劇場予定地
「岩谷様……その流れだとボクが幽閉されてる事になるのですが」
「そこはドラマチックな流れで屋敷から何かしらの流れで逃げ出す奴じゃない? テオが好きそうじゃん」
「わかってますけど……どちらにしてもボクはそのまま売られてしまったそうです。大方、血筋の者なんかじゃないとか抜かしたんじゃないですか?」
「そっち路線もあり得るか、で……ガエリオンちゃんが有能って思ってる貴族はどう思ってるの?」
「バリバリ親戚に似てる認識らしいなの。大きく成ったらよく似てるって証言なの」
「わー……継承問題とかテオ、待望の展開だね」
「他人事ならわくわくしますが、当事者だと勘弁してほしいって認識ですよ。岩谷様」
お義父さんは呑気に答えてますぞ。
「というかその貴族のお家問題は?」
「その後も流行り病……怪しいですけど、それで次々と亡くなってその貴族の家は随分と人が減ったそうですよ」
「こいつの病気も治ってるのを理解して驚いてたなの」
俺とラフミの手柄なのですな。
「まだ概要程度で詳しくはその屋敷に厄介になって色々と調べる手はずになってます。岩谷様、一緒に来てくれませんか?」
「わかったよ。テオのお願いだしね。まあその後ヴォルフの家の方にも挨拶に行く予定だけどまだ少し日程があるからね」
「ありがとうございます」
「お願いしますね。僕は別に活動したいので、リーシアさんも一緒に調べさせてください。そうした方が早いでしょう」
などと樹が抜かしてますぞ。
お義父さんに丸投げする気なのですぞ!
「では出発ですな!」
「あなたは来ないでください」
「元康くんは留守番、なんかその貴族を殺しに行きそうだし」
「えー! ですぞ!」
俺も行きたいのですぞ!
「元康くんに罰というかお仕置きだね。他の地方の波を鎮めたり、エクレールさんの領地の復興を指揮してるエルメロさんの手伝いとかしててね。シルトヴェルトの方には連れてってあげるから」
「くううう……ライバルに心を許してはいけないのですぞ! お義父さん」
「しねーって言ってるのにしつこいなの」
「面倒そうなのでボクが一応見張りますよ」
そんな訳でお義父さんは樹と一緒にウサギ男に関してお出かけして行ってしまわれたのですぞ。
シルドフリーデンなんて大嫌いですぞ!
土地勘はありますがな!
ユキちゃん達を連れてアイドル業をした場所ですからな。
あの辺りで色々とライバルが貴族をぶっ潰していたのを覚えてるのですぞ。
「ゾウーお義父さんが俺を置いて行ってお前の手伝いをしろとお願いしてきたのですぞー! 何か無いですかなー?」
「えー……」
ゾウに聞きに行きますぞー。
エクレアとワニ男も一緒に居ますな。
町の復興を指示してるようですぞ。
そう言えば婚約者はまだ来ませんな。
手伝いとしてくる事がありますが、フィーロたんと何時まで城に居るのですかな?
早くフィーロたんと一緒に来るのですぞ!
「エルメロー資材運んだよー」
コウがゾウの手伝いをしてますぞ。
「ありがとうございますね。コウさん。えーっと槍の勇者様と一緒に次の資材を運んでくれますか? ここに劇場を建てる予定ですので」
屋敷の近くの広場が劇場になるとは他のループとは配置が異なりますな。
そう言えばサーカスを正式に設置する意味で建築するのでしたな。
「ここがステージになるのー? エルメロが歌うんだよね。ちょっと歌ってー」
「いえ……まだそこまでは……」
という所でフィロリアル様たちが集まってゾウに期待の目を向けてますぞ。
お昼の休憩時間が近いようですな。
「では……その少しだけ歌いましょうか」
娯楽は必要だという事で建築を手伝っている人たちも集まってゾウの歌が披露される事になるのですぞ。
フィロリアル様も集まって楽しく歌うと不思議な力で力が漲ったりするのでみんな聞きに来てますぞ。
「オホン……では皆様が少しでも元気になるように一曲、休憩がてらに」
と、ゾウが喉を鳴らしてから歌い始めましたぞ。
他のループでも見聞きしてますが、やはり音程は低いけど通る歌声ですな。
しかもフィロリアル様たちもゾウの指揮を受けてコーラスを始めると楽しいリズムが広がって行くのですな。
トンカントンカンと休憩をしていない人たちも聞こえる歌声に釣られて復興作業が進んで行くのですな。
そんな様子を聞き入っていたエクレアが若干悔し気に見える目で見つめてますぞ。
「私もあのように娯楽を覚えるべきだったのだろうか……」
「エルメロ殿は、文武両道で色々と教わっていたそうですから……環境の差とも言えると思いますが……」
「話を聞く限り英知の賢王に匹敵する知将ジャノン殿の愛娘という育ちだからな……悔しいな」
ワニ男も言葉に悩んでますぞ。
ぶっちゃけゾウはエクレアの完全上位互換の能力持ちなのですぞ。
統治能力は比べるまでもないですな。
むしろ俺の評価でも上から数えるほどの有能な人材なのですぞ。
パンダよりも能力は高いと思ってますぞ!
「ゾウー! 凄いですゾウ!」
フィロリアル様たちと仲良く出来る有能な人材なのですぞう! お前ならばお義父さんの相手となっても良いと推薦できる人材ですぞう。
お義父さんと仲良くしてほしいのですが中々奥手なのですぞう!
そうしてゾウが歌い終わると拍手が起こりますぞ。
サーカスでも終わりの演奏で歌われてましたな。
ただ、あの頃のメルロマルクではそこまで評価はありませんでしたがな。
オペラ調な感じのゾウの発声は癖があると言えばありますぞ。
お義父さんの話ではゾウは足音などで遠い仲間と連絡を取ったりする生態があるらしいので、このゾウも音楽系は能力が高いのだろうという話でしたぞ。
「あらー楽しそうな声ねー」
お姉さんのお姉さんがお姉さん達を連れて来てましたぞ。
「エルメロちゃん、ここが劇場予定地?」
「ええ、酒場じゃないわよ」
「酒場も併設しましょうよー」
「そんな事したらあなた入りびたるでしょ」
「もちろんよー」
「飲食可の劇場は……どうします?」
ゾウがエクレアに聞きますぞ。
丸投げとも言いますな。
「サディナ殿、ここはそのような酒場向けではないものにしようと思っている。ラフタリア殿たちも参加できる楽しい劇場の予定だ」
「あらーそうなの? わかったわ。ラフタリアちゃん達も楽しみね」
「うん!」
「練習した腕の見せどころだね!」
お姉さんとそのご友人が楽しみにする様子で建築中の劇場を見てましたぞ。
思いますが……お姉さん達が完全に子供なのですな。
記憶の中のお姉さんと全く繋がらないですぞ。
それはしょうがないでしょう! 狙っているのですか? って位、私が関わってないです!
と、記憶の中のお姉さんが指摘してきますな。
ですがこのループのお姉さんはお義父さんからすると戦力ではなく可哀そうな被害者で保護対象なのですぞ。
自己主張しないのが原因ですな。
むしろモグラの方がお義父さんと近い位置に居る気がしますな。
とはいえ、お姉さん達も楽しそうに復興作業はしていて村は徐々に形になって行ってますぞ。
ただ、お義父さんの名声で人は集まっていないので速度自体は遅めですな。
シルトヴェルトの者達に協力をお願いしてやっと復興してきているという所なのですぞ。
ともかく、俺はお義父さんとゾウの命令で復興の手伝いをさせられたのですぞ。
「そう言えば噂を聞いたよ! 勇者様達かな?」
「何かあったのか?」
「行商の人がね。なんか山賊が村に来た時に正義を主張する勇者様? らしい人に助けられたって」
「剣の勇者ではないですかな?」
分裂したラフミが治安維持をしているという話なのですぞ。




