サーカス演目
くるんくるんと派手に剣をエクレアは振り回し、ワニ男も斧で無骨に構えをしながら立て続けに受けますぞ。
ワニ男の番となると豪快に斧を振り下ろして地面をたたき割りますがエクレアは華麗に避け、流れるように剣でワニ男の鱗を撫でる動作で背面を取っております。
演出重視の演武ならではの動きで、見ている者が見惚れたかのように静かに成り行きを見守っていますぞ。
今日はパンダの祖父と老婆も反対側の舞台裏から出てサブという形で組手をしてましたな。
あちらに視線が行き過ぎない様に派手に演武をするのですぞ。
「エクレールさんとシオン、中々息が合った動きだね。シオンが有利な動きでもヤジが飛んでこないよ」
「絵にはなりますね。参考までにヤジが来ないのが出演ハードルなのですか?」
「ううん。最終的には人側が勝利するってだけで後はお任せな演目。ヤジが無いのはそれだけ二人が凄いって事だね」
「ほう……」
「ちなみに一番は元康くんの演武だったかな。ヴォルフとの組手の他にフィロリアル達の一斉攻撃を全て華麗に避けたりするのが拍手まで起こる程だったよ」
キリっと俺は樹にやりましたぞと顎に親指と人差し指の間をくっつけてアピールしてやりましたな。
「……そうですか」
既に俺は演武で殿堂入りなのですぞー!
「ゼルトブルの方だと元康くんとサディナさんの演武が一番人気だったね。元康くんが炎と槍を巧みに使って派手だし、サディナさんも負けじの実力者なのと雷が良い感じに魅了するんだよね。しかもサディナさんは重量級だからさ」
という話をしている間に銅鑼の音が響き渡りました。
どうやら演武が終わったのですな。
エクレアがワニ男に勝利する形で締めですぞ。剣でスパッと切って倒したという流れですな。
負けたワニ男は担架で運ばれてくる形ですな。
実際にはダメージがありませんがな。
楽屋裏に戻ってエクレアがやや困り顔で唸りましたぞ。
「ふむ……私の剣技はどうもシオンに完全に見切られてしまっているな。もっと鍛錬をせねばならん」
「そんな事は……」
「目が完全に追いついているではないか、見知った動きとは言え、少し悔しいと思うのだ。逆に私が当たりそうになってヒヤヒヤする」
「何時でもお力になります」
で、次の演目の準備をしていたはずなのですが……。
「おい! また俺達が出るのか! 樹! お前が出ろ!」
「剣の兄ちゃん諦めが悪いぞ。ササッとやっておわらせりゃ良いじゃん」
「よくない」
「キールくんとアマの綱渡りー」
ルナちゃんも準備OKとばかりにフィロリアル姿で居ますぞ。
「ほら、樹! 木登りが得意なお前なら問題ないだろ? 縄から落ちたって滑空出来るって話じゃないか! そのまま飛んで逃げろ」
「錬……君って子は諦めが悪いよ」
「既にオチを知ってますが嫌ですね。あいつらの笑いものになるなら死んだ方がマシです」
「死んだ方がマシって俺はどうなんだ!」
「まあまあ」
「良いから行きますぞ」
「嫌だー!」
と、錬が嫌だ嫌だと駄々を捏ねるのを鷲掴みで表舞台に出るのですぞ。
ポイっと梯子を上ってスタンバイOKですな。
まあ、特に問題なくキールと錬を槍でチクチクと突きながら途中で蹴り落してルナちゃんにキャッチさせるのですぞ。
笑いと拍手がパラパラと起る中休み的な演目ですぞ。
「ぎゃあああああ――」
っと本日も良いリアクションをして錬はルナちゃんの所へと落ちて舞台裏へと戻ってきたのですな。
笑いが起ってましたな。
俺も素早く人間勝利とばかりに両手を上げてアピールしてますぞ。
するとそこにフィロリアル様たちが天使のお姿で登って来ましたぞ。
次の演目である空中ブランコが始まったのですな。
「わーい」
「とー」
「いきますわよー! 華麗に飛びますわー!」
フィロリアル様は飛べない子が非常に多いですが空中制御は得意ですのでサーカス内での空中ブランコ等、お手の者ですぞ。
空中を飛び回るフィロリアル様たちの姿に観客たちが魅了されていくのですな。
もちろん、その中で豚もアピールしながら飛びますがな。
お義父さんの話では空中ブランコで人種による人気の差は無いとの話ですぞ。
そうしているうちに舞台には火の輪が設置されましたぞ。
お義父さんが表舞台にヴォルフとウサギ獣人化したウサギ男、ライバルの親、更にはフィーロたんを連れて登場しましたな。
手には鞭を持っていますぞ。
「グルルル……」
打ち合わせ通りにヴォルフが唸りながら四つ足で翔る形でサーカス内を歩きますぞ。
「行け!」
ピチン! っと鞭をお義父さんが振るい、その命令に従って設置された火の輪を何個もヴォルフが飛び越え、ウサギ男が続きましたぞ。
「ギャウ!」
更にライバルの親が続きますな。
「クエー!」
フィーロたんも楽しそうに輪を越えますがライバルに負けないとばかりにバク転しながらですぞ。
あ、チリチリとフィーロたんの頭から生えている羽が少しばかり焦げてしまいましたぞ!
「次はー……」
と、お義父さんはボールを出してヴォルフ、ウサギ男、ライバルの親、そしてフィーロたんの頭に乗せてバランスを取らせますぞ。
「皆さん、記憶に焼き付けてくくださいねー。はい。1,2,3ポーズ!」
「ヴォフウウウウ」
「きゅううう」
「ギャウウウ」
「クエー!」
揃って二足歩行で各々ポーズを取らせますぞ。
何でしょうかな……水族館などでアシカのショーをしている飼育員のお兄さんにお義父さんが見えてきますぞ。
所でウサギ男、鳴き声はキュなのですかな?
俺はデスピョンが良いと思いますデスピョン。
「さらにー」
今度は箒をお義父さんは参加者たち全員の額に乗せてバランスを取らせていきますぞ。
みんな調教された魔物とばかりに命令に従ってバランスを取りますな。
この程度、造作も無いとばかりの態度ですな。
「お次はー」
お義父さんは今度は輪を出しました。
その輪を一人一人投げて受け取らせたり首に通したりしていくのですぞ。
「よーしよし、じゃあこれだー!」
「クエー!」
今度はフラフープを投げるとフィーロたんが受け取り片足でくるくると動かしながら跳ね上げて、もう片方の足に通してを繰り返しながら飛び上がってポーンとお義父さんに返しましたぞ。
一方その頃、大きなボールをライバルの親にお義父さんは投げつけてからフィーロたんの返したフラフープを流れるようにヴォルフに飛ばして胴体でくるくるさせましたな。
「ギャウ」
ポンポンとお義父さんの投げたボールをリフティングしたライバルの親はウサギ男にボールをトスしてウサギ男はボールを巧みに頭に乗せてバランスを取ってました。
間違いないですぞ。水族館で見た演目そのままにお義父さんはショーをしているつもりですぞ。
ああ、俺もウサウニー姿でお手伝いしたいですな。
「プップー」
で、その後ろを一輪車に乗ったパンダがラッパを吹きながらお手玉しながら通り過ぎるのですぞ。
どんどん賑やかになっていくのですな。
「わー」
「わーい!」
「「「わぁああああ」」」
「コウ、お歌うたって踊るよー」
そうして次の演目とばかりに今度は天使姿のフィロリアル様方が楽しそうに歌い始めるのですぞ。
メルロマルクの三勇教が定める聖歌を歌うのが受けとか色々と受けが良いらしいですぞ。
実は指揮者のゾウもここで混ざる様に大きなトロンボーンのような楽器を吹きながら登場ですぞ。
ここは楽し気にアピールすればなんでも良いという時間なので……どうやら樹もついでとばかりに表舞台に上がって媚びるように手を振りながら会場内をピョンピョンと移動してましたぞ。
続くようにヴォルフやワニ男、ライバル、パンダ達とどんどんサーカス内の人員がスキップするように出て来て輪になるのですぞ。
そうしてサーカス内が一際賑やかになった所でピタッと音が止まり、照明が落ちた所でみんな舞台裏へと戻った後、パッと怠け豚が舞台の中央に立ち、今回の演目が終わりましたとばかりに一礼をして灯りは消えるのですな。
パチパチと歓声が巻き起こって……から観客たちはショーの終了と共にパラパラと家路に着くのですぞ。
こうして今回のショーは終わったのですな。
ちなみに数時間の休憩の後に次の公演が始まる事もありますぞ。今回は遅めの開催だったので終わりですな。
人々は楽しそうに帰って行きましたな。




