フールオペレーション
「……」
そんな問答をクズは不快そうな顔で見てましたぞ。
勇者同士の不和を画策していたのに結束しているのですぞ。
どうですかな? この俺の策略はですぞ。
「ブブ!」
っと三勇教の豚が通路から突然、短剣を持って突撃してくることがありますな。
「流星盾」
「ブヒ!?」
「およびじゃないですね」
シュバっとお義父さんの流星盾に当たるよりも早く樹がウサギ男に乗ったまま射抜いてましたぞ。
豚が派手に吹っ飛んで壁に付けられてますぞ。
「ブブブ――」
で、何か言うよりも早く樹がトドメとばかりに眉間に矢を放ってましたぞ。
やりましたかな?
お? 絶命しましたぞ。
「うわ……」
錬がドン引きしてますな。
樹の事ですから気絶させるとかかと思いましたが容赦が無いですな。
「殺意が感じ取れたので殺して置きましたよ」
「ああもう……本当、元康くんに匹敵する速さになって……もう少し加減をしてくれないかな? 女王様が居るんだからね?」
「女王の前で気に食わない勇者を殺そうとするだけで完全に役満だと思いますがね?」
どうですか? と樹が女王に向けて満面の笑みを浮かべてますぞ。
お義父さんも氷点下の笑みをすることがありますが、樹の顔はそれと同じ類ですぞ。
女王は扇で口元を隠しつつ嘆くように額に手を当てて目元を隠してましたな。
「ええ……そうですね。このような者の処理を私共は追及することはありませんね。まったく嘆かわしい」
ちなみにとある貴族の代表クラスだったらしいですぞ。
「はは! この手の不意打ちはおたくの娘さんの長女も好きそうですよねー」
樹の言葉にクズが眉を寄せましたぞ。
「マルティが出てきたとしたら同様に殺すというのか! 許さんぞ!」
「そう思うのでしたらボクが手を出す前に庇う事ですね。ふふ……まあ、お宅の娘さんは三勇教徒とやらなのか疑問ではありますが」
「あの子は熱心な子じゃ」
「あの子に信仰心なんて微塵もありませんよ」
クズの言葉を完全に否定するように女王が答えましたな。
「あの子にとって三勇教は利用できるものでしか無いですね。イワタニ様への嫌がらせも使えるからしただけでしょう」
「そこの王様の機嫌取りや国の情勢とかで察する事は出来るけどさ」
「なの」
ライバルが俺の方を見てますぞ。
理由は知っていると答える事は出来ますな。
「ふふ、きっと波を起こしている元凶はあの王女なんじゃないですか? 何か秘密があるんですよ。両親さえも騙して居る何かがね。尚文さんの所為にする前にお宅の娘の暴挙に厳罰を与えませんとねぇ? 楽しみですよ」
樹の命中が思いっきり命中していますな。
「その件では既にどうするかは決まっていますね」
「な、なんじゃと!? マルティに何をさせるきじゃ!」
「オルトクレイ? 原因はあなたにもありますよ。どうにかしたいのでしたら此度の騒動で相応の活躍をするほかありませんね……武力に関しては勇者様には敵わないでしょうから、相応に……」
女王がクズへと暗に脅しをしてますな。
赤豚への罰ですかな?
俺も奴には罰をもっと与えたいですぞ。
思えばもうすぐ奴に報いと地獄を与えられるのですな。
お義父さん達を苦しめるのは元よりフレオンちゃんを毒殺した報いをもっと味合わせてやらねばいけません。
フレオンちゃんと再会したループがこれまでのループ内で奴に罰を与えられた最後でしたな。
次のループは既に奴を処分済みのループでしたからな。
実に楽しみですぞ。
出来ればタクトと同様の処理をしてもまだ許しがたいですぞ。
より残忍に赤豚を処理する手立てを考え続けなくてはいけませんな。
まあ……どちらにしてもまずは最初の世界で赤豚が騒ぎ立てた豚王への出荷をまずするのが良いでしょうかな?
もちろんまずは泳がせて毒を自分に飲ませるように機会を見るのが良いでしょうな。
おそらく女王の事だから王族から排斥、権力のはく奪で一度収めるという所でしょう。
クズと俺達の関係を調整する腹積もりでしょう。
赤豚を速攻処刑するのは憚られると。
甘い判断をしつつ豚王への出荷をちらつかせるのですぞ。
まあ、赤豚は現在、取り入る後ろ盾が全て潰れているので罰の免除は相当に難しい四面楚歌ですぞ。
最後の滑り止めだったタクトは既に七裂島で永遠のオブジェにしてやりましたからな。
どちらにしても苦しめる為に泳がせますぞ。
ふふふ……ですな。
クズがどんな活躍をするか見物ですぞ。
等と思いながら進んでいると。
若干、似たような状況が脳裏を過りますぞ。
俺はこのような行動をした事がありましたかな?
「ライバル」
非常に不服ですがライバルに小さく声を掛けますぞ。
「なんなの?」
「なんとなくこの城内の雰囲気に覚えがあるような気がするのですが、気の所為ですかな?」
「ああ、槍の勇者。お前も心当たりがあるなの? 状況は違えど似た雰囲気というのは間違いないなの」
「何に似てるのですかな。教えろですぞ。俺は未知を選んだはずなのですぞ」
「そりゃあお前、偽者の王が城を占拠して奪還の為に女王と乗り込むなんてガエリオンが知ってるループでもあの時のに重なるなの。まあ……それよりも小規模ではあるけれど、こっちはゾロゾロと人員が多いなの」
などと話をしていると玉座の間に到着したのですぞ。
そこにいたのは……薄っすらと見覚えのあるとてもガタイの良い肉体派の神官っぽい奴と、クズの影武者ですな?
後、赤黒い豚がおりました。
あの赤黒い豚も薄っすら覚えがありますな。
三勇教が占拠しているという事なので今回は教皇がここで待ち構えているのかと思ったのですがいませんな?
むしろフォーブレイに向かったループの際に現れた新教皇ですぞこいつ。
なるほど、確かにライバルの言う通りフォーブレイに向かった際のループの城での決戦と雰囲気が似てますぞ。
あの時よりも禍々しさは無いですがな。
城下町の嫌な雰囲気は十分ですが荒れ果てる具合は異なりますぞ。
治安が低下していてもあの時程の荒れ具合ではないですな。
「ここまで来たか、偽勇者共と女王を騙る売国雌狐と調子に乗った愚かな王め!」
更にクズの影武者とガタイの良い神官が錬を睨みつけましたぞ。
「よくも信頼を裏切り、ノコノコと偽者の王一行と盾の魔王共々連れて来たな! 今回の剣の勇者も偽者で魔王の一味だったとは! 信仰を踏みにじった事を断じてくれる!」
クズの影武者が俺達に向けて吐き捨てました。
記憶の中では肌の色が紫色だったような気がしますが、普通の色合いですな。クズの偽者ですぞ。
「俺に気づかせないように立ち回ったつもりだったんだろうが筒抜けだったぞ! 騙せると思わない事だな! どっちが本物の王様かなんて一目瞭然だ……魔王の一味……」
「錬、ちゃんと演技しなきゃ。この剣の勇者<闇聖勇者>を騙す<イリュージョンインダクト>をしようとも俺の真実を見通す邪眼<イヴルトゥルーアイ>の前では所詮はハリボテ<フールオペレーション> どちらが本物の王<アルティメットセージ>かなど闇を司る俺の前ではわかるものだ!」
錬がお父さんを見つめて眉を寄せました。
「そんな演技をここでする訳ないだろ! いい加減にしろ尚文!」
「じゃないとさ、錬が偽者だって思われかねないじゃない? こう……ね?」
ラフミがこの手の連中相手にはそんな口調で話していた疑惑がありますからな。
「くっ……うるさいうるさい! 樹! ムービースキップだ!」
「いえいえ、錬さんの大事なシーンをスキップするのは良くないですよ。僕はここで撮影でもしておきますかね。クロさんに錬さんの雄姿を見せてあげないと」
いつの間にか樹が映像水晶を取り出して撮影準備をしてますぞ。




