愛玩の犬
「思うんですがあの方々の料理風景を演目にしたらいいのではないかと」
「わおーん! ハッハッハ!」
そんな調理風景を見ているウサギ男とヴォルフ、そしてワニ男ですぞ。
ヴォルフは料理を前によだれを垂らしてますな。
「開始前の屋台で既に客寄せ効果は十分発揮している。これを盛り込んでも面白みがないと盾の勇者様の判断だ」
「そんなものですかねー。あ、本日の目玉はいりまーす」
パンダの養父が飛び上がって何本も指で挟んだ包丁で器用に食材を細切れにしつつ跳ね飛ばして更に綺麗に盛り付けますぞ。
「あーはいはい」
それをアシストしているのはパンダですな。
「こっちもよろしくー」
お義父さんも合わせて食材を飛ばして載せていくと……皿の上にゾウが組みあがってましたぞ。
「おー……」
「完成さね!」
ドン! っとみんなの前に置かれましたな。
「わーエルメロだー」
「すごーい」
「食材飛ばしてなんでこんな細工料理が出てくるのか……」
さすがお義父さん達ですぞ。料理漫画みたいな真似は容易く出来るという事でしょう。
「名付けて編み編みエルメローさね」
「「「わー!」」」
「デコレーションですけどよくやりますね」
軽く箸でとると形が崩れはするのですが崩れた中でゾウの形に切られた具材が混ざっていて目を楽しませるのですぞ。
「味は格別なんだ。文句は言うまい」
「ピリっとした味わいが不思議と食欲を促進させるな」
「仕事で疲れた体にしみこむような味ですね……」
といった感じにみんな思い思いに食べておりますぞ。
もちろんサーカスに参加したフィロリアル様達も夢中になって食べておりました。
絶品料理ですな。
こうしてみんなの士気はどんどん上がるのですぞ。
なんて感じにパンダがサーカスに正式に組み込まれてすぐの食事後でしたな。
「ねーなおー愛の狩人<タイムドライブ>ー」
そこにやってきたのはクロちゃんがイヌルト姿の錬を背に乗せ、錬の仲間と共にやってきたのですな。
「あ、クロちゃん、帰ってきたんだね。錬は見つかった?」
ここ最近、クロちゃんは出かけては錬が居ないと零しておりましたぞ。
錬の仲間もレン様が突然行方を晦ましたと騒いでいたようですな。
ただ、錬は時々行方が分からない事があるのでそこまで焦っては居ないようでしたぞ。
「おや? クロちゃん、その背に乗せてるのは、えーっと……キールくん? なんか色合いが少し違うけど」
「誰だそいつ! 違う! 俺だ!」
「いや……わからないんだけど」
「俺だ! 錬だ。こんな姿になってしまったが剣の勇者の天木錬だ!」
「え!? 君……錬なの?」
お義父さんがクロちゃんの方を見ますぞ。
「うん。そうらしいー。匂いは闇の剣士だよ」
「一体どうしてそんな姿に……というかキールくんによく似てるね」
確かに今の錬の姿は犬姿のキールによく似てますな。
ルナちゃんもご機嫌のお姿なのですぞ。
お義父さんは俺の方をチラッと見た後に錬の仲間たちの方へと視線を向けましたな。
「突如レン様が行方知れずになり数日後にこのような姿で帰ってきたのです」
「そ、そうなんだ? 一体どうして?」
「わからない。狩場でLv上げをしていたら突然背後から何かに襲われて意識が飛んで……気づいたら木箱に入れられていて、外に出たらこんな姿になってゼルトブルに居たんだ」
どうやらしっかりと錬はゼルトブルで意識を取り戻したようですぞ。
ですがいきなり帰ってくるとはどういうことですかな?
ゼルトブルで闇の料理界でも牛耳っていろですぞ。
「えーっと……」
「反応に困るのは分かっている。俺だって訳が分からないんだ!」
混乱した様子で錬はお義父さんに事情を説明していますぞ。
「ゼルトブルって確か商人と傭兵の国だっけ」
既に何度か行った事のある国ですがお義父さんは確認の為に聞きましたぞ。
「ああ。行く予定ではあったのだがな……」
「で……その姿は?」
「わからない。状態異常にイヌルトと記されていて、こんなに縮んでしまった」
まあ、サイズは思いきり縮みますな。
ですが戦闘力はほぼ据え置きですぞ。
「ゲーム知識とかは? そんなイベントあるの?」
「こんなの心当たりある訳ないだろ! とりあえず仲間と合流しようと転送剣でメルロマルクに戻ったんだ!」
「ああ……確かにそんな状況なら仲間に相談するよね。一人でどうにか出来るって事態じゃないし」
「……」
「一日は困って路頭に迷ってそうだね」
「う、うるさい!」
「うー……闇の剣士<シャドウセイント>が愛玩の犬<ピュアドッグ>になっちゃった」
「誰が愛玩の犬だ!」
クロちゃんの嘆きに錬がツッコミを入れましたぞ。
「これは……あれかな? 俺は世界を救う剣の四聖勇者、天木錬。今日も一人で狩りに行って魔物を倒すことに夢中になっていた俺は背後から近づく何者かの攻撃に気づかなかった。俺はその何者かの攻撃で意識を失い、気づいた時には……子犬になっていた! って感じ?」
「なんの真似だそれは! 尚文……お前……」
お義父さんの素敵な事情説明ですぞ。
これから錬はそう言って冒険を語るのですかな?
「いや、こう……そんな感じに纏まりそうだったなって。よく錬だって仲間たちは分かってくれたね。こういうのって信じるのも大変でしょ?」
お義父さんが錬の仲間たちの方へと意識を向けますぞ。
「私たちの元へやってきて気付いたらこんな姿になったがレン様だと仰いまして」
「信じてあげたんだ?」
「先に見つけたのがこの子でレン様だと仰るのも元より、みんなの事をしっかりと説明できましたし……こう、態度の端々にレン様らしい所が垣間見えたので」
クロちゃんは匂いで錬だと判断したのでしょうな。
ですがクロちゃんは悲し気ですぞ。
おお……確かにそのお姿はクロちゃんにとってはむなしいのですな。
お義父さんが錬に生暖かい視線を向けましたぞ。
「なんだ? その目をやめろ! だから相談したくなかったんだ」
「だからと言ってこのままには出来ません。レン様だけではないかもしれないではないかと思い、四聖勇者様方全員に事情を説明しようとなりまして」
「そっか……報告に来てくれてありがとう。俺たちは今の所無事だね。ね? 元康くん」
「もちろんですぞ。そんな姿になることはないですぞ」
俺がしたのですからな。
少なくともお義父さんに施す予定は今のところありませんな。
ですがお義父さんが望めば考えておきましょう。例えば最初にお義父さんに施せば間違いなく今までと違うループになるでしょうな。
「くっ……俺だけなんでこんな姿に!」
錬が悔し気に拳を握ってますぞ。
「元康くんも心当たりがない?」
ありますぞ? 俺がしたのですからな。
第二のライバルを作るのを阻止するのですぞ。
何より下手にドラゴン狩りをさせて助手の恨みを買い、カルミラ島でぼこぼこにされると説得が面倒になるのですぞ。
「錬だけにしろとんでもない事態だよね。樹には相談した?」
「ああ、ここに来る途中で樹の仲間とは出会えてな」
お? 錬は樹の方にも声をかけたのですな。
「ですがその割には樹とその仲間たちが居ませんぞ?」
「突然何者かに襲われて俺がこんな姿になった。もしかしたら樹も同様の事が起こっているかもしれないと言ったらアイツら『そんな妙な状態に我らのイツキ様がなっている訳ないだろうが! お前たちもそんな勇者を騙る獣人の話を信じてどうするのだ! 成敗してくれる!』と今にも襲い掛かろうとしてきやがったんだ」
「わー……」
おや? おかしいですな?
樹もリスーカにしてやりましたがあの場ですぐに元に戻れたのですかな?
いえ、そんなはずはないですぞ。
簡単には解除できませんからな。
「まともに取り合う様子もない。ならとお前らの所に来たんだ」




