見つけたぁ
「それで……フィーロちゃんを構築している最中なんですね。となると……槍の勇者様、覚えてます?」
「な、なにをですかな?」
「ああ、この流れは忘れてるかもね」
モグラの質問に俺は首を傾げていると槍の精霊が何やら答えますぞ。
何ですかな? 俺は何を忘れているのですかな?
「いやね。フィーロを病ませてショックを受けて大変だったことがあるでしょ? その事をあの後、様子を見に来たアーク先生が知って予防線を用意してくれたじゃないか。ほら彼女は精霊種ではないけど魔物枠兼下級のイベント精霊からの出世組で――」
と、槍の精霊が……祝いの席に集まっている精霊の中の一つへと声を掛けましたぞ、その精霊が薄ぼんやりと印象の残る星が見え……ニヤァっと何故か光なのに嫌な感じに笑ったのが分かりましたぞ。
見つけたぁ……とばかりに俺を見ている、そんな背筋の凍りつくような笑みでした。
「ハッ!」
っと、恐ろしく後味の悪い悪夢を見ましたぞ。
アレは夢だったのですかな? それとも槍の精霊世界に意識だけ飛んでいたのでしょうか……。
何にしても恐ろしく嫌な出来事ですぞ。
せっかく、樹に嫌がらせをして錬が起こしかねない問題を解決して寝たのにこれでは台無しですぞ。
「くー……」
「んー……? キタムラ起きたー?」
お外を確認するとまだ暗いようですぞ。
俺が起きたことでコウを始めとするフィロリアル様達が重たい瞼を閉じたまま聞いて下さいました。
「まだ寝ますぞ」
「わかったー……おやすみーぐー……」
そうですぞ。
寝直さねばいけませんぞ。
あのような悪夢等、忘れなければいけませんからな。
寝直して覚えていたらモグラへの配慮も考えねばいけません。
ただ、このまま奴隷売買をしてれば取引されそうな気もしますぞ。
なんて考えながら俺は寝直しましたぞ。
生憎と、また精霊の世界に落ちることはありませんでした。
樹と錬を開拓妖精に変えてやった清々しい翌朝ですな。
本日、お義父さんとお姉さんの所でフィーロたんが孵る所でしょう。
事前準備はすでに済んでいるのでどうしますかな。
内緒でお義父さんの所に確認に行っても良いですが……余計な事をした所為で予想外の展開になるのは避けるべきですぞ。
そう、一度ループを脱出する際の最後のループ時にのぞき込んでいたら赤豚に声を掛けられた時の事を俺はしっかりと学習してるのですぞ。
「元康様! 今日は何をするのですわ?」
「何するのー? サーカスー?」
「まだお休みですぞ、お義父さん達がフィーロたんと一緒に帰ってくるのを待つのですぞ」
「新顔の元康様が大事にしている子……ですわね」
ヒィ……なんとなくユキちゃんから恐ろしい気配がしてないですかな?
元康、もっとフィロリアル様を大事にするのですぞ。
病むことは絶対に避けなければいけないのですぞ。
ユキちゃんは……うう、何やら脳が何かを認識するのを拒んでいるのですぞ。
なので出来る限りのフォローをしろですぞ。
俺はユキちゃんの顎に優しく手を添えて出来る限りの熱い視線を送りますぞ。
「そうですぞ。フィーロたんは俺にとって大事なフィロリアル様、ですがユキちゃんもまた、大事なフィロリアル様なのですぞ」
「も、元康様……」
「今まで沢山のループの中で俺に親身になって力に成ってくれたのはユキちゃんですぞ。俺はその事を片時も……忘れてはいませんぞ」
「ああ……ユキは果報者ですわ。他のユキもみんな元康様に尽くしたのですわね」
「そうですぞ。ユキちゃん。フィロリアル様はみんなオンリーワンなのですぞ」
「わかりましたわー!」
ユキちゃんの怪しげな気配が霧散しましたな。
ふう……ですぞ。
ユキちゃんは将来のお婿さんを早いうちに紹介するのも必要かもしれないですな。
ですが最初の世界でユキちゃん、ホワイトスワンのお婿さんのフィロリアル様をフレオンちゃんと再会したループで紹介した際に縁談が上手く行かなかったですからな。
ユキちゃんは気高きフィロリアル様ですぞ。
足の速さでユキちゃんに勝てなければ異性として認識すらして貰えません。
ユキちゃんを好きなフィロリアル様達の強化を徹底しなければいけません。
良いから強化だ! ですぞ!
タクトのような怪しげな薬や改造なんぞ絶対にしませんぞ。
今回はまだタクトは居ますからな。生きていることを後悔するような悲惨な目に合わせるのですぞ。
ふむ……さしあたって今日は何をしたらいいですかなー。
遠距離からタクトのドラゴンを狙撃してブチ殺すのも良いですぞ。
下手に近づくと実は自害して槍に戻って居るかもしれないライバルを呼び寄せかねませんからな。
仕留めてから近づくのですぞ。
それともグリフィン共を狩りつくしてタクトがやらかした改造を軒並みして各地で暴れさせますかな?
いえ、奴と同じ次元まで落ちる必要はないですな。
お義父さんが盗賊共を相手に遊んだ際に仰ってましたので辞めましょう。
悩ましいですな。
第二の恐怖の砦とばかりに城の兵士共をチクチク削るのも良いかもしれないですぞ。
絶対にお義父さんを嬲って笑おうとした連中が居るでしょうからな。
「ねーエルメロがねーイワタニにお友達を紹介しないのかって前に言ってたよー?」
「パンダですかな? どうもお義父さんがいらっしゃる時に声を掛けに行った方が良いようなのでそれも後ですぞ」
「そっかー」
「うー……」
ここでクロちゃんが困ったような顔でやってきましたぞ。
「ねー闇聖勇者どこに行ったか知らないー? 寝てたら居なくなったー」
く……クロちゃん。申し訳ないですぞ。
錬はゼルトブル行きの船の貨物として出荷してますぞ。
今頃船の上でグースカ寝ている最中ですな。
「クロの好きな方は勇者ですわよ。元康様達と同じくポータルという力でどこかですぐに移動してしまわれたのでしょう。後でまた探せばよいのですわ」
「うー……」
ユキちゃん、ナイスアシストですぞ。
「それでも探してくるー」
どうやらクロちゃんは俺たちの所に錬が来てないかを聞きにきただけのようですな。
「尚文様の所に行ってはダメですわよー大事な時期なのでそれだけはいけないのですわ」
「わかったー」
そんな訳でクロちゃんは錬を探しに走って行ってしまわれましたぞ。
「ねー今日は本当に何も無いのー?」
コウが暇なようで聞いてきましたぞ。
「そうですな。ウサギ男の底上げももう少しするかどうすかですな」
「け、結構です! ボクは十分頑丈になりました! むしろそろそろクラスアップをするかと思っているくらいですよー! 獣人化が制御できるようになっているかもしれな――うぐ」
ウサギ男が獣人化を意識的にしようとして半分だけウサギ獣人化して止まってしまったようですぞ。
「ぐ……ぐうううう! はぁ……はぁ……」
サッと亜人姿に戻っておりましたな。
まだ制御出来ていないという所ですな。
関節の一部も少しおかしくなっていたので自ら補正をしているようでゴキっと嫌な音を立ててますな。
「……はぁ」
深いため息をしながら荷物を軽々と運ぶワニ男へと視線を向けてましたぞ。
「……」
ワニ男も察しているのか敢えて気づかないように荷物を降ろして、そっとウサギ男の関節の補正を手伝った後、エクレアが休んでいる方向へと立ち去って行きました。
「わあああ……ふ」
ヴォルフはあくびをずっとしながら昼寝とばかりに牢屋で寝転がっておりました。
有り余る力を持て余していると言った様子の奴隷たちですぞ。
「ならねーあっちの村でリファナ達とーエルメロと一緒に遊びたーい」
「わかりました。では早速送りますぞ」
「あ、えっとねーさっきイワタニと一緒に料理してくれるおじさんがお客さまとねーお話してたよ? あっちの村に行くなら一緒に行った方がみんなうれしいと思う」
美味しいごはんーとコウはパンダの養父の事を呼んでいるようですな。




