極太ビーム
「どうしてこんなにも罠が? イミア殿、何か心当たりは無いか?」
「え、えっと、こんなのは知らないです」
「じゃあ後から設置されたって事?」
「イワタニ殿、何か心当たりがあるのか?」
「いや更に先を見ると不自然な位、地面にトゲのある木とかが刺さって見えるからさ……それより元康くん!」
「元康様! 無事ですか!?」
ユキちゃんが起き上がって俺の元へ駆け寄ろうとする中、俺は立ち上がって土煙を払いますぞ。
「いったいなんなんですかな?」
こんな代物は今まで見たことが無いですぞ。
先ほどのスパイクトラップは元より、進む先に先端を尖らせた木の破片が無数に突き刺さって居ますぞ。
「さすがレベルのある世界。しかもループ能力者って感じ?」
「あんな罠を受けてケロッとしているのは元より落羽して傷一つないのはどうなんだ?」
ワニ男が何やら抜かしてますがこの程度の罠で俺がケガなどするはず無いですぞ。
「盾の勇者ならともかく……あまり深く考えるのは無駄か」
「元康様! ご無事で何よりですわー」
「わー……イミア、コウから降りないように注意だよー」
「う、うん。だ、だけど私の手足を羽でギュッとしなくても大丈夫……」
コウはモグラが落ちないように羽でモグラの手足を握っているようですぞ。
「イミアちゃん達ルーモ種の方々が残した罠……では無いみたいだね。イミアちゃんの反応からして」
「そのようだ」
お義父さんがサッとフィーロたんに小石を狙った所に蹴らせると今度は落とし穴ですぞ。
ご丁寧に落とし穴の中にはトゲが沢山あるようですな。
「罠の種類的にはブービートラップ、バンジステークとかの類に見えるけど……勇者や異世界人が結構来てるらしいから確定ではないかぁ。一体どこの誰がこんな罠を……しかも鳴子まで仕掛けられているみたいだね」
「ご丁寧な事ですな」
ユキちゃんに乗りなおしてお義父さんの分析を聞きますぞ。
「俺が前に立って頑丈さで罠を無力化していくのが早いかな……」
「あまりそういう行動は良くない」
お義父さんの提案にワニ男が難色を示しますぞ。
そうですな、いくらお父さんがこういう事に対して頑丈であると言ってもあまりよい方法では無いですぞ。
最初の世界のお義父さんも……そういえば三勇教の施設を攻略する際に壁をぶち破るなどの提案をしたとの証言がありましたな。
もしやお義父さんは罠に関して解除を手間に思うのでしょうか。
「うーん。こういうのが得意なのはラーサさんだけど……」
確かにパンダは罠解除が得意でしたな。
何よりこの手の罠はパンダが仕掛ける側としてやりそうなのは間違いないですぞ。
連携技などをする際に落とし穴などを作ったら間違いなく竹を中に生やしてバンブートラップにするでしょうな。
「アスレチックー? 楽しそー」
フィーロたんが楽し気に言いましたぞ。
確かに楽しそうなアスレチックでもありますな。危険ではありますが強化された俺たちなら難なく攻略は出来ますぞ。
お姉さんの友人などもこの辺りを楽しみそうな気がしますぞ。
「えー、でも遊んでて、イミアがケガしたらコウ嫌ー」
「えー……」
おお、コウは遊ぶのも好きなのですがモグラがケガをするのが嫌との考えのようですぞ。
心優しく成長しましたな。
この元康、コウがすくすくと育ってくれてうれしいですぞ。
これも全てゾウのおかげですな。
「ユキちゃん、足は大丈夫ですかな?」
ユキちゃんは競羽用フィロリアル様ですから脚部が他のフィロリアル様に比べて不安な所はありますぞ。
こういった転倒は注意が必要ですな。
「大丈夫ですわ! 元康様こそご無事ですか?」
「全く問題ないですぞ」
クイーン化したフィロリアル様であるユキちゃんは頑丈なので心配はそこまでしていませんでしたがケガが無いようでよかったですぞ。
念のために軽く回復魔法をユキちゃんに施しておきますぞ。
「仕掛けた相手が居るのは間違いないけど……」
どうした物かとお義父さんが考えていますな。
「心配ご無用ですぞ、お義父さん。そこでゆるりと見ていてください」
「この流れ……おい! 槍の勇者が何か仕出かすぞ!」
ワニ男が何やらお義父さんに警告するかのように言ってますが心配ご無用ですぞ。
このような罠が俺たちの道を阻むというならやる事は一つですぞ。
ここからモグラたちの巣穴までの距離は把握済み……道を一気に作るにはこれが一番ですな。
「え? ちょっと元康くん何を――」
「行きますぞ! リベレイション・ファイアアイⅦですぞ!」
魔法詠唱して眼力に力を籠めますぞ。
「元康極太ビィイイイイイイムですぞぉおおお!」
俺は常に成長、進化、超越しているのですぞ。
今までの様な普通のビームではありません。
なんとビームが太くなったのですぞ!
ビビっとモグラの巣穴近くまで俺の眼力による熱線で木々と地面を穿ってやりました!
これだけぶちかませば罠など無意味ですぞ。
ハハハ! ですな!
もちろん山火事にならないように火消は後でしますぞ。
ドゴォ! っとぶち抜いてやりました。
シュウウウ……と、俺たちの向かうモグラたちの巣穴前辺りまで道が開けました。
「め、目から……」
「わーなんかすごーい」
フィーロたんが褒めて下さいました!
えっへんですな!
「今更凄い事に反論はないが、ここは彼女の故郷なのだが……」
ワニ男が眉を寄せているような気がしますが知りませんぞ。
「えーっと……目から怪光線を放つ魔法なんてあるんだね」
「俺のオリジナル魔法ですぞ!」
「そ、そうなんだ……」
「やりましたわー!」
「おーこれで安全に行けるねー」
コウがモグラの方に振り返りながら微笑んで居ますぞ。
モグラはポカーンとした顔をしていますな。
「キタムラ殿の所業に驚いていては身が持たないか……が、目的地をぶち抜いてしまってそうだが大丈夫なのか?」
「そんなへまを俺はしませんぞ?」
どの口が言ってるんだ! と脳内で錬や樹、冤罪から助けられなかったお義父さんが指摘しているような気がしますが俺はそんなミスはしませんぞ。
まあ、霊亀を攻略する際に樹や錬が先に心臓部などに居た場合はぶち抜いてしまうかもしれませんがな!
HAHAHA!
「ま、まあ……おそらく問題ないだろうから行こう」
そんな訳で俺たちはモグラたちの巣穴の前に到着しましたぞ。
そうしてモグラの巣穴へと近づいた所で……突如俺たちの足元に矢が飛んできました。
サッとユキちゃんが矢を察知して後ろ飛びで避けましたぞ。
「何者、ですわ!」
ユキちゃんの声に狙撃者は答える様子は無いですぞ。
何処ですかな?
矢は更に別の場所から放たれて俺の頭に刺さりました。
全く痛みは無いですな! 髪で受け止めてやりました。
チャキンッ! ですぞ。
「え、えっと……」
「気にするな。テオの話ではあいつは別の物語、ギャグ漫画というモノから来た存在だと思えと言っていた」
何か言おうとするお義父さんにワニ男が注意をしますが何の話でしょうな?
最初の矢は巣穴から矢が放たれたかと思いましたが違いますな。周囲の木々の中に何やら気配がしますぞ。
お義父さん達も周囲の気配を察知して警戒を強めますぞ。
ですが……ふむ、中々つかめないですな。
面倒ですから魔法やスキルで周囲を焼き払いますかな?
「人間共が一体何用でこんな所へやってきた……!」
何やらくぐもった声が周囲に木々から聞こえてきましたな。
「森を焼き払うとは……野蛮とはこの事。やはりメルロマルクの連中は……ここにはお前らが捕まえるような奴隷はいない! 帰れとは言わない。この場所を知ったからには――!?」
声の主はどうも驚きのような声音になったように聞こえましたな。
この場所を知ったらどうなるのですかな?
俺達がこの場所を知った以上、お前には死んでもらいますぞ。
「よくよく確認すれば……どうやら敵ではないようですね。そちらから来てくれるなら丁度良い。接触したいと思っていた所ですからね。しかも同行者は……」
どうも声の主は勝手に判断を下しているようですぞ。
ガサガサと音がして木々の合間からスタッと何かが飛び出して姿を現しましたな。
ローブを深々と羽織り、顔はゴーグルにマスクまでつけて何者かわからない程の重武装をした、俺がウサウニーになった時とほぼ同じサイズの弓を持った何者かが出てきましたぞ。
声がくぐもっているのはマスクの所為ですな。
シルエットだけで判断すると人間ではなく小型の獣人ですな。
「き、君は一体……?」
謎の奇襲者にお義父さんが声を掛けますぞ。
「動くな。下手に動けば例え尚文さん達であろうと容赦はしません」
「俺の事を知っているんだ……?」
「ええ、あなたの事は多少は知ってはいますよ。いつかどこかで会えるとは思いましたが……」
グイっと隠れていたものはローブのフードを外し、ゴーグルにマスクを取ってからゆっくりと近づいてお義父さんと俺を見ましたぞ。
「リ――」
おっと、思わず言いそうになってしまいました。
そこに居たのはリスーカになった樹でした。




