釈放
「……次にモトヤス殿、特にめぼしい活躍はしていないが、配下の一人がどうやらレン殿と力を合わせて活躍したので銀貨1000枚を支給する」
クロちゃんの活躍分は銀貨400枚程度ですかな!
錬と比べたら待遇に違いがありすぎですぞ!
「ねー……闇聖勇者ー……」
イラっとしたので槍を振り上げようとしましたがクロちゃんが早く錬に会いたい様ですぞ。
ここは堪えるべきですな。
クズめ、俺の慈悲に感謝しろですぞ。
そして来るべき時に絶望を教えてやりますぞ。
フレオンちゃんによってお前も正義に覚醒させてやりますからな!
なんて今後に行うクズへの報復を考えていると何やら紙が追加で持ってこられました。
何故かエクレアへと渡されましたぞ。
「そして盾には此度の騒動を起こしたのとイツキ殿の治療費、更にセーアエットの娘の釈放の費用だ。それを盾に渡せ」
銀貨7000枚の請求書と書かれてますぞ。
どんだけむしり取る気ですかな!
「私の罪はともかく……王よ、今からでも遅くは無い。盾の勇者殿を罠に掛けるのをやめてほしい。このような蛮行、各国が、そして女王が決して許さない!」
「妻の考えはワシの考えじゃ! 爵位返上に匹敵するのにも関わらずなんじゃその態度は!」
ここで樹が不服そうに手を上げました。
「僕の傷を真っ先に治療してくれたのは非常に腹立たしいですが尚文さんですよ? 治療費とは何を治療したモノですか?」
「イツキ様! あのような卑劣で下品な奴の肩を持つという気ですか!?」
燻製が樹の言葉に抗議の声を上げましたな。
「黙りなさいマルド、あなたの思想も怪しく思っているのです。正直、ロジールと交代させるか悩んでいるくらいです」
「なんだ――ですって! 私よりロジールが正しいとでも言う気ですか!?」
ああ、燻製の次点である戦士っぽい奴ですな。
樹もそこそこ国に疑いを持ったようですぞ。
「僕の話は終わってませんよ。王様、エクレールさんの身柄に関して僕と決闘の末に尚文さんは勝利して得たのですから今更そのような請求はあまりにも見苦しい……感情的になるにしても筋は通さなければいけません」
樹が鋭い視線でクズを睨みました。
ふむ、あの樹すらこうなるとは……クズが全方位から嫌われていて気分が良いですぞ。
「尚文さんが波の報酬としてエクレールさんの身柄を預かったのですから金銭の支給はともかく、賠償金は限度を超えてますよ」
「ふむ……イツキ殿がそう言うのならば、確かにその通りじゃな。ワシも大事な心優しい娘をあのようにされては冷静ではおられんのじゃ」
全く心から思ってない同意をクズはしてますぞ。
内心は怒りで燃え上がっているのは一目でわかりますな。
「ええ、尚文さんの手口が卑劣なのは間違いありませんがそれでこちらが筋の通らない事をしては話になりません。これからメルロマルクは奴隷狩りなどをしてはいけませんよ。そこは徹底すべきです」
「うむ、そのような事をしている者が居るのならば間違いなく処分せねばならん! 国の威信をかけて行うとしよう」
と、何やらクズは樹を相手に約束をしてますが形骸化するのは目に見えていますぞ。
樹の目に留まった奴隷狩りだけ裁かれる未来が見えますな。
「そういう訳ですからその紙は不要です」
「弓の勇者殿……感謝する」
「良いんですよ。ですが気を付けて下さい。尚文さんに下手に心を許せば無理やり迫られるでしょうから」
樹はまだ赤豚に襲い掛かったなどと信じているのですな。
しかしかなりちぐはぐな思考をしてますぞ。
お義父さんと決闘をした際の報酬はしっかりと払え、だけどお義父さんは認めない。
自身を律儀とでも思っているのですかな?
絶対に思っているでしょうな。
愚かにも程がありますぞ。
なのでこの国の真実を身をもって叩き込んでやっても良さそうですな。
「……さて、今回の援助金の配布はこれで終わりじゃ。次の波まで勇者達はそれぞれ精進をするように。これにて解散!」
お決まりの台詞をぶちかましてクズは解散を宣言しましたぞ。
「王……この場にて話があります」
エクレアが挙手して立ち去ろうとするクズへと進言するようですぞ。
無駄だとは思いますがな。
「なんじゃ? ワシは忙しいのだ。お前の爵位は剥奪されているにも関わらず何を述べるつもりじゃ」
「先ほども述べたが盾の勇者殿への不当な行為を今すぐ辞め、流布した噂の即時撤回及び真実を国民へと伝えるべきだ。世界は波という災害に備えて行かねばならない。当代の盾の勇者殿には何の罪も無いのが分からないのですか!」
「奴はマルティの慈悲を踏みにじったのじゃ! あまつさえ獣のように襲い掛かった! この事実は動かん!」
ちなみにクズは赤豚にお義父さんが強姦しようとしたというのを本当に信じているらしいですぞ。
後年のクズだと心のどこかで嘘だったのだろうとも思っていたとの話でしたな。
赤豚の戯言を信じるとは呆れてものも言えませんぞ。
俺も犯した愚かな罪ですがな。
「まだ私も話をして日が浅い故にイワタニ殿がどのような人物であるかを図り知るまでには至っていない手前、断言はできませんが信頼する者が真実は別にあると言っている。王よ……今一度真実の調査をすべきだと私は進言しよう」
そして……とエクレアは立ち上がって背を向けました。
「私の罪の清算は女王が帰還してからとさせて頂く。本日はその報告をするために来た。では、来るべき時までお暇させてもらいます」
「ふん! 身の程を知るのじゃ!」
そうしてエクレアは立ち去って行きますぞ。
この流れならば……アレですな?
クズをボコボコにした後、赤豚をここまで引きずり出して顔面を焼き焦がしてから去るのが良いでしょうかな?
いえ……下手にそのような真似をするとフィーロたん計画を実行して下さっているお義父さんに迷惑が掛かるのもさておき、フィーロたんと俺が会えなくなってしまう可能性があるので少しばかり我慢しておきましょう。
赤豚、命拾いをしましたな。
まあお前の処分など容易いですぞ。
「ブブブ」
ん? エクレアの後に続くように城を出ようとしていると怠け豚が何やら樹に声を掛けて手渡しますぞ。
燻製が間に入ろうとしたのを樹が不快そうに視線で黙らせてから受け取ってましたな。
何をするつもりですかな?
まさかお義父さんから樹に鞍替えでもする気でしょうか。
ならばそのまま行けばいいですぞ!
いいタイミングで処分できますな。
後でお義父さんにチクってやるのですぞ。
「クロ、闇聖勇者の所に遊びに行くー」
「いってらっしゃいですぞ。ちゃんと帰ってくるのですぞー」
クロちゃんが錬の所に遊びに行きたいそうなので見送りしますぞ。
「わかったーいってきまーす」
「いえ……できれば来ないでほしいのですが……」
なんて感じにクロちゃんを見送りつつ俺はエクレアと一緒にワニ男とウサギ男の居るテントへと戻ったのですな。
もちろん道中で怪しげな連中に絡まれましたが即座に黙らせてやりましたぞ。
「さて、これからどうしましょうか。今日は岩谷様からお休みを頂いているので、暇と言えば暇ですね」
ウサギ男がテント内でワニ男と一緒にくつろいでいますぞ。
「エクレール様、おかえりなさい」
ワニ男がエクレアの帰還に出迎えましたぞ。
ヴォルフはソワソワと檻の中で待機してましたな。
お義父さんの指示は耳にしており数日は帰らないという話を既に了承済みのようですぞ。




