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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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今日の一針明日の十針

 件の酒場でパンダが居ないか確認ですな。

 店内にはいないのでお義父さん達が席に座って待機ですぞ。

 前回と同じくゾウが一緒に酒場のマスターへと声を掛けに行き、お義父さん、パンダの養父と祖父が腰かけました。

 お姉さんのお姉さんも一緒に連れて行こうかと提案した所、お姉さんのお姉さんは行きたがっていましたが今回は留守番するとのことでした。


「わー」


 フィーロたんが見覚えのないシルトヴェルトの様子に周囲を見渡しておりますぞ。


「フフフ、さね」


 パンダの養父はそんなフィーロたんを微笑ましいと言う顔で見ておりますな。


「ラーサは一体どこをほっつき歩いているんだ。まったく……」

「そういわないさね。あの子だって傭兵業をしてるんだからしょうがないさね」

「しかし……まあ、そうか」


 パンダの祖父も一時期傭兵をしていたそうですぞ。

 じゃなければ戦争で老婆と出会う事も無いとかなんですな。


「えっとねーエルメロの話だとこの料理がおいしいんだってー」


 ゾウと一緒に来たコウがフィーロたんにここのメイン料理を教えようとしていらっしゃいますぞ。


「ごしゅじんさまのごはんとどっちが美味しい?」

「イワタニ達の作った料理の方が美味しいよー」

「そっかー」


 コウとフィーロたんの会話ですな。

 ラフミの奴め、事もあろうにフィーロたんがコウと性別以外の違いが余りないとはフィーロたんとコウの両方に失礼な事をぬかしてましたぞ。

 このお姿のどこに同一性があるのですかな?


「フフ、盾の勇者様は美食に関してどう思っているさね?」


 そんなフィーロたん達の会話を見てパンダの養父がお義父さんに尋ねましたぞ。

 お義父さんは美味しいと素直におっしゃいますな。不機嫌なお義父さんの場合は淡々と食べるのですぞ。

 ちなみにこの手の界隈のネタでお義父さん達が揃って抱く悩みはどうも美食家と間違われて怯えられてしまう所なようですぞ。


「その地によって好みの味付けって変わるので人それぞれだと思いますよ? 如何に相手の好みに合わせるかじゃないかと」

「ほう……口だけではなくあの味付けからして実行にまで移しているのは間違いないさね」

「まー……人によっては共通にして最高の代物があるって思ってる人はいるでしょうけどね」

「確かにいるさね。ゼルトブルの方で、そういった連中が未だに沢山いるさね。そういえばリユート村で何か無かったさね?」

「あ、ありましたね。滞在した食堂で何やら困ってたので相談に」


 どうやらパンダの養父の所に来ていた要請は読み通りお義父さんが解決していたとの話だったようですぞ。

 さすがはお義父さんですな。


「なんだかんだまだこの世界の味に関して分からない所があるから、場所に合わせるのは難しいですけどね」

「そこは覚えていけば良いさね」

「お前等が最近、ワシの好みの味付けを遊びで合わせてるのは分かってるぞ。変な事をするなよ?」

「変とはなんさね? こっちもどこまで好みに出来るかやってるだけさね」

「笹ってお題で何処まで作れるかって勉強になるよね。ラーサズサさんの好みは何ですか?」

「そうさねーあの子は炒め物や饅頭が昔は好きだったさね」


 なんて感じに雑談をしているとゾウが戻ってきましたぞ。


「今回もダメそう?」

「いいえ、もう戻って来てるのでそろそろ来る頃だと――」


 という所でキイっと酒場の扉が開いてパンダが入ってきましたぞ。

 パンダはそこで酒場内にいるゾウに目が向かったようですな。

 そのあと、俺を見て眉を寄せましたぞ。

 よく来ましたなパンダ。お姉さんのお姉さんが奥手ですのでお義父さんのお相手をしっかりとするのですぞ。


「おーいですぞー」

「!?」


 で、俺が手を挙げてパンダに呼びかけた所、パンダはお義父さんの両脇に腰かけていた養父と祖父へと顔を向けた直後に目を見開いて、くるんと背を向けて酒場から出ようとしてましたぞ。


「姉御? どうしたんでさ」

「いきなり背を向けて」

「ちょっと用事を思い出したのさね!」


 脱兎のごとく走り出そうとしているように見えましたが気の所為ですな。


「パンダ、待っていましたぞ」

「ラーサ、久しぶりさね。こっちに来なさいさね」

「せっかく来たんだ。座りなさい」


 俺、養父、祖父の声にパンダはグッと逃げようとしたのをやめてギギギ……と、ゆっくりと振り返ってこっちにやってきましたぞ。

 それから俺の方へとやってきて胸倉をつかんできましたな。


「おい! あんた! あたいに何の恨みがあってこんな事をしてんだい!」

「ラーサ、ちょっと乱暴なんじゃないさね?」

「ぶしつけな……もう少し品を教えるべきだったか」


 祖父が運ばれてきたお茶を飲みながら呟きましたぞ。

 パンダは祖父へと警戒しながらゾウへと視線を向けましたぞ。


「おい! エルメロ! これはどういう事さね!」

「あなたの敗因は二つ。一つは最初についてこなかった事。次に長期間留守にした事よ。諦めなさいラーサ、逃げ切れないわよ。話を聞くのが……一番ダメージ少ないわ」


 ゾウがパンダに手を合わせて健闘を祈るとばかりにお義父さんへと視線を向けますぞ。


「チッ」


 パンダが不機嫌そうに椅子に腰かけましたな。

 それからやっとお義父さんに気づいたようですぞ。

 ややキョトンとした表情をしているようですぞ。


「前回は説明してませんでしたな。この方がお義父さんですぞ。なのでちゃんと話を聞くのですぞ」

「あ? お前がこいつが警護しろと依頼した護衛対象?」

「えっと、始めましてラーサズサさん。俺の名前は岩谷尚文。元康くんがどんな紹介をしたのかはエルメロさんから概要は聞いてるし、お義父さんとお祖父さんからも聞いてるよ」

「はあ……ったく、ずいぶんと若作りだね」

「いや、俺……20歳だから」

「ああ!?」


 パンダが俺を睨みつけました。


「依頼内容を聞いただけだと確かに勘違いするわよね。ラーサ、ちゃんとこっちも内容を把握したからこうして誘いに来たのよ」


 ゾウがパンダに補足しますぞ。


「なんで……」


 パンダが視線でゾウ、それから養父と祖父にそれぞれ視線を送りましたな。

 お義父さんも察したらしいのですがどうやら養父と祖父が一緒に居る事に対して恨みを抱いているとの話ですぞ。


「悪いとは思ったけど、どうにもならないのよ。あんたの実家の村、随分と住みやすくてみんな助かってるわ」

「ちょっと! どういう事さね!」


 パンダは今度は養父と祖父にそれぞれ抗議の声を上げました。


「大義ある良い案件さね」

「面白い話だったから乗った。それだけだ」


 養父たちの返事にパンダは頭がくらくらしたとばかりに椅子に深々と腰かけて俯いてますぞ。

 なぜか試合に負けたボクサーのような絶望感が漂って見えますな。

 養父はお姉さんたちの身の上を知って協力し、祖父は老婆との勝負に日々熱を上げていますぞ。

 もちろんサーカスの演目にも力を入れてますな。


「なんかよくわかんねえけど……こっちの人は姉御の同族の方じゃねえですかい?」

「馬鹿、どう考えても血縁者で姉御が頭上がらねえ人だろ」


 何やらパンダの部下たちが困惑しているようですぞ。


「どういう事だ? おい」


 で、部下がお義父さんを見てますぞ。


「あはは……」

「……なーんか、こう……もしかして」


 パンダの配下がお義父さんを見て何かを感じ取って居るようですぞ。


「お前らは黙ってあっちで飲んでな」


 パンダが観念したように顔を上げて酒を頼み始めましたぞ。

 やけ酒ですかな?


「いやー……これもある意味、俺の好奇心が一部招いちゃったのかもしれないのは否定できない。その……ごめんね」


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