フェンリルクロー
ヴォルフがどさりと倒れましたな
おや? 負けるのですかな?
そんなヴォルフが腰が抜けたように起き上がろうとして起き上がれずにファントムウルフ、そしてお義父さんの方に視線を向けましたぞ。
それから……強く目をつぶってから、カッと見開いてファントムウルフへと起き上がり飛び掛かりましたな。
「ヴァウウウウウ!」
「ガアアアアアアアア!」
ブワっとブリューナクを避けた時の影のような動きの残像でファントムウルフがヴォルフに反撃しましたが、ヴォルフも何故か残像を出しましたぞ。
「おお……あれ、マネできるんだ?」
「覚えれるのですか? 一発、槍の勇者の攻撃避けましたよね」
「これは侮れない事になったぞ」
お義父さん、ウサギ男、ワニ男とヴォルフがファントムウルフの技を避けたのに感嘆の声を上げました。
「仕組み的には幻影系に見えるんだけどねぇ……」
「どういう仕組みで避けてるんでしょうね?」
パンダとゾウも首を傾げてますぞ。
なんとなくですがフィロリアル様たちと遊んでいると似た動きが出来る気がしますぞ。
加速系ではないかと思いますな。
「ガウウウウ!」
「ヴォフウウウウウウ!」
ファントムウルフが闇を纏って突撃し、それとは反対にヴォルフは気らしき光を放って同様に突撃しましたぞ。
オーラタックルって感じですな。
バチバチとぶつかり合って周囲に衝撃が走りましたぞ。
そうして一際派手にエネルギーがぶつかり合って爆発しました。
「ヴァウ!」
で、俺には見えましたぞ。
ファントムウルフに押し勝つようにヴォルフが拳を顔面に叩きつけておりました。
「ギャン!」
吹っ飛ばされてファントムウルフは大の字に倒れましたぞ。
それから何やら淡い光を放ち始めました。
「はぁ……はぁ……はぁ……ヴォフ」
『……はぁ』
そうして息を切らしながら立っているヴォルフが拳を上げますぞ。
すると倒れている狼男なファントムウルフがムクりと起き上がって殴られた所に手を当てながら立ち上がりました。
『いってー……効いたぜ。やるじゃねえか。マガルム』
喋りましたぞ。
そこで気づいたのですが……あのファントムウルフの狼男、色合いが違いますがタクトのキツネ豚が化けたツメの勇者だったような……すごくぼんやりですぞ?
なんとなく空気的にそう言った流れなのでしょう位の察しですぞ。
お義父さん達がそんな雰囲気を出してますからな。
「ヴォ、ヴォフ……」
『はは、いや……なんか気づいたらオメーが目の前に居て戦ってよ。見違えた姿してるけど、マガルム、お前だってわかったぜ。いやー楽しい戦いだ。しかも期待以上に出来上がってやがる』
チラッとファントムウルフの狼男は淡い光を纏いながら周囲を見渡しますな。
『一体どうなってんのか……俺の感覚からすると山で修行をしてるつもりだったが……どうもちげーみたいだな』
「ヴォフ……」
『おうおう、妙な語尾付けてるけど、マガルム。どうも俺は生きちゃいねえみたいだな』
コクリとヴォルフは狼男に頷きましたぞ。
「……兄さん。俺は……あの時、腰を抜かして何もできずに……無様に殺される所を見て、挙句……」
独白をするように幽霊の兄に向ってヴォルフは後悔を呟きましたぞ。
『は? んなもん気にしてどうすんだよ。今はこんなに強くなったじゃねえか』
「わー……見た目通りの豪快な人だ」
お義父さんの呟きに狼男の幽霊は顔を向けますぞ。
『見た所、シルトヴェルトの悲願となる盾の勇者様って奴みてーだな。俺の弟を随分と立派にしてくれたようで礼を言うぜ!』
「あ、はい。色々と世話をしてます」
『ははは! 良い様に使ってくれよ。結構姑息な弟だけど悪い奴じゃねえからよ。育てりゃ俺より伸びると思ったけど想像以上だったぜ』
ガハハハハハ! っとヴォルフの兄らしき狼男は笑ってますぞ。
そこから徐に真面目な顔つきでヴォルフの顔を睨むような眼光で射抜きますぞ。
『このツメの七星武器から感じるぜ? いつまでもウジウジしてんじゃねえよ。俺はお前の事を恨んでも情けないとも思ってない。心を強く持て。間違っても罪滅ぼしなんかで戦うんじゃねえぞ?』
「兄さん……俺、おれ……」
ヴォルフがボロボロとそこで涙を流し始めるのを……ヴォルフの兄は幽霊なのに殴りつけました。
『だから泣くんじゃねえっての! おら! お前にはまだやる事があるだろ? 生きてる限り戦いは続くんだぜ? 本当に欲しいものの為に戦い続けな!』
「ヴォ、ヴォフ……わ、わかった! 俺……頑張る! 頑張るから……!」
『おうよ!』
そう言った所で何かが解れるかのようにヴォルフの兄らしき狼男の姿が霞んで行きますぞ。
『もうあんまり時間はねえみたいだな。ま、ツメの七星武器もやっと安心って所じゃねえか? 頑張れよ!』
「ヴォフウウウウ!」
『ワオオオオオ――』
と、遠吠えを双方している内にヴォルフの兄らしき狼男の姿は消え、ツメの七星武器が一つに戻ってキラっと輝きましたな。
何やら形状が変わってますぞ。
狼の頭のようなツメですぞ。見覚えのあるような気がしますな。
「ヴォフ? フェンリルクロー?」
「ああ、フェンリルってこの前話たね。そう言う爪が出たんだ?」
「ヴォッフ。しかもツメ自体の攻撃が強くなったのが分かる! もっと力が出せる!」
「まあ、ヴォルフも色々と悩みが晴れたみたいだね。お兄さんと話が出来たけどどうだった?」
「ヴォフ……悩んでたのがバカバカしい位、バカだった」
はは……と、お義父さんはヴォルフの言葉に乾いた笑いをしてますぞ。
「豪快な感じだったねー」
「それと……なんか体の奥底から力が漲る……ヴォフウウウウ!」
ヴォルフがそう声を上げると……狼男姿から更に大きな銀色の狼の姿へと変身しましたぞ。
「おお……獣人から獣形態に」
「ワオオオオン! 力が漲る。もっと戦える!」
そうしてヴォルフはお義父さんに頭を垂れ、シルトヴェルト式の敬礼をしましたぞ。
「偉大なる盾の勇者様、無様な所を見せました。今後ともどうかよろしくお願いします。ヴォフ」
「うん。今後ともよろしくね」
「ヴォフ! 頑張る!」
とまあ、何やらお義父さんとヴォルフとで話がまとまってましたぞ。
「良い感じに片付いたみたいで随分とパワーアップしたみたいですけど……あれで戦わないといけない程の強敵っているのですかね?」
「言うな……勇者たちの強化でタクトって奴ですらも秒殺だったんだぞ? どんな強敵がいるって言うんだ?」
「ですよね。弓の勇者もですけど、大体雑魚って位、楽に仕留めてますよ? むしろ四聖勇者に挑んで勝つくらいしか無い様な」
ウサギ男とワニ男がそんな小声でのやり取りをしていましたぞ。
「ヴォッフーヴォッフーお腹撫でて下さいヴォフー」
「あはは、大きくなってもヴォルフは甘えて来るねー」
と、狼姿でお義父さんの前に寝転がってお腹を撫でるようにヴォルフがお願いしてますぞ。
年齢考えろですぞ。
「また無様な姿を……あれで知的とは一体どこに見出せば良いのか」
「とか言いつつ羨ましそうな目をしてるぞ」
「ぐぬ……自覚はしてます」
草葉の陰でお前の兄が絶対泣いている情けない姿を続けるなですぞ。
「本当見てるだけで解決してくねぇ……アタイ達、城で休んでた方が良かったかね?」
「それは言わない約束にしておきましょうよ。まあ、私が詩にでもしておくわ。盛り上げるのに良いでしょ。あの光景は再現しないけど」
「はん。演劇のネタってかい?」
「どうとでも言いなさい」
「詩……そうですよね。確かに物語ですよね。なんか悔しい」
ウサギ男がゾウの予定に何やら対抗心を持っていますぞ。
「エルメロ、終わった? コウよくわかんない」
「そうですね。まあわかりやすくまとめますからね。そろそろ帰る事になりますよ」
「わかったーかえろー」
こうして何やらヴォルフの悩みは晴れてツメを含めて大幅に強化されたらしいのですぞ。
確かに動きや攻撃のキレが激しく増しましたな。




