広場フィールド戦
「まあ、俺はともかく樹と錬――」
「ケルススだワン!」
錬が拘りますな。
自分の名前を捨てているのですかな?
「は見た目、開拓妖精ですが一応説明すると良いですぴょん。ヴォルフはどうですかな?」
「ヴォフ、勇者伝説知ってる。土地のマナーは勉強済み。兄と行った事もある」
「まあ、ヴォルフは記憶を取り戻してからは知識関連は結構幅広いもんね。テオにも勉強を教えてるくらいだし」
「ペーン」
ヴォルフの奴がお義父さんの言葉に媚びを売ってますぞ。
ふん! 俺の愛くるしい見た目に叶うはずないのですぴょん!
「そんな訳で狩場の基礎知識は教えて貰うで良いと思いますですぴょん」
「えー承知しました」
という訳で、基礎講座的な狩場に関する案内を錬と樹は聞いてましたぞ。
お義父さんもある程度は察したみたいですな。
他の冒険者が狙っている魔物を横取り等はしてはいけないという基礎知識ですぞ。
「樹は特に注意するのですぞ? 攻撃範囲から他の冒険者からの掠め取りをしかねないですからな」
「わかってますよ。傲慢に狙撃はしませんよ。リーシアさんとウサギの彼に確認を取ってから攻撃すれば良いですよね?」
「まあそうだね。テオに俺が説明しておくよ。そうすれば間違いも起こらないでしょ。そもそも島の奥地に行けば冒険者も大分減るだろうし」
そうですな。最奥部に行くのが良いと思いますぞ。
「ただ、ウサギの彼がこの島で尚文さんから離れるか怪しいのですけどね」
「どういう意味で?」
「いえ、南国気分で羽目を外す方々が尚文さんの周囲に多いのでその監視をしたがるかと思いまして」
「そこまで騒がないでしょ」
「ペーン!」
ヴォルフがペックル姿で飛び跳ねてますぞ。器用ですな。
ワニ男とウサギ男がそんなヴォルフを睨んでますぞ。
「レ、ケルスス様。そこに骨付き肉が売ってますよ? 買って来ましょうか?」
「いらないワン! 俺を餌付けしようとするなワン!」
「えー……貰った方がよくね?」
「似合うー」
「うるさいワン! その程度、すぐに作れるから買わなくて良いワン!」
錬が仲間たちの配慮を拒否してますぞ。
という基礎的な話を聞きながら見覚えのあるトーテムの前に来ましたぞ。
「ここで俺たちが肩車すると隠された島が浮上するんだったか?」
「対応した道具を持って肩車するなの」
ライバルがパタタっと降り立って説明しますぞ。
何処からか既に確保済みのようですな。
「だけどその前にそこの石碑に記された魔法を習得しておくのが良いと思うなの」
「ええ、是非とも覚えておきたかったのですよね。あると非常に便利だと思いますので」
「そうだな!」
と、錬と樹が石碑に記された魔法を覚えようと解読を始めますぞ。
お義父さんもですな。
「ふむふむ……」
「しっかりと勉強をしたので覚えられますね。覚えてよかった異世界文字、高等存在人間様の国の文字なので反吐が出ますが」
「元康くんが教えるの上手だからねー。樹も程々にね?」
俺はお義父さんから教わったのをそのままお義父さんに教えているだけですぞ。
「……」
む!?
俺の直感が囁きますぞ!
『我、弓の勇者が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る弓の勇者が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、彼の者等の全てを崩せ!』
『我、愛の狩人が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る愛の狩人が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、魔たる力を吸収し力と成せ!』
「リベレイション・ダウンⅩ」
「リベレイション・アブソーブⅩ!」
樹が不意打ちで俺に向かって魔法をぶっぱなして来たので対抗手段のアブソーブで吸収してやりますぞ!
「チッ! 対応されましたか!」
「樹!?」
「フハハハハ! 俺に不意打ちなど無駄なのですピョン!」
槍を立てて樹の放った魔法を吸収して無効化ですピョン!
「前情報で聞いていたので不意打ちで放てば大幅に能力ダウンして仕留められるかと思ったのですけどね」
「俺は魔法の避雷針となって吸収できる魔法が使えるのですピョン!」
バッと俺と樹が対峙するように構えてにらみ合いをしましたぞ。
「失敗か!」
錬も参戦しようと構えましたが樹の魔法が効果がないのを悔し気にしてますぞ。
「はいはい。パーティーなアニマルのカルミラ島広場フィールド戦を開始しないの」
お義父さんが間に入って注意してきましたぞ。
「効果があれば僕たちでも勝てると思ったのですけどね」
「まあ、樹は能力低下系の魔法が相当強力みたいなのは事実だからね」
「え、えーっと……」
「はあ……平和なやり取りで済むかと思ったらここでも乱闘しようとするのか……」
ワニ男がため息を吐いてますぞ。
知りませんぞ。
「槍の勇者のやらかしで妙な乱闘になりかかったなの」
喧嘩を売って来たのは樹なのですぞ。
「では尚文さんが能力アップの魔法を僕たちに掛ける事で試合開始としましょう。ハンデですよ」
「だからそう言う喧嘩をここでしないの。本気で戦ったらシャレにならないからね」
「スキンシップですよ」
「見え見えの嘘を言わないの樹」
「しょうがないですね。一度元康さんに痛い目を受けさせたいのですけど、ここぞとばかりに撫でて貰う事でこの場は我慢してあげましょう」
樹が非常に偉そうなのですぞ。
「ぐぬぬ! ですぞ!」
「どういう戦いなんだよ……もう。話は戻って、樹はダウン、俺は……えーっとオーラでー」
「俺はツヴァイト・マジックエンチャントって魔法みたいだぞ。まあ、色々と教わったからリベレイションにアレンジできそうだが」
「そうだね。なんだかんだサーカス行脚しながら勉強したもんね。効果も元康くんやラフミちゃん、ガエリオンちゃんから教わってるね」
「内容自体は知っているな。なるほど、こういう感じの魔法か……使う瞬間が難しいな」
「錬さん。僕のダウンを剣に付与して元康さんに攻撃したら能力ダウンする剣に出来るんじゃないですか?」
「能力低下の魔法剣って出来たら凄いね。重複するかな?」
「俺はケルススだワン!」
「あ、そこ拘るんだ……」
錬が名前を呼んだ事に訂正を求めてますぞ。
「元康くんも似た感じの魔法だね」
「魔法を槍に付与にはなりませんぞ。ですが魔法を唱えて槍を掲げている間は周囲の魔法を全て吸収できますぞ。魔法が得意なライバルに効果的なのですぞ」
「その代わり動けねえって弱点があるのは知ってるなの。物理で行くだけなの」
ライバルが速攻で俺の魔法の弱点を暴露しやがりますぞ。
「魔法封じ系の魔法……というか特殊行動な感じだね。元康くんのは、自身を避雷針にする魔法って事らしいね」
「ですぞ!」
リベレイションとなると儀式魔法すらも吸収可能で範囲もかなり広いですな。
「俺のイメージだとエクレールさん辺りが使えそうなんだけどね」
「何故エクレール様?」
ワニ男がお義父さんの呟きに疑問を持ちますぞ。
「あ、まあ……そこは俺の知っている物語でそういった特殊スキルが使える人物が女騎士だったからなんだけなんだけどね。思えば囚われていたエクレールさんとかその辺りのイメージが被るかも……」
「他のループのなおふみも結構な頻度で言うネタなの」
「まあ、元康くんが使う魔法を聞いてエクレールさんを知ってたら言うだろうね」
連想なのですぞ。お義父さんがどのような考えをするかが分かる瞬間ですな。
俺の使うアブソーブに似た能力をゲームのキャラクターが使うらしいのですな。




