バスローブとワイン
「へー……」
ここでふと、思いますが……神狩りは言ってしまえば逸話の意味でフェンリルでもありますな。
もしもですぞ。
お義父さんが俺の槍とか代わりに使った場合もそう言った武器になるのですかな?
……? アークが俺の槍を使った際にも似たような形状だったような? いや、あれは呪いの武器にも見えました。
ただ、呪われた武器とも色々と違う……精霊がアークに合わせた神狩り用の姿だったとしましょう。
「聖武器の所持者に大きなダメージが入る効果があったらしいですぞ」
「ああ、なるほど。勇者用の武器としてある訳か……闇落ちした勇者を七星武器の勇者が戦うためとかが本来の使い方かな?」
「弓の勇者が完全に堕ちたら変化条件を満たすとかですかね?」
「樹限定な所が気になるけど、まあ間違っても居ないね」
「むしろあの方と戦う際になんで出ないのでしょうね? ヴォルフ」
ウサギ男が誰かの事を言ってますぞ。
あの方とまた樹の事を差しているとはしつこいですぞ。
「ヴォフ、あっても勝てない気がする」
「そうだな。技術がまだ追いつかないのは間違いない。悠久の歳月を生きながらいまだに子供そのものみたいな奴だからな」
ワニ男、誰の事を言ってるのでしょうな?
ライバルですかな?
「ライバルは精々七星武器止まりですぞ? 出る訳ないですぞ」
今でも腹立たしいツメの七星武器が宿ったライバルは許しがたいのですぞ。
わかってるのですかな?
ヴォルフの手に宿るツメの七星武器!
「そうですねー違いますねー」
何やら投げやりですなウサギ男。
なんて話をしている間に、来客用の部屋に到着したのですぞ。
みんな各々持ってきた荷物を降ろしますな。
「ヴォフ、ナオフミ様はこっち」
「え? ここじゃないの?」
「そっちはみんなの部屋ーナオフミ様はもっと上」
「みんなと同じ方で良いんだけどー……」
と、なった所でワニ男とウサギ男がけん制するようにお義父さんとヴォルフの間に入ってにらみ合いが始まりましたぞ。
「コホン、ナオフミ様は偉大なる盾の勇者、ここはシルトヴェルトの俺の家、つまり家訓や一族の礼儀にして信仰の為に一番いい部屋に泊まって頂かないと示しがつかない」
「フ、モノは言い様だな」
「一理はありますね。ですがボクたちもどんな部屋か確認に行かないと警護できませんよ」
「はーむっさいねー」
何やらバチバチとにらみ合っているのを面倒そうにパンダは無造作にベッドに腰かけて寝転がりますぞ。
「わーラーサさんのやる気なく寝転がる姿がなんか癒しキャラだね。ただ、ラーサさん、一応男女分けた方が良いんじゃない?」
「この面子があたいに何をするってんだよ」
「ヴォフ? わかった。個室用意させる。ナオフミ様、ラーサと何かするとしても俺の案内する部屋にはしっかり来て寝て欲しい」
「あいよ。ま、やりたいなら相手しないと色々と五月蠅いから考えといてやるさね」
ぐでっとパンダがそのまま寝転がってますぞ。
怠け豚みたいにやる気が無いですぞ。
「ちょっと、さっきのネタ……まだ続けてんの?」
お義父さんがヴォルフに釘を差してますが……おそらくそれ以外の何かでにらみ合いをワニ男とウサギ男、ヴォルフがしてますぞ。
全然理解していないような気がしますが、俺も気の所為かとも思いますぞ。
鈍感共! っと何やら記憶内のライバルや槍の精霊が叫んでいるような気がしますが気のせいですな!
「そこで騒がれるとだるいからさっさと部屋に行くさね!」
シッシ! と、パンダが手を振り、お義父さんに行くように指示しますぞ。
「なんだかなぁ……まあとにかくヴォルフ達、案内したい部屋があるなら早く行こうね」
「ヴォッフー!」
スキップでヴォルフが目的の部屋へと向かいますぞ。
お前はいくつなのですかな?
屈強な狼男姿でスキップする様はふざけているようにしか見えませんぞ。
「無邪気な姿だなー」
「そう思っているのはお前だけだぞ」
ポツリとワニ男が呟きましたがお義父さんは聞こえなかったみたいですぞ。
そうして城のような屋敷の一番の部屋とやらに到着ですぞ。
天蓋付の大きなベッドがある大きな部屋ですな。
窓からは周囲の景色が見える絶景、シルトヴェルトの城程の高さは無いですが領地を一望できる感じでしょう。
家具は一式ありますな。
で、他にも部屋があるようですぞ。
そっちには風呂とトイレがあるのですな。衣裳部屋もあるようですが割と服の数は少な目ですぞ。
そして……ワイン棚もあるようでまさに貴族の部屋という形相ですぞ。
「おー……景色が良いね」
お義父さんがベランダらしき所から外を一望しております。
「ヴォッフ! 自慢、今は俺の部屋の当主の部屋!」
「やはりですか」
「そうだろうと思った」
ウサギ男とワニ男がため息をしますぞ。
で、バッとヴォルフは服を脱いだかと思うとバスローブに着替えましたぞ。
「ナオフミ様こっち! ヴォッフ! 一番いいベッド! 寝る! 一番いい素材!」
ベッドの前に立ってヴォルフが手招きしてますぞ。
興奮してて普段に増してヴォルフの言葉遣いがカタコトですぞ。
「おー王様のベッドみたいだね。お金持ちって感じで、博物館で見るような奴だ」
呑気にお義父さんがベッドに触れてますぞ。
「へえ……ボクの実家のベッドより硬めではないですか?」
「どれどれ」
さりげなくウサギ男とワニ男が両サイドに立ってヴォルフが距離を詰められないようにしていますな。
「一番乗りですぴょーん!」
ここで俺はウサウニーになってベッドに飛び乗りますぞ。
枕の隣に座ってウインクですな。
「ハハ、元康くん、枕もとのぬいぐるみって感じだね!」
「ヴォフー!」
ヴォルフが何やら抗議とばかりに唸ってますぞ。
ですが呼吸を整えて何処から出したのかワインをグラスに注いで一杯飲んで落ち着こうとしているようですな。
「こほん、この部屋でナオフミ様は就寝する」
「ヴォルフは?」
「大丈夫」
「大丈夫で済ませるな」
「どこで寝るか言いなさい。それとバスローブにもう着替えるとかどういうつもりですか」
ワニ男とウサギ男が指摘しますぞ。
すっとヴォルフは顔を反らしてますな。
俺も覚えてますぞ。
ライバルの親を迎えに山奥に行った時の話ですな。お義父さんにベッドで寝て貰い、ワイン片手にバスローブで添い寝がヴォルフのしたい事らしいですからな。
「それ冗談だよきっと、まあヴォルフの事だから元々の自室とかじゃないの? 俺に部屋を貸す事になってるんだし、そもそもツメの勇者になったからこの部屋を使って良いって事だろうから」
「そ、そう」
お義父さんの間の抜けた考察に取り繕ったみたいな肯定をヴォルフはしたのですぞ。
「ヴォルフ、お風呂入りたいなら俺達先に出て行くよー? ますがに寝るのは早いよね」
「ヴォフ」
うるうるとウサウニーの俺がお義父さんにする目線をヴォルフはして見てきますぞ。
「ナオフミ様、俺、ここでナオフミ様とお昼寝したい」
「う……でもバスローブとかワインはどうなの? それ、お昼寝?」
「無理がある」
「させませんよ」
「お義父さんお義父さん、フッカフッカですぴょん」
ベッドで何度も俺は跳ねてアピールですぞ。
お義父さんはそんな俺の方に視線が向かいますぞ。
フ、ここの勝者は俺ですぴょん!
「そうだね。元康くんがトランポリンにしてるね」
年齢考えろ、永遠の21! っと記憶の中の最初のお義父さんが仰ってますがそのお義父さんも俺のこの姿と行動に目線を反らせないのですぴょん。
ラフーとラフちゃんもきっとするでしょうからニコニコですぴょん。
などとやっているとヴォルフがバスローブを脱いで元の服に着替えましたぞ。




