記念館
「何より、その後にやって来る騎士団みたいな連中が世界を守ると言って消えてってこれ以降は波は起こらないみたいな事が描かれてる」
「今起こってますよ。外れてるって事は完全に偽物じゃないですか?」
「ヴォフ、だから処分されてこの一冊しか残ってないんじゃないかと思う」
「古いだけのゴミじゃないですか」
「ヴォフー……」
いや、思い出せですぞ。
アークが仰っていたのはなんでしたかな?
『今回の件の黒幕がいた世界には報いを受けさせた。もうこの辺りで波は起こらないよ』
『責任者がどうのこうの言い逃れをしようとしていたけどね。こっちが裏を取らないとでも思ったのか呆れるもんだよ。世界単位で完全に腐りきってたからねー。アイツらからすると僕は殺戮者そのものだろうね』
それ以外にもアークが何やらこの世界を守るとか言ってた癖にとか愚痴った事があった気がしますぞ。
赤豚本体がどのようなポジションだったのかまるで分りませんが……なんとなくその本は事実が書かれていると俺の直感が囁きましたな。
鈍感のお前が分かるはずないだろ! っと記憶の中の最初の世界のお義父さんが仰いますが俺の直感は間違いないですぞ。
「それでも自慢の古書。度重なる戦を生き残った一品」
「こんな本もあるんだね」
「ヴォッフ、歴史の消失を乗り越えた代物」
「なんかそれも聞いたね。リーシアさんとかが教えてくれたんだけど、大きな争いとかで古い資料が結構消失することが多いんだよね」
「そう。不思議とその時の王や女王、その近隣の人や勇者となった人物が新技術を広めたり、過去を振り返らないって方針で資料を処分したと無くなってる事が多い。悪魔召喚とかもされて国が消えたとかもある」
「ああ、それは波の黒幕が暗躍して勇者に都合の良い代物は抹消して回っていたらしいのですぞ」
「その辺りはガエリオンさんやラフミが言ってましたね。ボクのルーツとなる原住民とかもそうでしたし」
結局は波を起こす首謀者の画策という事になるのですぞ。
「何処までが事実だったのやら……」
「他にも内には色々とある。興味があるならいつでも読んで良い。我が家みたいに使って」
「ある意味、歴史ある家の書物って事だね。そこまで研究者じゃないからなぁ……むしろ色々と終わった後の俺はどうしたらいいのかねー」
波が終わった後のお義父さんですな。
「ヴォフ、是非ともシルトヴェルトの城に、盾の勇者はシルトヴェルトの希望だから」
「いやいや、セーアエット領でゆっくり過ごすのも良いんじゃないか? こっちは苦労しそうだぞ」
「シルドフリーデンの貴族たちも来て欲しいと言った態度でしたね」
お義父さんは引く手数多ですな。
もちろんフォーブレイにも行けますぞ。
「考えておくよ。で……ヴォルフの家探索はこれで終わりかな?」
「ヴォッフー! まだまだいろんな所があるから見て欲しい。訓練場とかもあるからみんなで訓練も可能、何なら城を自由に改築しても良い」
「それはそれで楽しそうだね。お金とか大丈夫なのかな?」
ヴォルフがコクリと頷きますぞ。
「シルトヴェルトから援助金が結構来た。修繕も視野に入れられてる」
「そうだろうね」
「それとー……タクトの遺産が現金化されて慰謝料が大量に、一族の連中が虎視眈々と狙ってるから割と使わないといけないのもある」
わー面倒な事になってるねーとお義父さんはヴォルフに同情してますぞ。
「フフ、介入なんてさせない。殴って黙らせる」
「力技が通じるんだね。いや、ヴォルフの手腕って事にしておくよ」
「ヴォッフ」
まあ上手い事立ち回っている所為で、おそらくヴォルフの悪い風聞とやら……兄を見殺しにしてツメの勇者になったとかの話が広められているのでしょうな。
「しかしまあ……ヴォルフの実家地域とかの雰囲気とかそう言うのを考えると城を改修してホテルとかにしたら結構オシャレなのかな?」
「活性化地域の城みたいになるのですな」
「あー……」
俺の一言にお義父さんが困ったような声を出しましたぞ。
「ダメでしたかな?」
「いや、俺の意見が失敗になると確信できたよ元康くん。そうだね。ヴォルフの家をホテルにしても失敗するとわかるよ。あそこに勝てない。思えば観光地っぽいけどそれ系だった」
賑わいがありますからな。
何より、俺たちが妖精姿で遊びに行きすぎるのはこの世界の未来が前の世界みたいになってしまって幅が出せなくなりますぞ。
「似てると言えば似てるか」
「ですが開拓妖精要素が無いので問題は無いんじゃないですか? ヴォルフの家をホテルにしても、ツメの勇者記念館とか作れば人は来るんじゃないですか? 各国でありますよ?」
「あるのか……そう言う建物」
一応ありますな。歴代の勇者が残した資料館的な建物。
鳳凰が封印されている国などでも鳳凰の倒し方が記された建物に始まりいろんな資料がありますがある意味、勇者記念館でもありますぞ。
ちなみにフォーブレイとシルドフリーデンにはタクトの記念館がオープンしてましたが速攻でぶっつぶされましたぞ。
気色悪いですな。そんな建物を奴は経営していたのですぞ。
中は見たことはありませんが、目を通した樹やお義父さん曰く、銃器や車、飛行機関連なんかの資料展示があったとかですぞ。
「俺たちもいずれは記念館とか作られちゃうのかねー」
「もちろんですぞ。俺はお義父さんやフィーロたんの記念館を開いて見せますぞ」
最初の世界ではそれはもう各地で作られておりましたぞ。
あのゼルトブルでも存在したのを薄ら思い出せますな。
もちろん、ラフミの暴走による被害なんかも記事にされていた気がしますぞ。
「元康くんは何を言ってるのかな? 俺の記念館って一体何を展示する気?」
「開くかはともかくまとめてみるのは良いかもしれないな」
「そうですね。槍の勇者の証言を元に書類作成はしても良いかもしれないですよ? 各国で開けばお金に出来るかも」
「ヴォフ」
チャキっとヴォルフまでもが眼鏡を出して何やらそろばんらしきものを出してはじき出しますぞ。
「ちょっとみんな? 何でまとまりかけてる訳? 大したことしてない俺たちがそんな集客できる訳?」
「これからしばらくは波が続きますし、各国の平和維持活動はするのもありますからね」
「しかも各地で暴れている連中の捕縛活動もある。弓の勇者が徐々に有名になって来てる。こっちも負けていられない」
「エレナ辺りが集めたサーカス関連の活動報告や映像とかも広報や展示に使えば亜人獣人の各国がセーアエットに旅行に来てくれるかもしれないな。観光収入あれば復興も早まる」
などと奴隷たちはお義父さんの資料作成と記念館に関して前向きな検討を始めたのですぞ。
「もちろんユキちゃん。君もフィロリアルレースで有名になると単独記念館が出来るのですぞ」
「ちょっと憧れますわ」
実際にユキちゃんの記念館があったのを俺はループで覚えてますぞ。
それほどの活躍をユキちゃんはゼルトブルでしていく逸材ですからな。
ああ、ユキちゃんの別の可能性、ホワイトスワンであるユキちゃんはいろんなファンがおりました。
俺の留守中に牧場の訓練場に遊びに来たファンにフィロリアル姿で会ってファンサービスをしっかりとしてくれたとかもしてくださいました。
訓練中の場に俺が来てくださっていると思っていたのにファンだったとの事で愛想良く相手をしましたが、ファンが去った後に不機嫌にフィロリアル生産者に威圧していたとか。
ホワイトスワンのユキちゃんはブラックサンダー並みに気性が荒いと仰られてましたぞ。
俺にはそんな事、微塵もありませんでしたがな。
まあフィロリアルレースで騎手が乗るタイプのは俺が乗って出場してほしいとお願いされましたがな。
レギュレーションの影響で俺だと重量オーバーだったりするので出られないレースがあったのですがな。
「みんな商魂が身について来てるね」
「岩谷様を見てると少しは身に付きますよ」
「さすがに俺の記念館はどうなんだろうね?」
「最初の世界で平和になった時は何処からでも見える大きなお義父さんの像を建造しようという企画が登ってましたぞ」
何故か立ち消えになりましたがな。




