
俺が来るのを待っていたと言わんばかりに親父は手を振る。
「何かあったか?」
「おうよ。ちょっと待ってな」
そう言って武器屋の親父は店を一度閉店して、俺達を案内する。
すると俺達に魔法書をくれたあの魔法屋にたどり着いた。
「あらあら」
武器屋の親父と一緒に顔を出すと魔法屋のおばちゃんは朗らかに笑って出迎える。
「ちょっと店の奥に来てくれるかい?」
「ああ、フィーロ、俺が許可するまで本当の姿になるなよ」
「はーい」
魔法屋の奥に入るとそこは生活臭のする部屋と、作業場らしき部屋があった。
俺達が案内されたのは作業場らしい部屋だ。
天井がやや高く、3mくらいはある。
床には魔方陣が書かれ、真ん中には水晶が鎮座している。
「ごめんねぇ、作業中だからちょっと狭くて」
「いや……それより、この子の服はここで売っているのか?」
「朝一で知り合いに尋ねてみたら魔法屋のおばちゃんが良いものがあるって言うからよ」
「そうなのよ~」
おばちゃんは水晶を外して、台座に古いデザインのミシンっぽい道具を載せる。糸巻き機だっけ? 眠り姫とかの童話で出てくるアレ。
「その子、本当に魔物なのかしら?」
「ああ、だから本当の姿に戻ると服が破ける。フィーロ、元に戻れ」
ここでなら本当の姿に戻しても大丈夫だろう。
「うん」
俺が指示を出すとフィーロはコクリと頷き、マントを外して元の姿に戻る。
「あらあら、まあまあ」
魔法屋のおばちゃんはフィロリアル・クイーンの姿に戻ったフィーロを、驚きながら見上げる。
「これでいいの?」
声はフィーロのままだからなんとも異様な光景だ。
こんな生き物と会話が成立するというのもファンタジーの世界に来た時のお約束だけど……。
ふと、ラフタリアの方へ目を向ける。
「なんですか?」
「いや」
そういえばラフタリアも亜人だ。
よくよく考えれば、ロマンを感じていた頃の俺からすれば大興奮の相手だったかもしれない。
そういう意味では元康のあの反応も合点が行く。今の俺からすれば最早過去の話だがな。
「じゃあ服を作るかしらね」
「作れるのか? 変身しても破れない服が」
「そうねえ……厳密に言えば服と呼べるのか分からないけどね」
「は?」
「勇者様は私が何に見えるかしら?」
「魔法屋……魔女っぽい」
「そうよ。だから変身という事には多少の知識があるのよ」
この世界の常識って言うのは今一理解が及ばないが……俺の知る魔女には確か動物に変身するとか出来たよな。
「まあ、動物に変身するというのは大体、面倒な手順と多大な魔力、そしてリスクが伴うのだけどね。変身が解ける度に服を着るのは面倒でしょう?」
む? 変身というのは魔法使いとかなら出来るらしいな。
おばちゃんは裁縫用の木製の道具を弄りながら答える。
見たところ俺の世界で言う、ミシンに近い。
「自分の家とかで元に戻れるのなら良いけど、見知らぬ場所で変身が解けたらそれこそ大変よね」
「まあ、そうだよな」
主に服とかだろう。全裸で歩いていたらそれこそ目立つ。
「だから変身しても大丈夫なようにそれ相応の服があるの、変身が解けると着ている便利な服がね」
「なるほど」
一理ある。変身中は消えて、変身が解けると着ている服か。
「魔物のカテゴリーに入ってしまったりする亜人の一部にも伝わる技術なのよ。有名所だと吸血鬼のマントとか」
あー……確かに蝙蝠に変身したり、狼に変身するとか昔の映画で見た。この世界にもいるのか。
「で、これがその服の材料を作ってくれる糸巻き機よ」
「へー……どういう理屈で変身すると服に?」
「厳密に言えば服……とは言いがたい物かしら、服に見えるようにする力が正確ね」
俺は魔法屋のおばちゃんの返答に首を傾げる。
どういう意味だ?
「この道具は魔力を糸に変える道具なの、そして所持者が任意のタイミングで糸か、魔力に変えれる訳」
「分かりやすく言うと人型になった時、魔力を糸に変えれるようになるってことさ」
「ああ、そういう事か」
武器屋の親父の補足でなんとなく理解する。
確かに服とは言いがたいかもしれない。人間の姿をしていない時は形の無い魔力となり、所持者の体の中で循環し、人型の時には形を成して服となる。
「それじゃあ、フィーロちゃんかしら? この道具のハンドルをゆっくりと回して」
「うん」
フィーロは糸巻き機のハンドルを回し始める。
すぐに糸が出てきておばちゃんが糸巻き機の先にある回る棒に括り付ける。すると糸はそこに集まって糸巻きとなっていく。
「あれ? なんか力が抜けるような感じがするよ」
「魔力を糸に変えているからね。疲れるはずよ。だけどもうちょっと頑張って、服を作るにはまだ足りないわ」
「うう……おもしろくなーい」
……本質的には子供だからだろう。生後1週間にも満たないからな。
フィーロはキョロキョロと糸巻き機を回しながらアッチを向いたりコッチを向いたりしている。
「我慢しろ、それが終われば約束を守ってやるから」
「ゴハン? おいしいもの?」
「ああ」
俺は約束は守る男だ。フィーロには後で美味しいものを食べさせると約束していたことだしな。
「じゃあがんばる!」
ギュルギュルとフィーロが糸巻き機を回しだした。
「わぁ、がんばるわね」
おばちゃんも驚きの速さらしい。
「武器屋の親父、お前とも約束があったな。この後は暇か?」
「昼過ぎまでは閉店すると店には書置きを残しておいたからな。アンちゃん、何か奢ってくれるのか?」
「そんな所だ。大きな鉄板とかを用意できないか?」
「ん? そんなものを何に使うんだ?」
「料理に使うんだよ」
「アンちゃんの手料理か? ちょっと期待しているのとは違うんだが」
「なんだよ」
ガッカリした表情の親父にちょっとムッとする。
「まあ期待しておくか」
「じゃあラフタリア、市場で炭と、適当に野菜、肉を買ってきてくれ、フィーロの食欲を考えて5人分くらいな」
「わかりました」
銀貨を渡し、ラフタリアに買い物に行かせる。
「ゴッハン~ゴッハン~」
フィーロのテンションも高く、糸巻き機がグルグルと回っていく。
「そろそろ良いかしらね。回すのをやめて良いわよ」
それからしばらくして、おばちゃんが回すのをやめさせた。
「もっと回したらごはん増えるかな?」
「増えない。もう回すな」
「は~い」
フィーロは魔物の姿で俺の元へ戻ってくる。
「ごしゅじんさま~ごはん」
「まだだ。服が出来てないだろ」
「えー……」
非常に残念そうにフィーロは声を出す。ラフタリアがまだ戻っていないのだ。ゴハンもクソも無い。
「店を出るときには人の姿に戻るんだぞ」
「はーい」
本当に分かっているのか?
「後はこれを布にして、服にすれば完成ね」
魔法屋は出来上がった糸を、俺達に見せる。
「布の方は機織をしてくれる人に頼めば何とかなるだろ」
「そいつにはあてがある。付いてきな」
「じゃあ、買い物に出かけたお嬢ちゃんが戻ってきたらなんて言えば良いかしら?」
「城下町を出る所にある門で待っていてくれと伝えて欲しい」
「分かったわ」
武器屋の親父の勧めで、そのまま俺達は魔法屋を後にする。
「料金は後で武器屋から頂くわよ~」
「……幾らくらいになりそうなんだ?」
非常に気になるので尋ねてみる。
「魔力の糸化の事? 水晶がちょっと値が張るのよ、勇者様には原価で提供させてもらうけど銀貨50枚よ」
クッ! どうしてこうもフィーロには金が掛かるのだ。
これから糸を布にして服に変えるとなるとどれだけの金銭が掛かるか分かったもんじゃないぞ!
で、機織をしてくれる人の所に行き、糸を布にしてくれるという話になった。
「珍しい素材だから、こっちも色々とやらなきゃダメっぽいなぁ……たぶん、今日の夕方には出来上がるから、今のうちに洋裁屋に行ってサイズを測ると良いよ。後で届けとく」
との事なので、俺達はそのまま洋裁屋に行く。
服一つが出来るのにこんなにも時間が掛かるとは……かなり大変なんだな。
「わぁ……凄くかわいい子ですね」
洋裁屋には頭にスカーフを巻いたメガネの女の子が店員をしていた。
ちょっと地味な印象を受ける。なんていうのだろう。俺の世界だったら同人誌とか書いてそうなイメージの平均より上の容姿をした子って感じ。
「羽が生えていて天使みたい。亜人にも似たのがいるけど……それよりも整っているわね」
「そうなのか?」
親父に聞くと肩を上げられた。
「羽の生えた亜人さんは、足とか手とか、他の所にも鳥のような特徴があるのよ。だけどこの子、羽以外にそれらしいのは無くて凄いわ」
「ん~?」
フィーロは首を傾けて洋裁屋の女の子を見上げる。
「ああ、コイツは魔物なんだ。人に化けている。本当の姿だと普通の服じゃ破けるんだ」
「へぇ……じゃあ依頼は魔力化する布の洋裁ね。面白いわぁ」
何かメガネが輝いてる。
やっぱりこの子、俺のいた世界じゃオタクに該当するタイプだ。
似た様な知り合いが同人誌即売会で販売側にいるので懐かしい。
もちろん俺はその子からサークル参加の入場券をもらって度々入っていたので親しみ易いタイプでもある。
へぇ……異世界だとこんな仕事をするんだな。
「素材が良いからシンプルにワンピースとかが良いかも、後は魔力化しても影響を受けそうにないアクセントがあれば完璧!」
「へ? あ、へ?」
マントを羽織ったフィーロをメジャーでサイズを測定し、何やらデザインを始める。
「魔物化した時の姿が見たいわ!」
フィーロが困り顔で俺の方を見てくる。うん、俺もなんか空気に飲まれそう。
「ここじゃギリギリだな」
天井の高さが2m弱しかない洋裁屋じゃあフィーロが元に戻った時に天井に頭がぶつかるな。
「座って戻る?」
「まあ、それで良いだろ」
フィーロは天井を気にしながら魔物の姿に戻り、洋裁屋の女の子を見つめる。
「おおー……ギャップが良いアクセントね!」
フィーロの本当の姿にも動じないとは……この洋裁屋、できる!
絶対に同人誌の類に手を出す性格をしていやがる。ここが異世界でよかったな。
「となるとリボンが良いアクセントになるわ」
フィーロの首回りを測定し、洋裁屋は服の設計を始めた。
「じゃあ素材が届くのを待っているから!」
何やら興奮気味に答えられる。
「コイツは良い職人なんだぜ」
「だろうな」
ああいうタイプは一度火がつくと凝るタイプだ。仕事は必ずやり遂げるだろう。
「ま、明日には完成しているだろうな」
「早いな。それよりも結局、金額は幾らになるんだ? 合計だ」
「アンちゃんにはどれも原価で提供したとして……銀貨100枚って所だろうなぁ……」
くっ……目も当てられない。
「フィーロ、分かっているな。お前には銀貨400枚もの大金を掛けたんだ。相応に働いて返してもらうぞ」
「はーい!」
本当に分かっているのか? 人型に戻ったフィーロと一緒に洋裁屋から出る。
とにかく、やる事は大体終わったので、城下町の門で待っていたラフタリアと合流する。
「ナオフミ様、言われた通りの食材を買ってきましたよ」
「フィーロに合計銀貨400枚掛かった。ラフタリアはもっと安かった」
「私が安い女みたいな言い方しないでくださいよ」
はぁ……これでやっていくしかないか。
「じゃあ親父、鉄板を持ってきてくれ、フィーロ、お前は荷車を武器屋の前に付けて運んでくるんだ」
「うん!」
「おうよ」
フィーロはトテトテと武器屋の親父と一緒に行き、しばらくすると荷車を引いて帰って来た。
……なんで人の姿で引いてくるかな。
荷車には俺の想像の範囲の鉄板が入れてある。
「よし、じゃあ城を出て、草原の方にある川原に行くぞ」
そうして川原に到着した俺達。
俺は早速、石を詰んで鉄板を置き、下に炭を敷いてから火を点ける。
「ラフタリアと親父は火の世話をしておいてくれ」
「あ、ああ……」
「はい」
曲がりなりにも武器屋の親父だ。火の管理はお手の物のはずだ。
「フィーロは?」
「お前はそうだな……バルーンが近寄ってこないか見張っていろ」
「はーい!」
変に好奇心を働かされてフィーロに参加されると失敗しそうだから別の仕事をさせておく。
俺はラフタリアが調達した野菜や肉を適度な大きさにナイフで切り、一方は鉄串を通しておく。
「炭の準備ができたぞアンちゃん」
「ああ」
親父とラフタリアが指示通りに鉄板を熱くしてくれたので、鉄板の上に脂身の肉を先に乗せて油を滲ませる。
それから野菜や肉をばら撒き、隅の方で直火で鉄串に刺した物を焼いて転がす。
「アンちゃん器用だなー」
作業用のナイフや木の棒を使って肉や野菜を焦げないようにひっくり返す。
「まあ、こんな所だろう」
そう、川原でバーベキューが今日の昼飯、兼フィーロへのご褒美だ。
「フィーロ、できたぞ」
「はーい」
匂いで既に涎を垂らしていたフィーロがやってきて俺の渡したフォークを使って肉を食べる。
「わぁ! 凄く美味しい!」
パクパクとフィーロは焼きあがった肉や野菜を口に放り込んでいく。
「コラ、みんなの分もあるんだから全部食うなよ」
「ふぁーい」
頬張りながら頷くフィーロ。
本当に分かっているのか?
「そんな訳だ。ラフタリアと親父も食え」
「はい」
「おうよ」
俺の渡した葉っぱを小皿にラフタリアと親父も俺が焼く肉と野菜を食べ始める。
「お、こりゃあ美味い。ただの焼いた肉がこんなに美味しいなんて驚いた」
「何故かナオフミ様が作る料理は不思議と美味しいんですよね」
「世辞として受け取っておく」
「お世辞じゃねえよ。これ、店が開ける次元じゃないか?」
親父が首を傾げながら料理をついばんで行く。
「理由として考えられるのは習得した料理スキルの所為だろうな」
「盾の力か?」
「ま、そんな所だ」
先ほどから俺の視界の隅に、
焼肉ができました。品質、良い→上質
と、変化しているアイコンが引っ切り無しに出ている。
「不思議な盾だよなぁ。本当に羨ましくなって来たぜ」
「外せねえし、かなり不便なんだぞ」
攻撃力無いし……。
そうそう、ビーニードルシールドの類にある専用効果『針の盾』は敵が俺に与えようとした攻撃の一部を跳ね返すというカウンター系の効果がある。
だけど、これ……バルーンとかの頭が悪い魔物相手じゃないと倒すまでに逃げられる可能性が高い。
さすがに不利を悟ったら魔物だって逃げる。
頭の良い奴は俺を無視してラフタリアを狙ったりするから面倒だ。
「アンちゃんも大分強くなってきたんじゃないか?」
「他の勇者と比べたらどうか分からないな」
「そうだろうけど、伝説の武器ってどんな力が備わるんだ?」
「そうだな……俺の経験則だが良いか?」
「ああ」
「じゃあ――」
色々と技能を修得しているので、ある程度やれば人並み以上には出来るのが伝説の武器に備わっている力のようだ。
しかもステータスアップの類は能力解放すれば累積して俺のステータスに付与される。
モンスター、素材、レベル、ツリーに繋がる盾、など複数の条件を満たせば変化させ装備できる。
そして盾を装備して能力を解放すれば専用効果以外は永続的に効果を得られる。
解放さえすれば、弱い盾でもそれなりに防御力も維持できるという事だ。
装備ボーナスは引き継がれるので、態々別の盾にしなくても技能は発動するし、解放後は使っていない盾の方が多い。
ステータスにはどれだけ付与されたか、一応の数字として見れる。ラフタリアと比べると俺の総合ステータスの方が高い。曲がりなりにも勇者という事だろう。
特に防御力だけ見たら3倍以上ある。更にこれに加えて盾の解放による永続効果も加わる。
元々攻撃を受けないラフタリアには良い防具を与えていないので一概には言えないが、盾の勇者としての潜在能力は、やはり防御力に重点を置かれている。その代価として攻撃力は10分の1以下だ。
この世界の住人と勇者の違いはこの盾による付与効果による差なのだろう。
でなければ防御力に特筆する種族やモンスターと俺は変わらない。
伝説の武器の補正が加わる事によって勇者が形成されていくと見れば、勇者と普通の人の違いは、やはり武器に集約する。
憎らしいがこの盾によって俺を含む勇者達は特別なのだろう。
それは勇者の仲間にまで影響を及ぼす。
奴隷使いの盾によってラフタリアは普通の亜人よりも能力に優れ、フィーロに至っては、まだLvが追いつかれていないのにラフタリアを上回っている部分が多い。
成長補正の効果がどれだけあるのか分からないが、相当な補正が掛かっていると思われる。
俺は奴隷使いの盾と魔物使いの盾だったが、仮に仲間の盾や友の盾の様な物があったなら、影響を及ぼすはずだ。
つまり勇者にとって仲間という存在は必要不可欠。
――仲間か……俺には最も遠い存在だな。
「なるほどなぁ……勇者は一般人とは根底が違うと言う訳か」
「そうなんだろう」
世界中を巡って、様々な魔物や素材を武器に吸わせ、成長させて強くなる。
正直な所、どれだけの種類があるのか未だに見当が付かない。
盾をどこまで育てたら良いのかすらわからない。
だが、怠けていれば厄災の波がやってくる。
それも何回来るかも分かっていないんだ。
既に二回。最終的に五回なのか、十回なのか、百回なのか、わからない事だらけだ。
どちらにしても今はやるべきことをするしかない。
……そういえば、カースシリーズという盾についても気になるところだ。
ラフタリアが奪われそうになったあの時、盾を侵食して解放されたはずのカースシリーズという盾。あれから俺は何度もツリーを探してみた。
しかし、どれだけ探しても見つからない。
ヘルプで呼び出そうとする。
カースシリーズ
触れる事さえ、はばかられる。
ただこの一文で終わっている。しかも何度も調べると。視界に電撃が走り文字が変わるのだ。
カースシリーズ
手を染めし者にそれ相応の力と呪いを授ける武具。勇者よ、触れることなかれ。
だから、探しても見つからないこの武器を俺は後回しにすることにした。
いずれ、必要になったときに出てくるかもしれない。そんな限られた条件の盾なのだろう。
「ごしゅじんさまーお肉なくなった」
「なに!」
見ると既に肉が無い。鉄串に刺した奴も既にみんなが食べきっていた。残っているのは野菜だけだ。
「もうお仕舞い? フィーロ食べ足りない」
「はぁ……じゃあ、草原を抜けた森にいるウサピルを5匹くらいとって来い。追加で焼いてやる」
「はーい!」
フィーロは全速力で森にまで走って行った。
「いやぁ、美味い。こりゃあ得をしたな」
「そう思うなら服の代金を割り引け」
「これ以上割り引いたらこっちが大損だぞアンちゃん」
まあ、こんな感じで今日は夕方近くまで川原でバーベキューをして一日を終えた。
ちなみにフィーロはウサピルを10匹ほど捕獲してきた。
俺に至っては殆ど食べる暇も無く、ウサピルの解体と焼肉作りで終わった。




