デートコース
「それじゃあウサウニーの情報を何か知ってないかゼルトブルの裏の組織にお金払って聞いては見るよ」
「お願いしますね」
「どっちにしてもすぐに聞きに行く訳じゃないけどね。連絡を取るので少し待ってて、それで元康くん」
「なんですかな?」
「昨日から俺の周囲にずっといてキョロキョロとしてるけどどうした訳?」
「どこかからお義父さんを狙う刺客が来るか備えているのですぞ」
「いくら何でもいないってそう言うのは……メルロマルクにはもういないんだから」
三勇教ではなくライバルですぞ。
俺が目を離した隙にお義父さんをパックンちょしかねないのは変わらないのですからな。
ラフミの所為でここを直接言えないのが歯痒いのですぞ。
奴はやらないと言いつつ虎視眈々と狙っているに違いないのですぞ。
姿を現した手前、全く油断できない存在ですな。
むしろ今、奴が何処で何をしているのか……警戒を怠れないのですぞ。
奴が俺の手立てを見て行動するのは時間の問題な気もしますぞ。
「メルロマルクの暗部が血眼になって探している姿を想像すると思いっきり笑えますよね。勇者を舐めすぎている連中を」
「それは割とサーカスをする頃から変わらないかな」
「ちなみに最近、盾の勇者を名乗るサーカス集団が炊き出しをして食事に毒を盛った事件というのがメルロマルクであるそうですよ」
「何ていうかさ……成りすましってよくやるね。何度か行った人は別人のサーカスだって一発でわかると思うけど」
「もちろん、料理の屋台での動きで一発で気づかれて誰も買わなかったそうです。無料でも食べなかったとか」
「いくら盾の勇者憎しでも進んで犠牲者にはならないでしょ」
「そこで出てくるのがサクラですね」
「やりそうだけどー……あの手この手で閃くよねー」
と、三勇教の悪事の情報をお義父さん達は掴んで呆れたという話なのですぞ。
「ぶー」
ルナちゃんの抗議の声が聞こえましたぞ。
む!?
「なんだろ? ルナちゃんの声みたいだったけど」
現場に駆け付けると……錬に絡みたかったのですがライバルの親に掴まれてルナちゃんが追いやられていましたな。
助手が少し離れた所で成り行きを見守っていましたぞ。
「よし! 絡んできたルナを撃退出来たぞ! ガエリオン、よくあいつを追い返せたな! しっかり育てた結果が出て来たようでよかった!」
勝利とばかりに錬が喜んでいますがそれすなわち、ルナちゃんの敗北で俺からすると面白くなんかまるで無いのですぞ!
「ガウ! なのー!」
「ぶー! なんかあのガエリオン、今までと違う手を使ってきたー」
「そう言いつつルナちゃんは俺を掴んでるんじゃない!」
ルナちゃんはどうやら追い返されたのでキールを抱きしめて憂さを晴らしているようですぞ。
錬の捕縛に失敗したのですな。
キールと錬をデートさせてそれっぽい良さそうなムードの出る所に連れて行くつもりだったのでしょう。
「今度こそルナは負けないーちょっとルナはキールくんと強くなる為にお出かけしてくるー」
「俺を巻き込むなよルナちゃん! おい!」
ズドドド! と、ルナちゃんはキールを連れて走って行ってしまいましたぞ。
「追い返せたがルナたちも油断は出来ないか……ウィンディア、しっかりとガエリオンに指示をするんだぞ」
「う、うん。ルナちゃんもキールくん達の事さえ関わらなきゃいい子なんだけどなぁ」
助手はライバルの体に宿って成りすましている親との戦いの手伝いをしているのですぞ。
そうして騒動が収まった後、助手と錬はそれぞれやりたいことの為に出かけて行くのですな。
行き先的に錬はワニ男が稽古している所に行くようですぞ。
「またいつもの痴話喧嘩でしたね。どうやら今日は錬さん達の勝利で収まったみたいですけど」
「無理やりはダメだって注意はしてるからルナちゃんも強引過ぎる事はしないようになっては居るんだけどね……キールくんと錬をデートって名目で背中に乗せてドライブしてロマンチックなムードにさせようとするみたいだよ」
「俺監修の夕日が綺麗に見えるデートコースとか夜景がきれいなコースですぞ! ゼルトブルはどっちもありますぞ」
眠らない町な側面のある所は総じて綺麗なのですぞ。
「イベントが豊富な町だからねー……ラーサさんなんて遊びに行ったら朝まで帰ってこないなんてザラすぎでお父さんやお爺さんに注意されて露骨に嫌そうな顔をしてたっけ、そのお父さんも何かゼルトブルで呼び出されて行く事が最近増えて逆にゼルトブルには行きたがらなくなってるけど」
「お義父さんは夕日が見えるデートコースと夜景が綺麗なコースのどっちが好みですかな?」
ちなみにお姉さんには夕日が綺麗なコースでやや古い言葉遣いで口説いた事が俺にはありましたぞ。
この世界の豚は若干古いセリフの受けが良いのがあの時の俺の調査ではわかってますな。
結果は怒られてしまいましたがな。
お姉さんはあまりムードに惹かれない方なので、お義父さんがその後どうやってお姉さんを満足させるデートをしたのか気になりますな。
モグラとはゼルトブルとかにお出かけしていく姿がどの世界でも多いのですがな。
何でも装飾品の店に完成度を見に行くのが目的で行くのだとか……二人揃って貴金属は商売道具で買うという概念は無いらしいですぞ。
買うとしたら研究用ですぐに分解されてしまうのだとか。
……お姉さんも難しいですがモグラも大概難しい人柄では無いですかな?
なんて思っていると精霊となったお姉さん似にイメージが塗り替わったモグラがお姉さんみたいに、あなたにそんな心配される筋合いはないと答えられてしまいましたぞ。
お姉さんと共通規格なので想像しやすいですが、モグラは大人しい方が正しいと思いますぞ。
お姉さんモグラではいけませんな。イメージの塗り替えですぞ。
そもそもお義父さんとモグラを仲良くさせておいて、お姉さんに怒られそうになった際に巻き添えにするのですぞ。
と考えていると……。
「なんかそれ、テオやヴォルフにも聞かれたんだけど流行ってるの?」
「なんですとー!?」
あのウサギ男と狼! いつの間にお義父さんに聞いてるのですかな!
「リザードマンの彼は聞かなかったので?」
「シオン? あー……エクレールさんとよく話してるからデートとかでどうするかわかるんじゃない?」
「違うと思いますけどね」
「ちなみにお義父さんはどっちが好みですかな?」
「ラーサさんともサディナさんも、ラフタリアちゃん達ともその時間に出かけた事あって、どっちも景色が綺麗だったね」
お義父さんが呑気な返事をしてましたぞ。
そのまま卒業していたらどれだけ楽だったかですな!
お義父さんはデートを無自覚にしておきながら女性陣を放置している天然タイプで間違いないのですぞ。
最初の世界のお姉さんがどれだけ苦労したのか俺には痛い程わかりますからな。
おや? 最初の世界のお姉さんが理解しなくて良いと述べているような気がしますが、俺は気の利く男ですぞ。
そもそもライバルが既に近くにいるのが判明している手前、時間が残されていないのですぞ。
しっかりと注意しないとライバルが頼れるお姉さんムーブを本気でしながら襲い掛かられてしまうのですぞ。
お義父さんに察せられる前に処分したい所ですな。ハートを渡すわけにはいかないのですぞ。
ライバルは……どこに潜んでいるのですかな!
「樹はどうなの? エミアさんとかリーシアちゃんとさ」
「彼女たちですか? エミアさんはルーモ種なのですが、暗いのがトラウマで苦手になっているので夕暮れ時だと調子が良さそうですよ。リーシアさんはよくわかりませんね」
「そ、そうなんだね」
樹は鈍感なのかな? と、お前が言うなと俺も言いたいほどにお義父さんが仰っていましたぞ。
アレですぞ。人当たりが強くなるとお義父さんも樹も鈍感を宿すのでしょうかな?
いえ……お義父さんはどっちでも鈍感ですな。
人の恋路には興味があるのにですぞ。




