ファントムウルフ
「本当、物語の中みたいな状況ですね」
ボソッとウサギ男がワニ男に囁きますぞ。
「伝説ってそう言うもんだろ。自分も似たようなもんだぞ」
「まあ、そうですね。ヴォルフの番なのでここで冷やかす様な事は言いませんけどね。岩谷様はどう答えるのでしょうね」
で、パンダ達の方を見るとよそ見してますぞ。
何をしているのですかな?
と、思っていると。
「干渉に浸るのはそれくらいにしておいた方が良さそうさね」
「何か気配が近づいてきますぞ!」
「ヴォフ!?」
「ああ、件の魔物が出て来たか」
と……感傷に浸る間もなく魔物がこちらにやってきましたぞ。
その姿は黒い影のような大きな狼の魔物ですぞ。
「ヴヴヴヴ……」
魔物名は……おや? 上手く判別しきれませんな。
薄っすらとファントムウルフと出ているようにも見えますが。
ただ……なんでしょうかな?
フォーブレイに行った際のループでお姉さんの秘密基地に行った時に見た、お姉さんのご友人の魂がお姉さんを媒介にしていた魔物のようなものが俺の脳裏を過るのですぞ。
気の所為ですかな?
「ヴォウ!」
「一気に仕留めるのが良いですな!」
久々にブリューナクで消し飛ばしてやりますぞ。
幽霊系な属性や闇属性を持ってそうですぞ。
「いや、ちょっと元康くん?」
「食らえですぞ。ブリューナク」
「いや、ちょ!?」
「おい、この状況なんだからもう少し見て――」
「ヴォフー!?」
俺のブリューナクを喰らえですぞ!
と、ファントムウルフにブリューナクをぶっぱなしたのですが、ブワっと命中したと思ったのに影が霧散して真横に居ましたぞ。
何ですかな?
本気のお姉さんに狙って攻撃した際に避けられたような不可思議な手ごたえですぞ。
「避けた!? 元康くんの攻撃を避けるとか凄いな」
「負けませんぞ! 続けざまに行きますな! 乱れ突きを喰らうのですぞ」
流れるように俺は接近しますぞ。
「いや待って元康くん」
シュシュシュ! っと攻撃しましたが同様の回避をされますな。
ですが掠りはしましたぞ。
「ヴォ……ヴォオオ――!?」
「手ごたえありですぞ! 行きますぞ」
「行くなって言ってんの!」
お義父さんに怒られてしまいました。
と、よそ見をした際に、隙ありとばかりにファントムウルフの反撃とばかりに前足からの攻撃を受けて吹っ飛ばされてしまいましたぞ。
ダメージは無いですが中々に強烈な一撃でしたぞ。
「ちょっと元康くん、ステイ」
「わかりましたぞ」
待機ですな。
「どっちが狂犬かわかったもんじゃないですね」
「まったくだ」
「ヴォ……ヴヴヴウ……」
と、呻き声を上げるファントムウルフですぞ。
威嚇してますな。
俺が待機してますが一体お義父さんは何をしようとしているのでしょうかな?
「で、ヴォルフ。件のターゲットと遭遇した訳だけど、どうする? 抑えつけることくらい、俺は出来るよ?」
お義父さんが相手をしたいのですな。
そんでヴォルフの方はというと怯えるような表情をして震えてますぞ。
まったく、情けないですな。
「う……」
「この魔物がどういう魔物なのか、まあ深読みしすぎて違う可能性ってのもあるから確認をしたいんだけどね。それとも……調べずに元康くんに終わらせて貰うのがヴォルフの望み?」
お義父さんの質問にヴォルフは恨みがましい目を向けました。
「正直な所さ……俺ってさ、兄弟では一応兄なんだよね。だから兄の気持ちってのはわかるけど弟の気持ちって実の所察する事しかできないんだ」
ここでお義父さんが何故か兄弟の兄の話をしますぞ。
「は?」
「ああ?」
ウサギ男とワニ男がそんなお義父さんの言葉に眉を寄せてますぞ。
「どちらかと言えば知ってると思うのですけどね。確かに頼りになりますが頼らせてもくれるので」
「だよな?」
「それともそう言うつもりだって事でしょうかね?」
「かもしれん……絶対わかると思うが、いや……また聞きの弟に関して疑惑が無いわけじゃない」
「非常に怪しいのに理解してない所からすると確かに兄としてしか認識してないのかも。あくまで親戚とか親に頼る認識に近いとかで」
と、何やらヒソヒソと話してたのをお義父さんが一瞬チラッと見てましたぞ。
不満でもいうかのような視線ですぞ。
俺もどちらかと言えば兄の気持ちはわかりますぞ。
謎の妹設定の豚共との日々を経験してましたからな。
「ヴォ、ヴォフ」
拳を強く握りしめてから一歩踏み出しましたぞ。
「……それじゃあ、意味が無い。怖い……いろんな気持ちが入り混じっていて確かめるのがこんなにも怖いとは思わなかった」
だけど……見ない振りはしたくない。と、ヴォルフは続けますぞ。
それからヴォルフはファントムウルフ目掛けて構えました。
「ワォオオオオオオオオオオン!」
「ワォオオオオオオオオオオオオオン!」
合わせるようにファントムウルフが遠吠えをしたかと思うとヴォルフも遠吠えをして両者が駆け出して相対しましたぞ。
キーンという音と共に、ヴォルフの手の爪が半透明になってファントムウルフの手に半透明の爪が宿りましたぞ。
「ツメが与えた試練という事か……頑張る! ヴォッフ!」
ヴォルフが決意の瞳で構えましたぞ。
「はぁああああああ!」
「ガアアアアアア!」
ドン! っと、体当たりからのツメのぶつかり合い、噛みつき、蹴りとヴォルフとファントムウルフは各々ぶつかっていきますな。
ふむ……手加減でもしているのでしょうかな?
ヴォルフなら容易く倒せそうに思いますが応酬が続いて行きますぞ。
やがてファントムウルフは、ブワっと闇を増して狼男形態に移行しますぞ。
どんな魔物なのでしょうな?
「は! ワォオオオン!」
「ワォオオオオオン!」
ヴォルフと狼男姿のファントムウルフが各々遠吠えをすると薄っすらと空に月のようなものが浮かび上がって両者に降りかかりますぞ。
「バフ魔法になるのかな? あれは」
「そうじゃないかと、確かヴォルフが一族に伝わる固有の魔法があると仰ってましたよ」
「ハウリングムーンという魔法というか技というか……そう言う代物だそうだ。能力アップと興奮作用、更に周囲の獣人化適性があるものに変身の補助効果もある」
「ヴォルフの家で有名な奴ですね」
ゾウが仰いますぞ。
そう言う魔法があるのですな。
「となるとやっぱり相手は予想の通りか、ツメも合わせているみたいだし」
お義父さんは心当たりがあるようですぞ。
ですが俺は非常に気になる事があるのですぞ。
「半透明になって分裂できるならフィーロたんに寄越せですぞ」
「元康くんは空気を読まないねぇ……」
パンダみたいな声音でお義父さんが俺に言いますぞ。
どうしたのですかな?
フィーロたんの武器なのですぞ。
「性能は下がってそうですけどね」
「だろうな」
「茶番だねぇ……ま、気の済むまで戦わないといけない所なんだろうさね。血みどろの宿命の殺し合いとかよりマシじゃないかい?」
「ラフミさんが言ってた性能を引き出す試練という所でしょう。黙って見てましょうね」
「はーい」
ゾウの言葉にコウは頷きましたぞ。
「ヴァウ!」
「ヴァウウウウ!」
で、ヴォルフとファントムウルフはそのまま衝突して更にツメと蹴りの応酬となりました。
「キャン!」
ですがヴォルフが押されているようで吹っ飛ばされました。




