パーティーなアニマル
「ぐううう! ここで倒れてなんて居られません! 今度こそ逃すかぁああああ!」
麻痺していたはずの樹が立ち上がって薬を飲んで復帰ですな。
しぶといですぴょん!
「尚文さん!」
「二度目は通じないですぴょーん!」
チッチッチ! と、樹に挑発してやりますぞ。
「ヴォフー! スパイラルクローⅩ!」
「おっと! 大車輪で錬に突っ込むが良いですぴょん!」
俺はさっとヴォルフの突撃を弾いて錬にぶつけてやりました。
「邪魔だ!」
「ヴォフゥウウ!?」
錬にも弾かれてヴォルフが無様に転がっているのですぞ。
「む……中々の動きじゃ」
「ううむ……あれが槍の勇者の本気か?」
「いや、ワシには見える……まだ余裕があるようじゃ」
老婆とパンダの祖父も駆けつけてきて俺たちの戦いの観戦に加わっているようでしたぞ。
見世物染みて来てますぞ。
「ヴォルフが戦力負けしている。なんだかんだ言って四聖勇者たちか」
「見た目は随分と可愛い獣人種になっているけれど、秘めている力は凄まじいという事か」
「見た目はファンシーだけどLvの高い戦いをしてるなー……錬と樹は元康くんに復讐できるのだろうか」
「ちょっと厳しいかもしれねえなの。槍の勇者、あの方から槍術を教えてもらったのが体に染みついてるみたいだから精度がたけーなの」
ふははは! 武器の強化だけではなく俺の技術は前より遥かに上がっているのですぞぉおおお!
戦っている俺も不思議な位、樹と錬の猛攻を捌けるのですな!
「わーなになにー? なんか楽しそうー」
「元康様ー! ファイトですわー!」
「おー愛玩の犬頑張れー」
「おー……」
ユキちゃん達、フィロリアル様方も応援に加わったみたいですぞ。
なんだか楽しくなってきましたな。
そうして俺たちは激戦をし、最終的に立っているのは俺だけになりましたのデスピョン!
「やりましたぞ、お義父さん! 俺が優勝ですぴょん! 優勝賞品はお義父さんに撫でて貰う権利ですぴょーん!」
錬と樹は戦闘不能になって意識なく転がっていますぞ。
随分と粘りましたが俺の勝利は揺るがなかったですな。
もちろんヴォルフも既に倒れてますぞ。
勝利のポーズを取って槍を大きく掲げますぞ。
「いつの間にか優勝賞品が決定している件」
「次はウサギ男! お前も参戦しろデスピョン! 俺がウサウニーだとバレたからにはそのポジションは俺のものなのですピョン!」
「一体何を争っているんですかあの人は! というか何なんですか!」
「あー……とりあえず元康くん。君はこれからお説教の時間ね?」
そうして何故か俺はお義父さんに怒られる羽目になったのですぞ。
理不尽ですぞ。優勝したのにご褒美が無いとはどういうことですかな!
「お義父さん、この俺の曇りなき眼を見ても俺が悪いと思うのですかな? 俺は錬と樹にこの世界の真実を教え、みんなに愛される勇者としての魔法を施しただけなのですぴょん」
「く……元康くんが何も悪い事はしていないと心の底から思っているとしか言えない遠くからでも見えそうな動物の目のそれをウサウニー姿でしてくる」
「うわ……そのキラキラな目、気色悪いなの。尚文がそう言う目つきに弱いのわかってる全力の目つきなの」
「ライバル、心外な事を言うなデスピョン」
俺は悪くないのですぴょん。
「悪いのは調子に乗っていた樹と、姿が変わった程度で気づかずに売り払った樹の仲間ですぴょん」
錬は仲間との連携はしっかり出来ていますし目も覚めているのですぞ。
「そこは否定のしようがないけどさ、せめてもう少し成り行きを見届けて上げて欲しかったかな」
「大丈夫だと思ったのですピョン。あいつらが愚かすぎなだけデスピョン」
「うーん……錬の仲間がしっかり動いてくれたから元康くんの理屈も否定しきれないかなぁ」
俺の行いは正しかったのデスピョン。
「そうとも言えねえなの。別のループで弓の勇者は、仲間に殺されてるなの」
「ライバル、俺の所為にしようとするなですぴょん!」
確かにシルトヴェルトに行ったループで樹は仲間に殺されましたが、あの時とは状況が何もかも違うのですぞ。
「面と向かって負けた様を見させられて乗り換えようと動くような状況にはさせてないのですぞ」
樹に関してはこれくらいで別の所から俺は無実の証明をするのですぞ。
「錬がみじめなのは俺ではなくラフミの所為なのですぴょん……なんでも俺の所為にしないで欲しいデスピョン」
「責任転嫁さえもしている。事の原因はイヌルトになった所為だよ元康くん」
「他のループで錬はイヌルトになっても大して変わらない様子だったのですピョン。勝ち馬に乗ったらそれはそれで錬も調子に乗るのでイヌルトにしたらどうなるか実験でもあったのデスピョン」
どうもクロちゃんでは闇聖勇者に目覚めるのに時間が掛かりそうだったので困らせて足止めをしたら結果的にお義父さんの所に来たんですピョン。
「早めに戻してあげたら……まあ信じてあげたかな」
「その必要があるのですピョン? 結果的に錬はメルロマルクの真実と陰謀に気づいているのですピョン」
「うーん……悪意があるのが悪いかなー」
「この俺に悪意等ないですピョン。あくまで錬はついでですぴょん」
「悪意より性質の悪い返事だなぁ……無関心って事だし、元から元康くんってそういう所あるとは思ってたけど素直に答えて良い物じゃないと思うんだけどなー」
何にしても元康くんは仕出かした事に関して反省ねとお義父さんは仰ったのですぞ。
「理不尽ですぞ。優勝したのにご褒美が無いのですぞぉおおおお」
「ここまでやらかして死屍累々の中で勝利ポーズを取るのはどうなんだろうか……撫でるべきなのか?」
「く……う……まだ、俺たちは負けない」
「覚えておいてくださいよ」
目覚めた錬と樹が悔し気な声をあげてましたぞ。
「しょうがないですな。では錬と樹を元に戻してやりますぞ」
「早く戻せ!」
錬は一刻も早く戻りたいという様子でしたが樹に関しては興味無さそうにしてますぞ。
「僕は別に興味無いです。元康さんに報復するにはどうしたら良いでしょうかね」
「樹! 元に戻れるんだぞ! 今戻らなくてどうするんだ!」
「そうは言いましてもねー……高等存在人間様に今更戻りたいかと言われても……」
「ふん! 樹はともかく早く俺は人間に戻るんだ!」
錬は必死ですな。
「錬、もっと余裕を持っても良いのではないですかなー? このウサウニーの俺が魅力をアピールしてやりますぞー」
「元康くん、なんかウサウニーであることに関してもプライドありそう」
「ふはははは、俺の毛皮はお義父さんに撫でられる為にあるのですぞ。どうですかなお義父さん! この俺の毛皮を撫でて下さいですぴょん」
お義父さんにすり寄って撫でろとアピールしますぞ。
お目目キラキラですな。
「なおふみ、この槍の勇者は撫でてやらないといつまでもこの目ですり寄ってくるなの」
ライバルがため息を吐いてますぞ。
どうとでも言えですぞ。
「この俺の肌触りを知ればウサギ男になんぞ触る価値など無いとお義父さんはわかるはずですぞ」
「だから一体何をこの方は張り合っているんですか!」
「はあ……まったく、しょうがないな」
お義父さんはため息を吐きながら俺の毛並みに触りますぞ。
「うわ、なんだこの肌触り、ぬいぐるみのそれみたいにサラサラで生き物って感じない位だ」
「フカフカですぞお義父さん、どうですかな?」
「いや、まあ随分と毛並みに拘ってるなとは思うけどさ」
「ヴォフ、ナオフミ様、俺も! 俺も撫でて欲しいヴォフー」
「ヴォルフ、お前も張り合うのですかな!」
「ヴォフーペン!」
おのれヴォルフめ! 狼姿でも毛並みでウサギ男に有利を取ろうとした挙句ペックル姿でも張り合うつもりですかな!
どこまで強かなのですかな!




