添い寝
「さすがに最近は忙しいから寝るのは遅くなりがちだけど、その分、朝食後に就寝させてもらってるから……元康くん? 俺に妙な空気で近づいてくるけど何をする気?」
「お義父さん、ラ――助手の親が来るまで短いでしょうがここで寝るのが良いですぞ」
「なに言ってるの? 元康くん?」
「またどうせ妙な考えにでも至ったんだろ。もう慣れたな」
錬が妙に冷めた目をしてますが大事ですぞ。
寝不足で目の下にクマをつけるお義父さんにはさせれませんぞ。
冤罪から助けられなかったお義父さんは眠りが浅くなって目つきが悪くなっておりました。
このお義父さんはお優しい顔をしてますがあのような殺伐とした顔にはさせられませんぞ。
「でしょうね」
「ああ……」
「ヴォフ」
そっと錬と三奴隷たちをしり目に、お義父さんの顔に手を添えて諭すように、女装して通った学園のお姉さまムーブで頼りにして貰えるようにキリっとしつつ優し気な表情でお義父さんに休むように誘導しますぞ。
「俺が膝枕か腕枕で添い寝してあげますぞ?」
「いや、あのね? その……」
「ヴォフ? ナオフミ様が寝るなら俺の横! ワオーン!」
と、何やらヴォルフがキールや錬顔負けの犬ムーブで混ざろうとしてきますぞ。
「大きなベッドにナオフミ様が俺に寄り添う形で寝る。俺、ナオフミ様の寝ている姿を見ながらバスローブを着てワイン飲む。実家に大きなベッドあるから今度やろう」
なんですとー! この狼男! お義父さんになんて願望をぶつけるのですかなー!
「それ、何の意味が……と言うか絵的にそれって女性向けの漫画な気がするんだけど、元康くんとヴォルフは俺で何をする気だ」
お義父さんがジト目で何故かウサギ男と錬、ワニ男の方へとすり足で行ってしまいますぞ。
「本人たちは深い意味は無いと思ってるのかもしれませんが欲望が駄々漏れになってますね」
「否定はできないな。すごく、目がギラついて見える」
「尚文、お前はずいぶんと男にモテるな。まあ、あれだけ世話をしてたらそうなるか、俺の毛並みまで整えている時があるし、俺さえも攻略する気か!」
「ちょっと誤解を招くようなこと言わないでくれない? 汚れてたから整えただけでしょ」
ウサギ男とワニ男がお義父さんを俺とヴォルフから守るように前に立ってますぞ。
何を勘違いしているのですかな?
ヴォルフはともかく俺は無実ですぞ。
「そこをどけですぞ。お義父さんの美肌の為に早めに就寝してもらうのですぞ」
「ヴォフ、ナオフミ様と一緒に寝る! わおーん!」
「二人とも落ち着いてください。そもそもそんなに寝かせたいならスリープランスだったかで突き刺せばいいでしょうが」
「お義父さんにそんな真似できませんぞ。何を言っているのですかな?」
「ヴォフー?」
「そこでなぜ不思議そうに首を傾げてるんですか! あなたがボクやシオンに仕出かした事でしょ。ヴォルフ、あなたも似たような攻撃できるのはわかってるんですからね」
「ヴォフ……」
いったいどうして邪魔をするのかまるで理解できませんぞ。
ライバルの親が来るまでお義父さんに横になってもらうだけでなぜこんなにらみ合いが起こっているのですかな?
「シオン、ここにいる獣から岩谷様を守る手伝いをしてください。剣の勇者様も」
「わかっている」
「はぁ……尚文、これもお前が仕出かしたことだと知れ」
「いや、なんでそんな流れになる訳? 絶対、元康くんが妙な行動に出た結果だよね」
「お前がこいつらの世話を甲斐甲斐しくしてる所為だろ。男を攻略してるんじゃないのか?」
「なんでそうなるんだよ。元康くんも誤解を招くような発言やめてよね。それとヴォルフは便乗して俺の寝顔を見たいとか変な乗りに合わせないの!」
お義父さんがウサギ男たちの裏で抗議しましたぞ。
ううむ……これはダメと言う事ですかな?
間違ってはいないような気がするのですがな……お義父さんを寝かせるにはどうしたらいいですかな?
やはりお姉さんを元にしたラフ種ことラフちゃんを作らねばいけないのでしょうかな?
ラフミの所為で効果が薄そうな気がしますな。
奴はお姉さんのイメージを下げる事を目的にしているのではないですかな?
お義父さんがラフ種をよく撫でることをお姉さんは気にしておりましたからな。
「何度も言います。そこの獣共! 岩谷様に安心した眠りを提供するにはそんな欲望が滾った目つきで、添い寝はいけません!」
「ちょっとテオ? なんか君も妙な事を言ってるようになって来てない?」
ワニ男と錬がウサギ男の方を見て眉を寄せましたぞ。
「良いですか? ボクたちは岩谷様の身の安全を第一に、働き詰めで休んでほしいと思って癒そうとしていたのでしょう? ならばこうです」
ウサギ男はお義父さんから少し離れた所で箱座りと言うウサギの座り方をしますぞ。
獣人姿ですから人だと違和感がありますが自然な形ですな。
「岩谷様、ここでボクの横辺りを背もたれにするんです。さあ! どんと思いっきり体重を預けても良いですよ」
「え? あー……?」
お義父さんがウサギ男に言われるがままウサギ男の横っ腹に背を預けましたぞ。
フカァっとした毛皮がお義父さんの背を優しく受け止めましたな。
「このようにこちらは絶対に手を出さない形で岩谷様をそっと支えるんです。無理に横にいることだけがすべてじゃないんですよ! わかりましたか?」
「ヴォフ、なるほど」
「く……」
フィロリアル様がよくして下さる基本のポーズなのですぞ。
基礎にして基本、もっとも大事な添い寝ですぞ。
ハッ! そういえば、この前、似たようにだらけているパンダ相手にお義父さんが寄りかかってウトウトしてましたぞ。
なるほど! お義父さんに健やかな眠りを提供するにはこのようにすれば良いのですな!
ですが、この手は俺にはできませんぞ。ウサウニー姿ではサイズが足りないのですぞ。
「絶対テオも妙な空気に飲まれてるよね」
「どさくさに紛れて美味しい所をテオは頂いているな」
「実に馬鹿げたやり取りをしてるな、尚文」
「いや、そんな事言われてもさ……」
「負けない。ヴォフー」
っと、ここでヴォルフが食い下がってお義父さんのわきに潜り込んで横に膝を背に乗せて伏せの姿勢になりましたぞ。
「もちろん応用で岩谷様が背に乗ってくれた際には伏せの姿勢で、ボクは敷物と思い込むのも結構です」
「尚文、本当……お前は盾の勇者なんだな。噂で聞くシルトヴェルトで称えられる存在だな」
「錬、絶対皮肉ってるよね。テオもそろそろ冷静になろうね?」
お義父さんが呆れるように注意してましたぞ。
「まあ、事の原因の元康には効果があったようだがな」
く……ウサギ男、勉強が足りないと思っていましたがなかなかやりますな。
この元康、お前に教わる事があるとは思いませんでしたぞ。
俺では小さくてサイズが足りないのですぞ。魔法研究でビッグウサウニーになれないか模索をしている最中ですな。
ですがこのサイズの問題はビッグウサウニーが出来なくても、お義父さんをペックルにすることで解決できるのを知らないのですな。
HAHAHA! いずれお義父さんにウサギ男よりもすごい毛皮を堪能させるのですぞ。
等とやり取りをしているとバサバサとライバルの親が舞い降りてきましたな。
「汝等……真夜中に我の領域で何を騒いでいるのだ……我の巣まで騒ぎが聞こえていたぞ」
心の底から呆れているような声音でライバルの親が抜かしますぞ。
最弱の竜帝が何を呆れているのですかな! 身の程をしれですぞ。