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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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闇の先兵<ウェーブ>

 


 翌日。

 波の時間まで待機をしてますぞ。

 みんな思い思いに己が持つ武器を確認していますな。

 ふと、メルロマルクに留まったときのループの記憶が思い浮かびました。

 あの時はお義父さんの傍らにはお姉さんくらいの背格好のサクラちゃんが居て、キールがキャンキャンと騒いでいました。

 出来る限り最初の世界をなぞるようにを意識していましたが今は同じようにならないようにと考えるとは……事情が変わっていきますな。

 それでもしなくてはいけないのはリユート村のフィロリアル様達の保護ですぞ。

 キメラは出来る限り身が残るように処理するのですな。

 間違ってもブリューナクで蒸発などさせてはいけないのですぞ。

 そもそもお義父さんや錬、樹の装備の為に必要な事ですからな。

 錬は竜の頭を欲するので固定ですな。

 それ以外の部分……今回のお義父さんにはどこの部位を使ってもらうのが良いでしょうかな。

 そこは流れで問題無いですぞ。


「……」


 斧を手に深刻な顔をしている雑種のリザードマンにお義父さんが近づきますぞ。


「シオン、大丈夫か?」

「……問題無い。むしろお前こそ無茶をするなよ? 俺を庇おうとかするな」

「生憎とそれは聞けないかな。庇うのが俺の仕事なんだからさ」


 じゃないとウドの大木か、それこそお姫様じゃないかとお義父さんは自嘲気味に呟きましたぞ。


「大丈夫、みんないるし避難誘導させるのが目的なんだし」

「そうですよ。何より今のボク達ならどんな敵が来たって負けませんよ。シオンもヴォルフも居るのですから」

「ヴァウ!」


 ウサギ男とヴォルフがそんなお義父さん達のやりとりに混ざって励まして居ますな。


「ああ……」


 雑種のリザードマンは不器用そうに顔を綻ばせていますぞ。


「今度こそ……俺はやりとげて見せる」


 何やら結束は固そうですな。

 ちなみにお姉さんのお姉さんは相談の結果、他国の波では参加するとの話ですぞ。

 お姉さんのお姉さんが最初の波に参加した場合……一騎当千の活躍をしてましたな。

 避難誘導中に群がって来た魔物を片っ端から倒していて安定感はお義父さんの奴隷になった者たちの中で飛び抜けてましたな。


「ユキ達も避難誘導をしますわ!」


 事前にリユート村のフィロリアル様達にユキちゃん達は声を掛けておりますぞ。

 避難は迅速にする予定ですぞ。


「コウは村にいる子達を逃がすねーエルメロが早く来ると良いなー」


 コウの方はゾウに色々と教わり、お姉さん達との交流で子供は守るものと認識して下さるように育ってくださいました。

 なんとも誇らしいですぞ。

 メルロマルクに留まったお義父さんとの世界と比べるとコウがトラウマで怯えるようになるのはもうあり得ませんな。

 あの時のコウは……食いしん坊さんで、波の魔物が美味しいかと仰っていましたな。


「闇の剣士と会えるかなー」


 クロちゃんは錬に夢中ですな。


「波でしっかりとアピールして錬に取り入るのですぞ」

「うん! クロと闇聖勇者の運命<ブラックディスティニー>の交差<クロス>する波<ディメンションウェーブ>」


 おおう、クロちゃんがとても元気ですぞ。

 ちょっとよく分からない所ですな。


「楽しみ」

「わーい」

「暴れていいのー?」


 もちろん他のフィロリアル様もおります。

 ですが……この中にサクラちゃんはおりません。

 ……サクラちゃんはフィーロたん。

 フィーロたんに会うとサクラちゃんとは会えない。

 そう思うとなんとも歯がゆい気持ちになりますな。

 この両者が一緒に居る瞬間を求めるのは傲慢ですかな?

 おや……俺の記憶違いか記憶の混濁かもしれませんがサクラちゃんとフィーロたんが揃っている光景が脳内で広がりますぞ。

 実現すると良いですな。

 ちなみに背後で怠け豚とお義父さんのやりとりが行われて居ますぞ。

 奴は相変わらず怠けたいのかお義父さんが呆れております。


「そろそろだね」


 視界の砂時計に映る数字が0に近づいてきましたぞ。


「出来る限り被害者を出さない様にがんばろう。みんな、後悔の無いようにね」

「わおーん!」

「やりましょう!」

「ああ……絶対に守り切る」

「やりますぞー!」

「頑張りますわー」

「「「わー!」」」

「闇の剣士と漆黒の爪牙の伝説の始まりー」


 お義父さんが俺の方へと顔を向けました。


「さあ元康くん」

「激励ですな。みんな今日の為にがんばって強くなったのですぞ。その努力は絶対に結果に繋がりますぞ。その力を世界に知らしめるのですぞ!」

「「「おー!」」」


 俺の掛け声と共に数字が0になり、このループで初めての波が始まったのですぞ。

 まさに……この時期への波に挑むのは久しぶりですな。



「ここは……うん。みんな! 行くよ!」


 お義父さんが辺りを確認して指示を出しますぞ。

 ここで別の所で波が起こったら驚きですな。

 槍の精霊の事ですから何らかの力でここを弄るとか出来そうで恐い所でしたな。

 何せ赤豚の本体はおらず、ループする事が目的である現状……その辺りの設定さえも奴はいじりそうですからな。

 それくらい、実は出来るのでは無いですかな?

 等と思うくらいには俺は奴を疑ってますぞ。絶対に車軸にしてやりますぞ。

 ドライブモードブルンブルンですぞ。

 最近はあまりやってないですな。


「え? おい」

「随分と一目散に行きますね。まあ、作戦としては攻撃担当に向かって貰うのが良いとは思いますけど」


 一目散に波の亀裂に向かって走っていく錬と樹、その仲間たちをウサギ男が手で日よけをするようにして見てますぞ。


「あー闇聖勇者いたークロも行くー」


 ポン! っとクロちゃんがフィロリアル様姿になって錬に並走しますぞ。


「闇聖勇者ークロも一緒に行くー」

「む!? こいつは……その台詞!?」


 錬が走るのをやめて俺たちの方に顔を向けました。


「遊びじゃないんだ! さっさと戻れ!」

「えークロ、負けないよー漆黒の爪牙が闇聖勇者と一緒に闇の先兵<ウェーブ>を闇へと返すんだよ」


 とクロちゃんが答えた所で次元ノ屍食鬼が攻撃をしようとしてきました。

 が、そこでクロちゃんは錬が咄嗟に動くよりも早く蹴って吹き飛ばして着地しましたな。


「シャキーン」

「お、おう……」

「あそこに行くんだよねー闇聖勇者ー行こー」

「わ! こら! 何を――」


 クロちゃんが錬の襟をつかんで背中に強引に乗せて駆けだしました。


「レン様!」

「錬さん!?」


 スタコラと進んで行くクロちゃんが樹一行を追い抜いて行きますな。


「おろせえええええ!」

「とー!」


 そうして襲い来る波の魔物たちをクロちゃんは錬を乗せて蹴散らしていきます。

 最初こそ降ろせと騒いでいた錬でしたがクロちゃんの動きに感心したのかそのまま跨って剣を振っておりました。


「はああ!」

「錬さんには出し抜かれるわけにはいきません! 行きましょう!」


 で、樹は樹で負けないように向かうつもりのようですな。


「あー……まあ、クロちゃんが錬と向かったみたいだし、俺たちは避難誘導を優先しようか」

「もちろんですぞ! フィロリアル様達を優先ですぞー!」

「みんな、ユキについてきてフィロリアルと人を助けるのですわ!」

「「「はーい!」」」


 俺とユキちゃん、フィロリアル様達はリユート村のフィロリアル牧場にいち早く駆けつけて柵を破壊しつつ襲い来る魔物どもを仕留めますぞ。

 この布陣でフィロリアル様をお守りしきって見せますぞ!


「何というか……あいつは全くブレないな」

「そうですね。人よりフィロリアルを優先しています」

「まあ……元康くんだからね」

「ヴァウヴァウ!」


 で、お義父さん達はその様子を見ながら避難誘導を優先してますぞ。

 なのですがヴォルフが興奮したのか鼻息荒く近づく魔物どもへと意識を向けて攻撃してますぞ。


「おっと、ヴォルフ! ダメだ……興奮してる」


 お義父さんがヴォルフに近づいて抑え込みに掛ったようですぞ。


「ヴァウヴァ……ウ……くーん」

「ああはいはい。ヴォルフ落ち着けってのは……空気的に難しいか」

「ブヒイイイイ!」


 と、村の豚の叫び声に雑種のリザードマンが斧を持って近寄る魔物を屠って守りますぞ。


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― 新着の感想 ―
>おや……俺の記憶違いか記憶の混濁かもしれませんがサクラちゃんとフィーロたんが揃っている光景が脳内で広がりますぞ。 もしかして「番外編 フィーロの摩訶不思議な迷宮」の時のことかな? 迷宮に入った直後…
[一言]  クロちゃんがいれば錬は間違った方向へ行かずに済みそうで安心する。  そろそろあの腹の立つ団長とかクズと赤豚が久しぶりに登場しそうだな。
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