真・蹴り逃げ
断片的にメルロマルクに留まったループの記憶がある……あの頃から寄生している奴なのですぞ。
槍の精霊も排除しないとは厄介極まりないのですぞ。
なのでお義父さんには次元ノキメラの肉が運び込まれる小屋を借りてフィーロたんはそこで休んでもらう事にしてもらいました。
もちろん俺もループ時の記憶から覚えていますぞ。
どうにかフィーロたんに再会できたループの記憶を忘れるわけにはいきませんからな。
ここでフィーロたんになるサクラちゃんは時々キメラの肉を毟って食べていたのですぞ。
で、次にしなくてはいけない行動をこれからするのですぞ。
そんな訳で俺はウサギ男を連れて思い出のフィーロたんに蹴られる現場にそれとなくやってきました。
記憶よりもお義父さん達は遅れ気味にやってきましたが荷車を引いた……フィーロたんだと思われるフィロリアル様とお義父さんとお姉さんのお姉さんがやってきますぞ。
ああ……懐かしき光景ですぞ。
思えばなんであんなに爆笑したのか思い出せませんな。
なんとなく不機嫌そうなお義父さんと荷車、そしてフィーロたんの姿がナゾのツボに入って爆笑してしまったのでした。
「で、あそこにいる岩谷様達を笑えば良いんでしょう?」
「シッ! 聞かれますぞ。確認をせずに笑うのですぞ。見抜かれないように迫真の演技でやるのですぞ」
「はあ……どうしてボクがこんな役を……」
という訳でトコトコと楽し気に荷車を引くフィーロたんに向けてウサギ男が指さして爆笑気味に徐々に近づいて行きますぞ。
「ぶはっ! なんですかアレ! はは、やバ、ツボに! ぶわッ! わはははははっはは!」
やや演技過剰な所がありましたがウサギ男が俺の指示通りにフィーロたんとお義父さんを指さしましたぞ。
「あらー」
お姉さんのお姉さんはニコニコしてその様子を見ております。
「……いきなりなんだお前ら」
ああ、あの時の気だるそうなお義父さんの姿が思い出されますな。
お義父さんにお願いしているので不機嫌な態度で俺たちを見てくださいました。
後日お義父さんは、みんなで茶番をするのは心苦しかったね……と仰っていました。
であると同時にここでウサギ男がこの役なの? 大丈夫? と目で語っていたようですな。
「だ、だって! 品が無いじゃないですか!」
「何が?」
後にウサギ男が見慣れた光景を品が無いと指さすのって理解できないと言いましたぞ。
「行商でもする気ですか? 貧乏人は苦労しますね。それにしてもダサいフィロリアルですねー!」
ギャハハハ! と演技しているウサギ男ですぞ。
慣れたものですな。
ちなみにこの後、最初の世界のお義父さんは行商を始めるのですぞ。
この時のエピソードをお義父さんに話した所……。
『もしかしたら元康くんにそう言われた際に行商って良いかもと思ったのかもね』
との話でした。
なんと、俺の発言でそのように方針を決めて下さったのですかな?
そう思うと嬉しく思える真実ですな。
ここで重要な事は。
『とにかく外見を小ばかにすることだと思う。どうも元康くんの話だとサクラちゃんとフィーロちゃんは似てても別人だと思えるくらいには顔立ちが違うみたいだからね。外見を笑われた所為で天使姿になる際に可愛く思って貰える姿を思い描いたんじゃないかな?』
との話ですぞ。
なのでここでフィーロたんを馬鹿にしなくてはいけないのだそうですぞ。
赤豚も余計な言葉を幾らでもぶちかましていたのでしょうな。
「みっともない! ホース、いえグリフィンじゃなくてフィロリアルですし、なんですかこの色、白にしては薄く桃色じゃないですか! 白にしたら純白じゃないと、しかも鈍足過ぎますよ!」
「……何が可笑しいのかわからんが」
お義父さんがウサギ男の態度に呆れたと言った声音で答えますぞ。
さあ! さっさと近づくのですぞ! 避けることは許しませんぞ。
念のためにチクリと鈍足効果のあるスロースピアをウサギ男に施しながらそれとなく背中を押してフィーロたんに近寄らせますぞ。
ウサギ男はフィーロたんを指さしたままスーッと近づきました。
「グアアアア!」
っと、フィーロたんは翼を広げてウサギ男を蹴り飛ばしましたぞ。
よっし! ですぞ!
ウサギ男が笑った表情のまま3メートル程飛びました。金的攻撃ですぞ。
く……俺より飛びませんでしたぞ。
強化した影響ですな。
やや不安になりますが大丈夫ですかな?
「うぐおおおお……犯人は――や――」
「キャアアアアアア! ウサギ男ぉおおおお」
赤豚の言いそうなセリフを真似しました。
ズルっとお義父さんが転びそうになってますが大丈夫ですかな!?
「グアアアアアアアア!」
プンスカと怒っているフィーロたんがお義父さんとお姉さんのお姉さんを乗せた荷車を引いて走って行ってしまいました。
あっという間でしたな。
追いかければ直ぐですが……もうフィーロたんですかな?
ループを再開した時に追いかけた時はフィーロたんになって下さいましたぞ。
ですが、念には念をで天使姿になるまではなぞれと仰ってましたので我慢しましょう。
「よくやり遂げましたな、ウサギ男」
「く……咄嗟に避けてやろうと思ったのに何かしましたね。周囲が恐ろしく早くなって驚きましたよ!」
ピクピクと痙攣しながらウサギ男が転がったまま俺に抗議しますぞ。
「余計な真似は許しませんぞ。何にしてもよくやり遂げましたな!」
褒めて遣わしますぞ。
なので治療をしっかりと施してやらねばいけませんな。
俺の慈悲に感謝するのですぞ。
なに、お義父さん程ではありませんが俺も回復魔法は得意なのですぞ。
という訳でウサギ男のフィーロたんが蹴った部分は治療ですぞ。
強化の影響か吹っ飛びはしましたが大した怪我ではありませんな。
「それよりなんですかさっきの気色悪い悲鳴は!」
「出来る限りの再現ですぞ」
「ああ、もう。本当に訳が分かりませんよ。見慣れた光景を爆笑する役をする方にもなって下さいよ!」
「これも大事なことですな。それと調子に乗り気味のお前への制裁もありますな。これでチャラにしてやりますぞ」
「根に持ちますからね!」
「ははは! 知りませんな」
何にしても明日の晩にはフィーロたんに会えますぞー!
と、フィーロたんとの再会と、これからのループでフィーロたんに会う方法の確立実験は最終フェーズに到達したのですな。
お義父さんが翌日の昼には魔物商のテントに来るのは確定なのでしっかりと匂いなどを消して俺たちはサーカステントに避難を完了させましたぞ。
と、ここまでは全く問題がありませんでしたぞ。
ふと脳裏に過るのは槍の精霊が紹介した謎の存在……と遭遇するまでは。
「いやぁ……どうしたのかと思い、来てみれば驚きの言葉しかありません。ハイ」
魔物商にも口裏を合わせるようにさせてますぞ。
脚本通りなのですな。
フィロリアルクイーンのお姿になったフィーロたんが魔物商のテントにお義父さんに連れられてやってきたのですぞ。
「クエ?」
フィーロたんが小首を傾げておりますぞ。
「……で、正直に聞きたい。こいつはお前の所で買った卵が孵った魔物なんだが、俺に何の卵を渡したんだ?」
完全に分かりきってるのに知らない演技をするのって大変だったよ。
「クエエエ?」
フィーロたんは周囲をキョロキョロと見渡しておりましたぞ。
「……」
お義父さんも周囲を見渡して俺を探していらっしゃるようでした。
クロ―キング状態からそっと手を握ってあげますぞ。
「あらー」
お姉さんのお姉さんは分かっているのかお茶目な笑みを浮かべていますな。
ですがお義父さんは小さく微笑むと同時に何か違うかのような顔をしたような気がしました。
一体どうしたのでしょうな?




