善と悪の均衡
「確かにあいつの部屋にある瓶が本当かわからないなの。だけど自爆するかわかるなの?」
「ふん……奴が暗殺をしようとするのは事情を知っていればわかるであろう? 思い出せ、奴のあの時の目つきを」
「確かに……あの王が色々と勇者として復帰しかねない可能性なのは誰の目にも明らかだからなおふみよりも脅威に感じるのは間違いないなの」
「となれば奴が開いたお茶会に潜り込み、万が一王や女王が見過ごそうものなら私が見抜いた演技で奴自身に盛れば……結果は同じだ。ま、あの王が事前に阻止してあのような形になる可能性も十分あったので想定内だ」
「確かに……犯人のラフミちゃんが居なかったらアトラちゃんが危険なのは間違いない。あの毒を持たせたまま放置してたら……王も女王も、メルティちゃんやフォウルくんも危なかったな」
「持たせなきゃ良いだけなの。そもそも王も気づいて食わせただけなの」
「薄々怪しんでいたから減刑を求める為に命令したみたいだったもんね。その所為であの王……自分で殺したって精神になっちゃってるけど、立ち直れるか心配だ」
このループではお義父さんも恨みがあるのにとてもお優しい配慮をしていますぞ。
お義父さんはクズに同情をしているのですな。
「見抜いたとするのが良いのかなー。まあ、元康くんがものすごく悔し気だね」
「悔しいのですぞー!」
赤豚はもっと苦しませないといけなかったのですぞー!
「これが槌の勇者のする事なのかなー……というか錬の影武者がして良い事なんだろうか……」
「バレなければいいのだ。事を荒立てるつもりはないからこそ、あの場ではなく今、私を問い詰めたのだろう?」
ぐぬぬ……ですぞ!
邪悪な精霊なのですぞ! ラフミイイイ!
「お前は本当、邪悪な側面を持ち過ぎだと思うなの」
「ふ……一つ教えてやろう。精霊の全てが善ではない。悪も持ち合わせているからこそバランスが取れるのだ」
「はいはいなの。邪霊にならないよう注意しろなの」
「言うではないか。敢えて言うならやって見たかった。やはり食い物に異物を入れるのは私も反吐が出るな。ゲロオオォオオ」
ケロッとした顔でラフミがチョコを吐きました。
「うわ、無表情でチョコ吐く姿……ラフミちゃん、無茶してる?」
「ゲホ」
「お前……ケロッとした顔でダメージ受けてるとか何なの?」
「ゲホ! これも、私の復讐だ……ゲホ」
本当にダメージを受けているのですかな?
「ラフミちゃんの矜持からしても嫌な手なのにやり切るとか……」
「私が何に怒り暴れた精霊だったか忘れてはいないぞ? チョコレートを粗末にする者を私は許さない。食べ物に変な物を入れるな」
「現在進行形で吐いてるのは何なのか問わない事にするなの」
「毒殺というか食べ物に異物を入れて食わせる手口が大嫌いなんだね、ラフミちゃん」
「そうだ。知っていただろう?」
お義父さんが子飼いにする義賊の実家に関するあれこれですな。
「錬が逃避行する事に関して寛大なのも料理にはしっかりと向き合っているからという事かな?」
「如何にも、美味い料理を作る事には協力してやるつもりなのでな」
「ラフミちゃん也のルールって事なんだろうけどねー……まあ、元康くん。今回は諦めようね」
「くっそなのですぞおおおおお!」
赤豚に逃げられてしまいましたぞ!
次のループまでの辛抱なのが非常に悔しいのですぞ。
思えば全然赤豚に報いを受けさせれていないのですぞ!
毒殺した次のループでは既に処分済み、満を持して苦しめてやろうとしたらこのザマなのですぞ。
「まあ、王に関しては私も色々と配慮してやろう」
「本当に任せて良いのか不安になってきたなの」
「あまり追い詰めると杖の精霊がやかましいのでな。そこまで私も遊びはせんよ。そもそも精神的支柱がまだいるからある程度どうにかなるだろう」
精神的支柱ですかな? クズを廃人にするのにまだ支えがあるのですな?
「後から会わせた方が良いとガエリオンは思うなの。今回みたいなのは結構危険なの」
ライバルの台詞にラフミは嫌な笑みをしましたぞ。
「そう言うな。早めの登場を最初の世界では望んでいたという話なのだから叶えてやってもいいだろう?」
「確かに虎娘の願いは否定しないけど……なの」
何やらラフミとライバルにしかわからない話をしてますぞ。
「槍の勇者、お前も多少は考慮しておくと良いぞ? 何、あの王女に見せなければ良いだけ、いや……機会があるならもっと早い段階で王に見せてやるのも面白くなるぞ?」
「本当ラフミちゃんって危険に足を突っ込むなぁ……」
何やら虎娘がお願いしてきたような気がしますが……王族の贅沢な暮らしでしたな。
今回のループもさせましたぞ!
「まあ気を付けないといけないのはメルロマルクに居る時ではなくシルトヴェルト側に居る時に連れまわす方が危ないだろう」
「そこは内政的な問題で危険すぎるなの」
「何の話なのかちょっと分かり辛いなぁ……」
お義父さんがラフミ達の話に混ざれずに居ますぞ。
「このループでもそうだぞ? アトラとフォウルをシルトヴェルトで盾の勇者の配下として連れまわしては危険なのだぞ?」
「まあ、その辺りはシルトヴェルト関連の人たちやヴォルフがよく言ってるよ。内政面で非常に危険だって」
虎娘たちの種族、ハクコ種はシルトヴェルトでの地位に問題があって特にお義父さんの配下として連れて行くと危険なのですな。
「王様との交流の為に連れて来たからメルロマルクの方に居て欲しいのは事実かな。もしくはラーサさん辺りの配下って事にするのが良いみたい。ラーサさんも知って気にかけてたよ」
パンダと虎娘たちは色々と関係があるからですぞ。
「まあ……あの王女の毒殺の件はこれくらいにしておこうか。まだ話すことある? 次のカルミラ島って所でラフミちゃんは錬をしっかりと連れて来てね」
「わかっている。カルミラ島に連れて行く人員だな」
「ちょっと人数多いから考えないとダメなの。槍の勇者、あそこでフィロリアルフィーバーするなの?」
「フィーロたん探しの為にやりましたが、このループにはフィーロたんが居るので悩みますな」
「さすがにフィロリアル多いから、そこまで増やさないで欲しいんだけど……」
みんなで興行をして盛り上げたのですぞ。
「というよりもカルミラ島に行った後はどうしようか? 女王にはエクレールさんの領地の復興は程ほどに俺には他国の方の波に挑んで欲しいってお願いされたんだけど」
ああ、女王からそう言う類の願いを最初の世界でも言われましたな。
出発前に俺もお願いされるでしょうな。
このループでは錬=ラフミがメルロマルクに留まってほしい勇者となっていますからな。
「波が終わるまで各国を回って行けば良いなの。それと復興手伝いで文句は言われないから問題ないとガエリオンは思うなの。ガエリオンとしては、なおふみは今後何処に拠点を置くつもりなの?」
確かにそうですな。
お姉さん達の村の復興が割とよくやる行いでその後は村を拠点に各地の問題解決に動くのが大半なのですぞ。
「そこなんだよねー……責任って面ではラフタリアちゃん達の村が気楽なんだけど、ヴォルフやシルトヴェルトの人たちからはシルトヴェルトに来てほしいと思われるし、シオンは復興の為にこっちに来てほしいみたいだし……」
うーんとお義父さんは悩んでいらっしゃるのですぞ。
「弓の勇者の世話ついでにガエリオンはシルドフリーデンの方に行くなの」
「テオとリーシアさんも樹に同行して貰おうと思ってるよ。樹はルーモ種の人たちの復興手伝いもこの国でするらしいけどね。シルドフリーデンってルーモ種を受け入れられる?」
「あまりお勧めしないなの。ここのルーモ種の大人しい気質じゃ安住向けじゃないなの」
タクトと豚が統治していたシルドフリーデンは俺も覚えがありますからな。
賠償問題が無くてもガタガタなのですぞ。




