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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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逆手に取る


「面白い事になりそうですね。岩谷様、いったい何を閃いたんですか?」

「テオは自重してね。あまり暴れられると俺がやり返せないじゃないか。この先起こる出来事が面倒だなーって思ってた所を楽しくするんだからね」

「場合によりますがわかりました」

「それじゃシオン、会場に戻ろう。上手く行けば合法的に彼女を解放出来る」

「……」


 やや呆れとも取れる沈黙を雑種のリザードマンはしてました。


「な、なにをするつもりだ! おい! くっ……」


 俺の知るエクレアよりも疲れのある様子ですな。

 拷問をされて閉じ込められているから弱ってきているのでしょうな。

 善行をし過ぎると死ぬので自粛はしていたのですぞ。

 あれですかな? シルトヴェルトに三勇教の連中を出荷している所為で拷問が増してきている可能性はゼロではありませんな。

 そういう意味では今のうちにエクレアを保護しておくのは悪い手ではないでしょう。

 何よりこれまでのループにおいてこのタイミングでエクレアを味方にした事はないので、色んな事をするという目的とも合致しますぞ。


「元康くん、隠ぺい状態で会場に戻ろう。難癖付ける為に行動してるなら居ない俺を探し回っているはずだからね」

「お任せあれですぞ」


 なんて感じにお義父さんは俺たちを連れて急いで会場の方へと戻りました。

 その道中で兵士を含めた連中が城内を走り回っていました。


「早く次の料理を運ぶんだ!」


 お義父さんに喧嘩を売る為に居場所を特定しようと躍起になっているようでしたな。

 気色の悪い連中ですぞ。

 察したのかウサギ男も眉を寄せていました。

 そうして会場に戻った俺達は庭の隅からしれっと帰ってきた風を装いますぞ。


 それからお義父さんが俺達に距離を取る様に軽く手を上げてから離れ、食べ物が並んでいるテーブルの方へと歩いて行きました。

 するとそこに、ここぞとばかりに赤豚が狙ったように現われて近づいて来ました。

 この流れは錬に片棒を担がせた時の流れに似てますぞ。

 ちなみに錬はまだ気持ち悪いのか連結させた椅子に横になっていますぞ。


「闇聖勇者、まだ食べないのー?」

「うう……」


 錬の目の前でクロちゃんがムシャムシャとお食事してますな。

 他のフィロリアル様も沢山食べております。

 俺はいっぱい食べるみんなが大好きですぞ!


「ほら、この漆黒の爪牙がご飯持って来たから食べて闇の力を蓄えようよー」


 微笑ましい光景ですな。

 お義父さんに絡もうとする赤豚という不愉快なモノを見る前の癒やしですぞ。


「……」


 お義父さんは軽蔑の視線を近寄る赤豚に向けつつ気にしない様にテーブルの食事に意識を向ける振りをしますぞ。


「ブヒャアアア! ブヒャブ! ブブブブヒィイイイイ!」


 と、ここで赤豚が非常にワザとらしい叫びを上げますぞ。


「……なんだあの茶番は、自ら近づいて叫ぶとはな」

「ここまで露骨に叫ばれるのはどうなんでしょうね。絶句とはこのことです。見ました? 得物を見つけたような顔をしてましたよ」


 雑種のリザードマンとウサギ男が呆れを通り越した何かを見ている顔で赤豚を見てますぞ。

 久しぶりですな赤豚ぁ……今回のループではどうやって仕留めてやりますかな?

 出来れば苦しむようにしてやりたいですな。

 最初の世界のフレオンちゃんの恨みを俺はまだ忘れていませんぞ。

 アレですな。そのまま豚王に出荷してタクト共々、島での恐怖の日々を過ごさせるのも面白そうですな。

 ですが何やらお義父さんに考えがあるので今回は見逃してやりますぞ。


「はぁああああああ……」


 で、絡んで来た赤豚にお義父さんが深すぎるため息をしますぞ。

 そこから完全に無視を決めて近くでお食事中のフィロリアル様を優しく撫でました。


「ブヒャ! ブブブヒ! ブヒィ!」


 無視を決め込むお義父さんの態度に赤豚は更にヒートアップしていきます。

 これまで通りだったら赤豚の汚い声など不快なだけですが、お義父さんに策があると思うとワクワクしてきますな。


「岩谷様もやりますね。アレではどっちが正しいのか一目で分かりますよ」

「何をするつもりなんだ?」

「ブヒ! ブブブブ! ブヒャアア!」


 何やら風向きが悪いと判断した赤豚が鳴いたかと思うとお義父さんを含めた雑種のリザードマンとウサギ男、更にフィロリアル様達が不快な顔をしました。


「「「ブー!」」」


 フィロリアル様のブーイングが響き渡りました。

 何を言ったのですかな?

 どうやら犯罪者を絞首刑にしてやるとか、そこのフィロリアル達を切り捨てるとかまで抜かしていたようですぞ。


「ブブブ……」


 で、赤豚は錬へと助けを求めようとして、錬がそれ所ではない位にぐったりしているのに気付いてギョロっと周囲に居る勇者へと視線を向けました。

 気色悪い視線ですぞ。

 自己弁護の為の材料を探す為に周囲を凝視する気色悪い言い訳が得意な奴の視線ですぞ。

 どうやら錬に片棒を担がせて国とお義父さん、どっちが正しいのかの補強をするつもりだったようですな。

 前にも見ましたがあの時の錬でさえ、どうして俺が戦うんだ? って顔をするのですぞ。

 荒れているお義父さんはそこで挑発をした事で事態が悪化しましたが、今のお義父さんではそのような事をしませんぞ。

 クロちゃんと仲良しの錬に好印象を持っていますからな。


「一体何の騒ぎですか」

「ブヒャアア! ブブブ! ブブヒ!」


 見つけたとばかりに赤豚は樹の元へと駆け出し樹の背後に隠れてから何やら鳴いてますぞ。

 さて樹、どういった返事をしますかな?


「なるほど……尚文さん。マルティ王女と再会した所でまた彼女が傷つくような事を言ったのですか」


 赤豚がここぞとばかりに樹に嘘を吹聴したようですぞ。

 樹が不愉快な顔をしてますな。

 同様にお義父さんを含めて雑種のリザードマンとウサギ男があきれ顔をしました。

 やがてお義父さんはフッと笑ったかと思うと、挑発するように口を開きました。


「……樹、君は話を聞いてどう思った?」


 ここで被害者面する事は簡単だったし、樹もそこまで馬鹿じゃないだろうけれど、それじゃあエクレアの問題を解決し辛いとの事で匂わせる返事にしたようですぞ。

 要するに挑発したという事ですな。


 なるほど! 俺は全てを理解しました。

 つまりこれまでの世界で赤豚やクズ、そして最初の世界の俺がやってしまった行為を逆手に取って、罠に嵌めるのですな!

 さすがお義父さん。


 まんまと挑発に乗った樹は弓を抜いて構えました。


「まだ実態の把握をしている最中でしたが正体を現しましたね!」


 それから樹は確信を得たような顔ですぞ。

 非常にウザい顔を樹はしてますな。

 アレですな。メルロマルクに留まったループの時と似た流れになって来ました。


「やはり人を隷属し、戦いたくも無い戦場に無理やり行かせて死闘をさせるなんて勇者の風上にも置けません! しかも更に自身が傷つけた女性の傷を抉るような真似をして……今すぐ彼らを解放しなさい! じゃないと許しませんよ!」


 樹、お前は赤豚を助けたいのか奴隷制度を廃止したいのかどっちですかな?

 どっちも求めるのは些か欲張りですぞ。


「おやおや、ここで――」


 そこで不快そうに一歩前に出そうになったウサギ男にお義父さんが無言の圧を掛けました。

 渋々と言った様子でウサギ男が下がりましたな。

 なんでもウサギ男と樹の言い争いになると樹の意識が逸れて予想と違う流れになりかねないので注意したようですな。

 後でブツブツとウサギ男が納得はしていても嫌だったと愚痴るのですぞ。


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