酒盛り
ですが来賓の貴族たちは城内の来賓区画でまだ雑談を続けている様子ですな。
「シルトヴェルトだからってのもあるけど……結構夜でも住民が出歩いているね。貴族も起きてるみたいだ」
城の上位階層のテラスからお義父さんが見える範囲を確認しながら仰いますぞ。
「まあどちらかと言えば夜が本番の連中も多いからな」
「種族事というのもあるようですけどね」
「アタイは寝る」
「ラーサさんは寝すぎな気もする」
パンダはここに来てからずっと休んでますぞ。
「ああん? アタイが相手する時間かい?」
しょうがないねぇ……とパンダがお義父さんに深くため息をしましたぞ。
「そう言う意味じゃなくてね。もう良いよ。いろんな種族がいる国だから中々寝静まらないのはお国柄って事なんだろうね」
ライバルにその身を捧げてしまったお義父さんもシルトヴェルトでの夜をそう語っていましたな。
「ヴォフ? 静かにして欲しいなら領主権限で寝るように命じるけどやる?」
「そこまでじゃ無いから平気だよ」
「ヴォフ、じゃあ部屋で一緒に寝る?」
ヴォルフがバスローブを着たまま尻尾を振ってますぞ。
「それやりたくてしょうがないって感じだけどさー」
さすがのお義父さんも困ったように眉を寄せてますぞ。
「俺に添い寝ってそんなにして欲しいのかね? まあ理性を失っている時に愚図るからしてあげた事あるけどさ」
まだ喋る前の頃にお義父さんが寝入るまで宥めていた事がありましたな。
「ヴォフ?」
何やらヴォルフは考えてますぞ。
「ヴォッフ!」
それから深々と頷きましたぞ。
「何頷いてるんですか。絶対違いますよ岩谷様」
「そうだ。甘やかさなくて良い」
ウサギ男とワニ男が注意しますぞ。
「まあ大きなベッドでみんなと寝るって修学旅行みたいで楽しいけどね」
「ヴー……ヴォッフ! それで良い! みんなで寝る! 飲み明かす! で、寝てるみんなを見ながら俺、ワインを飲む! ヴォッフー!」
唸っていたかと思ったヴォルフでしたが何か決めたのか言い切りましたぞ。
「うわ、妥協しましたよ」
「いや、全員を酔い潰す気だ! その末にやり遂げるつもりだな!」
「ヴォッフー! まだ夜はこれからヴォッフー! 酒を持ってこいヴォフー!」
ヴォルフの叫びと拍手に使用人たちが酒樽や酒瓶を持って来る事になったようですぞ。
お義父さんの就寝する部屋にどんどん運び込まれてきましたぞ。
「ここから宴の始まりヴォフ! 親しい皆で飲み明かすヴォフー」
「わー……サディナさんが居たら大喜びな奴ー」
「エルメロとかどうするさね? ここまで来れないさね」
「ここの面子だけでやるヴォッフー! それとも酒に弱いヴォフ?」
ふふん。とヴォルフが抜かしてウサギ男とワニ男を挑発しますぞ。
「くっ……付き合う必要は無いですね」
「ふん、腰抜けヴォフ」
「なんですって? 良いでしょうやってやりますよ」
ウサギ男がヴォルフの挑発にやる気を見せますぞ。
血の気が意外と多いですな。
「おい……」
「ここで誰が一番強いか見せないと何かあると勝った面されますよ? 引いてはいけません」
「……そうか、いい加減、誰が一番か見せなきゃいけない所か」
「ちょっとみんなどうしたの? サディナさんがいないからって嵌め外している感じかな?」
お義父さんの質問にウサギ男が微笑を浮かべましたな。
「岩谷様は気にしなくて大丈夫です。ちょっとボクたちの限界がどの程度かを見極めておいた方が良いかと思いましてね。あの方が居るとこういう事が出来ないんですよ」
「そう言うもの? シオンも承知してるの?」
「ああ、ちょっとな。何、ヴォルフの奢りだしいい機会だろう。お前はラーサズサと一緒にゆっくり飲んでいてくれ」
「その結果、俺がみんなの介抱するのは困るんだけどなー」
なんか空気が学生時代の飲み会に参加してるのに似てるような? とお義父さんは首を傾げましたぞ。
「フ……大丈夫だ」
「ま、酒に関しちゃアタイも楽しませて貰うよ」
「も、元康くんはどうする?」
「俺ですかな?」
「なんだ? 飲まないヴォフ?」
ヴォルフが自信を持っている口調ですな。
ふん、お前程度に俺が負けると思いますかな?
お姉さんのお姉さんやパンダの本気には負けますが俺だって酒は飲めますぞ!
「相手になってやりますぞ。俺の強さに恐れおののけですな」
「元康くんは強いって程だったっけ? あんまり酔いつぶれるまで飲まないだけな気も……」
何てお義父さんの声が聞こえましたが俺も飲み比べに参加なのですぞ。
「元康様! 頑張って下さいですわー!」
「やりますぞー」
「酔いつぶれたら渡してあげますから好きにして結構ですよー」
ニヤニヤとウサギ男がユキちゃんに言ってますぞ。
何を言ってるのですかな?
「わ、私の応援は変わりませんわ! 元康様ー! どんどん飲んで強い所を見せて欲しいですわ」
ユキちゃんの応援もあって俄然頑張りますぞ。
ですがなぜですかな? 何か似たやり取りを今までのループで、お姉さんのお姉さんやパンダにやられてユキちゃんに応援されたような……きっと気のせいでしょうな。
ユキちゃんは純粋に応援してくれているのですぞ。
「やりますぞー!」
と、こうしてみんなで飲み比べが部屋で行われたのですぞ。
「ンック、ンック……ぷはー、癖が強いな」
まずはエールに似たお酒ですぞ。
ちなみに酒の温度に関しては勇者伝来で冷たい方が美味しい酒は冷たく、温かい方が良いのは温かくしている文化をこの世界ではしておりますな。
なのでエールっぽい酒は冷えた酒ですな。
「果物系のお酒だね」
「ああ、この辺りで採れる奴さね。ワインにもなる果物じゃないさね?」
「正解、ヴォッフー!」
グビグビっと一気にヴォルフは飲んで行きますぞ。
おら! 追いかけて来い! っとばかりに挑発しているので俺たちも続きますぞ。
使用人たちが何処からか黒板を持って来て飲んだ杯の数をカウントしていくようですぞ。
二杯三杯とどんどん注がれていくのですな。
その中でお義父さんはパンダと一緒に飲んでおります。
当然ながらお姉さんのお姉さんに付き合って平気にしているのは元より、ルコルの実を平気で摂取できるお義父さんは殿堂入りなので論外になっておりますな。
パンダも酒は強い方なのでこの中では勝負に入れない方向ですぞ。
「同じ味だけなら飽きますね」
「じゃあ別の酒、ヴォッフー」
ヴォルフの命令で次はワインが開けられて飲みますぞ。
俺の知る味より甘みが強いですな。
全体的にこの辺りの酒は甘めなようですぞ。
「はい。元康様!」
ユキちゃんが俺に酒を注いでくれる係をしてくださってますぞ。
気の所為かユキちゃんの目が光ってるように見えますぞ。
「飲み口が甘めだ」
「お義父さんお義父さん」
「なーに? 元康くん、酔ってきてる?」
「大丈夫ですぞー」
まだ酔ってないですぞ。この程度で泥酔なんてしてられませんな。
お姉さんのお姉さんにいつまでも酔い潰されては溜まらないので耐性系を多めに解放しているので中々負けませんぞ。
「お義父さんは料理もお上手ですが、酒に関しては何処まで詳しいのですかなー?」
サラッと聞いたような気もしますがあまり覚えて無いのでお尋ねしますぞ。
「そこまで詳しくはないよ。まあ、居酒屋とかバーでバイトとかした事があるからカクテルとかも作れるかな? 一時期、漫画で良いのがあって真似したんだよね。バーテンも聞いたら色々と教えてくれたし」
おや? 前に樹が、「尚文さんって何かあったらバイトでやった事あると言ってなんでもできそうですよね」と言っていた事を思い出しますぞ。
ですが漫画で影響を受けた事もあるのですな。
包丁の絶技も漫画とアニメの真似らしいですからな。
前のループで樹が大人になった頃にお義父さんに色々と注文していたのが思い出されましたぞ。




