チョコが暴れる原因
「「ブブブー!? ブヒ? ブブヒ!?」」
騒ぎを聞きつけて豚が二名ほど家から出てきました。
「お前等、ワシを監視している奴らが攻めてきたぞ! お前等は気の所為だと言っていたが、ほれ見たことか!」
監視ですかな?
きっとラフミが己の過去を知っている事を言っているのでしょう。
しかし以前から監視されていると思っていたみたいですぞ。
「ブ、ブヒャアアアアヒャッヒャヒャ!? ブヒャ」
なんか叫びの中に笑いが混じってましたな。
「元康様、あの方、驚くのか笑うのかどちらですの?」
ユキちゃんも気づいたようですぞ。
「ブ……ハハッ!」
遊園地の有名な看板キャラクターみたいな笑い方を豚がしているように聞こえますな。
で、豚は盗賊に気づいてさらに声を上げました。
お兄ちゃん! とか言っていたらしいですな。
「ぬ!? 貴様……よくもおめおめとワシの前に出てこられたな! こんな真似をするとは承知せんぞ!」
「ムーー……」
忌々しい奴との再会とばかりに盗賊は声を漏らし、顔をそらしてますな。
親子そろってラフミに捕縛されている感じですぞ。
「む! そこにいるのは近所の凡人の息子! 早くワシに協力し、この侵入者の排除に協力しろ! 天才のワシの研究品を盗みに来た泥棒だ!」
と、何やら錬の仲間のリーダーに盗賊の親は命令してますぞ。
「……相変わらずだな、あの人……未だに陰謀とか言ってるみたいだな」
錬の仲間のリーダーは重くため息をしてから盗賊に同情の目線を向けつつ呟いていますぞ。
「まったく……ここまで無力化されているのがわからないとは、どこまで愚かなのだ貴様は。そうだな……親が死んだ辺りから貴様は本性を現した。小さな成功体験に縋り付き、妙なチョコレートを作っては周囲に無理やり食わせて褒めさせようとする。その虚栄心は魂が腐ってはいなくても性根が腐りきっている」
淡々しているラフミにしては珍しく怒気が混じった口調をしていますぞ。
前にお義父さんが盗賊の親に関して仰っていましたな。
小学校の頃の自慢話を延々とし続ける中年以降の男性というのがいるそうですぞ。
子供のころの成功体験しか語れないのは問題があるという話らしいですな。
中学校でも高校でもあった出来事があるはずなのに小学校の事しか言えないのはどうなのだという話なのですな。
「そんな貴様を早々に処分できるのは私としては願ったり叶ったりだ。チョコレートを玩具にした報いをその身に受けねばな? 毎年この辺りでチョコレートが暴れる原因の一つは貴様でもあるのだから」
「え!? なんだって!? ちょっと待ってください。そ、そうだったんですか!?」
錬の仲間のリーダーが叫ぶとラフミが振り返りますぞ。
「もちろん、それは理由の一つだがすべてではない。愛を冒涜するような真似をする連中がチョコレートで遊ぶからが主な理由だ。こいつだけではない。世界の連中全てが悪いのだ。愛は偉大なのだぞ」
ラフミ、お前は世界を憎んでいるのではないですかな?
俺は世界を憎むお義父さんをお助けしたいですが、世界を憎むお前などどうでも良いですぞ。
いえ、魔王になるなら勇者として仕留めたいですな。
「ここでお前を仕留めるべきですかな?」
「なんだ? 私が盾の勇者に襲い掛かったことを根に持っているのか? 私も盾の勇者がチョコレートに仕込みをした件に関して思う所はあったが、あの程度であそこまでの事はしないぞ? 私自身の意思でやった事ではないが、やりすぎたと思っている」
「お義父さんが何をしたのですかな?」
「ああ、それはな、キールとフィ……いや、貴様が喜ぶから言わんほうがいいだろう」
思わせぶりですらない事を言っていますぞ。
「何を知っているのですかな!? 言えですぞ!」
お義父さんがチョコレートに何をしたのですかな? 俺が喜ぶこととはどんなことでしょうか?
毎年お義父さんが村のみんなに作ってくれたバレンタインのお菓子ですかな?
普通に美味しかった記憶しかありませんぞ。
「盾の勇者がチョコレートに入れた仕込みは……」
「お義父さんがした仕込みは……?」
この流れ、覚えがありますぞ。
「それはフィーロの……ふふ、ここで思わせぶりにして語らない方が面白いな? 教えてあげないよ! チャン!」
ラフミの奴、錬を相手にしたことを俺にもやりましたぞ!
くっそですぞ!
お義父さんがフィーロたんにまつわる何をしたのですかな!
「本気で言えですぞ!」
「おやおや、後ろを気にしなくて良いのか槍の勇者」
「なんですかな――ヒィ!?」
ユキちゃんから何やら怪しげな気配が漂っていますぞ。
「ど、どうしたのですかなユキちゃん? ラフミの戯言など気にしてはいけませんぞ。お義父さんがフィーロたんに関わる何かをチョコレートに仕込んだ……今後のお義父さんが同じ轍を踏まないように問い詰めただけなのですぞ」
俺はユキちゃんからあふれる気配を散らすためにできる限りキリっとした表情で語りかけますぞ。
「ユキちゃん。君が作ってくれたチョコレートを俺は大事に食べますぞ。今度一緒に作るのですぞ」
「元康様……わかりましたわ!」
ふう……ですぞ。
ユキちゃんと一緒にチョコレートで料理をするお約束ですな。
一緒に作れば安心ですぞ。
そういえばチョコレートと言えば豚どもは妙な代物を混ぜることが非常に多いのですぞ。
血は元より髪の毛、爪なんかを入れているなら可愛い方ですな。
場合によっては毒物とばかりに妙な代物が混じっていて昏倒することがありましたぞ。
フィロリアル様はお料理が得意な子もおりますが苦手な子も多いのですぞ。
なのでチョコレートは一緒に作るのが安心ですな。
「槍の勇者はこれくらいにして……あの時の私はおめおめと罠にかかり無様な姿を晒したが今は違うぞ? そんなにチョコレートで周囲を驚かせたいのなら見せてやろうじゃないか」
ラフミは俺の意識をユキちゃんに向けさせた後、尻尾を膨らませて盗賊の親の眉間に指をあてますぞ。
「ぐぬ!? 貴様、な、なにをーーアガガガ、グギャアア!? や、やめぇえええ、ああ、ワシのあそこが……尻が! らめえええーーチョコレエエエエエエエ! チョコォオオオオ! アガーー」
と、何やら盗賊の親が白目をむきながら謎の絶叫を上げましたぞ。
やがてカクっと意識を失ったようですな。
恐ろしい幻覚を見せられたのですな。
「これでこいつの考えた発明品は自身を実験体として悪夢を見始めるようになったぞ……チョコレートなどもう二度と見たくなくなるほどになぁ? ラフラフラフ!」
「ああああ……」
「「ブヒャアアア……」」
「ム――」
ガクガクと盗賊と豚二名、そして錬の仲間のリーダーがラフミを見て震えておりました。
「ラフラフラフ! チョコレートで遊ぶ者に報いを! あの盾の勇者がこいつに思った気持ちを私は痛いほどわかるぞぉおおお! これで懲りねば……今度こそチョコレートだぁあああ! ブラックサンダーにぶつけられない分、貴様で発散してやったぞ!」
と、ラフミの高笑いが響き渡ったのでしたな。
後に『チョコレートの復讐』とその地域では語られるようになり、食べ物……チョコレートで遊んではいけませんというレベルの話ではなく、チョコレートに裁かれるので厳正に扱わないといけないとのルールが作られたそうですぞ。
ちなみにお義父さんが思った気持ちというのは説教だそうですぞ。
お義父さんに経過を報告した際、ブラックサンダーとかもそうだけど錬はチョコレートに関わる要素が多いねと仰ってました。
ラフミがチョコレート農家で大暴れしてから数日ですな。
盗賊の親は廃人となってしばらく療養することになり、盗賊は実家での仕事を命じられてしまったようですな。
とりあえず錬の仲間のリーダーはいずれ勇者の協力者枠で冒険に連れて行ってほしいとラフミに提案しておりました。
その辺りは寛容に考える的な返事をラフミはしていましたぞ。
そうして……サーカスが次に向かう町は、リースカの実家の隣町ですぞ。




