兵力不足
サーカス興行と奴隷売買を続ける俺達ですな。
そんなこんなで月日が経ち、お姉さんのご友人たちも殆ど回収を終え、女王の帰還を待っていたら二度目の波の時期が大分近づいてまいりましたぞ。
俺はその間に何をしていたかと言うとフィロリアル仙人にユキちゃん達を見て貰いに行きましたぞ。
時期的に赤豚が仙人からフレオンちゃんの卵を強奪しているかもしれないとヒヤヒヤしたので若干早めに話は通した形ですな。
これまでのループでわかっているのは仙人はどちらかと言えばメルロマルク寄りの思考でありつつフィロリアル様を大事にする方のようなのですぞ。
穏健派ではありますが、亜人獣人への感情はやや苦手らしいですな。
もちろん虐待などは好まないけどちょっと怖いという認識でフィロリアル様は大切にしている……そんな方ですぞ。
今回の俺たちはフィロリアル様でサーカスをしていると自己紹介をしつつ、ユキちゃんがレースに興味があるという形で仲良くなり、フレオンちゃんの卵を譲って頂きました。
平和な方のサーカスであるゼルトブル側で招待を行ったのですべてが片付いたら見て頂く約束を取り付けましたぞ。
そうしてフレオンちゃんの卵を持ち帰った時ですな。
「あ、またフィロリアルの卵を買ってきたの元康くん?」
「些か多くないですか?」
「ルナが増えるような真似はするなよ?」
と樹と錬が俺に注意してきますが知りませんな。
「この子はフレオンちゃんなのですぞ。フィーロたんと同じく、そろそろ確保して育てる準備をしておきたいのですな」
「あ、なんか特殊な育て方をしないといけない感じ?」
「そうとも言えますが、どうですかな……」
「これまで通りにしておきたいなら無難になぞるのが良いだろう」
とラフミが顔を出しますぞ。
ええい、わかってますぞ。
ですがフレオンちゃんはフィーロたん程、状況を再現しなくても良いのではないですかな?
とは思うのですがな。
時期が遅れてもフレオンちゃんはフレオンちゃんでしたぞ?
「まあ、時期は固定して与えるご飯も出来る限り近づけはしますぞ。ですが前回のループでは時期が違いますが変わらないフレオンちゃんでしたぞ」
既に波の問題が解決した時期だったのが前回のループでした。
あの時もフレオンちゃんはお変わりがありませんでした。樹が随分と抵抗したのですぞ。
「私の計算では波の魔物を餌に混ぜろとの判断だ。拒否しても良いが、槍の勇者。これまでのループで別の事をしたか?」
「く……」
不服ですが確かにフレオンちゃんには波の時期に孵化して貰ってその時に得たものを食べて頂きましたぞ。
フィーロたんの状況再現から必要な要素かもしれないですな。
ルナちゃんが白かった例もラフミの計算に裏打ちされてしまっているのですぞ。
「特殊フィロリアルって事になるんだろうけど、どんな子かな?」
「槍の勇者が最初に育てたフィロリアルであるフレオンの秘密はー……」
またラフミが思わせぶりな言い回しをしてますぞ。
お義父さんも錬も樹も付き合わないとばかりに無視を決め込んでますぞ。
「おい。しっかりと聞かんといたずらするぞ」
「面倒くさい人ですねあなたは」
「それが私だ! ほら、しっかりと聞くのだ。今回は特別に教えてやろう」
「普段から何も言わないだろ!」
「だから答えてやると言っているんだ。聞け」
「はいはい。そのフレオンってのはどんな奴なんだ?」
「ああ、槍の勇者に譲った奴が既に知っているし一部話もしているのでユキはなんとなくわかっているだろうが空飛ぶフィロリアルだ」
ラフミの奴、ベラベラと喋りましたな。
「おお……それは凄いんじゃない? あ、というかフィロリアルって飛べるのも居るんだね」
「絶滅しているのだがな。こいつの因子を使えば後天的にもフィロリアル共を飛ばす事も可能だぞ? そのカギとなるフィロリアルだ」
「それは凄いね」
「飛べるならサーカスの看板になるんじゃないか?」
「フレオンちゃんを見世物にはしませんぞ? 仙人に約束しましたからな」
サーカスをしている件は説明しましたぞ。
ですが仙人にフレオンちゃんが空を飛ぶというのを見世物には絶対にしないと譲って貰う前に宣言しました。
色々とフレオンちゃんに関して気にかけている仙人ですからな、そういった事に使われるのを懸念しておりました。
もちろんフレオンちゃんの意志を尊重はしますが飛ぶのを見世物には絶対にさせないのですぞ。
ライバルから教わった事で非常に不服ではありますが、空飛ぶフィロリアル様はフィロリアル様すべてがやろうと思えばできる技術にはなるのですぞ。
「使わない手は無いとは思いますけどね」
「俺とキールを見世物にしておきながらさせないとは気に食わないな」
「錬は根に持ちすぎだから」
「うるさい」
「で、飛べるだけなんですか?」
「いいや? これは弓の勇者、お前と出会わせると実に面白いフィロリアルだぞ。それは保障しよう。ラフラフラフ、楽しみにしているがいい」
「碌な事にならなそうですね」
「微妙に勿体ぶったなぁ……まあいいけど」
フレオンちゃんを育てる時期も近いのですぞ。
「話は変わるけど波が近づいてるでしょ? メルロマルク国内でも色々と動きがあるみたいでさ、なんか徴兵を強化してるみたいで各地の村や町がざわついてるね」
「世界の危機なのですから当然の出来事なのでは?」
「そうとも言えるんだけどね。錬の影武者をしているラフミちゃんからの話なんだけど各地の治安維持の依頼がかなり多いらしんだ」
「うむ。どうも治安維持の兵が足りなくなってしまっているそうだ」
「波もあるし治安も悪化してる。奴隷売買の方でも奴隷紋で縛って治安維持用の兵士を調達したいって発注が来てるって奴隷商人が俺にお願いしてきたんだよね。戦えそうな亜人獣人の奴隷を集めて置いてほしいってさ」
需要が生まれているという事でしょうかな?
奴隷紋で縛って兵士たちに所有権を持たせ、兵士は後方で命令、奴隷を戦わせる消耗品という扱いですな。
「シオン達を買いたいってのもどうやら戦えそうな奴隷だからってのがあったみたいだよ」
「そんな話、今までのループで聞いたことがありませんな」
メルロマルクの兵士が足りないのですかな?
全くなかったという訳ではありませんがメルロマルクが奴隷を戦力として徴用する程に人材が足りないというのは有りませんでしたぞ。
あ、でも確か最初の世界のお義父さんがメルロマルクで兵士をしている亜人獣人たちが一部居たという話はしてましたな。
お義父さんの領地に来て色々と親し気なやり取りをしておりました。
エクレアの領地出身の者たちは元より、何だかんだメルロマルク国内の人と交流がある結果、兵士をしているとかですな。
「結構深刻みたいで各町村からかなりの割合で徴兵されているとか……まあ、その所為でサーカスの客の入りも大分悪くなってて少し赤字になってきてるんだけどね」
と、お義父さんは困ったように呟きました。
「元康くんやラフミちゃんの話だとそういう話は他のループじゃ聞かないらしいけど……何が原因なんだろう」
「わかりませんな」
「まー……俺たちが原因じゃないと思うんだけど、なんか一夜にして砦に居た兵士や将軍が行方不明になったって事件があったらしい」
「聞いた事がありますね。僕がまだ愚かだった頃に依頼で調査に行きましたよ? 生き残りの話では次々と人が消えて行った恐怖の一夜だったとの話で……マルドの親戚も居たそうですね。マルドの親戚って事でろくでもない人物だったようですがね。そのマルドが率先して悪口を言っていましたが」
「友達の友達的な怪しげな噂じゃなくて樹が依頼で調査に出されてたのか……となると実話なのか……」
燻製は行方知れずとなった親戚に関して何とも思って無さそうだったと樹は改めて思ったと補足してますな。
そんな砦の事件があったのですな。
知りませんぞ。
おや? 記憶の中のお義父さんが犯人はお前だろ! っと指さしてますが違いますぞ。
あれとはきっと違う砦であり、あの時はお義父さんに害を成す連中に罰を下してやっただけなのですぞ。




