フィーロ育成計画・序
「元康くん」
「お任せあれですぞ」
怠け豚の存在が気になりますがエクレアの牢屋をぶち破り、エクレアの手枷足枷を破壊して救出しました。
「おい。アレから何があった! 私をどうするつもりだ?」
「一応許可は貰って来たよ。女王と出会えるまでエクレールさん、一緒に来てほしい。シオン……リベラシオンも喜ぶと思うから」
「本当に何をしたのだ?」
「王様と姫が俺に嫌がらせをするのはわかっていたんだ。樹……弓の勇者を嗾けて決闘を仕掛けてきたから貴方の身柄を条件に引き受けて、俺が勝った」
「な――」
エクレアが絶句してますぞ。
何かおかしいですかな?
「もちろんあの王は言い訳をしようとしたけれど他の勇者たちも納得したからこれ以上の文句は言わせないよ」
「……承知した。少々気にはなるが……後で私も王と一度話をした上で、女王と出会えるまで同行する。裁かれるのはそれからが良いだろう。私の名前はエクレール=セーアエット。これから厄介になる」
「うん。じゃあ……えっと、怒りで色々と暴れそうになったのを抑え込んでこうして寝込んじゃってるけどシオンを任せるよ」
「う、うむ……わかったが、シオン……何やら姿が随分と変わったのだな」
エクレアが意識の無いワニ男の姿に感心したような顔をしてまじまじと見ますぞ。
かなり強めに眠らせましたからな。
少なくとも数日はぐっすりですぞ。
「色々とあったのです。募る話もあるでしょうし、事情については彼の意識が戻ってからにしましょう」
「そ、そうだな。くっ……」
エクレアがふらついてますぞ。
「コウの背中に乗ってくー?」
コウがここでフィロリアル姿になってエクレアが乗れるようにお座りしますぞ。
「あ、ああ……ではお言葉に甘えさせてもらうとしよう」
ギョッとしたエクレアでしたが素直に乗るようですな。
「では帰りますぞー!」
そんな訳で俺たちは城から出て帰ったのですぞ。
ちなみに帰りの道中で謎の冒険者に三回ほど絡まれましたが問答無用で昏倒させてやったのですぞ。
「あー疲れた。精神的にね。帰ったら帰ったでこっちでも戦勝会をしなきゃいけなかったからね」
帰還後に開かれた戦勝会でこっちも楽しい時間を過ごしましたぞ。
エクレアも連れ帰ったので改めて自己紹介と相成りましたな。
そんなこんなで魔物商の用意したテントでお義父さんはお疲れとばかりにベッドに腰かけております。
「お疲れ様ですぞ」
「うん。シオンは……まあ、気付け薬でどうにか意識を取り戻したけど元康くんも加減してほしかったかな」
「加減したのですが効果が薄かったのですぞ。あれは中々見所のあるワニですな」
「ものすごく怒ってたからね……あの王にはもうシオンは会わせられないかな」
「地獄を見せる時に同行させれば気も晴れると思いますぞ」
実際、フィロリアル仙人にフレオンちゃんの仇の最後をお見せした事もありますからな。
ちなみにワニ男は目覚めた時、お義父さんとエクレアが立ち会い、状況を理解して落ち着きを取り戻したようでしたな。
クズに向かって駆け、俺に刺された所で記憶が飛んでいたのか跳ね上がるような動きをしてました。
そのあとは事情を知って俺へと不満そうな顔はしてましたが、知りませんな。
ただ、自身の体の制御が前より出来るようになったと満足気ではありました。
ワニ姿をキールやゾウに見せておりました。
かなりの巨漢になったのでお義父さんに次ぐみんなの守りとなるとかなんとか。
「色々と大変で今日は疲れちゃったね。明日はどうしようかな」
「お義父さん、明日からはお願いがあるのですぞ」
そうですぞ。
今まで我慢してましたがフィーロたん計画が始動なのですぞ。
「そういえば元康くんのお願いがあったね。なんだっけ?」
「そろそろフィーロたんを育ててほしいのですぞ。そのために前回のループでのお義父さん達が考えた計画をして貰いたいのですぞ」
「うん、わかったけど……どうするの?」
俺はお義父さんに前回のループのお義父さん達が考察した作戦を説明しますぞ。
「なるほどね。フィーロって子が生まれるプロセスを再現するのか……ちゃんと出来るか不安だけど、元康くんには色々と手伝って貰ってるからやるとしようか」
「ですぞ」
「元康くんの想い人だからね。頑張って行かないとね……」
お義父さんがやや苦笑するようにお答えしました。
何か思う所があるのでしょうか? とは思ったのですがお義父さんは教えて下さいませんでした。
後にライバルや他の連中の話では俺の為とは言えフィーロたんの運命を決めてしまった事に罪悪感があったのではないかとの話ですぞ。
俺もフィーロたんとサクラちゃんの二択なのは心苦しいですぞ。
「じゃあ、明日から俺の行動は決まってる訳だけど元康くんはどうするの?」
「俺は明日、報奨金を貰って来ますぞ。貰えるものは貰っておくのに越したことは無いですからな。クロちゃんが錬に会いたがっているのもありますぞ」
「あの流れで貰いに行くんだ……俺は行かないって言ったからいけないけどね」
「もちろんですぞ。エクレアも一旦城でクズに真偽を問いに行かねばならないとの話ですからな。お義父さんの手を煩わせる必要はありませんぞ」
「ちょっと不安だなぁ……かといって、元康くんを止められる人が居ないし……俺も行けないとなるとしょうがないか。後は気を付けないといけないのは今回の件で襲撃者が増えるだろうって所だね」
「増えたらまた出荷してやれば良いのですぞ」
「こうしてまた悪い噂が広がるのかな……エクレールさんにどう説明したら良いものか」
「面倒ならエクレアを女王の所にさっさと出荷しますぞ」
「言い方……居場所が分かればいいんだけどね」
「そもそもエクレアは話せばわかるタイプらしいですぞ」
お義父さん曰く、真面目であるがしっかりと筋が通れば問題ない人格者という話ですぞ。
パンダと決闘した際にパンダは傭兵としての戦いと言って不意打ちをしてましたが戦い方を卑怯と罵ったりしてませんでした。
盗賊と偽装して馬車を襲撃してくる三勇教徒を生け捕りにしてシルトヴェルトに売り払うのは問題ないですぞ。
何せ、エクレアの領地の民を襲撃して大人はほぼ皆殺し、子供は奴隷として売り払った連中共ですからな。
「エクレアもこの程度なら最初は文句を言ってもすぐに受け入れますぞ」
「……シオンに一旦丸投げしておけば良いかな。不満だったらシオンが俺たちの暴挙に抗議しただろうし、上手く説明してくれると思うよ」
そもそも最初の世界でもエクレアは三勇教の残党相手には厳しめだったと思いますぞ。
おや? 山賊共の身ぐるみを剥ぐ行為を助手と率先してやる所で錬に注意されていたような記憶がありますぞ。
何にしてもあのエクレアですからな。案外馴染むのは早いのですぞ。
柔軟な思考という奴ですな。
そういえばゾウとエクレアは共に騎士の立場故に気が合うようでしたな。
ゾウの方が統治能力があるのでエクレアがお義父さんや錬に愚痴りに来るくらいには仲が良いのですぞ。
「元康くんが未来を知ってるから安心して色々とやっていけるんだけどね。あんまり善行をし過ぎちゃいけないって話だし、このまま上手く事が運べれば良いけれど」
「順調だと思いますぞ」
今までとは異なる行動が出来ていると感じますぞ。
その中でも別の行動をしていくのですな。
「ヴァウヴァウ」
と、ここでヴォルフがお義父さんを見つけてテントに入ってくると絡んでいきますぞ。
「よーしよし、ヴォルフ。今日は戦ったり大人しく待ってくれたりパーティーを楽しんでよく頑張ったね」
「わおーん。ヴァウヴァウ!」
ヴォルフはワニ男が居る方角を見ながらムキっとポーズをとってますぞ。
「そうだね。シオンが凄く頼もしくなったね。本当の名前を教えてくれたし、みんなと仲良くしようとしてくれているみたいだよ」
「ヴァウ」
「近々、エクレールさんやシオンの家に行っても良いかもね」
エクレアたちに気を使いすぎだと思いますな。




