オープンカー
「あなた達は……」
「シオンやヴォルフはその路線だとサングラス付けてアロハシャツを着ててもオープンカーに乗って派手に運転すれば映えるんだよね……」
「ヴォフ」
グッとヴォルフが親指を立ててニヤッと笑いますぞ。
「オープンカーってなんだ?」
「屋根の無い車、馬車で言うと荷車ですぴょん!」
「こっちの世界だとシルドフリーデン辺りに探せばタクトや過去の勇者がデザインした車にあるんだよねーまあ、道とかメンテ、生産コストの関係で少ないけどね」
「どんなのかわかったがカッコいいのか? アロハシャツとはカルミラ島で見た服なのはわかる。自分に着せようとしたあれだな」
「筋肉マッチョに似合う衣装だからねー」
お義父さんがワニ男に島で着せてましたな。
なのでサラサラっとワニ男たちがオープンカーで爆走するラフな絵を描きますぞ。
おまけでサングラスを着用すると悪の筋肉質な獣人の二人がオープンカーを運転している姿になりましたぞ。
とりあえず雰囲気だけは伝わるはずですな。
「そうそう、こんな感じだね。本当、シオンとヴォルフはワイルド系で行けちゃうからアメリカンな方面だと有利だね」
「ヴォフ、悪人っぽい」
「まあ、キャラクターは出ているんじゃないか?」
そんな絵をヴォルフとワニ男がお義父さんの意見に同意しますぞ。
「理不尽ですよ! ボクがカッコ悪いとでも言う気ですか岩谷様!」
「テオはまあ、今の元康くんを見ればわかる通り可愛いウサギ系だから……」
向き不向きがあるのですぴょん!
「カッコよくするには隻眼とか毛をボサボサにするとかもっと筋肉が表に出ないと難しいかもなー、でもあまりムキムキだとそれはそれで気持ち悪くなっちゃうからバランスが必要なんだけど……マッチョすぎるテオは確かにちょっと嫌かな」
「く……コホン。可愛いはボクの魅力ですよ岩谷様。そもそも弓の勇者や止む無く面倒を見ているだけでカッコよさなんて求めてませんよ。弓の勇者もそうですよ」
「確かに今の樹はその辺りのこだわりはないけどね。効率主義で視認性を重視してるのは間違いない。だから黒っぽい衣装だからクロちゃん仕様のモービルな馬車でも違和感は軽減してるからなー……」
「そこに戻さないでくださいよ。わかりましたよ。乗り物に乗っている時は亜人姿で居れば良いんでしょう? 書き直して下さい」
「それを決めるのは俺ですぴょん」
「この人は……!」
ウサギ男の抗議がやかましいですな。
クロちゃんが好むデザインは難しいですな。乗り手の樹たちが異物感を醸し出しすぎなのですぞ。
しょうがないのでクロちゃんがエンジン役をして爆走するスレンダーなモービルに樹を乗せて、ウサギ男たちはサイドカーに乗っていく感じにまとめてやりましたぞ。
「ああ、そう言う路線ね。大型バイクにサイドカーに動物乗せると絵になる感じになったような気もするね」
「他にこんな感じは如何ですかな?」
クロちゃんベースのバイクに樹だけ乗って、ウサギ男は四足で並走する絵にしてやりましたぞ。
「ボク降ろされてるじゃないですか! 四つん這いで走って追いかけるってどうなんですか! リーシアさんは何処ですか!」
「ここですぴょん」
と、リースカは簀巻きにされて引き回しになってますぞ。
「うーわ……酷い構図。ギャグになっちゃってる。何故かテオがキリっとした目つきで隣を走ってる所でカッコよくさせてるし」
「笑わせようとしないでください! そもそもこれ、貴方でしょうが」
「俺はここまで大きくないですぴょん」
お義父さんを誘惑するために大きなウサウニーになる魔法に出来ないか研究してますが上手く行かないのですぞ。
「いい加減、槍の勇者のお絵描きを見るのはそれくらいにしません?」
「そうだね。元康くん。そこで描いてる?」
「ヴォフ……俺の部屋で描かせる?」
「移動するなら問題ないですぞ。ユキちゃん、後で一緒に考えますぞ」
「はいですわ!」
フェアリーモーフを唱え直してウサウニーから人姿に戻りますぞ。
「なんか元康くんのお絵描きで脱線しちゃった。何の話をしてたんだっけ?」
「ヴォフ、図書館みたいなダンジョンの話の事? 物語とかの話してた。元々の俺の部屋、本多いけど書斎行ってみる?」
「そうだね」
「わかった。こっち」
という訳でヴォルフの城みたいな屋敷の書斎に行くことになりましたぞ。
「ここが書斎」
書斎に到着すると……そこそこ蔵書がある部屋に来たようですな。
本棚には入っている本に結構隙間がありますな。
「抜けは俺の部屋にある」
「ヴォルフは結構、本を読んでたみたいだね」
「うん」
ヴォルフが読書家だったというのをアピールしてますぞ。
「異世界の物語か……どんな話が多いんだろ? まあ勇者の話とか逸話として語られてるんだろうけど……いや、どちらかと言えば宗教なんだっけ?」
「この世界の物語、特に童話だと王子やお姫様が勇者で出てくる事が多いそうですぞ。頑張った主人公へのご褒美的な立ち位置だとか」
俺の返答にヴォルフもウサギ男も頷きますぞ。
「困った時にすべてを解決してくれる話が多い」
「ご都合主義の王子様が勇者なのか……」
お義父さんの意見は辛辣にも捕らえられることではありますな。
思えば赤豚本体も理不尽であり、転生者からすると都合の良い存在という意味でご都合主義みたいな奴でしたぞ。
お義父さんがそこで勝利を収めたのですな。
ある意味、正しくお義父さんは物語の王子にして勇者でしょう。
「……ヴォフ、そう。勇者は……理不尽から主人公を救ってくれる最高のヒーロー。俺は、そう確信してる。助けて貰えた」
ヴォルフが膝をついてお義父さんの手を握り、額に手を当てて祈りますぞ。
「……そうだね。ヴォルフからしたら色々と困っている所を俺たちが助けたんだもんね」
絵にはなりますが、何やらモヤっとしますぞ!
「む……」
「何キザな事してるんですか」
そこにワニ男とウサギ男が間に入って指摘しますぞ。
「俺も勇者ですぞー! 白フィロリアルのユキちゃんに乗って颯爽と登場するカッコいいポジションですな」
何でも白馬や白フィロリアルに乗って登場するのが王子様、勇者のパターンらしいのですぞ。
「黙っていれば元康くんはとてもカッコいいよね。俺も助けてくれたし」
「ですぞー!」
「ですわー!」
ふふん! お前等、わかってますかな?
お義父さんを助けるのは俺なのですぞ。
「何を勝ち誇ってるんだコイツは……」
「ただ、本当……改めて思うと物語の中に居るみたいだという感覚はありますよね。岩谷様たちと一緒に居ると」
「それは否定しないな」
「それは勇者の俺もだけどね……色々と酷い展開に遭遇したね」
「ヴォフ。そう言えばシオン、エクレールはシルトヴェルトの方で広まってる噂を知ってる?」
「何かあるのか?」
ヴォルフがワニ男に気になる事があったようで顔を向けますぞ。
「エクレールを賭けて勇者同士で戦ったって話」
「ああ」
「贅沢過ぎるってシルトヴェルトの貴族女性が嫉妬しているって話を聞いた。エクレールをシルトヴェルトに行かせる場合は嫌がらせに注意した方が良い」
「なるほど、確かにシチュエーション的には勇者を賭けて戦うって話が多いですけど逆ですよね。確かに贅沢ですね」
おや? 贅沢なのですかな?
「確かにそうだな……まあエクレール様は盾の勇者と恋愛をするつもりはないようなのでしっかりと断言すれば嫌がらせは無いだろうが。何より、ヴォルフ、お前の権力もあって変な事はないだろ」
「そんな事はさせないけど、そう言う話もあるって耳に入れておくと良い。ヴォフ」
「確かに身を守るのも必要ですな。俺も別のループではユキちゃん達を含めて毒を盛られた事がありましたぞ」
「うわぁ……わかってたけど嫌な話だね。なるほどなー……嫉妬するような結党として、こっちには伝わるんだね」
そこで奴隷たちが揃って頷きましたな。




