強くなる決意
「うん……」
「あのね……俺が言うのも身勝手かもしれないけどウィンディアちゃんのお父さんは、ウィンディアちゃんが何処に行っても誇れるドラゴンの娘として立派に成長するのが願いなんじゃないかな?」
どうにか助手のやる気を出させようとお義父さんがアプローチをしてますが助手の反応は非常に鈍いですな。
「うーん……まあ、お父さんが実は弱くて心配なのはわかるよ。じゃあそうだね……ウィンディアちゃんが強くなるよう俺たちがお手伝いをするっていうのはどうかな?」
そう提案すると助手は興味を持ったのか顔を上げましたぞ。
「何かあったらお父さんを守れるようにさ」
「うん……そうだよね。お父さん弱いんだから私が強くなって、縄張りを私が占拠してお父さんを守る!」
一定のリズムを刻んでいた卵の鼓動がここでわずかにずれたように俺は見えましたぞ。
やはりこの流れになるのですかな?
みんなでフォーブレイに向かった時のループでは強くなって見返すというのを助手は目標にしておりましたが、このループではライバルの親が実は弱すぎるのが心配で強くなろうと決意する流れになるのですな。
威厳はこちらの方がなさそうですぞ。
ライバルがやってきたら更に落ちるのがわかっている流れなのですな。
「そ、その意気で良いんじゃないかな? こう、幸いなのかその卵から君のー……弟か妹が生まれるんでしょ?」
「うん! お父さんが弟か妹ならどっちが欲しいって聞いたから私、妹ってお願いしたの。一緒に強くなってお父さんを守る立派なドラゴンに育てるの! 決めたわ!」
何やら助手が今までのループに比べて強さに貪欲そうですぞ。
いや、シルドフリーデンをライバルが出て行った際の助手に近い性格になった気がしますぞ。
このループでもどうやらライバルの親は情けなく俺たちに強くして貰う流れになりそうですな。
「あの、勇者様……私も、強くなった方が良い。ですよね?」
助手の闘志に釣られてモグラがお義父さんに尋ねましたな。
「イミアちゃんは気にしなくてもいいよ?」
「でも……」
優しくお義父さんはモグラの頭を撫でましたな。
「イミアちゃん。俺としては君が健やかに幸せになってくれる事が一番だよ」
「は、はい……」
モグラはお義父さんの言葉に素直に応じましたぞ。
ですが、何やら拳を強く握ってもおりましたな。
ちなみにモグラはキールとも仲良くしていて、強くなりたいと一緒にワニ男の所で稽古に参加し始めているそうですな。
特に何かしてほしいとお義父さんが要望を言わないけれど、強さを欲するのでしょう。
お姉さんも、お姉さんだけだとお義父さんを見て、そう思ってしまうようですな。
「んあ……あ、ウィンディアちゃん起きたのかー?」
「ん……どわぁああああああ! ルナ! また俺をキールの目の前で寝かしつけたのか!」
で、そうして助手と話している所でキールと錬が目覚めて抗議をしているのですぞ。
ちなみに錬はまだ眠いのか怒りつつ目を細めておりましたぞ。
「んー……あ、キールくんたち可愛い起きたー……ルナも起きたー……ぐー」
「寝てるじゃねえか!」
「ずっと寝てろ!」
「……」
そんなルナちゃんを助手は不快そうに睨んでいましたぞ。
なんですかな? ルナちゃんに文句があるのですかな?
「よーしみんな、改めて挨拶だね。これからよろしくね」
「おー! よろしくな!」
「よろしくお願いします」
「ふん……まあ、ここの連中が力になるし、何かあったら言え。その卵もすぐに孵るんだろ」
と、上から目線で錬は助手に声をかけていたのでしたな。
助手はそんなキールと錬、モグラに視線を向けてから頷きましたぞ。
「うん。これからよろしく。一緒に遊んでくれて、私を心配して山まで来てくれて、ありがとう。心配されるなんて……思わなかったしお父さんにみんな殺されちゃうと思ったのに言えなくて……ごめんなさい」
「大丈夫だぜ! 気にしなくて良いぞ。むしろウィンディアちゃんのお父さんボッコボコにしちまったよなー」
「……おい」
キールの発言を心配するように錬が肩に手を乗せますぞ。
あんまり刺激するなと言いたげですな。
「うん。実はお父さんが弱いってわかったから、私強くなる! 強くなってお父さんを守ろうと思うの! じゃないとどこかで殺されちゃいそうだから!」
「う……」
錬がここで胸に手を当てましたぞ。
予定していたドラゴン退治をしなくてよかったと心から思っているのでしょうな。
「おー! わかったぜ! 俺も強くなりてーから一緒に強く成ろうな!」
「うん!」
そんな感じでキールは助手と意気投合しているようでしたぞ。
「剣の兄ちゃんも強く成ろうな」
「あ、ああ……」
これで良いのか? と錬は首を傾げつつお義父さんの方へと顔を向けてましたぞ。
それから助手の方に振り返り拳を振り上げました。
「そうだな。フィロリアル共を返り討ちに出来るくらい、強くなるんだ! そのドラゴンの卵と一緒に! そうして寝ている俺を連れ去られないようにしてくれ!」
「おー!」
助手も何故かここで同意するように拳を振り上げていましたぞ。
別のループの優しいお義父さんはそんな助手と錬のやり取りを、他の錬と比べながらニヤニヤとみるだろうなと俺は思いましたぞ。
あまり見ない関係性にはなったと思いますぞ。
「その卵が孵ったらどんな名前を付けるんだー? ウィンディアちゃん」
「お父さんの名前をそのまま……ガエリオンって名前にするわ! 最強のドラゴンはお父さんの名前にするの!」
そこに拘るのですな。
「お前の親は最弱からジャク、ジャックで良いのではないですかな?」
お前の親が名乗る第二の名前ですぞ。
コンパクトに封じられてですがなぁ!
「嫌よ! そんな名前!」
「あはは……まあ、錬、ウィンディアちゃんをよろしくね」
「ああ。そうだな。あいつらの代わりに育ててやる。まずはどこで狩りを教えるべきか……どうも強化方法に関して違いがあるのがわかったから二段飛びをするのも手だが……」
こうして助手とライバルの親が加入したのですな。
錬が育てるとは不安ですぞ。
霊亀辺りと戦って戦死しないようにしないといけませんな。
ただ、一部強化方法が共有できるようになったようでお義父さんの奴隷やエクレアとの稽古を経験してハードルの引き上げを模索しているようですぞ。
まあ、最悪助手はお義父さんとも仲が良好のようですし奴隷にせずとも資質強化は出来るでしょうな。
そんな訳でライバルの親の指名で助手とお父さんが主登録をすることでライバルの親が宿った抜け殻の卵からライバルの体が孵化しました。
「……ギャウ」
「それでー女の子なんだっけ?」
「ええ」
助手が流れで卵からライバルの体に宿った親を確認しながら頷きましたぞ。
「あれ? 名前が決まってる? さっきのお話を聞いてたのかしら?」
「ギャウ!」
中身は親なのにぬけぬけと、と言ったものですぞ。
子供に宿って赤ちゃんプレイとは変態ですな。
「ピヨ!」
ルナちゃんがキールにヒナ姿に変身して乗っておりますな、フィロリアル様は可愛いのですぞ。
ちなみにすでにタクトのドラゴンは仕留めていますので核石は十分、確保済みではありますな。
渡すかどうかは別ですがな。
何はともあれ非常に不服で下手に近寄れないのですがライバルの親が助手と共に加入する羽目になったのですぞ。
もちろん助手はお義父さん達が用意した朝食に食い入るように食べておりましたぞ。
ライバルの親とフィロリアル様は仲が悪いので別行動をさせる方針なようですな。
主に意気投合した錬が育成の手伝いをするとの話で俺もそこまで関わらない流れになったのですぞ。




