野郎達の雑談
「流れでボクたち付いてきてますけど、割と部外者ですよね」
「ヴォフ、だけど置いて行かれるより良いと思う」
「まあ……そうだな。エクレール様の護衛をし始めてから自分もあまりこういう事に付き合えなくなってるから良い」
三奴隷たちが何やらのんきに構えてますぞ。
「ウサギ男、ここでお義父さんを肩車ですぞ!」
「なんで突然? 別にしても良いですが……」
「いやなんで……意味もなくしなくて良いから」
「ヴォフ、野山をナオフミ様を乗せて駆けるのは心が弾む。暇つぶしに駆けるのは良い」
「なるほど」
「何を納得してるのかな? ヴォルフ、テオ」
ライバルの親が来るまでの時間が暇ですな。
いったいいつまで待たせる気ですかな? あのドラゴンは。
「ではここで俺もドライブモードで駆けっこしますかな?」
前にここまでドライブモードで駆けて来て挑発した後、ボコボコにしてやったのを思い出しますぞ。
このような事が今後無いようにループ直後に挑発しに行くのも良さそうですな。
そうすれば助手を村の方に遊びに行かせるなどライバルの親が許可しなくなるかもしれません。
「イ!? ナオフミ様、やめさせないとパニックになる」
ヴォルフが何やら慌てたようにお義父さんに提案しましたぞ。
「ドライブモード?」
「ああ、剣の勇者様は知らなかったんですか……人間自転車と評する槍の勇者様が行う奇妙な走行スタイルですよ」
「……見ればわかる」
首をかしげる錬にウサギ男とワニ男が遠い目をして説明してましたぞ。
「山脈で魔物の悲鳴が轟いてウィンディアちゃんのお義父さんを驚かせそうだね。元康くんのこう、気配がすごいからね。やめようか」
こんな山の事など気にしなくて良いと思いますがな。
まあ、俺も警戒して山での狩りでここは絶対に使っていませんぞ。
しかし……別に殺気を放っているわけではないのに気配がすごいとはどういうことなのでしょうか?
よくわかりませんぞ。
「そういえばさ、みんな夜の山をサクサクと登ってこれたけど、目は良いのかな?」
「ボクは完全獣人化できるようになってから暗くても物がよく見えるようになりましたね」
「テオ、暗い所で本を読んでたりするよね。いくら見えるからってあんまりよくないから注意だよ」
「そう言いましても獣人化してる時に丁度いい明るさで読んでるのですけど……」
どうやらウサギ男は獣人姿になると夜目が効くようですぞ。
俺もウサウニー姿だと暗闇でも目が見えますな。まあ、もともと夜目スキルを解放しているのでそんな変わりませんがな。
「自分は元々夜目は利く」
「シオンは暗い所でも平気な方だったか」
「俺も夜の方が好きですねナオフミ様」
ヴォルフが続きましたぞ。
「狼男って夜こそ真髄って感じだもんね」
「俺は夜目スキルは習得したし、この姿だと更に夜目が利くな」
錬は勇者なので俺と同じって事でしょう。
何より錬は夜も狩場に居ることが多かったのでこの辺りは効率の為に習得していたのでしょう。
「俺もですぞー!」
「そっか、ところで錬や元康くんは夜の方が好き?」
「夜の方が魔物の湧きが良い所があるからそこでよく狩っていたな。ただ、どうも夜目が利かない時があるんだがあれはなんだろうか……尚文知らないか?」
おそらくルナちゃんがそれとなく狩りに行く錬に夜が更けた事を教えるように闇の魔法で視界を狭めて睡眠導入効果のある弱い魔法をかけているのですぞ。
お持ち帰りをするためにですな。
ちなみにフィロリアル様の中でルナちゃんは夜目が利くのですぞ。品種が原因ではなく闇魔法の使い手だからだそうですな。
「錬の夜目が効果ない時間か……わからないなー」
「そうか……暗くてしょうがないから近場の安全そうな所で仮眠を取ると寝すぎてルナに拾われるんだ。厄介極まりない」
「なんか牧場ものとかで指定時間までにベッドに入らないと回収されるペナルティみたいだね」
「……」
錬が反応に困るように沈黙しましたぞ。
「ちょっと話はずれるけど、なんか山にみんなでキャンプに行くって雰囲気になってて楽しくなってきたね。俺たちと一緒ならルナちゃんも拾いに来ないから眠かったら寝てて良いからね」
「寝ることを前提にするな。本当に尚文はのんきな奴だな。こんな所で野宿をするより村で寝た方が良いだろ」
「まあ、そうなんだけどさ……山に夜入るのは危険だって猟師の親戚には言われてたからさ」
ふとここで、お義父さんが解体を当たり前のように出来る所が思い当たりますぞ。
「そういえばお義父さんは魔物の解体をこの世界に来た直後から出来るようでしたな」
「そうなのか? 奴隷商人をしているうちに覚えたのかと思ったぞ」
「おそらく料理の勉強をしているうちに覚えたんだと思います」
「ヴォフー」
ウサギ男の推測にヴォルフが同意するように頷きましたぞ。
「まあ、料理でも覚えはしたけど動物の解体は親戚の猟師の手伝いをしている時に教わったんだよね」
ちなみに魔物の解体に関してお義父さんは村で時々講師をさせられていましたぞ。
倒した魔物の捌き方は元より……う、いたずらがひどいフィロリアル様にコウにもやったように体に線を書いて脅すのですぞ。
最終的に別の鳥型の魔物を凄くテキパキと捌いて脅しておりました。
関節の外し方や肉の落とし方など、不思議なくらい器用にお義父さんは解体をするのでしたな。
錬はお義父さんが剣の勇者だったら魔物は戦闘中に捌く、クッキングメサイアはお義父さんの技能を戦闘中に出来るようにした代物だろうと仰っていましたな。
村に居たウサピルも解体はせずともみんなの前で寝転がされて線を引かれて気絶していたとの話ですぞ。ラフ種になってからはそういう事も無くなったとかですな。
……確かお義父さんは食肉加工のバイトもしたことがあるとどこかで言っていた気もします。
「あの親戚、キャンプに連れてってくれるって言ったけど、もしかしてあのサバイバルをキャンプと言ってたのかな……俺としてはこんな感じで楽しくキャンプ場で寝泊まりしたかっただけなんだけどな……」
と、思い出に浸るようにお義父さんは呟きました。
「尚文は狩猟経験ありなのか」
「親戚の手伝いで覚えただけだよ。そういう意味だと慣れはあるかもね。ああ、みんなでキャンプとかすると寝付けなくなりそう」
お義父さんはとても楽しそうですぞ。
異世界に来てからみんなでキャンプをしてますぞ。少しでも楽しんでもらえれば良いのですな。
「さて、錬の夜更かしの期限を見極めないとね。実は錬がどこでも寝ちゃうタイプになったのかもしれないし」
「……尚文はどうなんだ? 夜更かしの常習犯に見えるが召喚初日は元康からいろいろと聞いてて寝てたよな」
「俺が寝たのをなぜ知っているの、錬? 先に寝てたはずだよね」
お義父さんの返事に錬は顔を反らしましたぞ。
ああ、平常心を装ってましたが寝付けなかったのですぞ。
俺ですかな? このループは最初にループした世界ですから、思うがままに行動したのでしたな。
夜中にフィロリアル様の元へと遊びに行ったのですぞ。
「俺としてはお義父さんは夜は寝て欲しいですな」
毎夜毎夜、遅くまでいろんな事をしているお義父さんはいつ寝ているのかと不安になりますぞ。
寝るときは寝ていると仰いますがそれでも不安になるくらいにはお義父さんは起きていらっしゃいます。
仮眠をする際はどこでも寝れるのがお義父さんの特技のようですがな。
冤罪から助けられなかったお義父さんは馬車の中で仮眠を取っていたりしていたようですぞ。
このお義父さんはそういえば俺がお助けしましたが赤豚に騙されて身ぐるみを剝がされた経験があるのですぞ。
なるほど、実は眠るのに抵抗があるのかもしれません。




