玄武ではない
「まあ俺も様子見でシルトヴェルトの方に顔出しはして……休まらなかったらエクレールさんの領地にしばらく拠点を置くか、ラーサさんの村を拠点にするよ」
「わかったなの。あ、後、槍の勇者」
「なんですかな?」
「時期を見て霊亀に関する問題発生前にしておけって奴、このループではしなくて良いなの。だからカルミラ島で長めに遊んでて良いなの」
「そうなのですかな?」
時期を見て言われた場所でブリューナクをぶちかませとライバルがお願いしてましたがどうやらこのループではしなくて良いらしいですぞ。
「なの」
「ふん。貴様もやるではないか。所で霊亀の国はこのループではどうするつもりだ? 藪を突くのも面白いぞ?」
「もうやめとけなの……」
う、俺のトラウマが!?
ラフミの奴、霊亀を復活させるつもりですかな?
「さすがにやめろですぞ。悪名が轟くし錬の仲間を殺したいのですかな!?」
「私もそこまで鬼ではない。生存できるように強化はしている」
「なんかカルミラ島の次のイベントで錬の仲間に死亡イベントが?」
「まあそうなの」
お義父さんも要注意イベントだと判断したようですぞ。
「そこではなく霊亀の国のな」
「あー……まあ、なんちゃって悪女にはこのループでも頑張って貰うなの」
「何か知ってる人?」
「なおふみや勇者たちは気にしなくて良いなの。もしも来ても相手をしてはいけないなの。相手をすると被害が増すなの」
誰かわかりませんがライバルが知っている人物のようですぞ。
そんな人がいましたかな?
「ふふ……平和に波が終わった後のアイツの様子は、面白くはあるぞ?」
「言ってやるななの」
「自棄になってこっちに深々と頭を下げて正体を見破って下さいとお願いさせるのも面白そうだな」
「お前は鬼なの」
ライバルとラフミのやり取りとお義父さんは俺に知ってないか顔を向けて来ますが、俺も分かりませんぞ。
内輪ネタで話を続けないで欲しいですな!
わかりませんぞ!
「そんな思わせぶりな話をされると気になるんだけど……霊亀って瑞獣だっけ? いるんだ?」
「ですぞ。先回りで色々とやってしまった苦い記憶ですぞ」
思い出すのも辛い、俺や錬、樹が行ってしまった出来事なのですぞ。
「カルミラ島の後に強くなったと思い込んだ俺たちが次の手ごろで装備を大幅に強化出来るボスとしてイベントを飛ばして復活させてしまい大災害になるのですぞ。起さなくて良い出来事なのですな」
「このループでは剣や弓の勇者たちは興味の管轄外みたいだけど注意はしてると良いなの」
「そうだね」
「で、その霊亀の封印されている国の注意事項であるのだけどなの」
「何かあるの?」
「排他的でかなり頭というか王が酷い国でもあるなの」
排他的な国なのは間違いないですな。
ゲーム知識でも問題がある設定ですぞ。
「樹向き?」
「間違いはないなの。だけど行かせない方が良いなの。対処を間違うと霊亀が復活して大災害になるからなの」
「うん。それは元康くんの話でもなんとなく分かったよ。他には?」
「もしもあの国に行ったら絶対に言ってはいけない言葉があるのも覚えておくと良いなの」
「フ……そうだな。勇者たちがそれを言ったら処刑されるかもしれんぞ?」
ラフミが皮肉交じりに笑ってますぞ。
「何?」
「あの国で霊亀を玄武と呼んではいけないなの。この世界ではいないというか……竜帝の知識で伝えられる魔物名であるし、ゲンム種という人種がいるなの」
ライバルの補足にお義父さんがちょっと小首を傾げますぞ。
「確かに亀繋がりだよね。だけど間違えるもの?」
「どうもあの国では時々、何処からともなく玄武と間違えて呼んで処刑される愚かな奴がいるなの」
「おかしくない? この世界には無い魔物名で間違えるとか……ゲンムって人種として間違えるならあり得るけど。それともお忍びの勇者とか? 異世界人が召喚されるんだし」
「勇者ではないなの。考古学に詳しい奴でもないなの。知能は間違いなく低いとガエリオンは思うなの」
ライバルが呆れ気味に答えてますぞ。
「ああ、確かタクトの例から転生者がいるんだっけ? その辺りで国名と封印されている魔物を間違えて呼ぶのか」
「正解なの」
「実に愚かな連中だ」
「なおふみ達も気を付けるなの」
「まあ、普通は間違えないと思うけどね。気になるのはガエリオンちゃんが何処で玄武を知っているのかって所だけど、竜帝由来?」
「半分当たりなの。残り半分は槍の勇者がガエリオンを捨てた世界の方では玄武がいるなの」
「ああ、なるほどね。捨てたとか……まあ、元康くんやらかしてたみたいだからね」
「やらかしではないのですぞ!」
とても心外なのですぞ。
ライバル、お前はあっちの世界でも永遠に居ればいいのですぞ!
「そっちの問題は良いとして……その先は? フォーブレイの方とかは確か元康くんが話を付けてたよね」
「ですぞ。タクトの件で既に話は終えてますぞ」
豚王とは既に話を付けていますぞ。
タクトの豚を出荷したお陰でかなり大目に見て貰えますな。
「そっちはそっちで問題ある連中はガエリオン達からの情報提供で対処可能なの」
「幅という意味で教えないのも手だぞ?」
「こっちの戦力で余裕で対処可能だから幅というより面倒なだけなの」
「大丈夫な訳?」
「少し泳がせた方が狩りやすくなるのもあるから難しいなの。七星武器も一部は探さないと行けなくて特定が面倒なの」
確かにあの時は面倒でしたな。
ある意味、タクトを泳がせて集めさせるというのも手ではありましたがタクトは苦しめないと満足できないのですぞ。
「何にしてもなおふみ達は波に挑んで行きつつ好きに行動すると良いと思うなの。問題があったらガエリオン達が助言をするなの」
「そうだな。私たちも未知に挑まねば行かんのでな」
「その未知に挑む意味はよくわからないけど……」
「気にしなくて良いなのーラフミも言うけど攻略本有りの人生は生きていると言えるなの?」
「まあ……未来が分からないから人は進めるようなものとも言えるね」
哲学的な話ですな。
そう言えばアークやホーくんは未来が見えるような事を仰っていましたが、可能性の低さ等で楽し気に笑っていましたな。
見えてもその未来にはならないのも理解しているようでした。
お義父さんの言葉からもあるように未来が見えても未知があるという事なのでしょう。
同じ行動はしない方が良いと槍の精霊も述べていましたし、運命は打破する為にもあるのですぞ。
「とりあえず当面の行動方針はわかったよ。錬も樹もやりたいように行動してるからね。ラフミちゃん、錬のかじ取りをしてね?」
「わかっている。アゾットは取り返しのつかないミスをすると激しく面倒なのでな。ついでにあの王に関してもフォローをしといてやろう」
「激しく気になるけど責任を取るって事ならしょうがないなの」
「任せろ」
「不安になって来た……」
という感じに、ライバルたちの打ち合わせは終わったのですな。




